僕と寝ぼすけ男 - 僕と寝ぼすけ男

あれ…、さっきまで僕は夢を見てたんだけど…
そうだ、またあの夢だ。
女の人が、男の人を支えながら僕にすがり付いて泣いている夢。
炎に包まれて、女の人の姿も消えるんだ。





あの夢は……。何なんだ?









僕と寝ぼすけ男











コウタは本日4杯目のブラックコーヒーをすすりながら、話を黙って聞いていた。

「僕は、アイレスで生まれたんじゃないんですか?」
シノンは頷き、食べ終わった最後のケーキの皿をテーブルに置いた。
黒いハンカチで口許を拭いて、
「そ。サヤ君は、どうやってアイレスに来たのかな?」
サヤは首を振った。
「覚えてない…、です。目を開けたらベッドに横になってて…、気が付いたら、アイレスにいたんです」

シノンは腕を組んで、ギィ、と上体を反らし、コウタを向いた。
「コウタはさー、どうやってアイレスに来たと思うよ?」
コーヒーのカップを置き、コウタは足を組む。
はぁ、と息を付き、眠たげな目でシノンを見て一言。
「軍の処理班が連れてきたんじゃないのか?」
そうだねぇ、とシノンは体を戻し、フォークをくるくる回した。

やがて、シノンはドアの方に目線をやり、振り向きもせずにフォークを後ろに投げた。

「あの辺りが魔術の栄えた街ガンシェル。今は死霊が住み着いた廃墟になってるけどね」

フォークは壁に張られている、煙草のヤ二で変色した地図に刺さっていた。
フォークが刺さっている所と、アイレス村はそう遠くない。

「幼いサヤ君でも、さっき話した通り、防衛魔法みたいなのを使えば何とか歩いて来れる距離でもある」
サヤが眠っている間にコウタとシノンが話していた内容は大体話している。

「でも、僕が鮮明に覚えているのは…」
「アイレスでの生活だけ……ねぇ」
コウタが溜息を付き、頭を掻いた。



コンコン、とドアのノック音が部屋に響く。
シェイドだった。
「コウタ、検査結果が出た。レポート用紙にまとめてあるから見てくれ」
「ん、ああ。わざわざ有難うな、シェイド」
シェイドは首を振り、
「いや…。だがコウタ、この街にはあまり長く滞在しないほうが良さそうだぞ」
「……、ああ、元から長居するつもりは無かったけど」
サヤとコウタが王家反逆の罪人である事は勿論、目の前で王国の将軍の首を刎ねたのもあって、街の人間はピリピリしている。

シェイドは目を伏せて部屋を後にした。

コウタはドアを閉め、サヤにレポートを渡す。
「サヤ、検査結果だってさ」
サヤはレポートの文字に目を通し、ぺらぺらと捲っていく。


内容を簡単に説明すると、

『解明不可の呪文による魔術防衛』

『サヤ=エミリア 15歳 男 
 異常なほどの魔力を有する魔術師向きのタイプ。
 前例が無い魔術防衛術を操る。
 しかし意図的に魔法を操る事が出来ない。
 そこで高密度エネルギー結晶体を介して魔道回路を作る事で意図的に魔法を発動さ せる事が可能である』



…、との事だ。
レポート用紙の間に、大玉の真珠くらいの大きさのレンズのようなものがはまった革のブレスレットのような物が挟んであった。付けろ、と言うことだろう。

「おー、綺麗だねー」
シノンが一番ブレスレットに食いついた。
「はァ…サヤ、用意が出来たらこの街を出よう。この街もちょっとヤバめだしな」
サヤは頷いて、
「うん、……シノンさんは?」
レポート用紙を荷物に突っ込み、シノンを振り返った。
シノンは笑って、
「あー、サヤ君、寂しかったりするー?」
コウタは剣を腰のベルトに通して、サヤを振り返った。
「兄貴は来ない。そうだろ」
シノンを見て、直ぐに視線を逸らした。
シノンは緩く笑ったまま、何も言わない。やがて口を開き、

「俺を殺すのは後回し?」
コウタは頷き、
「ああ。今はどうしてか殺す気になれない」
「一緒にいたら、殺す機会も増えるよねぇ」
サヤが眉を吊り上げ、「シノンさん!」と机を叩く。
「はは、冗談だよー。じゃぁ、お別れかな?」

コウタは舌打ちをして、シノンを振り返った。
「ガンシェルの廃墟に行けば、サヤもなんかわかるかもしれない」
だけど、とコウタは続けた。

「だけど俺はガンシェルの行き道知らねーんだ」

シノンはクス、と笑って、
「意地っ張りだなぁ。着いてきてって言えばいいのに」
「テメェを殺す機会を増やす為だっつの。い、行くぞサヤ!」
コウタはサヤの手を引き、部屋を出て行った。






「……父様、俺に、守る為の力を下さい」









シノンはそう呟き、部屋を出た。













続く。。

後書き

コーヒー4杯はカフェイン取り過ぎですぜコウタの旦那。
どうも、缶コーヒーを大量摂取中霜柱です。

やっと舞台が変わったぜ!

この小説について

タイトル 僕と寝ぼすけ男
初版 2007年3月5日
改訂 2007年3月5日
小説ID 1353
閲覧数 1110
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霜柱 光の写真
ぬし
作家名 ★霜柱 光
作家ID 97
投稿数 45
★の数 104
活動度 5973
まったりファンタジー。
最近幽霊部員と化してましたが生きてます。

コメント (1)

★トリニティ コメントのみ 2007年3月5日 22時23分42秒
コーヒーなら砂糖もミルクもたっぷりのリロイ派(マイナー

どうも、新たな小説を手にいれて全開に引き続き浮かれているトリニティです。

むぅ、シノンさん何かいい人になってない?
私としてはシノンファンだからいいのだけれど・・・。
最後の言葉も意味深だし。
次はどこに、そして二人の行く道もどこに行くのか全く分からないトリニティでした。
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