僕と寝ぼすけ男 - 僕と寝ぼすけ男

気付けば、俺は闇の中にいた。
上も下もわからない、真っ暗闇だ。
その前に、俺はなんでここにいる?
俺は、「俺」じゃなくなった筈だ。
なのに、何故俺は「俺」の姿で存在している?










僕と寝ぼすけ男











暗闇の中に、コウタは立っていた。
禍禍しい角や翼はなく、普段の彼そのものの姿をしていた。

「……ここは……」
辺りを見回す。だが、広がるのは闇ばかり。

『ははははははッ!! 女子供構わず殺せ! 一匹残らず斬り捨てろ!』

向こう側から何者かの声が聞こえてくる。
声はさらに続き、

『シンデクレテアリガトウ』
『タスケテ、だと? ははは、笑わせる。お前の運命は死のみだ』


『 そう、俺の二つ名は「黒ノ閃光」……よォく覚えとけ 』


ドグン、と心臓が跳ねた。
この言葉はかつての彼……『黒ノ閃光』として戦場を駆け、己の手を血で汚したコウタ=レジェンディアが発した言葉だったのだ。

「お前は……、誰なんだ……?」
キリキリ、と心臓を締め付けられるような痛みが走る。
コウタは胸を押さえながら、闇を睨んだ。
嫌な汗が吹き出て、頬を伝った。


『俺はお前さ、コウタ』


コウタは目の前に現れた『者』を見た。
白髪を逆立たせ――――否、寝癖に近いが――――、口許には不敵な笑みを浮かべている。
瞳は血を連想させるような赤で、少々気だるげに半目がちだ。

そう。

目と肌以外、モノクロ写真を反転させたような感じである。

実体(モデル)は―――――――コウタ=レジェンディアだ。





『クク……、しょんべんくせぇガキに惑わされやがって。昔のお前は何処に行った?』

コウタの黒髪を【コウタ】の真っ赤な手が掴んだ。
「…・・・っぁ、触るな……! 俺は……もう……」

『触るな、じゃねぇだろうが。俺は不抜けたお前に【力】をやろうとしてやってんだぜ?』
コウタは半目がちの目を開け、【コウタ】を見た。
「力、だと?」
『そう、【力】だ。お前は何の為に生きてきた? お前がすべき事はなんだ? あのガキといる事か? 家族を殺した奴といる事か?』

そう、そうだ。
【コウタ】が言っている事は間違いではないのだ。
コウタは家族をシノンに殺されて以来、シノンを殺す為だけに生きてきた。
殺す為には、力が要る。コウタは殺す力を求めていたのだ。


少年に出会うまでは。




『おら、返事しやがれ。【力】が要るのか。いらねぇのかはっきりしろ』
真っ赤な手が、さらに髪を握った。
コウタは【コウタ】を睨み、口を開いた。
「今は……殺す力はいらない………!  守る力が、欲しいんだ……!」

【コウタ】は舌打ちをして、コウタを睨みつけた。
手を離し、コウタの顔面に拳を放つ。

コウタは避けもせず、赤い拳を受けた。
彼の力なら避ける事も、カウンターさえ放つ事も出来た筈だ。

「それで、気が済んだか」
【コウタ】の動きが止まる。
コウタは切れた口の端を拭って、
「俺は過去から逃げない。だからといって過去に囚われもしない」
握った拳が解けて行く。


『だからテメェは甘いんだよ、クソヤローが!』


ゴゴン! と轟音が響く。
『おしゃべりはここまでだ……、俺を言いくるめられると思ったか? そう思ってたなら残念だったなァ、コウタ君?』

ゴゴゴガガガガ!! と轟音は更に大きくなり、【コウタ】の口も左右に大きく裂けた。

『おら、ガキが来たようだぜぇ? 俺の力、存分に味わえよ?』









闇は晴れた。





体を打ち付ける雨と、不気味な雷鳴。



目の前には、聖剣を抜いたサヤがいた。
白い翼を広げ、頭のヴェールを風に揺らしている。






龍神は、輝鳥に斬りかかった。









続く。

後書き

早くも三十話!すっげぇなぁオイw

この小説について

タイトル 僕と寝ぼすけ男
初版 2007年6月16日
改訂 2007年6月16日
小説ID 1553
閲覧数 868
合計★ 7
霜柱 光の写真
ぬし
作家名 ★霜柱 光
作家ID 97
投稿数 45
★の数 83
活動度 5973
まったりファンタジー。
最近幽霊部員と化してましたが生きてます。

コメント (4)

★東城 春菜 2007年6月17日 16時57分47秒
30話ですか!!
おお、おめでとうございます♪
これからも頑張ってください!
★霜柱 光 コメントのみ 2007年6月17日 19時19分32秒
加点どもですw
感想もいただけると嬉しかっ痛い痛い生卵投げないで投げないd(黙

早いもんで、三十話突破です。
長くなりそうだなぁ。
★冬野 燕 2007年6月17日 19時48分36秒
 コウタの葛藤する描写がイイ!
 でもちょっと短めだったかも。物足りなさが胸を刺す(意味不明

 三十話って、もう、すごい、ねぇ。
 なぜだ、なぜ霜柱光さんはこんなにまで持続力が働くんだ!?
 グダグダモードの僕とは大違い、だ――――――――。

 前半の色々と飛び飛びなのが気になる。
 でもどこがどうなのか上手く説明できない。すみません(汗
★霜柱 光 コメントのみ 2007年6月17日 19時57分49秒
冬野 燕さん>
ポイント・感想ありがとうございます。
ちょっと短めだったですかね。物足りない、という言葉が聞けてよかったです。これからも精進して参りますね。
飛び飛び、というのが気になった、と言うことで。
葛藤シーンが始まる前に誘導文があればよかったのかもしれませんね。すいません。
指摘、ありがとうございます! 勉強になります。

ではでは。
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