僕と寝ぼすけ男 - 僕と寝ぼすけ男

うう、ん。
ここは、どこ?

おとうさんは?おかあさんは?
どこ、どこにいるの?


ぼくをおいて、どこにいっちゃったの?









僕と寝ぼすけ男










金糸をなびかせて、ジュリアは微笑んだ。
「久しぶりね、サヤ」
サヤは彼女を凝視した。
確かに彼女は村と一緒に亡くなった筈だ。
「どうして、ここに…?」
「どうして? ならば、どうして貴方は私を置いていってしまったの?」
ざぁ、と風が吹いた。
ジュリアはそのまま話を続ける。
「幼い貴方を助けたのも私でしょう? 貴方のご飯を用意してたのも私でしょう? 私は貴方の恩人でしょう?」




************************

目を開けると、部屋の中にいた。
「ううん………」
「あ、起きた! おかあさん、起きたよぉ!」
なんだか騒がしい。サヤは傍らにいる少女の姿を捉えた。
「あ、あの、ちょっと」
サヤは少女を呼び止めようとしたが、少女は気付かずに部屋を飛び出していった。

すぐに、少女と同じ、ブロンドの髪を一括りにした女性が部屋に入ってきた。
母親なのだろうか。
「まぁまぁ。無事でよかったわぁ。君、何てお名前?」
女性が話し掛けてくる。
サヤは、びっくりして早口で答えた。
「さ、サヤです」
「ん? ごめんね、もうちょっとゆっくり言ってくれるかな?」
「サヤです…、サヤ=エミリアです」
シーツを体に寄せて、体を縮めた。
すると女性が、サヤの水色の髪を撫でた。

「そっか、サヤくんか。私はリディア。この子はジュリアよ。よろしくね」
リディアのエプロンにくっついているジュリアを前に出して、笑った。
サヤは小さく、「はい」と言った。
「ねぇママ、これからサヤくんと遊びに行ってもいい?」
「ダメよ。サヤ君は病み上がりなんだから。今日はサヤ君も休みたいでしょうし。それと、サヤ君はこの部屋自由に使っていいからね」






「サヤ、はやく!」
「あ、待ってよぉジュリアちゃん」
ジュリアがぐいぐいサヤの服を引っ張る。
「今日は近くの森に行こう! ほらぁ、リッツが待ってるよ」
リッツ=ランディス。ジュリアの幼馴染で、サヤもつい最近友達になった。
口は悪いが、子供たちの中ではリーダー的な存在だった。

「おっせーぞジュリア、サヤ!」
「ごめんごめん! ほらサヤ、私に隠れてないで。リッツとはもう友達でしょ?」
サヤはジュリアに隠れて、リッツを見た。
「おい泣き虫サヤ!さっさとこいよー!今日は近くの森で探検ごっこだぞ!」


三人はとても仲が良かった。
遊ぶのも一緒で、時には夜中に3人で近くの森にある山小屋で一晩中星を見ていた事もあった。

その時サヤは6歳だった。




サヤは十歳で狩りをし始めた。
リディアにいつまでも迷惑はかけられないと、少しづつ貯めていたお金で剣を買って近くの森に出かけていた。

「サヤ、私も行くよ!」
「ダメだよ、森は危ないから、女の子は入っちゃだめ」
「それはサヤが言えることじゃないわ!! 森にはママもいないのよ」
サヤは頬を膨らませて、ジュリアを見た。
サヤの背中には華奢な体にはそぐわない剣が背負われている。
彼は柄を握って一気に引き抜いた。
「僕は強くなりたいんだ! この村を守れるくらいに!」
ぎらぎらと銀色の刃が光る。
「それで、僕は旅に出るんだ。それで、軍に入って王様の役に立ちたいんだよぉ」
「……言っても聞かないんだから」
ジュリアは溜息をついて、走るサヤを見送った。

「遅いぞサヤー!」
「こらリッツ。すまないなサヤ」
リッツと彼の父親、バートだ。
元々ランディス家は猟師の家系で、サヤは暇を見つけてはリッツと一緒にバートに剣を教わっていた。
「サヤ、森に行くからには準備が必要だ。準備はできてるか?」
サヤは頷くと、ズボンのベルトに固定したリディアお手製の皮袋を出した。
「はい。えっと、薬草と…、水と…」
「ほぉ、初心者にしては上出来だな。お前も見習えよ、リッツ」
サヤは皮袋に薬草・水・毒抜き・スペアナイフを入れていた。
皮袋にそれらをしまうと、サヤはリッツを見て笑った。
「お前、準備だけはいいみたいだな」
「リッツらしくないなぁ。いつもは突っ掛かってくるのにー」
「うるせぇ、早く行こうぜ父さんっ」
リッツはついとそっぽを向いて、バートの手を引いた。




「サヤ! そっち行ったぞ、早く仕留めろ!」
「任せてよ! たぁーっ!」
サヤは走るイノシシに剣を振りかぶって叩き付けた。
ガン!! と鈍い音が響く。
打ち所が良かったようで、イノシシはふらふらと走ると木にぶつかって気絶した。
「やったぁ、僕、イノシシ仕留めたよー!」
「バカ、あれは俺がお前の方にイノシシをやったから…」
「なんだよー! 僕が仕留めたんだぞ!」
「いーや、俺だ!! 絶対に俺が仕留めたんだ!」
ギリギリギリと睨みあう両者を、バートが掴みあげた。
「2人が一緒に仕留めたって事でいいんじゃないか?」
「むむぅ」
リッツがくぐもった声を出した。同時に2人は地面に下ろされた。
バートはロープでイノシシの足を縛り、肩に引っ掛けた。
「次は絶対に俺が仕留めてみせるぜ」
「ふん、ぜーったいに僕が仕留めるもん」






狩りをするようになって早くも4年。
サヤは14歳になり、剣の腕前も上達した。その腕前を認められ、村の自衛団に入り一軒家を貰った。
今日は珍しくリッツもサヤの家に来ていて(ジュリアはご飯を届ける度に訪れる)、サヤが作っておいたイノシシの干し肉を食べていた。
「珍しいね。どうしたんだよ、僕の家に来るなんて」
サヤは少し笑いながら羽を毟った野鳥をグリルで焼いていた。
リッツも香ばしい匂いに感嘆の溜息をついた。
「サヤぁ、それってお前の苦手料理だったよな」
「練習したんだよ。大人数用の料理なんだけど、リッツはたくさん食べるしさ」
野鳥の内臓の代わりにたっぷり野菜と炊いた米を詰めて焼いた料理だ。
「しっかし、泣き虫サヤもここまで出世するとはなぁ。村の自衛団なんて、そうそう入れるもんじゃねぇだろ?」
「そうみたいだね。自衛団とかは、リッツみたいな奴の方が合ってると思うのになぁ」
「バカ言うな。俺は無駄な労働は避けたいんだ」
リッツはサヤが切り分けた肉を頬張りながら言った。
肉を飲み込み、リッツがフォークを置いた。
「サヤ…、俺、旅に出るんだ」
「………え?!」
サヤは慌ててリッツを振り向いた。
リッツは真っ直ぐサヤを見ている。
「…え、えへへ、リッツ、いつそんなに冗談上手くなったのさ」
リッツは何も言わなかった。
サヤの手が、次第に震えてきた。
「2年前。親父が死んだの、サヤも知ってるだろ? 森で、ズタズタに引き裂かれて死んだって」
サヤは返事をしなかった。
リッツの父親、バートはサヤが12歳の時に死んだのだ。森に猟をしに出かけ、そのまま戻ってこなかった。
その日、バートはリッツを連れていった。猟をしているうちに、森の奥まで行ってしまったのだ。辺りは日が沈み、不気味に鳥が鳴いていた。

そんな時だった。
2人の前に、黒い人影が現れたのだ。
黒髪はつんつんに尖らせており、瞳は珍しい金色。右手に持っている剣は血を吸ったかのように赤かった。
一瞬でバートは絶命した。
赤い剣に血を擦りつけるように、何度も引き裂かれて。
リッツは無我夢中で逃げ、助かったのだ。




続く

後書き

久しぶりです。
いや、死んだんじゃないかと思ってた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
読者の方々にご迷惑をおかけしてしまいました、すいません。

この小説について

タイトル 僕と寝ぼすけ男
初版 2007年5月26日
改訂 2007年5月26日
小説ID 1529
閲覧数 1157
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霜柱 光の写真
ぬし
作家名 ★霜柱 光
作家ID 97
投稿数 45
★の数 104
活動度 5973
まったりファンタジー。
最近幽霊部員と化してましたが生きてます。

コメント (5)

★冬野 燕 コメントのみ 2007年5月28日 17時09分34秒
 サヤの子ども時代。
 ……萌え(寝言
 郵便物の送り忘れの激しいツバメです。

 お久しぶりですー、約一ヶ月ぶりということでwww
 気がつけば「寝ぼすけ男」シリーズも30を突破。
 すげーよ霜柱光さん。その持続力はどこから出てくるんだ。それに比べて僕はorz

 ちなみに自分、以前父親に「起きてるかー」と聞いたら母親から「親父死んでるー」と返ってきました。
 ……勝手に殺すな、母よ(滝汗
 ちまたで休むことを死んでる、と返答する人が増えて死に関する感覚が薄れているのを感じます。

 ……え? いや、けして光さんのことをけなしたわけではありませんよ?
 あ、ちょっと、痛い! 痛いから猫パンチはやめt
★霜柱 光 コメントのみ 2007年5月28日 19時01分28秒
どもども、コメントありがとうございます。。
萌え…、ですか。もともとサヤは萌えキャr(嘘
げふんげふん。気付けば30突破してましたね(遠い目
気合で乗り切ってる感の尽きない小説ですけど。
冬野 燕さんもがんばってるじゃないですかww進歩のない私に比べると月とナマケモノです(解りにくい例えするな

いますねぇ。私も学校で机に突っ伏してる時に「死んでるー」とか言われますが。
死に関する感覚、ですか。確かにこのような事だけではなく、社会的に見てもそうかもしれませんね。簡単に命を捨てたり、自殺を図ったり。
このような問題をどう解消していくかが国の腕の見せ所ですね。
話が脱線しすぎましたがw
★りん コメントのみ 2007年5月31日 22時37分19秒
サヤが好きです。
…あれ、それだけ?(^^;)
★東城 春菜 コメントのみ 2007年6月1日 21時36分15秒
りんさん、私もです!
はい、それだけですね(^_^;)
★霜柱 光 コメントのみ 2007年6月2日 20時04分52秒
サヤ君モテモテだw
お2人とも、コメント有難う御座います。
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