あかいばつ - 第三章 神

正広はまずいつも草野球をしている場所に行こうとした。
ひょっとしたらそこにいるかもしれない、と根拠もあまりなくそちらに向かおうとした。
固いアスファルトの道路を走り、老人ホームや歯科の前を通り、煙草の自動販売機の前を通って国道二号線に出ようとしたそのときだった。

目の前に、小さな靴が落ちている。
それも見覚えのあるスニーカーが。
(翔太…?)
正広は呆然と立ち、顔が青くなった。
(ゆうかい……?)


正広の体から汗が噴き出した。唇と手が震え、目は血走っていた。
しかしそんな正広を冷静にしたのは、スニーカーの向きだった。
スニーカーの先には、神社へ上るまでの階段が続いている。
いくら誘拐犯でも、逃げる場所が神社というのは明らかにおかしいということは小学生の正広でもわかることだった。

神社。
夏休みのラジオ体操か秋の祭りしか行かない場所。
そんな場所に、翔太はいるのだろうか? 本当は違う場所にいるかもしれない。
でも気になる。この先が。この先に何かあるのかが。

 正広は二段とばしで、ごつごつした石で出来た階段を上がった。
 ズルッ!
 雨で地面が濡れていたためか、正広は足下を踏み外しそうになり、階段の角で足をすりむいた。
 雨で傷が染みて痛かったが、正広は上を睨んで、また登り始めた。
正広にとって傷口のことなどどうでもよかった、というより気にしていられなかったのだ。

もうすぐだ、もうすぐ。
もうすぐ、上に着く。

そして最後の段を登り終えたそのときだった。


正広が見た光景。

その神社には、変わったところは何もなかった。
ただ、一カ所明らかに目がいくところがあった。

翔太が、うつぶせで倒れている。
正広は全力で走った。


(翔太…そんな、お賽銭箱の、カランカランする鈴のところの前でなんで倒れてるねん…。そこは翔太が…)

(………。)






(翔太が? 何なん?)

正広は何かを思い出しかけた。だが、その答えが見つからない。

だがそんなことはどうでもいい、と心の中で正広は首を振った。

「翔太、しっかりせえ! 大丈夫かぁ!?」
正広は倒れている翔太を揺さぶる。翔太の小さな体は境内の砂がへばりつき、足下は右足だけ靴を履いており、左足は白い靴下が砂だらけだった。
そして何より、地面に寝ている翔太を抱きかかえた時体が熱いのを感じた。
翔太に高熱があることはあきらかだった。

揺さぶられた翔太は、やがてゆっくり目を開けた。
「マ…サ…」
正広は独り言のように、つぶやくように、言った。
「お前何やっとんねん…!」



「えっと…おいのりすんねん。


…キラはかみさまやから、ここにおるとおもうねん。

       …だからなんか、いうたら、マサのおとうさんきいてくれるかなぁ…て…」

 翔太は眠った。
それと同時に、正広は何故、翔太がここにいるのかがわかった気がした。
言葉に出して言えないが、正広の脳はそれを理解していた。






 翔太は、キラが神だと思っている。
 翔太は、神の存在を信じている。
 翔太は、神が優しいことを信じている。
 翔太は、神が優しいと信じている故に、神が自分の言うことを聞き入れてくれるかもしれないと思った。
 翔太は、そして、ここに、この豪雨の中、自分の願いを伝えにきた。
 翔太は、正広のために、キラに、神に願いを伝えにきた。





 正広の父親を――――渡辺克美をこの世に戻して欲しいと。





 正広は泣いた。正広が泣いた途端、雷が地響きを立てるように鳴り響いた。まるで、地面を揺らすかのような、怒りに似た轟音だった。
 そして正広もまた、怒っていた。
 正確に言うと、怒りの中に悲しみが混じった感情だった。
 正広は、感情のままに叫んだ。


「キラァ! お前なんか神様とちゃうわァ!! おれのおやじはなぁ、おっ、お前が思うような悪いやつとちゃう!! …だれが、いいやつとか悪いやつとか決めんなや! かってに悪いやつやて決めつけてかってに殺すなや!! おれはお前なんか神やなんか思てない!!! お前なんか…しね! しんでまえ!!! 悪いやつがしぬんやったら、しななあかんのはお前やァ!!!」


 正広は、抱きかかえていた翔太を地面に戻すと、降りしきる雨で泥になった土から小石を拾い上げ、賽銭箱の上の鐘をめがけて投げ始めた。
そんなことをしたらバチが当たる、ということはもちろん、正広の頭にはあった。
だが、そんな、昔から植え付けられた常識よりも、正広の中で煮えたぎっている熱が勝っていた。
 小石を拾っては投げ、小石を拾っては投げる。
その行為を、何度も何度も繰り返していた。
正広の頭は、完全に血が上っていた。
しかし、心の中では、「この行為をいつまで続けるんだろう」という意志もどこかにあった。

 そのときだった。

「コラァ!!」

正広の体は目をカッと開いて、止まった。
正広を止めたその声の主は、神社を管理している主だった。

 その神社の主は、正広から見て50代くらいの、おじいちゃんというにはまだ若そうな年代の男性だった。
祭りの時の神社の主のイメージとは遙かにかけ離れた上下ジャージ姿だったので、正広は最初、何者なのかわからなかった。
というより、それが誰なのかはどうでもよく、こみ上げる怒りがおさまらなかった正広はその場にしゃがみ込み大声で泣き始めた。
しかし、怒鳴り声を聞かされた後、さらにしゃがみこんで泣き狂う正広に差し伸べられたのは制裁の手ではなく、暖かい手だった。

 神社の主の名前は真田信輝という。
信輝には娘が二人いるが、長女は留学中、次女は東京の大学の寮に住んでいるため、妻の冴子と二人で神社の目の前に住んでいる。
村で会う同級生達にはノブと呼ばれている男だ。
 彼は今日、豪雨で何もすることがなかったため、普段読まない、しかし昔読んでいた推理小説を夢中で読んでいた。
結末が解っているのに、あのときの興奮が蘇って退屈せずにスラスラと目が動いた。

 しかし、だ。
 そのとき、信輝の耳に、子供の…少年の大声が聞こえた。

 まだのど仏が発達していないであろう、かん高い少年の声が外からしてきたので、信輝は何事かと縁側から神社を見た。
すると、小学生くらいの男の子が何事か叫んで、狂っているかのように、賽銭箱にめがけて石を投げているのが見えたので思わず怒鳴った。

 だが怒鳴った後に少年に駆け寄って、信輝はハッとした。

その少年が、つい最近キラ事件に関わって命を落とした渡辺克美の子供だと気付いたのである。
信輝にとって、克美は中学生時代の野球部の良き後輩でもあった。
信輝が高校に進学したとき、克美が居ない理由で剣道部に所属したほど、克美を慕っていた一人だったのだ。
 その子供が目の前で、怒り狂っている。泣き叫んでいる。
その光景を目の当たりにして怒鳴ることが出来る人間は余程の鬼だ。

 そして信輝が傘を慌ててさして正広に駆け寄ってみると、賽銭箱の前で小さな男の子が横たわっているのを見てさらに驚いた。
何事かと思った信輝は、正広に何か言う前に小さな男の子を見た。
その男の子が翔太だとすぐに解った信輝は高熱が出ていることを確認した後、正広に近づき、自分が持っていた傘を差しだして持たせた。
そして、翔太をおぶって、黙ってついてくる正広と家まで戻ると、妻の冴子に頼んで翔太を布団に寝かせ、正広には風呂に入らせた。
それは降りしきる雨の中にいて体が冷えていた正広を気遣う親切心だけではなく、泥だらけの体で家の中をうろつかれたりすると具合が悪いと信輝が思ったためでもあった。
とはいうものの、正広はよく知っている子供の一人であるし、
何より自分が慕っていた後輩の息子であるから、正広が面倒くさい子供であるなどとは信輝は一度も思ったことがない。
それは、冴子も同じ事だった。
 冴子は信輝に言われたとおり、二人の家に電話をかけていた。
このひどい雨の中、双方の両親に家まで迎えに来させることを気の毒に思った冴子は雨がある程度落ち着いたら車で送るということ、
そしてこうなった事情は後ほど言うと伝えた。
特に翔太は行方不明であったため、危うく警察に電話をしそうになっていた翔太の母親が安堵したのを、冴子は電話で感じることが出来た。
冴子は受話器を置いた後、留学中の長女が使っていた(今はあまり帰ってこないため、空き部屋同然になっている)部屋で寝かせている翔太につき、
翔太の額に氷で冷やしたタオルを乗せ、少しでも熱が下がるのを待っていた。

 その頃、正広は新しい畳が敷いてある居間で、ちゃぶ台に昆布茶を出されて信輝と向き合って正座していた。
自分のしたことに気がついておびえていた正広だったが、信輝は決して怒っていないとわかり、辿々しくはあったが今までのことを信輝に打ち明けた。
信輝は正広が話している間、決して口を挟まず相づちを打って聞いていた。
そして聞いているうちに、信輝の胸に何かこみ上げるものがあった。
翔太のしようとしたことも、正広が怒り狂った理由も納得していた。
むしろ、何も間違っていないのではないかと思うくらいだった。

「でもなぁ、おっちゃんとこの神社にはキラはおらへんで。それは、おっちゃんが一番よく知ってることやからな?」

 正広は一応、信輝の言葉に頷きはしたが、そんなことは言われなくてもわかっていることだった。

ただあの時は、克美を奪った上に、克美に生き返って欲しいと願った翔太すら殺そうとしているのではないかと正広は思い、思わず目の前にキラがいる”気がして”あの行為をしただけなのだ。
 
 だが、それを説明するには、まだ正広は幼かった。
言葉にすることが難しかったので、信輝に伝えるのを断念した。

 「…でもぶっちゃけ、翔太くんが考えたことも、マサがキレた気持ちも、おっちゃんは間違ってないと思う。…マサは悪くない。克美おじさんも、悪くない。キラは、おっちゃんもおかしいと思うで。おっちゃんが知ってるマサの親父さんはええ人やったからなぁ。だから、落ち込みたかったら落ち込んだらええし、怒りたかったら怒れ。それはかまへん。…まあ、あんまり周りが戸惑ったりせん程度にな。いや、気持ちはめっちゃわかるねんけど、な、周りが心配するやろ?」

 正広は頷いた。
その頷きは、本当の頷きだった。
そして今度は静かに、嗚咽をこらえて泣いていた。
信輝は正広に近づき、自分の手のひらの大きさの頭を撫でて、言った。

「キラなんか憎んでもええ。おっちゃんも憎んでる一人やからな。でもマサは強うなれ。キラに怯えんと立ち向かっていけるくらい、強い男にならなあかんで」



 渡辺克美が死んで1年くらい経った後も、まだキラは世界を乗っ取ろうとしていた。
 キラが実はたった一人の青年にすぎないという事実は、無論、誰も考えもしないため、21世紀に降り立った「神」の存在に、皆それぞれ思いを馳せていた。

 克美の死は、時が経つにつれ薄れていったのか、キラ信者も村に徐々に現れ始めた。
だが、その信者はほとんど老人ホームで暮らしている老人ばかりだったので、さほど渡辺家に影響は無かった。
 正広は、神社で泣き叫んで一週間くらい経った後から徐々に今までの自分に戻り、野球により一層打ち込んでいた。
正広にとって、野球は父親の克美と繋がっている気が感じられるものだったのだ。

あの日から立ち直ったとき、小学生なりに彼は心に決めたことがあった。
それは、生きていた頃の父親の優しさを忘れないことだった。
たとえ世間が克美を否定しても、自分だけは父親の存在を護ると決めた。
克美が殺された事実をいつかまた誰かに話すときが来ても、自分にとって克美が、「おやじ」がどんな人間だったかを、正広はちゃんと言おうと思った。

そして、自分は何があってもキラには屈しないことも、自分が信じる、正広にとっての本当の「神」に誓ったことだった。

亜希子はそんな弟を見てホッと胸を撫で下ろしていた。
あの激しい雨の日、母親に正広が何故神社にいたのか事情を聞かされたときから気が気ではなかったのだ。
それからは毎日欠かさず、祖母の節子と共に毎朝ご飯を仏壇に出している。
あの時の痛みを忘れないためにも。
 それから渡辺家で変わったことといえば、
アケミが母親として出来ることを精一杯しようと、ヘルパーの資格をとって老人ホームでパートとして仕事に行っている(ただし、キラ信者の老人を決して担当しないように老人ホーム側が配慮している)ことと、
それから寡黙だった正広がよく話すようになったことだ。
翔太に、徐々に野球を教えている話や今ハマっているゲームの話など、他愛もない話をよく喋るようになった。
特に、まだ小さいなりに悩んでくれた友達の翔太とは、家族ぐるみで縁が深まっている。




 12月の中頃、もうすぐキラが世界に存在して二年目になるのではないかという時期の朝のことだった。
正広は一人で、一緒に学校に行く友達との待ち合わせ場所まで行こうと歩いていた。
その日はとてもよく晴れていて、父親の葬式のあの日の空を思い出した正広は、太陽をあまり見たくない気がして帽子を目深にかぶりなおした。
そしてしばらく歩いていると、一本の電信柱にポスターが貼ってあるのが見えた。

そのポスターには、クリスマスの日に見たことがあるキリスト像らしき写真と、『キラ様に栄光あれ!』と黒字で太く書かれたポスターだった。

「…誰やねん、こんなとこに、こんなもん貼ったボケは!」
正広はキレた口調で独り言を言った。
周りには誰もいなかった。


ふと、正広は思いついた。
そして、周りに本当に誰もいないか何回も周囲を確認した。


 正広は黒く数カ所傷がついているランドセルをやや乱暴に背中からおろし、地面に置くと、
鞄の中を探って、細い筆箱の下にあった、極太の油性マジックが6本セットで入っている箱を取り出し、箱を開けた。
そして黒いマジックを取り出し、箱の内側に試し書きで一本線を入れてみた。すると、インクが出てきたので、正広はククク、とかすかな声で笑い、そのマジックを持ってポスターの目の前に立ち、
キリスト教の像だけに黒い大きなバツを書いてやった。

よし、と正広は頷いて、
「これくらいされろや、このクソったれ」
と言い、マジックをランドセルにしまって早足で待ち合わせ場所に向かい始めた。


 すると、その一部始終を、そのポスターが貼ってある電信柱のひとつ前の電信柱に隠れて見ていた少女がいた。
 それは、姉の亜希子だった。
弟が周りをキョロキョロ見回していたのを見て、思わず近くの大きな電信柱を探して隠れてその場を見ていたのである。
 すると、弟が、電信柱にマジックで何か書いているのを見た。
亜希子は弟が遠くまで行ったことを確認し、ポスターを覗いた。
すると、キリストの白い像の写真に、黒いマジックで粗々しくバツが書かれているのを見て、亜希子は「あっ」、と声に出して驚いていた。
…だが、亜希子は衝動的に、自分の手提げ鞄から正広とおそろいの油性の極太マジックを取り出す。

 その極太マジックの色は、黒ではなく、赤だった。
その赤いマジックで、亜希子は、弟の黒いバツをなるべくつぶさないように、ポスター全体に赤いバツを書いた。
 そして、亜希子はニッと爽やかに笑って、
「どうせやるならこれくらいやらなあかんで」
とつぶやき、オリジナルの鼻歌を歌いながらその場を去った。

 ―――――――そして。
 帰り道、翔太は驚いた。


 『キラ様に栄光あれ!』と黒字で太く書かれたポスターには、キリスト像の写真に黒いバツがあり、
その上、大きくポスター全体に赤いバツが書かれており、さらに―――――――。




 カッターらしき刃物で、ポスター全体にバツが付けられていたのである。
その刃の切り口はスパッという効果音が似合うような切り口でまっすぐな線をしていた。



翔太は、何者かが刃物を持ち歩きポスターを切り裂いたという目の前の事実が怖くなって学校まで引き返した。
いや、引き返そうとした。
すると、学校に引き返す途中で、亜希子と正広が珍しく一緒にのんびり下校しているのを見つけ、翔太は全力でダッシュしてそのことを二人に話した。
すると二人はたちまち青ざめ、その電信柱に駆けつけた。
そしてそのポスターを見た二人は、お互いがやったことを打ち明け、一体誰がこんなことをしたのか見当がつかないと言い合い始めた。
そして、翔太は二人の様子を呆然と見ていた。






 そして―――――。






彼らの後ろに、真っ赤な、傷ひとつないランドセルを背負った黒く長い髪の少女が、その電信柱の近くの自分の家の前にいた。
右手には、黒く大きなカッターナイフが握られていた。




(キラは神にならない。


            祝福されない。





神になるのは、






                         あたしだから。)





そして、少女は前髪で瞳が覆われているものの、誰が見ても明らかにわかるように、目の前の彼らをあざ嗤うように口元をゆがめた。












『あかいばつ』・完

後書き

この小説をとりあえず書き終わった昨日、ずっと雨がやみませんでした。
だから、この小説の最も難しいクライマックスを書いている最中は本当に書くことに集中できました。
自分がイメージした情景もこんな感じだと、雨の音を聴くと思い浮かべやすかったのです。


正直、今年中にこの小説を終わらせることが出来て、胸を撫で下ろしています。
というのも、今年は原作も映画もアニメもヒットしたデスノート・イヤーだったので、
この波に便乗してこの作品を書きたかったし、読んで欲しかったからです。
そして、デスノートを知らない人達にも読んで欲しかった。

さて、デスノートの世界は、ほぼ現代の、日本です。
ちゃんと地名はほぼ、そのまま使っているし、
我々が住んでいる現実の地を舞台にしているのであって、決して、想像だけで作られた世界が舞台ではありません。
なので、今回は、私がとてもよく知っている場所を、二次創作の舞台に選びました。
みなさんもお察しの通り、兵庫県赤穂市東有年は、私に近しい場所です。
でもそれは私の出身地ではなく、故郷ではなく、私の祖母の家がある地元です。
この二次創作の主人公の渡辺正広の家は祖母の家がモデルだし、文中に登場する老人ホームや診療所、
神社なども実在します。(ただし、描き方を変えることで多少フィクションがありますが。)
そしてもちろん、渡辺一家や翔太達のモチーフなる人物も実在しているのですが、
敢えて、それは詳しくは申し上げません。

あなたがこれを読んで思い浮かべたその人が正広だったり、その他の人々なんです。


今の子供でも、しっかりした文章や絵を書くことを身近に感じたりんは、迷わず小学生の主人公を選びました。
そんな大人びた子供は数少ないと馬鹿にする大人達もいるかもしれないのですが、
子供のこころに少々携わってみた私が感じた、子供と呼ばれる小さな人間達は彼らなりに頭を使っていました。
そして、幼さが残る時期に、こころに深い傷を背負った子供というのは周囲に比べて精神的に成長が(まるでせかされているように)早いことも学びました。
今回はそのことを生かしているのかもしれません。



さて、これは後書きなので、やっとこの二次創作を書いた理由が言えるので、やや嬉々として書きます。
この『あかいばつ』を書いたわけ。

きっかけは、『デスノート』の背景にはそれはもう大勢の人々が存在するということを考えたことから始まりました。
そして、犯罪者は一人で勝手に生まれて育ったわけではなく、当然人間は一人では生きていけないのだから、
キラに、デスノートに名前を書かれるまでは必ず誰かと人生で関わってきたはずです。
たとえ世間の誰もが冷たい視線を向ける犯罪者であっても、
その人は誰かにとって大事な人かもしれないということが脳裏をよぎったわけです。
原作では当然、その人々は、犯罪者の人生の背景に居るであろう人達は書かれていないし、
そもそも都会の若者が中心でその外側が描かれていません。
だから、原作で放置されている、一人の犯罪者が死んだことで悲しむ一人の人間のエピソードを書くことに決めました。
キラもノートも死神も全く出てこないけれど、『実はこんな人達がこの原作に隠れているのではないか』とあるはずもないウラ側を見ようとして。
そして書いている最中、こうも考えていました。

キラが実現しようとする世界は不可能であるということ。
次世代に生まれてくる子供達が遅かれ早かれ疑問を抱いて反発する可能性が大いにあるし、
キラが長く君臨しようとしたところでその神は生身の人間なのだからその先の未来まで支配できるはずがないということ。
そして、
キラが考える世界は、私も同意したい一方で、その世界が決して許されるものではないという意志の葛藤も感じていました。

そんな思考を巡らせたり、自分が見慣れた地を舞台にすることの迷いや戸惑い(一時期、正直書きたくないと思うことがありました。)と向き合いながら、
最後までなんとか書き上がりました。
これが、りんにとって2006年最後の連載小説です。
これからも時間と体力と頭の許す限り書き続けていきたいと思っています。


最後まであとがきを読んでくれた方々もそうでない方も、この作品を読んでくださってありがとうございました。



P・S

さて、りんは、この話を書き終わった後、
最後のシーンが書いていて怖かったのでなかなか眠ることができませんでした。(笑)
見直すとそんなことないんだけどなぁ…。
でもなんか怖かったんです。
自分が想像したことに怯えること、皆様はありませんか?(^^;)

BGM:宇多田ヒカル『誰かの願いが叶うころ』



…そして、あとがきの、あとがき。…
(2006年 12月14日加筆訂正)

これは、ラストを書く前の話。

最初は、正広があかいばつを書くはずだった。

次に降りてきた設定は、亜希子があかいばつを書くはずだった。

…ところが。

亜希子を登場させて終わらせようとすると、見知らぬ女の子が私の頭に降りてきたのです。

そして彼女は言いました。「私を書きなさい。私は"ここ"にいるから」と。

彼女は現れました。どこから、ともなく。
それで、彼女を記しました。

だから、私はこれでいいんです。

この小説について

タイトル 第三章 神
初版 2006年12月13日
改訂 2007年1月15日
小説ID 1057
閲覧数 6401
合計★ 48
りんの写真
ぬし
作家名 ★りん
作家ID 36
投稿数 7
★の数 121
活動度 3179

コメント (10)

★aki 2006年12月13日 21時50分59秒
弓射り 2006年12月13日 22時18分28秒
お疲れさまでした。りんさんの葛藤をチャットで話して多少は知っていたので
どうなるのかな、とぼんやり思っていたのですが、僕なんかが想像する物を
超えた展開になってますね。

二次創作って、実にこうあるべきだな、なんて思ってしまいました。
キャラクター同士を絡ませて終わるだけの物も本当に多い中で、舞台を駆使して原作とは違う意味で読み手を感動させる。感動ってのは、別にうるっときたりだけじゃなくて、たとえば笑わせたり、たとえばぞっとさせたり。何かを考えさせたり。
本当にありがとうございます。読めて嬉しいです、こういう物が。

なんでこんなに好きかな、最後にどすん、と落とされる物がw イカサビくんの「赤いクレヨン」以来の胸がざわざわする終わり方でした。次回、何を書いてくださるかわからないのですが、期待してます。
★ひでどん 2006年12月13日 22時46分33秒
キラは神か、それとも悪か。
僕も同じように、考えました。ひでどんです。

三回に渡るデスノートの二次創作、お疲れ様です。
デスノートファンとしても、普通の読者としても、とても面白かったです。
世界に唯一の正義や悪はありません。
人一人がそれらを持ち、だから、キラとLのような戦いがありました。

原作に出て来たものを殆ど、あるいは一切使わない二次創作を読む事は、滅多に無い事だったので、僕にとって新鮮でした。

自分で想像した事を怖いと思う・・・・・・。
あります。
夢にも、めっちゃ怖いのが出てきたりします。
どうしてこんなの夢に出て来るんだろう、怖がってるじゃん、自分、って。
何でなんでしょうね・・・・・・?
まあ、あれです。人間って面白!!
涼月 2006年12月13日 23時17分53秒
お疲れ様でした。
3話とは思えないほどの内容の濃さだったと思います。
デスノートを知らない「もぐり」ですが、特に気にすることはありませんでした。そこが上のお二方の仰るようによく出来ていると思います。
全般を通して内面や情景の描写と、前提となるストーリーがよかったです。
★冬野 燕 2006年12月13日 23時36分18秒
 犯罪の無い世界、都合のいい完璧な世界など存在しない。
 不完全性定理。この世に完璧なシステムは確立しないという証明の前提こそ、キラという人間がいるからなのでしょう。
 ……自分で言って意味不明。こほん。

 物語の片隅、けれど当人たちにとっては主役である。もちろん身近な人たちが失われればそれは悲劇である。
 無関係な人などいなかった。りんさんの二次創作には、人の数だけの人生があることを改めて教えられました。

 達観しているわけではなく、感情的に。
 まだ小学生でありながら強い考えを持ったという難しい描写と、最後のカッターナイフを持った少女が強烈でした。
 うぅ……キーを打つ手が震えてりゅ。
 最後に。全三章、お疲れ様でした。
★シェリー 2006年12月14日 0時28分47秒
 まず初めにシリーズ完結お疲れ様です。今回の作品、原作の裏舞台という話でしたが、二次小説とは思えないかなりハイレベルな出来だったと思います。特に正広のキラ否定の叫びは身震いするものがありました。

 ただ個人的に惜しいと、思ったところはりんさんや前の皆さんが恐怖したとおしゃったラストシーン。確かに僕も少しばかり背筋の凍る思いをしたのですが、名もなき第三者にいきなり登場されても、正直ラストとしてはどうかなぁと思います。これを原作のラストを意識して書かれたというのなら、賞賛に値するのですが……スミマセン。ホント個人的な意見を言わせて貰うと、原作のラスト、どうしても納得いかないんです。
 作品自体が素晴らしかっただけに、一カ所でも霞むと、どうしても納得いかないんですよね。

 最後の方は、作品の出来の感想ではなく、僕の好き嫌いになってしまって申し訳ないのですが……。
 ただ、それは原作と同じく、作品が素晴らしかったからの感想であり、けして物語を根本から否定してるわけではありません。
 面白い作品は、誰が何と言おうと面白いのです。原作本が良い証明だと思っています。

 長く、そして多少否定的な文章になったことをお許し下さい。そして改めてお疲れ様です。りんさんの次の作品を楽しみに待っています。
★トリニティ 2006年12月16日 16時22分56秒
まずはお疲れ様です。
わたしは原作は大大大好きです。映画の方も好きですがやはり漫画の方が好きです。わたしは断然L派です。
L大好き。かっこいい。

そしてこちらのお話ですが、衝撃的な描写や、この子達小学生だよな?ってとこが多かったです。これは決して指摘ではなく、そうだからこそ物語に深みが出てくるというわたしの独断感想です。
これからもがんばって下さい!
応援しております。
いもうと 2007年1月17日 23時16分41秒
arumina 2007年1月26日 13時53分39秒
Lei 2007年9月2日 14時41分06秒
一人流行に乗り遅れているLeiです。
もっと早くに読むべきだったorz。

最後の少女、怖いです。背筋がサーっと冷たいです。うう。
さっきも第一章のところで書いてきたのですが、テレビでやってた原作のアニメを見て、ファンになりました。うん。
トリニティさんはL派ですか。
Leiはライトが好き。なんでだろう・・・。いや、たぶんアニメのライトがかっこよかったから(えええええ

すみません、思いっきり脱線してしまい・・・。
とにかく、コレ最高!!
りんさんのファンになりました。
では。
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