桃太郎レジェンド - 桃太郎レジェンド

〜桃太郎レジェンド〜

 この胸を満たすものは、果たして傷かまだ見ぬ鬼か
 穢れたこの身を救おうとすればお前達の体も穢れるだろう
 どうか教えてくれ・・・我が命は、我が心は
 それほどに価値の、あるものだろうか

 天純よ


「っ!?」
 ぐたりとした千鳥を抱きかかえたまま巽は捜している気配の他に別の気配を感じて身を強張らせた。すばやく周りに視線だけを巡らし、神経を研ぎ澄ましていく。
「今のは・・・」
 彼の良く知った気配に似てはいなかったか。色で例えるなら絶対に見失うことの無い、黄金色。
「荒天斎・・・?」
 ツキリと胸に刺さるものがある。それは物理的なものではなく、服についた少しのシミのように心に少しだけ不快感を与えるもの。
 呼吸は速くなり、心臓は早鐘を打っている。何か、何かあったのか・・・。
「おい、女!起きろ!予定が変わった」
 腕に抱いたままの千鳥を乱暴に揺さぶり、彼女の意識を覚醒させる。巽の呼びかけに千鳥はのろのろと目を開けた。
「えっ!?ぎ、ぎゃー!」
 実に色気のない叫び声を上げた彼女は目の前にある男の顔に赤面するよりもまず、右拳ストレートを浴びせて怒鳴る。
「あんたねえ!乙女にそんな顔近づけてっ、何だと思ってるのよー!」
 20歳をとうに過ぎた千鳥に乙女も何もないのだが彼女は一方的に怒鳴り散らして、数秒後何かに気付いた。そして顔色を異常なほどに青くさせ、自分から巽にしがみつく。
「やっと気付いたか」
 顔に千鳥のパンチのあとをつけて巽は右手に持つパイプを今一度握りなおした。そして足をわずかな突起に置いて二人分の体重を支える。
「な、なんでこんなとこに・・・」
 見たこともない風景がそこに広がっていた。在る町並みは確かに普通だがそうでないのは、彼らの、立っている場所だった。上に見えるのは青い空。下に見えるのは、屋根。
「お前が気絶するのが悪い」
「意味分かんないわよっ!桃の話はどうなったの!?」
 腕はしっかりと巽の長い髪と服を引っ張りながら、言葉だけは刺々しく言う千鳥。
「とにかく降ろして!今すぐに!!」
「駄目だ。まだ見つからない」
「何がよ!?」
 時折吹く寒風に頬を赤く染めていらつく千鳥。巽はそれを見てみぬ振りで相手にしない。
「お前の弟の気配だよ。あそこにかけられた術は・・・多分俺の仲間がかけたものだ。あれで弟を連れ去って・・・」
「連れ去って・・・?」
 巽は目を細め、十分な間を開けた。
「俺と同じことをする」
「同じことって何?」
 何も知らない千鳥は弟が強いられるであろう行為を思い浮かべて、不安が心を埋め尽くした。
 まさか、まさか・・・!
「見世物小屋にっ」
「違う」
 即答した巽は小さくため息をついて、なんと彼女の軽い体を放り投げた。
「うぎっ・・・!――――っ!!!?」
 余りの衝撃に声も出せず目を一杯に開いて落下する千鳥。そして彼女は固い地面に叩き落され、はしなかった。ボスンと音を立てて柔らかい何かに突っ込む。拍子にたくさんのそれが宙に舞った。
「最初っからこうしてればよかった」
 頬をさすりながら巽は下のほうで藁(わら)まみれになった千鳥の罵声を聞く。
「おい、今から話すことをよーく聞いとけ」
 とても女性が言うものではない言葉を放っていた千鳥に言って巽は彼女と目を合わせた。
「お前には悪いがこれから俺と付き合ってもらう。何、簡単なことだ。心配するな。きっとお前の弟も、同じことを言われてるはずだ」
 話の中の桃太郎の気配に千鳥はすっと真剣な表情に変わり、立ち上がった。

 ◇ ◇ ◇

「・・・・・そうかい」
 足を組んで太ももを紛らわしいところまで見せたその女は眉根を寄せてため息をついた。
 ここは天上界と呼ばれているそうで人間界では到底見られないものがあったりする。その一つに、「天磐戸(あまのいわと)」がる。それは一枚岩で一番上が見えないほどの高さを誇る巨石だ。俺達は今、その前に座っていた。
「それであたしに、魂醒の術(たまざめのじゅつ)を掛けて欲しいんだね」
「・・・はい。是非とも、お頼み申し上げます」
「ふうん。こいつにかい?」
 菊千代は流し目で俺を見て目を険しさに細めた。
「出来ますかね?」
 俺が軽々しく言うと菊千代は別に気分を害したわけでもなく、何故か声を上げて笑った。
 笑われた俺は少し仏頂面で、しかしここに来る前の飛鳥の言葉に従って何も言わない。
「あははははははは!確かにこいつは天純(あまずみ)だね。このふてぶてしさ、まさにあいつだよ」
 ひとしきり笑った菊千代はふいに哀愁深い表情で俺の顔を見た。いや、俺の奥の何かを見つめている。そして悟ったような顔で目を瞑り、しばらくの間微笑んでいた。
「分かったよ。術を掛けてやろう。だがその前に大事なことが一つ」
 指をぴんと立てて俺と飛鳥の前で揺らす。爪は攻撃用かと思うほどに長かった。
「この術を一度掛けちまえばもう後には戻れなくなる。つまり、力は事が終わっても永続的にお前の裡(うち)に残っちまうということ」
 何?
「そうなればお前はもう、元の生活には戻れない。当然、人間社会では生きていけないよ」
 おいおい。聞いてねえぞ、そんなこと。
「それでもまだ、この術を掛けて欲しいかい?」
「是非!」
「ってオイ!」
 俺より先に返事をした飛鳥にさすがの俺も焦った。だってそうだろ?今日会ったばかりの胡散臭い奴の為に俺の人生を棒に振れってのか?冗談じゃない。寝言は寝て言え、馬鹿野郎。
「お前の主人には悪いが断らせてもらう。俺にそんなことは出来ないよ」
 立ち上がり、その場を離れようとする俺の前に飛鳥が飛びついてきた。
「お願いいたします・・・!荒天斎様は、私にとって命よりも重いお方なのです・・・。どうか・・!」
 俺のすぐ下で土下座しながら飛鳥は懇願した。でも、俺には今の生活を捨てる気はないんだ。
 菊千代は何をする様子もなく一部始終を見守っている。何やってんだ俺がピンチのときに!
「止めろ、本当に無理なんだ。早く俺を家に返してくれ。家の仕事がたまってる」
 冷静な応対だが俺の頭の中は実際ぐちゃぐちゃだった。どうやってこいつを諦めさせようか、一体こいつはどうやったら諦めてくれるのか。
 その、俺に。何だか久しぶりに聞く声が降ってきた。
「そんなケチな事言わずに、手伝ってあげようじゃないのよ!桃!」
 その時の俺の顔を写真に撮っていたら、きっと万国ビックリショーに出れたな。
 そこにいたのは、仕事着のままで髪を振り乱し何故か藁をつけている
 姉貴の姿だった。
 非常識にもほどがあるだろ・・・。
 
 ここが神の領域なら、この事態をどうにかしてくれよ

後書き

桃太郎レジェンドとうとう十話です。
桃太郎の性格はまだいまいち定まってませんね・・・。
本編とは関係ないですが、ありのは今テスト期間です。
今日は世界史と生物と英語があったんですけど
見事にぼろぼろでした。
まず世界史はティムール帝国をしたんですが、イヴァン四世が出てこなくて・・・
そして生物は原腸胚だの原口だの・・・意味不明でした。
最後に極めつけは、英語。
 there are many shops. It's very convenient.
が書けませんでした。
 ありのは落ち込みましたね。へっ、もう勉強なんてどうでもいいやー♪なんてことにも出来ないのです。
このテストで赤点をとってしまえば来週の修旅で課題が出るそうで・・・。
やばいです。非常にやばいです・・・。
しかも明日は数学に日本史・・・。
ありの、死す・・・!

この小説について

タイトル 桃太郎レジェンド
初版 2006年12月4日
改訂 2006年12月4日
小説ID 1031
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