僕と寝ぼすけ男 - 僕と寝ぼすけ男

うん、一人メンバーが増えたから、鉱山に入る前に準備を整えたいな。
鉱山の近くに小さな町があるらしいんだ。
まずはそこに行って準備を整えよう。














僕と寝ぼすけ男








あれから5日。
ジュリアを仲間に迎えたサヤ達はレイズ鉱山のふもとの小さな町に寄っていた。


「鉱山が…、近くに見えるね」
サヤが霧がかった鉱山を見上げて言った。

「そうだなぁ。明後日にはあそこに乗り込むから、準備はちゃんとしてろよ?」
コウタがそう言うと、うん、とサヤが頷いた。

今日は生憎の雨だ。
霧が掛かっていて、先がよく見えない。
雨具は荷物にも入っていたのだが、3枚しかなかったので、コウタの分をジュリアに着せている。

「宿が取れたよ。荷物を置きに行こう」
シノンが部屋のキーを指に引っ掛けてきた。
荷物係のコウタがキーを受け取り、「先に休んでくる」と言ってさっさと宿に入ってしまった。

「コウタさん、顔色悪かった……。やっぱり、私が雨具貰ったから風邪引いちゃったのかしら…」
ジュリアがフードの下で俯く。
シノンはいつものにこにこした顔でジュリアのフードを取り、
「あいつの事はサヤ君が見てくれるから大丈夫。だから、そんな顔しないでもいいんだよ?」

シノンが「えへへへ〜」と言いながらジュリアの手を引いて走っていった。

一人取り残されたサヤは、
「…………宿に行けって事だよね」
鉱山をもう一度見上げて、宿屋のドアノブを回した。




*********************



「ぅあー……俺としたことが」
濡れた髪を拭きもせずにベッドに横になっている。
しとしと、と雨粒が窓を掠めていく。
静かだ。

『黒ノ閃光』が、まさか風邪ごときで倒れるなんて、とコウタは思った。

昔から人並外れた生命力を持ち合わせていた為、風邪なんてひいたこともなかった。


どうしたんだ、俺は。
コウタはふらふらする頭をガシガシ掻いて唸った。

コウタが右手を額に当てた時、









バギン!!  と何かが割れる音がした。
雷は鳴っていない。
飾りの皿が割れた訳でもない。

ただ、音の源は、           コウタ自身だった。



「(……………風邪、か? 違う、   風邪なんか    じゃ   な)」




バキバキビキビキ!! と音は鳴りつづけた。

目の下から頬にかけて赤いアザが走る。
黒に近い蒼髪は黒の色素が抜け、完全に蒼に染まっていった。


チン、とコップを金属のスプーンで叩いたような音がした。



「どうして、   なんだ    これ    は   」

掠れた、唸り声に近い声。


コツ、コツ、と部屋に誰かが近づいてくる。
一歩ずつ「誰か」が近づく度に、彼は彼では無くなっていった。

一歩。
彼の爪は赤黒くなり、鋭く尖った。

一歩。
彼の瞳は紅に染まり、瞳孔は縦に割れる。

一歩。
彼の針のように尖った蒼髪を掻き分けて、白銀に輝く角が伸びる。



「誰か」はドアノブに手をかけ、一気に回し、開いた。



「コウタ………?」

サヤの目に飛びこんで来たのは、「化け物」だった。
容姿は大きく変わっていないものの、完全に彼の禍禍しい姿は、人間のものでは無かった。

「……………。   、   ぅあ」




風邪薬の入った袋が少年の手から滑り落ちた。
サヤは手を伸ばす事は出来なかった。


怖かったのだ。




「    。 あ   、   。」

掠れてよく聞こえなかったが、口は確かに、こう動いていた。








「たすけて」、と。


「……、コウタぁっ!」
サヤは手を伸ばした。
だが、それは届かない。




届かない。




細い血管の通った、ピンクの薄い膜が張り付いた青銀の禍禍しい翼が背中から広がった。
コウタは窓を割り、先程よりも雨脚が強くなった空を飛んだ。
軌道はふらふらとしていて、追跡は難しい。




ドタドタドタ! と軋む床を誰かが走ってくる。
「サヤ君! 今のは、コウタじゃ……」
サヤは返事をしない。
その場に座り込んで、ただ窓の外を眺めている。
シノンは濡れた雨具を脱いで床に捨て、サヤの顔を覗き込んだ。

「覚醒……か」
彼はそう言って、窓を睨む。
覚醒。
コウタは龍神に選ばれた神の子だった。
龍神ジャネリオは己の血族の中で一番優れた者を選び出し、神の力を与えていくという。
その力が選ばれた者の体を駆け巡る時、髪は蒼に染まり、瞳は緋に染まる。
人間離れした力は精神をも飲み込む。
シノンはそう説明した。

「僕は……覚醒できないんですか」
窓を眺めたまま言った。
「何言ってるのよ……、貴方は神でも何でもないでしょう?」
一緒に帰ってきたのだろう、ジュリアがサヤの肩に手を置いて言った。
彼女はサヤが神の末裔だということを知らない。

「僕は…神の末裔だ」

ジュリアの表情が凍る。
サヤはシノンに問いを続けた。
「それで……どうなんですか、シノンさん」
シノンは腕を組み、
「できるよ」
そう、言った。

「サヤ君は輝鳥レディアントの子孫だ。自己防衛魔法を使った位だから、選ばれた者という可能性もある」
さらに彼は続けた。

「求めるんだ、輝鳥を。そして強く誓え。    その力を何に使うかを」




バキン! と何かが割れる音がした。


雷が落ちた訳でも、飾り皿が割れた訳でもない。


仲間を助ける為に、サヤが鳴らした音。



頬には青いアザが走り、青の髪は腰の辺りまで伸びていった。

首から足にかけて青い光で出来た帯が何本も伸びている。


背中からは黄金の羽毛を生やした翼が、片方だけで三枚広がり、合計六枚もの翼が広がった。
頭を保護するように、光のヴェールがふわりとなびいた。




「絶対に、連れ帰ってみせる。だから……、僕は行く」

















続く

後書き

かくせいだー。
コウタの姿をリアルに想像すると怖いなぁ。

この小説について

タイトル 僕と寝ぼすけ男
初版 2007年6月11日
改訂 2007年6月11日
小説ID 1550
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霜柱 光の写真
ぬし
作家名 ★霜柱 光
作家ID 97
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活動度 5973
まったりファンタジー。
最近幽霊部員と化してましたが生きてます。

コメント (1)

★東城 春菜 コメントのみ 2007年6月17日 16時52分18秒
こんにちは。
コウタの姿を想像すると・・・いや、こわいですね(ーー;)
続き楽しみ♪
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