僕と寝ぼすけ男 - 僕と寝ぼすけ男

私は貴方を愛していた。
なのに、何故? 何故貴方は振り向かなかったの?
振り返れば、すぐそこに私はいたのに。
明るく微笑んで、立っていたのに。

貴方は何故、過去を振り返ってくれないの?











僕と寝ぼすけ男












「リッツ…、それって」
「ああ。俺は父さんの仇を討ちに行く」

リッツの目は真剣だった。
彼の髪の色と同じ、黒の瞳がサヤを見つめた。
サヤはリッツから目をそらした。

「い、嫌だよ」
俯き加減に、サヤが言った。
リッツは「ん?」と首を傾げる。
「リッツ、村からいなくなるんだろ…? そ、そんなの嫌だよ。一緒に、狩りできなくなるじゃんか」

リッツは椅子の背もたれに背中をつけた。キィ、と椅子がきしむ。
「サヤ、お前もいつか判るよ。大切な人を失った時…、お前なら必ず俺と同じ道を選ぶ。それに…」

リッツが笑ってサヤの青の髪をぐしゃぐしゃと掻き回した。
「これが永遠のサヨナラって事じゃねぇ。お前の夢がかなったらさ、絶対にどこかで会えるから。その時は、また一緒に…」


その日の夜。リッツはアイレスを出た。
黒髪に、金色の瞳を持つ赤剣の悪魔を追うために。








16歳のある日。


少年は空を見ていた。
いつもと変わらない日常。少年は飽き飽きしていた。

「はぁっ! やぁッ!」
サーベルが空を斬り、ヒュ、ヒュ、と音を立てる。

「ハァ、はぁ……! ダメだ、こんなんじゃ…」
「サヤ、向上心は私も見習うべきだけど、休憩も必要よ」
ジュリアが汲んだ水を水筒に入れて持ってきてくれた。
サヤはそれを受け取り、水を飲む。
「もうすぐ剣術大会だからね…。こんなんじゃ、負けちゃうよ」
「はぁ、リッツが旅に出てからというもの、貴方はいっつも剣のことばかり。少しは身の回りの事も気にしてみたら?」

ジュリアは頬を膨らませ、大股で歩いていった。
「……。むぅ。僕みたいなのでも普通に生活してるもん」
ジュリアが言ったのはそういう意味ではないのだが。
サヤは水筒を置いて剣を振った。




剣術大会当日。
サヤは決勝戦まで上り詰め、剣を構えて相手を睨んでいた。
相手は村一番の力持ちで、片手でサヤの身長の倍以上もある大剣を振り回している。
「ガキィ、前の試合で俺様に勝ったからって油断してると痛い目見るぜ」
「僕は油断なんてしない。これまでのどの相手にも、全力で挑んできた」

ゴングが鳴る。
サヤは剣を腰の位置に持っていき、地面に水平になるよう構えた。
「おらぁ、動かねぇとその細っこい体ミンチにしちまうぞ!」
「甘いッ!」
サーベルを鞘に戻し、相手の巨躯の間に潜り込んだ。
「[月影(ゲツエイ)]!」

サヤは刃を抜かずに相手の顎を打ち上げた。
うめき声と共に相手は仰け反り、サヤを睨んだ。
「ぎ、ザマ…!!」
踏みとどまり、大剣をがむしゃらに振るう。
しかし、刀身が大きいだけリーチはあるがスピードが出ない!
サヤは剣筋を避けながら、胴体ががら空きになった所を狙っていた。

「(ここだ!)」

大股で踏み込み、相手の巨躯をたった一本の剣でかち上げ、そのまま蹴り飛ばす。

吹っ飛ばされた巨躯があっさりと戦場のラインを越えた。
「はぁ、はぁ……、やった……」
カラン、とサーベルが手から滑り落ちる。
観客からの拍手のなか、サヤの元にジュリアが駆け寄ってきた。
「サヤっ!」

ふわ、と頭にタオルがかかる。
「もう、ひやひやしたんだからっ…。怪我でもしたら私っ…」
「えへへ、ごめんごめん」

途端、拍手が止み、口笛が鳴った。

ヒューヒュー、と二人の会話を茶化す。
サヤは顔を真っ赤にして、さっさと会場を出て行ってしまった。




***************


「そうだね」
青髪が風に揺れた。

「思えば僕はずっとジュリアに頼りっきりだった。あの時、ジュリアが僕を見つけてくれなかったら僕は生きていないだろうね」

でも、とサヤは続けた。
「僕は、村が滅びてからコウタ達と一緒に世界の一部を見てきた…。村に閉じこもってばっかりじゃ判らなかった真実が見えてきたんだ」

「お父さんのこと、お母さんの事…。僕はもっと自分のことを知りたいんだ! だから、今の僕はジュリアに頼りっきりの僕じゃないんだ!」




「……………貴方はいつもそう。貴方は私の気持ちなんてわかってないの。貴方は私だけを見ていれば良い…。貴方が生きる上で、私以外に必要な人間なんていないのだから」
ジュリアはサヤに向かって微笑んだ。
サヤの背中に悪寒が走る。信じられないほどの、独占欲。
そんな悪寒を吹っ飛ばすような、やる気の欠如したような声が響く。
「あーぁ。聞いてりゃ訳わかんねぇ事グチャグチャ言いやがって」

「サヤにあんた以外の人間は必要ねぇって? だったらお前は何もわかってねぇ」






「ぶっちゃけ、お前なんかより俺の方がサヤのことわかってると思うぜ」








続く

後書き

はい、霜です。
まぁ、ジュリアちゃん嫉妬深いことでw

この小説について

タイトル 僕と寝ぼすけ男
初版 2007年5月28日
改訂 2007年5月28日
小説ID 1531
閲覧数 988
合計★ 4
霜柱 光の写真
ぬし
作家名 ★霜柱 光
作家ID 97
投稿数 45
★の数 87
活動度 5973
まったりファンタジー。
最近幽霊部員と化してましたが生きてます。

コメント (5)

★東城 春菜 2007年5月29日 11時20分20秒
すごいですね。いつも思います
同じファンタジーを書いているのに、どうしてこう違うのか(@_@)
     
サヤ好きです♪シノンさんも同じくらい好きですが、今回出ていませんね。残念(..)

次回が楽しみです!ジュリアちゃんとコウタの戦いに発展しそう。(何気にわくわく
では、楽しみにしております!
★霜柱 光 コメントのみ 2007年5月29日 19時51分36秒
どうも、コメント有難う御座います。
シノンはジュリアの事知らないので出しておりませぬ。
それとコウタのカッコイイ場面が最近無かったので。久しぶりにコウタも聖剣抜きますよー。

霜は自分自身でも呆れるほどの法則使い(ルールジャンキー)なので今回は少し「あれ?これって…」て思うような所を一つ加えてます。
ヒントは「赤剣」ですよ。。
★東城 春菜 コメントのみ 2007年6月1日 21時31分17秒
「赤剣」というヒントをもらいましたが、わ、分かりません!!
私は元々謎解きというか、考える事が嫌いなので・・・。
というか、私はアh(分かるでしょ?)ですから・・・。
すみません。ぺこぺこ・・・。
★霜柱 光 コメントのみ 2007年6月2日 20時00分18秒
このレス自体見られてるか不安ですが。

赤剣。黒髪。金の瞳。
これってサヤの周りに居る誰かに酷似してるんですよ。
ここまで言ったら解っちゃう人増える!
このお話を最初っから読んでる人はわかった筈です。
★東城 春菜 コメントのみ 2007年6月2日 20時41分58秒
す、すみません!!
私がアhなばっかりにぃ!!
もっかいちゃんと読みます!
すみません、すみません、すみません・・・エンドレス
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