そして世界は・・・ - 第五話

『口満ち質とにラスに』
 パソコン画面に打たれたその文字は、フォントがドットなだけに不気味さを増していた。そして床に広がった血の染みも、胸が悪くなるには十分の雰囲気を持っている。
「ひどいわね・・・まさに惨状だわ」
 床一杯に広がった染みからずれた場所に遺体の形をした白いテープが貼られていた。パソコンの置いてある机のちょうど下の方で、左足を上げて倒れている状況が見て取れる。
「ほら、ここにも染みが」
 陣内が指差す先には血がついたキーボードがあった。血まみれで、刺されたあとに文字を打ったことが窺える。
「うわ、ひどいね」
 柳原が割り込むように入ってきて、キーボードの血に顔をしかめる。陣内はあからさまに表情を堅くした。
「ねえ、陣内さん凶器は見る事ができる?」
 キーボードを依然見ながらゆかりは呟く。陣内はぱっと顔を明るくして、持ってきていた大き目の鞄の中を探り出した。
「これ、です」
 中から取り出したのは中華料理などで使う刃が四角い包丁。血糊がべったりと張り付き、脂でてかてかになっていた。
「うわー、グロテスク」
 またしても腹を揺らして割り込んできた柳原にあきれ果てた陣内は包丁をゆかりに渡すと、山瀬のところに行った。
「おやおや、これは楽雲仙の包丁じゃないか。いや懐かしい」
 ゆかりの持っている包丁の柄の部分を見ながら柳原は言う。そしてその言葉にその場の、ゆかりを除いた全員が彼の方を見た。
「ん?どうしたんだい?」
 サングラスに隠れて見えない顔は、余裕でゆかりには逆にそれが奇妙に思える。自分と同じくらいの身長の彼はどこか達観したような風情があり、それがある誰かに似ていてゆかりは一種のデジャブーを覚えていた。
「楽雲仙と、言ったか?」
 刑事の1人が神妙に言う。辺りが静まり返り、誰もが柳原の言葉を待っている。
「ああ、言ったね。この柄の部分、あそこの中華屋は本場四川省から取り寄せた材木を使ってるんだ」
 ゆかりにはこの包丁と普通の包丁との区別がつかなかった。ただの黒ずんだ柄があるだけの、包丁。
「おい、陣内」
「はい!大至急ウラ取ります!」
「立原はホシ五人を呼べ」
 山瀬ではないひげの刑事が指示を出していた。刑事達はおのおのの仕事に就くために部屋を出て行く。
 ゆかりがふと見ると柳原は大きな窓辺に行き、下を覗いていた。外はもう夜で秋の少し濁った空に淡い月が輝いている。星は見えない。
 柳原は下の方を見ながら、何かを囁いているようだった。あまりにも小声で、何を言っているか分からなかったかがその表情がふと戦慄を覚えるほどに冷淡としていてゆかりは寒気が走った。
 
 なぜだろう。自分を変えてくれた人かも知れないのに・・・。

 ゆかりは遠い目で柳原を見ると、何も得られなかったように顔を背けて今は5人ほどしかいなくなった部屋を見回した。
 コンピューター関係の本がぎっしりと並び、ゆかりには理解できない単語が羅列している。彼女はパソコン画面に目を走らせた。


 下に黒い車が見える。夜闇と同化してほとんど見えないが、その中から出てきたのは白い死神。ここは38階立ての33階なのでこちらが見えているという事はないが、彼はこちらをしっかりと見据えて寝癖のひどい黒髪を風に靡かせている。
「揃ったか・・・200」
 限りなく小さな声で言うと柳原はこちらを見るゆかりの視線に気付いた。

 あの女がいることは計算外だった。だが、その違いをこそ生かして・・・・あの男に復讐できる・・・。

「ホームはお前を逃がさない。・・・・僕のことも、当然。だが閉じ込められるのはごめんだ・・・。200。お前だけが、天才であればいい」
 柳原はサングラスを押し上げて依然こちらを見上げる白い死神に視線を馳せた。 

後書き

一度書いたものが跡形も無く消え去ってやる気のなくなったトリニティです。

本文も後書きも二回目です。本当はもっと書いてたんですよ?

「メモ帳」め・・・!お前は万能ではないのか・・・・。

>>冬野 燕さん、コメントありがとうございます。ネコミミパワーごともらってやるっ!

そうだ。「神留め」終了お疲れ様でした。個人的にはもっと読みたいところです。でもまだ続くという事なので、楽しみに待ってます。

この小説について

タイトル 第五話
初版 2006年12月22日
改訂 2006年12月22日
小説ID 1082
閲覧数 773
合計★ 3
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作家名 ★トリニティ
作家ID 95
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活動度 25049
文と音楽と絵と食事を大事にする南部人

コメント (1)

★冬野 燕 2006年12月22日 18時36分58秒
 い、100はゆかりの運命を変えた人っ!?
 なんて残酷な……!
 く、トリニティさんめ……。ここに来てとんでもない代物を……!

 とか一人で切羽詰まった冬野。
 いい感じでヒント? が。憎い、憎いよこの芸達者!
 でも僕では分からないんだな、これが(愕然
 後書きの通り、もう少し中身が欲しかったです。

 ネコミミパワーを奪う? ハッ! 体はネコでできている僕に死角はない!
 そもそも僕の技術なんてシェリ様や弓っち(失礼)など熟練たちに比べれば、下の下もいいところですが(涙
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