影響!? - サイレント & クレイジー

 ああ、犯罪とか懲罰とかそんなものを全て越えて。

 もしも何も無い世界が出来上がったとしたならば。

 果たしてわたしは生きている意味を見出せただろうか?

 

   サイレント ノイズ


 何年か前「キラ」という殺人鬼が世界を震撼させた。
 わたしはその頃しがない会社勤めのサラリーマンで家でも独りという侘しい生活を送っていた。
 ネオンが輝く街はどこか中身の詰まっていない空き缶のようで、どこかわたしの心と似ていると自嘲気味に笑ったりもした。

 キラ

 その言葉についてのわたしの理解度は全くと言っていいほど無かったが、メディアでの騒がれようの中でその存在の異様さを知る。

 マルデ 神 ダ

 いや。
 その言葉はどこかしっくりこない。
 キラは自らを“神”と称しているならば「まるで」とはおかしいではないか。
 
 マサニ 神 ダ

 そう。
 その言葉こそあれにふさわしいといえるのでは無いか?
 キラは自らを“神”と称しているから「まさに」とは的を得た言葉といえるだろう。

 電光掲示板の映像の中で苦しむ男を見ているが、わたしの中に何かの波紋は生まれない。
 それどころか「当然の報い」とさえ思える。
 
 どうしてかは分かっている。
 だが、どうして平然としていられる自分がいるのかは、分からなかった。

「犯罪の無い世界」

 犯罪の無い世界など、ありはしない。
 ありえない。
 考えたくも無い。
 犯罪こそが世界だというのに。
 世界から世界を取れば何が残るか?
 子どもでも分かる。

 何も、残らない。

 ならばキラの理論とわたしの考えは反するという歪が生じる。
 犯罪の無い世界を謳うキラと、犯罪こそが世界というわたしの心。
 犯罪こそが悪とする鬼と、犯罪こそが善とする抜け殻。

 だがそこには相容れぬようでいて実は共通する部分がある。
 エゴそして、自己の形成。
 自身が望むものの世界への羨望。
 誰にでもある感情は何かに突き動かされる事で生まれるが、それが顕著であるほど心は渇いていく。
 これらの衝動を行動に移すか否かの隙間のみがキラとわたしとの共通しない箇所だ。
 それ以外の全てはあの神とわたしの差など無いに等しいと思える。

 犯罪の無い世界と謳いながら、自ら犯罪を犯すキラの犯罪観念はまさにわたしと同じだ。
 心のうちで何かを欲す感情を抑えきれないがために犯す。
 どこか喉の渇きにも似た気持ちの奔流はいつまでも燻り続けて発散させる場所がない。
 故に、それが爆発したときに、犯す。
 
 キラは幼子のようだ。
 そう、わたしと同じ。
 だから、社会で揉まれるしか出来ないわたしの心を反映しているようで更に煽られるのかもしれない。

 わたしの、犯罪への渇望を。





 あたしには分からない。
  
 あのキラという者の心が。

 あのキラという者の行く先が。



    クレイジー ノイズ



 L、彼はあたしの憧れだ。
 正義なんて語らず、怪しくただただ理路整然と述べる理論は全て的を得ている。
 彼、なんて言ったけど男なのか女なのか分からない。
 でも願望も含めて男。
 そしてキラも多分、男。
 だってそうでしょ?
 あんなバカな事考えるほどヒマがあるのは決まって頭のいい男ばかりなの。
 Lはヒマじゃないと思うけどきっとバカだわ。
 
 犯罪者の敵

 そうね。
 彼はそうは思ってないでしょうけど。
 たくさんの事件を、たくさんの名前で解決してきた彼ならばあたしの中で燃えているこの感情を説明できそうな気がする。
 
 救世主

 そうかもしれない。
 得体の知れないキラなんて奴から世界を守る救世主。
 本人達は別にそんなこと考えてないんだろうけど。
 言ってみれば世界を賭ける対決。
 世界を賭けて得るのは双方結局何も無いかもしれないけど、人間味の失われたその闘いに、あたしは何故か。

 何故かどこまでも人間らしいと思えた。

 言葉遊びの中の人間の闇。
 腹の探りあいの中の人間の脳。
 読み合いの中の人間の動き。

 全てが人間らしい。

 あの二人はきっと、一生心をぶつけることは無いけれど。
 でもぎりぎりの境界の上で最も人間らしいことをしている。

 あたしには難しいことなんて分からないけど、それだけは分かった。
 
 今になってどちらもいない世界は、真実なんて当然、教えてはくれないのだけれど。





後書き

影響・・・。
ひでどんさんのを読んで、すぐに書きました。
ああ、何かこれだ・・・! 的な。
独白調だったので何かと分かりにくかったかもしれませんが、上の「サイレント ノイズ」がキラ寄り。
下の「クレイジー ノイズ」がL寄りの文です。
何か私の性格を問われるような内容ですが、こんなのもアリかなと。
でもりんさんとひでどんさんの作品に紛れて霞んでしまいそうっ。

この小説について

タイトル サイレント & クレイジー
初版 2007年3月5日
改訂 2007年3月5日
小説ID 1354
閲覧数 956
合計★ 12
トリニティの写真
作家名 ★トリニティ
作家ID 95
投稿数 123
★の数 501
活動度 25049
文と音楽と絵と食事を大事にする南部人

コメント (4)

★ひでどん 2007年3月5日 22時19分37秒
何の捻りもなく、(夜なのに)おはよぅございます、ひでどんです。
実は、僕、難しい話って、ダメなんですよ。
なのに、難しい話を書きたがるんですよ。
無い知恵を絞って絞って、何か、オレンジジュースみたいなのできましたよ。
うへぇ、飲めないですね、気持ち悪くて。

キラ派、L派、どちらの人の言葉にも、なるほどなぁ、と思うところがありました。
世界は犯罪があるから世界なんだ、という「わたし」。
犯罪が無いという事は、そこに人はいないという事なのかもしれません。
「わたし」の言う、何も、残らない。
いや、残るには残るけど、みんなが何かを抑えて生きなければならなくなる。
それはもう、機械のようなものじゃないか。
だから、キラは、やはり独裁の欲が少なからずあったという事なのかもしれませんね。

キラとLの戦いって、心理戦で、それは格闘する事に比べると、誰でもできる戦いなのだけど、人間離れしているんですよね、頭脳が。
それを「人間らしい」というのは面白いです。
「言葉遊びの中の人間の闇」という言葉が、とても印象的でした。

僕の二次創作なんかは、何かホラー寄りになっちゃってるし、こちらの作品の方が考えさせられるモノだと思います。
キラ派の人物を書いたけど、僕はL派なんです。
L、ではなく竜崎と呼ぶのがマニアック魂です。(ぇ)
★ルイミ 2007年3月7日 18時21分49秒
こんにちはルイミです
サイレント ノイズとクレイジー ノイズが好きになりそうです。
デスノは、大好きなので、デスノと聞いてマッハ5で飛び込みました。
ちなみに私はメロ派です
私もトリニティさんと同じく影響されて今デスノ小説を書いています。
最後に、私もひでどんさんと同じくLではなく竜崎と呼ぶほうが好きです。
★トリニティ コメントのみ 2007年3月7日 20時58分49秒
お二人とも、コメントありがとうございました。

>>ひでどん様
微妙な世界観の小さな特徴を拾い上げてくださってありがとうです。
「わたし」はキラがデスノートを使ったことは当然知りません。
だから、どうやって殺しているかなんて彼にはわかっていません。
でも犯罪を犯していて、その起因が自分と同じ心理だということはわかっていたと思うんです。
何も残らない世界で生きていたっておもしろみも何ともないのに、犯罪をなくそうとするキラや「わたし」の思いは全くの矛盾ですね。
キラはそんな気はなかったかもしれませんが。

心理戦は見てておもしろいです。
うあー、うまいっ! と、こんなかんじで。
総理? かなんかと話している時のライト君の聡明さは目を見張るものがありました。

私もどっちかっていうとL派ですね。
かわいいです。変人なところが特に。
西尾維新さんの「アナザー ノート」でのLの最後の方の出演はとてもチャーミングでかわいかったですね。


>>ルイミ様
好きになって頂けてありがとうです〜ww
メロさんですか。Lにちょっと似てるけど全然Lに似てない(何言ってんだ私・・・
ところがなんとなく想いが深いものでした。
竜崎、と呼ばせたかったのですが世間ではLで通っているので矛盾させたくなくてこうしました。
私も竜崎と呼びたいっ。
★りん 2007年3月18日 0時50分19秒
リクエストいただきましたのでカキコいたします☆

まず始めに言いますと。
りんはこの文章好きです。
対立しあっているようでそうでもないような、
それでいて葛藤もあって賛同もあって…。
人間の心理を読み解いている感じが非常に良いです。
「何か私の性格を問われるような内容ですが」とのことですが、
作者の性格が読者に問われるくらいでないと刺激がなくてつまらないとりんは思うのですが、いかがでしょう?
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