ビビンバ文学 - ビビンバ文学素敵短編集

『日曜』

五月。日曜の昼下がり。
平和そのものといったぽかぽか陽気で、今も戦火や天災で犠牲になっている人がいるとは到底思えない。
列車を待つ人も、通勤ラッシュ時の苛立ちや眠気の混じった奇妙な熱気とは無縁だ。
ホームの桟の下の日陰で快速列車を待っていた私は、空から降り注ぐ突然の宇宙ビームで焼け死んだ。

END


――――


『自由』

旅人は海へとやってきた。
その日は天気も良く、波も穏やかだった。
海猫のミャア、ミャア、という鳴き声、打ち寄せる波の音、それを運ぶ海風。
全てが気持ちいい。
見ると、前方には不安定な岩礁でバランスを取りながら釣り糸を垂れている釣り人がいた。
 旅人「ここは何が釣れるんですかー?」
釣り人「何も釣れませんよハッハッハ」

旅人は自由を知った。

END


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『会議』

光が見えた。
瞬間、会議に参加していた全員がゴミ袋を頭から被った。
「あちー!」
窓際にいた一人が声をあげた。
一人のゴミ袋だけが熱々だったのだ。
他の者はそれに注視する。半透明ゴミ袋なのでかろうじて暴れているシルエットは確認できた。
――当たりは、あいつか。
丸めた新聞紙を左手に構え、熱さでのたうち回っている当選者へと一斉に殺到する。
ぼこぼこと容赦なく叩かれ、当選者は熱さと痛さでパニックに陥っていた。意外と新聞紙は痛い。
30分程の間、休む間もなく叩かれ、途中で袋を熱し直されたりした結果、当選者は病院へ搬送された。
一時は騒然となった室内もやがて落ち着き、合図の光を放ったホワイトボードへ初期がプロセスと結果を書く。
各々がメモを取る。議長は脱落した一人の分もあわせてメモしていた。コピーは取らない主義だった。
誰もが思う。その日の会議は後味の悪いものとなってしまった。新聞紙は強すぎた。
しかし彼らは身をもって知ること、それこそが真実へ近づく第一歩だと信じている。
閉会後、誰もいなくなった会議室のホワイトボードには大きくこう記されていた。

『議題:袋だたき』

END


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『異文化』

どかーん!
宇宙人襲来。3人。
「ワレワレは宇宙人ダス」←若干訛ってる
マルソン=イボイボッチュは突然の出来事に苦笑したが、宇宙人はそんな彼にたいしてこう言った。
「キニョスゥマルルー」
意味はわからなかったが彼はとてもポジティブだったので誉められているのだと解釈した。
ならば勿論、お礼を言わなければならない。
「サンキューリトルマッチ」
お礼を言い終えた彼はもはや異文化コミュニケーションマスターだった。
「地球に何のようだね」
「メフスヤン」
「なるほど」
彼はその後、軽く雑談をして彼らと別れた。

END


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『アルメナ=クライチェッツから』

アルメナ=クライチェッツは待っている。
今は待つことしかできない。
だから、待つ。

遠すぎず、近すぎず、『主の側』という位置に控えている若き執事に言う。
「私がここから消えたら、それで何かが変わるのかしら」
「は、いえ、お嬢様が消えられたら、その、困ります。私が…」
「冗談よ」
この子はまだ若い。もう少しここに慣れたら『興』を教えなければ。
実際は同い年なのだが、アルメナはそう思っていた。

夜空に浮かぶ星々を見つめて思う。
「ハワイ旅行当たれー」

END


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『日曜α』

五月。日曜の昼下がり。
平和そのものといったぽかぽか陽気で、今も戦火や天災で犠牲になっている人がいるとは到底思えない。
列車を待つ人も、通勤ラッシュ時の苛立ちや眠気の混じった奇妙な熱気とは無縁だ。
ホームの桟の下の日陰で快速列車を待っていた私は、携帯型プレーヤーでいつもの曲を聴きながら空から降り注ぐ陽光を、遠く続く線路を何とはなしに見つめていた。

――列車が到着します。白線の内側でお待ち下さい

ずりおちそうになっていた肩掛け鞄をかけ直す。
たいした荷物も入っていないそれは古くなってぼろぼろだったが、今でも気に入っていて他の物に変える気は無かった。
「アインシュタインがさー」
「なにそれチョーウケルー」
こちらへと歩いてくる二人組は女子高生だろうか。私服ではあったが、しゃべり方がそれらしい。
アインシュタインというのはおそらく誰かのあだ名だろう。悪いが、どう頑張っても相対性理論や原爆の話をしている風には聞こえない。
「相対性ヤバイってー」
相対性理論だった。
「マジすいませんでした」
女子高生の後ろ姿に謝った。
列車が到着すると、シュー、という圧縮空気が放出されるような音がしてドアが開いた。あの音は実際は何の音なのだろう。圧縮空気で合っているのだろうか。
まばらに降り、まばらに乗っていく人々に混じり、私は鞄から紙パックの豆乳を取り出して車両にたっぷりかけた。
「コラ!」←車掌

END


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特別読み切り 〜出張市長〜

「市長!着きましたよ。早く降りて下さい」
「どこだここ」
「どこだと思います?」
「別にどこでもいい」
「相変わらず普通の人の感覚だとあり得ない返答ですよね」
「そうか?」
「さて、市長にはここで土砂災害を食い止めていただきます」
「なるほど。よし頑張る」
どしゃー。←土砂                      完

後書き

素晴らしすぎて涙が出る小説を書きたいビビンバ吉田です。
ビビンバ文学模索中。迷走中。Uターンラッシュ中。

弓射りさんに批評して頂いた『心の乱れとは』のリベンジの前に短編小説を掲載させて頂きました。
こんなふざけた文章ではありますが、「ここで終わるの?!」と思わせる所でいきなりぶっつり終わらせるのが吉と出るか凶と出るか読めない新機軸超短編です。なんかもう単なる落書きにしか見えないような気もする。

細かいコメントが面倒な方は匿名・点数評価だけでもかまいませんが、「吉」か「凶」かもついでに書いてくれると有り難く。

あと、

「どこだここ」
「地獄ですよ」
カッ。ドサリ。

というシナリオを想定した人は罰として嫌いな物を食べなさい。ピーマンとか。

この小説について

タイトル ビビンバ文学素敵短編集
初版 2007年5月20日
改訂 2007年6月17日
小説ID 1518
閲覧数 1583
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ビビンバ吉田の写真
作家名 ★ビビンバ吉田
作家ID 3
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