僕と寝ぼすけ男 - 僕と寝ぼすけ男

うーん、お金とか持ってなさそうだねぇ。
え?見りゃわかるでしょ。だって宿屋の前うろうろしてるし。
ここは俺が助けてあげちゃおうかなー?


人を騙すのは簡単だよ。





僕と寝ぼすけ男





「…、足りないよなぁ」
サヤは自分の財布を見てがっかりした。
どう数えても一泊できるお金はない。

「働かなきゃかなぁ。いや、でも…」

「ねぇねぇ、宿屋に泊まりたいの?」
「ぅぉおおぁあ!?」
足音どころか気配さえなかった。
後ろに何時の間にか男がいたのだ。
汚れたマントとフードを被り、顔つきがよくわからない。
「あ、あの、どちら様ですか…?」
サヤが後ずさりながら男の表情を伺う。
男はフードを脱ぎ、頭を軽く振った。

「…!?こ、コウタ!?い、いや、ちょっと違う?」
男はにっこり笑った。
「コウタ…?」
サヤはじろじろ男の顔を見た。
瞳の色が違うだけで、顔は結構似ている。

コウタは金色だったが、この男は銀だ。
おまけに右目の下に泣きボクロがある。
「俺ね、シノン。シノンって言うんだ。君はサヤ君でしょ?」
やたら自分のことに詳しい。
サヤは少し不信がって逃げようと足を後ろにすこしづつ出していく。
このシノンという男に気付かれないように。

「(ただのお坊ちゃんじゃぁなさそうだねぇ)」
シノンは声に出さずにそう思い、後ろに下がっていくサヤを見た。

サヤが駆け出そうとしたその時、



思いっきり手が引かれた。
グキィ、と腕が奇妙な音を発する。
「サヤ君、どーして逃げるの?」

シノンは銀色の瞳でサヤを睨むように見下ろし、
「もしかして、俺が怖かったりして。

  でも、君は今レリーフで指名手配されてるよ?名前くらいだれでも知ってて当然じゃない?」

サヤの顔が真っ青になった。
レリーフ国内で指名手配。見つかれば即牢屋行きだ。
「でね、俺が匿ってあげよっかなー、って思ってたんだよね。でも俺が怖いから嫌かな?」


今のサヤにはお金も隠れる所もない。
サヤは一応シノンに従う事にした。

今はお金がなくては話にならないのだ。
**************************
「ねーねー、サヤ君、あれ美味しそう!食べよう!」
シノンはサヤの腕を引っ張り、イカ焼き屋へ向かう。
「あ、ちょ、待ってください!」
サヤは人ごみの中、シノンにずるずると引っ張られていく。
「おじさん、2本ちょうだい。俺とこの子の分」
イカ焼き屋の店主はシノンの手に2本のイカ焼きを渡し、空いている手でお金を受け取った。
「はい、サヤ君の分」
シノンはずっとニコニコ笑っている。
無邪気な子どもみたいだ。

「シノンさん、口が汚れてますけど」
シノンの口はイカ焼きのタレでべたべただった。
勿論、手も。
「あ、本当。ベタベター」

サヤはしょうがないなぁと思いつつ、ハンカチを出すためにズボンのポケットを漁った。

かさ、と音がする。
取り出して見ると、オレンジ色の包みのキャンディが出てきた。

前に、コウタがくれたものだった。
アイレス村が壊滅して、旅に出たすぐの頃。
コウタが笑いながら渡してくれたものだったと思う。


「……オレンジの飴?」
シノンがサヤの手にあるオレンジの包みを見た。
「は、はい。僕の友達がくれたんです」
「(友達…ねぇ)」
シノンはそう思った。
直後、シノンはぐん、と上体を反らした。
サヤには何も見えなかった。


瞬きをした後、サヤが見たもの。
シノンの頭があった所に、長い足が伸びている。
「やっぱりここに居たみてぇだな…」
足をたどっていくと、見慣れた姿があった。
黒に近いツンツンの青い髪。
そして金色の瞳。


コウタ=レジェンディアだった。
「作戦失敗…だねぇ」
なおもシノンは笑顔を崩さない。
コウタは足を下ろして、剣に手をかけた。


「こいつは関係ねぇ。こいつに手を出すな」
コウタはサヤを後ろにかばって、言った。



つづく。

後書き

うはぁ、兄弟喧嘩が起きそうだ。

この小説について

タイトル 僕と寝ぼすけ男
初版 2007年1月26日
改訂 2007年1月26日
小説ID 1232
閲覧数 1021
合計★ 3
霜柱 光の写真
ぬし
作家名 ★霜柱 光
作家ID 97
投稿数 45
★の数 87
活動度 5973
まったりファンタジー。
最近幽霊部員と化してましたが生きてます。

コメント (2)

★トリニティ 2007年1月27日 13時29分12秒
ああ・・・・コウタかっこいいよぉぉぉ。
それに、シノンさまと仰るのですか。
隠れMなトリニティにはたまらんですなぁ(怪

どうも、迷いすぎの子羊トリニティです。
兄弟喧嘩って・・・そんな次元でもない気がするよ。
笑顔を崩さないシノンは(シノンてネーミングセンスいいね!)怪しげでまた謎めき、そこが彼の強さを表しているようですね。
彼は敵になえるのか味方になるのか、どちらでもないのか。
わたしはどちらでもないほうに一票。
★霜柱 光 コメントのみ 2007年1月27日 19時50分09秒
迷える子羊と聞いてドラクエの教会の神父様を思い出す霜です、こんにちは。
隠れMですか…、前聞いた事があったようなないような。たまらんですか、ははは。
兄弟喧嘩の次元じゃない…、確かに。兄弟で殺しあうって結構ヤバイ人達ですよ、コウタとシノン。
笑顔を崩さない=余裕と考えてしまう霜です。自分よりはるかに強い(であろう)両親を殺している彼ですからね。弟が自分に勝てるわけがないっていう自信などもあったんでしょう。
味方になるのか、敵になるのかはお楽しみで。
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