僕と寝ぼすけ男 - 僕と寝ぼすけ男

いや、俺もそろそろ言ってやろうかなって思ってたぜ?
でもサヤが先に叫んじゃってさぁ。まぁいいけど。
さぁて、その化粧くせぇツラぁぶん殴ってやろーじゃねーか。



僕と寝ぼすけ男



「貴方が黒ノ閃光、コウタ=レジェンディア…」
赤い目を大きく見開いて、イリカは言う。
「俺の名前を知ってたのかい?そりゃぁ光栄だ」
コウタは片方の口の端を上げて皮肉を言った。
イリカは笑みを崩さないまま、
「貴方が彼の悲劇の一族の生き残りなのね。ふ、ふふ…。」
やがて隣りにいる乳母に、「シャーン、あの者たちをここへ」と言いつけた。
イリカの乳母、シャーンは頭を下げると、イリカの前に出て手を動かした。
「風の精よ、ここに集いて巻き上がれ」
シャーンの口が呪文を紡いだ刹那、轟、と風がサヤとコウタの足元に巻き起こり、2人を浮かせた。
「うわっ!?」
「っ!?」
サヤは突然浮き上がった体を見回す。だがどこにも異常はない。緑の風が体を取り巻いているだけだ。
ふわふわと浮いたまま、イリカが立つテラスまで移動した。
地面に足がつくと緑の風は消えてしまった。
イリカはコウタとサヤに歩み寄り、ニッコリと笑った。
コウタは半目がちのままイリカを見た。
「貴方は、わたくしについてくる気はありませんの?」
コウタは眉を吊り上げた。
黒に近い蒼の髪がゾクゾクと逆立つ。
「この期に及んで何を言い出すかと思えば…」
「貴方は有名な一族の血を持っている。その血に眠る力を使わないのは勿体無いわ」
イリカは息を吸うと、
「わたくしがその力を引き出して差し上げますわ。そうすれば貴方は世界にもっと名前を広めることができます」
下の城門前広場がザワザワし始めた。イリカは構わず話を続ける。
「本来ならば貴方は死刑囚ですのよ?国家反逆の罪で…ね」
コウタはイリカを睨んだまま何も言わなかった。
ひゅうひゅう、と風の音だけが響く。
広場の騒ぎが遠く聞こえるだけ。

沈黙が続く。
やがてイリカの口の端が不気味に歪んだ。
「んふふ。貴方のその崇高な血を嘗め尽くすのが楽しみですわぁ」
大きく見開いた赤い目は血走っている。視線にはコウタだけじゃない。サヤもとらえていた。
「シャーン、今日は甘いワインが飲めるわよ」
乳母のシャーンを振り向かずに、チロチロと先の割れた舌を覗かせた。
女王イリカは人間じゃない。魔物だったのか!
サヤは瞬時にそれを理解し、左の腰に右手を動かした。が、あるはずの剣の柄がない。
看守に武器は取り上げられているのを思い出した。
心で舌打ちをするが、武器が帰ってくるわけではない。サヤは唇を噛んだ。
「龍神族の黒ノ閃光に、魔神族の少年。どっちから頂こうかしら」
イリカは笑いながらシャーンが持ってきたダガーを手にとる。
「ま、じんぞく…、って。何の事だ…!?」
サヤは驚いた。自分が何の一族かなんて聞いた事も無い。
それに、コウタにも同じような事を言っていた。
龍神族。龍とは、ドラゴンの事。
サヤにはコウタがそうは見えなかった。
「コウタ、龍神族とか、魔神族とか…、なんの事だよ!」
「神の一族らしいぜ。俺達の先祖が協力しながらこの世界を守ってきたってさ」
それが本当かはわかんねぇけど、と付け加えた。
「でもサヤ、今はそれどころじゃねぇ。今すべき事は、この女をぶっ飛ばす事だ」
コウタは軍服の袖をまくり、ふぅー、と息を吐いた。
「女を殴るのは好きじゃねぇが、お前は別だ…。国を好きにはさせない!」
イリカはクツクツ笑い、赤い舌をちらつかせる。
コウタはサヤを振り返ると、だらしなく笑った。
「下がってろよ。怪我すんぜ?」
サヤに下がる気は無かった。
サヤは眉を吊り上げ、叫ぶ。
「僕も戦う!こいつは、僕の村を殺させた。ジュリアを死なせた!僕はこいつを許せないんだ!」








「サヤぁ、もう俺は俺の仲間を死なせたくないんだよ」






コウタの声は弱弱しく、だけど耳によく入る声だった。

続く。

後書き

また色々と設定が出てきてうんざりかなぁ・・・。でもこれも物語の軸だったりします。少年と軍人の正体は何なんでしょう!?(問うな
キッチリ考えてあるので大丈夫だと思いますけど…どうだろう?
ささいな質問・感想などありましたら遠慮せずにどうぞ。なるべくお返事は返すようにしております。

この小説について

タイトル 僕と寝ぼすけ男
初版 2007年1月14日
改訂 2007年1月14日
小説ID 1166
閲覧数 1010
合計★ 3
霜柱 光の写真
ぬし
作家名 ★霜柱 光
作家ID 97
投稿数 45
★の数 87
活動度 5973
まったりファンタジー。
最近幽霊部員と化してましたが生きてます。

コメント (2)

★トリニティ 2007年1月14日 22時59分27秒
ま、ま、魔人族ー!?!?
サヤくんは魔人だったのね・・・脳噛ネ○ロの親戚だったのね(ぇ

物語としては、おもしろい展開になってきたと、わくわくしております。
今後の展開が楽しみ★なトリニティでした。
★霜柱 光 コメントのみ 2007年1月15日 20時43分48秒
コメント有難う御座います。
サヤは実は……なんですよー。…の部分は後々わかると思いますー。
脳噛…?ちょっとよくわかりませんがゲームで言えばFFの魔人ベリ〇スと親戚です(違
次の展開を考えながらパソコンに噛り付いている霜でした。
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