僕と寝ぼすけ男 - 僕と寝ぼすけ男

くそ。
こいつの事をすっかり忘れていた。
戦闘力は未知数。後ろの男を合わせると…。

死ぬか、それとも。




皆殺しか。








僕と寝ぼすけ男









「なんですって? あなたは、サヤの何を」
コウタはジュリアの言葉を遮って言った。
「じゃあ聞くがな。お前はサヤの何を知ってる?」

バリボリと頭を掻いて、欠伸をする。
「俺はこいつの普段の生活なんざ知らねぇよ。だけどなぁ、こいつの苦しみとか、そういうのはあんたよりもわかってるつもりだ」

ジュリアは唇を噛んで、横にいるサヤを向いた。
微笑んで、問い掛ける。
「サヤ、アイレスに戻りましょう? 村だって、建て直せばきっと…」
「過去は戻らない」

ちりん、と剣の柄についた金属が揺れる。
「一度壊れた物は、もう戻らない。同じ物はたくさんあっても、僕たちが望んだ物は手に入らない」

聖剣エミリアの柄を撫でて、サヤが言った。
「なん、で。サヤ、貴方は何度も望んだ筈よ! 元の日常に戻りたいって!」
「サヤ君をあんまりたぶらかさないでもらえるかな? 『死体使い(ネクロマンサー)』さん♪」

シノンがニッコリ笑ってサヤの肩に手を回した。
切れ長の銀色の瞳がジュリアを捉える。
「その人形と杖。儀式に必要な道具だよね? あは、図星だった?」
ジュリアは目を見開いて固まっていた。
シノンは更に続け、
「最近君みたいな術を使う人も見なくなったなぁ。どこかに君の術を必要としてくれる人がいたの?」


ああ、そっか、とシノンは続けた。

「『死体使い』なんて術式を必要とする物好きなんて、イリカ=フェンネルくらいしかいないよねぇ」
ジュリアは大杖を前に構えて、シノンを睨んだ。

「何ですか、貴方。貴方は、私のことをどこまで…」
「全然知らないけど?」
ふにふに、とサヤのほっぺたをつつきながら言い放った。
ジュリアの大杖を構える手が震え出した。
脂っこい汗がじんわりとにじみ、金髪が肌に張り付いて気持ち悪い。
「ィ…あ、【未練がある者、恨みがある者。今一時お前達に媒体を与えよう。我との契約のもと、我に仇なす敵を食いちぎれ】!!」

ジュリアは詠唱をして、大杖を横一線に薙いだ。
慌てている。
サヤにはそれがわかった。シノンの手が離れ、やっと解放されたサヤは、腰の聖剣に手をかけた。

「うわコウタぁ、人骨が動いてる。きもちわるー」
シノンは長剣を抜いて地中から這い出てくる人骨を眺めて言った。
コウタはつまらなさそうに剣を抜いて、自分を囲む人骨を見回した。

「なるほど。一人で10000の兵力を操る、か。イリカが欲しがるわけだ」
コウタが手の中でクルクル剣の柄を回した。赤く輝く剣を構えて、
「兄貴。制限時間は20秒。人数は5000づつな」
「あは。10秒で十分だけどね」

ジュリアの表情が固まる。
10000の人骨に生身の人間が適うはずが無い。


でも。

あいつらが立っていたら?
どうする。
どうすればいい。

どうすれば

「4998。   4999。            5000」

ボキュ、と骨が砕かれる音がした。
キシキシキシキシキシキシキシキシキシキシキシキシキシ!!! と骨が軋む音がする。

まだ骨は動いている。
ジュリアは再生呪文を唱える為に大杖を構えた。

その時点でジュリアの勝算はなくなった。
ジュリアの判断は間違っていたのだ。
ジュリアが勝つ方法。
それは、体制を整えなおす為に逃走する事だ。

だが、彼女はそれをしなかった。




彼女は、自分の身が安全、かつ一番単純な方法で勝とうとした。
自分の術式(カード)を見せた状態で戦闘(ポーカー)を終わらせようとしたのだ。



「【其の光は邪悪を滅ぼす槍と化し、其の光は聖者を救う標となる】」


少年の手が宙を踊る。


その手は少女に向けられたものではなかった。
だが、少女が少年の声に気付いたのは、少年が術名を叫んだ時だった。



少女の最後の誤算。


それは。









少年が「戦力外」ではなかったことだ。





「【プリズムランス】!」











続く

後書き

ぐーだーぐーだ…どうしましょう。
とりあえずサヤが自力で魔法を使いました。はい。

この小説について

タイトル 僕と寝ぼすけ男
初版 2007年5月29日
改訂 2007年5月29日
小説ID 1535
閲覧数 863
合計★ 4
霜柱 光の写真
ぬし
作家名 ★霜柱 光
作家ID 97
投稿数 45
★の数 83
活動度 5973
まったりファンタジー。
最近幽霊部員と化してましたが生きてます。

コメント (3)

★東城 春菜 2007年6月1日 21時18分24秒
このお話大好きです!!
シノンさん、サヤ君ラァ〜ブ!!(もう放っておいてください)
サヤ君の魔法、なんかかっこいい!!
ていうより、文全部が魅力的過ぎます〜!
短いコメントでしたが、応援しています!頑張ってください♪
★霜柱 光 コメントのみ 2007年6月2日 19時45分19秒
ども、コメント、ポイント加算有難う御座います。
サヤが初めて自分で魔法使いましたね。いやぁ、成長しちゃってw
詠唱文にかなりてこずりましたが、誉められると頑張ったかいがありました。
ぐうたらスローペースですが、トロトロ付き合ってくれると嬉しいです。
★東城 春菜 コメントのみ 2007年6月2日 20時39分20秒
いえいえ。とんでもない。
私の小説の方にも書かれてありますが、同い年とは到底思えない・・・。
はわわわわ(?)
いや、ほんまに凄い。あ、うち関西弁はいってますねん。(だから?
ずっと見ていきますんで♪
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