僕と寝ぼすけ男 - 僕と寝ぼすけ男

なぁ、俺はお前を救えたのか?
俺みたいな化け物が、友達で嬉しかったか?


お前は、幸せだったのか?





僕と寝ぼすけ男






「コウタ、コウタ、ご飯!ご飯だよ!」
少し女顔の少年、シーガル=フォード。
13のコウタより一つ年下だ。
人懐こい笑顔で、コウタがいる牢屋の前に走ってくる。
コウタは首輪で壁に繋がれているため、シーガルにあまり近づくことはできない。
「コウタ、起きてる?」
「ばーか、眠いだけだ」
「いつまで寝てれば気が済むんだよ。ご飯持ってきたんだから食べようよー」
シーガルはあまり自分のことを話さない。何故牢屋に入れるのかさえも話さない。
コウタは問い詰めなかった。自分にも話したくない事は沢山ある。それと一緒だと思ったからだ。
シーガルが持っていたのはパンと水だけだった。どう見てもシーガル自身のご飯は持っているように見えない。
「お前のは?」
「僕のはないよ」
シーガルは笑った。
「なんでだよ」
「僕食べなくてもいいもん」
意味がわからなかった。コウタは、はぁ?と聞き返す。
「僕食べなくてもいいもん」
「それはわかってます。なんで食べなくてもいいのか聞いてるんだよアホ」
シーガルは答えなかった。
ただ、笑顔を浮かべるだけ。
「ねぇ、コウタは、ここから出たい?」
「……、まぁな」
話をそらされて少し不機嫌だったが、一応返事はした。
シーガルは白い神官衣のポケットから、白い鍵を取り出した。
「!?おま、それ…、ここの鍵!?」
「そー、看守さんにちょうだいって言ったー」
「ちょうだいで貰えんの!?何者だお前!」
シーガルはカチャカチャと鍵を開けて、中に入った。
「首輪…、どうしようか?」
シーガルが尋ねてきた。
コウタは壁に繋がっている首輪を見ると、シーガルに言った。
「何か斬れるもん持ってこい。後は俺がなんとかするから」
シーガルは牢屋の端に掛かっている長剣を引きずった。
華奢な体には少し重いのかもしれない。
コウタは首輪と壁を繋ぐ鎖を見下ろしたまま、シーガルから剣を受け取った。
「…、まぁ、大丈夫そうだな」
シーガルが引きずってきた長剣を軽々と片手で弄ぶと、両手で剣を下に向けた。
切っ先の下には、錆ついた鎖。
ガキィン!!と鎖が砕け散る。壁から解放されたコウタは、長剣を持ったままシーガルを向いた。

「ありがとう。これで俺は解放されたよ」
シーガルは笑っていた。
何も言わずに、笑っていた。




龍神族の末裔が脱獄したと聞いて王都は恐怖に脅えた。
龍神族は世界中で知られる、かつて世界を創造したといわれる神の一族だ。魔神族と協力して世界を作り、今も神々はどこかで世界を見守っているという話だ。

その神の一族の末裔を捕らえたことに対し、先祖である龍の神が怒って王都を襲いに来る・・・、という噂が流れてもう2年が経つ。


コウタは軍の頂点にいたのだ。
現在のようなやる気がごっそりなくなったような表情はしていない。
良く言えば自身に満ち溢れた顔。悪く言えば…、

狂気に満ちた顔。

数々の戦争で前線に立ち、人の命を次々に奪っていく。
人殺しに、快感を感じているように。
彼が死体に向けて放つ言葉があった。
「シンデクレテアリガトウ」
笑顔だ。無邪気な少年のような、狂った大人のような。
そんな彼の隣りにいるのはシーガルだった。
だが彼は昔のような笑顔を浮かべない。
瞳には、光が映っていない。

ある戦争の時だった。現在から6年前の事だ。コウタが17の時だった。
彼の狂気の笑顔が消えたのは。
「ははは、雑魚はおとなしくすっこんでろよ、邪魔だぁ!!」
コウタが笑いながら剣を敵兵の体に滑り込ませた。
血がドロリ、と剣にこびり付く。コウタは赤い舌でそれをベロリと舐め上げる。
「次に死にてぇのはどいつだ?はははっ!」
シーガルは何も言わずに俯いていた。
笑顔を浮かべる事も無く。

コウタが笑っていた時だった。
シーガルの目には見えていた。
彼の頭を目掛けて飛ぶ銃弾が。

ご飯を食べなかったのも、自分のことを話したがらないのも、人間には見えない銃弾が見えたのも、

シーガルが人間じゃなかったからだ。

バキョ、と何かが砕ける音がした。
コウタの頬を、肌色に着色された鉄片が切り、血を流した。
それでコウタは気が付いたのだ。
シーガルは人間じゃない。
軍の秘密機関によって制作されたロボットだった。
兵士には命がある。兵士には家族がいる。だがロボットには命が無い。家族が居ない。おまけに費用も安くで済む。
機械兵士のプロトタイプだという表記が、シーガルの右肩にあった。
「しー、がる?シーガル、おい、返事しろよ、シーガル!」
コウタはシーガルの顔を見た。
ビシビシビシ、と奇妙な音を立てている。
「コ、うた。ボ。クハ、…ガガ、友…、ダち、ギギギギ、出来て。ウれシか。ったガガガガガガガ!!!」
シーガルの言葉には雑音が混じっていた。
「待ってろ、すぐに、すぐに直してやるから…、なぁ、おい、死ぬなよ!」
「ガガガガがガガが!!こ、ウガガ!!タ、。イマ。  までギガガギ!!アリガ・…」

シーガルの白く、冷たい手はだらりと下がった。
それでも。
最後は。
ボロボロの。
鉄くずが寄せ集まったような顔が半分剥き出しになった顔で。
始め出会った頃のような。
無邪気な少年のような。

優しい笑顔を浮かべて、機能は停止した。

「アリガトウって…なんだよ、なぁ、シーガル!返事しろよ、シーガル!!」

コウタは泣いた。
今まで出したことがないような大声で。
そしてコウタの顔は狂気を失った。

やる気を失ったような、ゆるい笑顔を浮かべるようになった。
戦うのは、好きじゃない。
剣を使うのは疲れる。

コウタに関わったものは死ぬ。
そういう運命の歯車が、狂うようにと信じて。


彼は、仲間のために力を振るうと決意した。
仲間のために。今隣に居る、青い髪の少年のために。

続く

後書き

長い!暗い!グロイ!
はい、三拍子揃いました霜柱です。
シーガルは良い子なキャラのポジションです。可愛いイメージも持たせたつもりでいますが、どうでしょうね。

この小説について

タイトル 僕と寝ぼすけ男
初版 2007年1月18日
改訂 2007年1月18日
小説ID 1188
閲覧数 1026
合計★ 4
霜柱 光の写真
ぬし
作家名 ★霜柱 光
作家ID 97
投稿数 45
★の数 87
活動度 5973
まったりファンタジー。
最近幽霊部員と化してましたが生きてます。

コメント (3)

★トリニティ コメントのみ 2007年1月19日 7時58分20秒
ロロ路炉炉路・・・・ロボッ・・・トトトト??(シーガル風

何とまぁ予想外デス。
狂気で満たされたコウタ。

これからどうなっていくのか?
非常に楽しみです。

ウィルウィウィル★
★冬野 燕 2007年1月20日 12時20分09秒
 「シンジテクレテアリガトウ」と言ったその真意はいかに!?

 過去の回想ということですが、衝撃的なワンシーンとしてすっごい魅力的です。
 ロボットの心というのはたびたび題材として取り上げられますが、
 戦争中は特に彼らの心境が伝わってきます。
 命のない命はやはり、当然のように生きている人間が感じ入る何かが
 あるのでしょうね。
★霜柱 光 コメントのみ 2007年1月20日 19時57分56秒
どうも、コメントありがとうございます。
>トリニティさん
毎回コメントありがとうございます、嬉しいですよ。
人間に好感が持てなかったコウタを変える為に人間ではないキャラを入れようと思ってたのですよ。シーガルは短い間の登場でしたが、記憶の片隅にでも残っればいいなぁと思ってみたり。今のやる気ナッシングなコウタとは全く違うので新キャラみたいな感じになってますけど…。うう。
>冬野 燕さん
初のコメント嬉しいです。
ロボットはありがちネタかなぁーって熟考しましたが、上にあるように人間ではないキャラを作る時に、ロボットっていうのは非常にキャラが作りやすいのですよ。
シーガルは人間じゃない故に人間と関わりたかった、だけどコウタは人間なのに自分を化け物呼ばわりされる故に人間に殺意を持っていた。なんとまぁ対照的な(笑
で、殺意を持っていた人間に友達(人間ではない)を殺された(壊された)のがコウタは許せなかった…。これ以降は次の回で詳しくしていくつもりです。

コメントありがとうございます。
名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。