DEATH NOTE another story

 *





 あるところに、可哀想な女の子がいました。
 悲しくて、寂しくて、苦しくて、泣いてばかりいました。





 *





 かみさま
 かみさま
 あくまをころしてください
 せかいからことばをけしてください
 わたしをすくってください
 あなたにつうじるよるのおもい
 おつきさままでとどいて

 わたしをころしたあいつらに
 いまからふくしゅうしにいくよ
 いまいくよ
 いまいくよ
 おまえだよ
 おまえだよ





 *





 小さな笑い声が上がり、すぐに闇に溶けた。
 それは絶望に染まっている声。

 解放されていく心。
 笑わずにはいられない。

 ふふふ。
 あはは……。
 あはははは。

 鼻に染み付いた臭いが心を刺激する。
 笑わずにはいられない。

 はは……。
 あははは!
 あははは……!

 そして口ずさむ。

 おまえだよ。
 おまえだよ。






 *





 『今日午前二時頃、××市のマンションの玄関で4階に住む女子高生(17) が死亡しているのを同じマンションの住人に発見されました。死因は刺殺。四肢を切断され、殺害後の行為と見られています。また身体中を刃物で切りつけられていました。死体の傍には犯人が書いたと思われる手紙が置かれていて、警察は内容から犯人はキラ崇拝者であると判断しました。警察は犯人を――』










 DEATH NOTE another story
 悪は滅ぼさなくてはなりません










 学校に来ればまず、私の下駄箱の中はゴミくずがで一杯だった。上履きには画鋲が詰められていた。しかし、これくらいはまだ優しい方だ。この前はゴキブリが上履きに入っていた。よくこんなものを捕まえるな、と怒るべきところを感心してしまう。
 教室に入り、最初に目に付くのが、自分の机の上に置かれた、花が活けられた花瓶だ。それの意味するところは言うまでもない。これも毎度の事だ。そして次には、みんなの視線。氷点下の視線。そしてみんなは、私が入って来た事は無かった事のように、再び友人達と笑顔で会話を再開した。
 席につき、机の中を漁ると、此処にもゴミくずが入っていた。くしゃくしゃになった紙を広げれば、そこには呪いの言葉のように、私を侮辱する言葉が書かれていた。
「あいつ、昨日あんな目にあったってのに来るなんてな……」
「懲りない女ね、全く……」
 微かに聞こえる会話。それは私を侮辱する会話だ。
 私の耳は、日々そんな会話を聞くのに慣れたのか、それとも苦しみのあまり麻痺したのか、その会話を大して気にはしなかった。
「あら、北条さん。おはよう」
 席についてじっとしている私に声をかけてきたのは、生徒会役員であり、学級委員である稲葉マキコだった。私を見下ろす……いや、見下すその瞳は、私を射殺さんとする鋭いものだった。私は顔を上げて彼女を見ようとせず、ただ正面の黒板を見つめていた。
「ひどい傷ね、大丈夫?」
 私の頬の切り傷、腕や足についた痣などを見て、彼女は全く私を心配していない声で言った。
 私は無言を続けた。この女に返す言葉など何ひとつ必要ないからだ。
「北条さ――」
 彼女が何かを言おうとした瞬間、チャイムが鳴り響いた。それと同時に担任の先生が教室に入って来て、生徒達に着席を促した。
 稲葉は仕方なく、自分の席に戻っていった。私は机に置かれていた花瓶を床に、先生に見えない位置に置いた。
「……北条、どうしたんだその傷跡」
 私の身体中の傷を見た先生は、そう尋ねた。みんなが私を方を向き、じっと睨んだ。その中で特に鋭い視線を放ってきたのは、稲葉だった。
 私が口にできる言葉は一つしかない。私には選択する権利が無いのだ。
「何でもありません」
 他に何か言おうものならば――。
「何でもなくてそんな風にはならないだろう」
「何でもありません」
 助けを求めるような事を口にすれば――。
「北条! 素直に答えなさい!」
 今度こそ、殺されてしまうかもしれない。
「何でもありません」
「……」
 何を言っても無駄だと思った先生は、諦めて溜息をついた。
「北条、放課後、職員室に来なさい」
 先生はその後、今日の放課後、生徒会の会議がある事や、近づく冬休みの事などを話した後、ホームルームはこれで終わり、と言って教室を出ていった。
 そして空気は一瞬にして変わった。
 みんなは席に座ったまま、私を睨んだ。稲葉が席から立ち上がり、再び私の席の前まで来た。
「北条さん」
 冷徹な声。稲葉は急に私の髪を引っ張り上げ、無理矢理私に自分を見せようとした。
 紙を引っ張り上げられ、痛みに顔をしかめる私は、稲葉の顔を見た。その顔に感情は無かった。ただ私を軽蔑し、見下し、命の無い物……いや、それ以下の物を見るような瞳だった。
「さっき、先生に職員室に来るよう言われてたけど……」
「わかってる……」
「何を?」
「何も……言わない……」
「本当?」
「本当……」
 わかっているくせに……。
 私は何も言わない。この傷の事も、おまえの事も、このクラス全体の事も。
「わかってる……」
 そう、わかってる。
 先生に何も言わなくても、こんな仕打ちはこれからも、ずっと先にも待っている。
「ならいいわ」
 そう言って稲葉は私の髪を引っ張るのを止め、席に戻っていった。
 何故、私は懲りもせず毎日学校に来るのだろう。登校拒否しても何も変わらないと思っているからだろうか。親に相談しないのは、その後が怖いからだ。
 私は怯えている。今日も恐怖の一日が始まる。
 怯えている。
 北条リコ。
 私はいじめを受けている。





 *






 放課後、私は職員室へと行った。担任の先生にはしつこく傷の理由を問われたが、私は朝と同じように「何でもありません」と答え続けた。疲れたのか、呆れたのか――きっと両方だろう――先生はもういいと行って、私を職員室から出した。
 校舎の生徒用玄関には誰もいなかった。グラウンドでは運動部が部活動の最中のようで、大きな声がよく聞こえた。
 私はさっさと帰ろうと、靴を履き替え、校舎を出ようとした。
「あら、北条さん」
 背筋が凍った。恐怖で身体の自由が利かなくなった。
 私は麻痺する身体を何とか動かして、後ろを振り向いた。そこには稲葉マキコが立っていた。
「い、稲葉、さん……」
「私、さっきまで生徒会の会議に出てて、ようやく終わったの。疲れたわ〜」
 そういえば、先生が生徒会の会議があるとか、朝のホームルームで言っていた。そうだ、この女は生徒会役員だった。
 稲葉はゆっくり私に近付いてきて、顔を近づけた。
「どうだった?」
「え……?」
「先生には何も言わなかった?」
「……うん」
「そう。何て誤魔化したの?」
「……何でもありません、て」
 私がそう言うと、突然、稲葉は私の頬をはたいた。
 突然の事に私は驚きながらも、はたかれた頬を抑えた。
「バカね。そればっかりじゃ怪し過ぎるのよ。階段で転んだとか、もうちょっとまともな事言いなさい。それじゃ誤魔化すどころか逆に怪しまれるわ」
「ご、ごめんなさい……!」
 私は必至に謝ったが、稲葉は許してはくれなかった。
 稲葉は私を押し倒し、私の腹に一発、蹴りを入れた。
「かはっ……!」
「これで私達が疑われたらどうしてくれるの?」
 鋭い目で、稲葉は私を睨み付けた。そして、また私の腹を蹴った。一発、二発、三発……。私は声を出そうにも、苦しさのあまりできなかった。稲葉は、気の済むまで私を蹴り続けた。少しして、稲葉は満足したような表情になって、私を蹴るのを止めた。
「……そうね。そろそろ男子達にあなたをあげようかしら?」
「……え?」
 そう言うと稲葉は私に顔を近づけ、そして、私の耳元でこう言った。
「あなたみたいなのでも、男どもの性欲処理くらいには役立つんじゃないかしら? ね、メス豚ちゃん」
「……」
 稲葉のいなくなった学校の玄関で、私は立ちすくんでいた。
 言葉も出なかった。
 ただ、涙しか流れなかった。





 *





 突然、私はいじめの標的になった。理由はわからない。いや、理由などどうでもいい。いじめられている、それが私にとっての全て、それだけが問題だ。いじめられている人間にとって理由などこれっぽっちも意味を持たないのだ。
 クラス全体が、私をいたぶる。私をいじめる人間の上に立つのが、稲葉マキコだ。
 水をかけられたり――泥水をかけられる事もある――教科書に落書きされたりするのは毎度の事だ。精神的にも肉体的にも、私はいじめを受けている。私をいじめるのは、主に女子達だった。トイレに呼び出されれば、水かけから始まり、床に頭をこすりつけられ、便器に顔を突っ込まされたりもした。男子に服を脱がされ、その現場をビデオや写真に撮られ、それを脅迫材料にされたりもした。
 クラスの人間はみな、稲葉マキコの指示に従って、私をいじめていた。彼女が今日の放課後のように自ら私に手を下す事はあまりなかった。
 いっその事自殺でもしてしまいたいが、そんな勇気も無い。しかし、この生き地獄をから抜け出したいと思っている。
 どうしようもないのだ。
 誰かが救いの手を差し伸べてくれなければ、私は笑顔を取り戻せないのだ。
 そう、許せない。私から笑顔を奪ったあいつらを、私は絶対に許せない。一日が過ぎていく度に、あのクラスの奴ら全員への憎しみ、恨みは膨大し、私を蝕んでいった。せめて、奴らに拳の一発でもお見舞いしてやりたいところだ。しかし、私は無力だ。暴力に対抗する術を持たないのだ。
 闇は拡がり続けた。
 誰か、助けて。
 私を、救って。
 奴らに復讐する力を、私にちょうだい。
 そんな時、私は神に出逢った。
 深く、濃い闇を一瞬にして払い、私を光で包んでくれた、救世主、神……。
『今日午前六時頃、△△区で起きた三件の婦女暴行の犯人で指名手配中だった多武等数男が○○区の路上で、死体で発見されました。死因は心臓麻痺で、犯行はキラによるものだと……』
 キラ。
 神。
 悪に正義の裁きを下す者。
 超能力のような力で人を殺す事ができると言われている。
 それがキラだった。
 キラを正義と見るか悪と見るかは賛否両論。また、キラを捕まえようとする謎の探偵『L』についても、人々の間では意見が分かれた。
 Lになど興味は無い。
 しかし私にとって、キラは神だった。
 悪は裁かれるべきである。罪は死を以って償われるべきである。
 キラこそが、平和な世界を築き上げる事のできる唯一の存在!
 キラに逆らう者全ては反逆者! 罪人! 裁かれるべき存在!
 感謝します、キラ。
 あなたは私に光を与えてくださった。あなたは私に力を与えてくださった。
 憎き奴らに復讐する力を、与えてくださった!
 恐れるものなど何も無い。
 ただ私は、解放されたいだけなのだ。いじめられ、選択のできない惨めな生活は懲り懲りだ。人をいじめるような人間など悪だ。しかしキラは、あいつらを裁いてくれない。
 ではどうする?
 悪は駆逐されなければならない。
 そうだ。
 私がやればいい。
 私がやらなくてはならない。
 キラの代わりに、悪を裁くのだ。





 *





 私は、あるマンションのエントランスに立っていた。
 七階に止まっていたエレベーターが動き出し、四階で止まった。そしてエレベーターはまた動き出し、一階へと降りてきた。
 エレベーターから出てきたのは、稲葉マキコだった。寝巻き姿で、眠たそうな顔をしている。いや、苛ついている表情だ。
『私、北条』
『北条……? 何よ、こんな時間に……』
『ちょっと話があるの。今、あなたのマンションの玄関にいるんだけど、来てくれないかしら?』
『……』
 ついさっき、私は稲葉に電話をした。私は彼女のパシリにも使われていた。遠くからでもこき使えるようにと、彼女は私のケータイの電話番号とメールアドレスを持っていた。私は彼女の電話番号とメールアドレスは教えられなかったが、向こうから来たメールや電話で、彼女の電話番号とメールアドレスは知る事ができた。
 無言で電話を切られたから、もしかしたら来ないかもしれないと思ったが、やって来た。
「何の用?」
「いじめを、やめて欲しいの」
 最初にして、最後の勧告。
 しかし私は知っている。わかっている。彼女の答えを。
「バカね。やめるわけないでしょう、こんなに楽しい事……」
 稲葉は私に近づいてきた。はたくか殴るか、とにかく私に暴力を振るおうとでもしているのだろう。
 彼女の答えは、NO。
 わかっていた事だ。しかし、仮に彼女が「はい、いじめるのをやめます」と言ったところで、私はこの気持ちを変えるつもりは無かった。
 私にとって彼女は罪人であり、それは何がどうなったって変わったりはしない。
「かみさま、かみさま、あくまをころしてください……」
「……?」
 神、キラ。
 あなたは私の救世主だ。
「せかいからことばをけしてください、わたしをすくってください」
 此処に来る前に、ふと浮かんだ歌だった。詞もメロディーも、同時に、ぽん、と浮かんだ。
 きっと私が考えたものではない。神が、私に授けてくれた歌なのだろう。
「な、何よ……突然歌いだして……!」
 稲葉は立ち止まった。動揺しているようだった。何かに怯えている? ああ、私に怯えているんだ。ああ、おかしいわ。いじめていた人間に怯えるなんて、今のあなたは最高におかしい。
「あなたにつうじるよるのおもい、おつきさままでとどいて」
「やめなさいよ……!」
「わたしをころしたあいつらに、いまからふくしゅうしにいくよ」
「やめなさい……やめて……!」
「いまいくよ、いまいくよ」
 私は、稲葉マキコを指差した。
「おまえだよ、おまえだよ」
 そう、おまえだよ。
「やめなさいって言ってるでしょう!!」
 稲葉は走りよってきて、手を伸ばした。
 私は彼女が私を捉える前に、私は隠し持っていた『それ』を稲葉に向かって振るった。
「っ!」
 私が振るった包丁は、稲葉の右手の手のひらを切り裂いた。稲葉は激痛に顔を歪ませ、私から離れた。
 私は、ゆっくりと稲葉に歩み寄った。
「こ、来ないでよ……!」
 私は包丁を、稲葉の太ももに向かって投げた。包丁は見事、稲葉の太ももに突き刺さり、稲葉はその痛みで叫び声を上げながら体勢を崩した。座り込んだ状態の稲葉から、私は彼女の太ももに突き刺さった包丁を抜き取った。
「やめて……! やめて……!」
 稲葉は足を引き摺りながら、必至に私から逃げようとした。しかし、エントランスの出入り口は私が塞いでいるし、エントランスドアーはオートロックなので、集合インターホンに鍵を挿して解錠するか、マンション内の誰かにオートロックを解錠してもらう他、開ける手段は無い。つまり、稲葉は逃げ場を失くした兎も同然なのだ。
 エントランスドアーに背中が当たっても、尚も逃げようと背中をエントランスドアーに押し付ける稲葉は、見ていて滑稽だった。
 稲葉の表情は、私を恐れているものだった。まるで死神でも見るているような顔をしていた。
「やめて……!」
 そんな事を言われても、私はやめるつもりなど毛頭無かった。これまでに、私は何度おまえに「やめて」と言ったか。おまえやクラスの連中の暴力に耐え続けながら、何度「いじめるのはやめて」と叫んだか。おまえはやめたりはしなかった。だから私も、おまえをいたぶるのをやめたりはしない。
 私は容赦なく、包丁で稲葉を切りつけた。腕、足、顔、至るところに傷をつけた。私が受けてきた傷と同じくらいに、傷をつけてやろうと、包丁を振るった。
「わ……わかったわ! やめる! いじめるのはやめるから! お願い! 殺さないで!!」
 身体中の至るところから血を流している稲葉は、泣きながら私に懇願した。
 その哀れな姿を見ていて、私は気付いた。僅かに、口許が綻んでいた。
 笑っている……? 私は、笑っている?
 私は稲葉に歩み寄り、彼女の前でしゃがみ込んだ。恐怖に戦く稲葉は、荒い息を立てて私を見ていた。
「わたしをころしたあいつらに、いまからふくしゅうしにいくよ」
 いくら謝ろうと、罪を償うと誓ったとしても、私はこの女を許すつもりは無い。
 どんな罪でも、罪は罪。許されてはならない。罪には、罰を下さなくてはならない。
「いまいくよ、いまいくよ」
 私の心が、解放されていく。私の顔に、笑みというものが戻って来る。
 そう、これで――。
「おまえだよ、おまえだよ」
 ぐさり、と包丁が稲葉の左胸に、深く突き刺さった。
「……かっ……は……!?」
 驚愕の表情で、稲葉は私を見た。私は死ぬの? そう言いたげな顔だった。かつて彼女が私に向けた視線を、私はそのまま彼女に向けた。侮蔑の、氷点下の瞳だ。
 包丁を引き抜くと、稲葉は胸を抑えて倒れこんだ。
「ほう……お……」
 手を伸ばし、必至に私を掴もうとする。しかしその手が私に届く事は無い。私は無言で、稲葉を見下ろした。
「……っは……たす……け……」
 稲葉の手が、落ちた。胸と口から血を流し、目を大きく開いたまま、稲葉は停止した。自ら動く事はもう無い。稲葉マキコは、死んだ。
 しかし、まだ、裁きは終わっていない。
 私はバッグに包丁をしまい、ノコギリを取り出した。
「おまえは私をいじめた……」
 耐え難き苦痛を耐え、死にそうな思いをした。
 今日が早く終われと願った。しかし明日も絶望的だった。逃れる事のできない悪夢に、私は立ち向かった。しかし私は無力で、戦う事ができなかった。そんな私に、戦う勇気を与えてくださったのは、キラだった!
「私を殴ったのはこの手か……! 私を蹴ったのはこの足か…・・・!」
 私はノコギリで、稲葉の四肢を切断した。できあがったのは、惨めなバラバラ死体だった。
「どうだ……はぁっ、はぁっ……私にしてきた事に比べれば、こんなもの……こんなもの……!!」
 私は稲葉の、四肢を失った胴体を何度も蹴った。
 しばらく蹴り続けていると、私は泣いている事に気がついた。
 これは……。
 苦痛による涙ではない……。
 よろこび……?
 そうだ、喜びの涙だ!
「はは……あははは……!」
 心が躍った。何故か楽しい。
 笑みが零れる。どうしてだろう。どうしてこんなに楽しいのだろう。
「あははははは! ははっ、ははははは!」
 キラ!
 ありがとうございます!
 私は、私は解放された!
 嬉しくてしょうがない。
 この女の死体を見ると、また笑いがこみ上げてきた。ざまぁみろ! 神の裁きが下ったんだ!
 あははは!
 あははは……!





 *





『今日午前二時頃、××市のマンションの玄関で4階に住む女子高生(17) が死亡しているのを同じマンションの住人に発見されました。死因は刺殺。四肢を切断され、殺害後の行為と見られています。また身体中を刃物で切りつけられていました。死体の傍には犯人が書いたと思われる手紙が置かれていて、警察は内容から犯人はキラ崇拝者であると判断しました。警察は犯人を――』
 稲葉マキコを殺した次の日。正確には同日の朝。稲葉マキコ殺害事件は、早速朝のニュースで報道されていた。
 まだ、私の手には、稲葉マキコを殺した時の、包丁を胸に突き刺した時の感覚が残っていた。
 その感覚は、喜びだ。
 私は、殺人者になってしまった?
 人を殺した事に喜びを感じている?
 ……違う。
 悪が排除された事を、私は喜んでいるのだ。
『紙に書かれていた内容は、新たな犯行を示唆するようなもので、警察は被害者の通っていた学校やその周辺の警備を強化するとともに……』
「……そうかぁ。学校に警察来ちゃうのかぁ」
「何か言った? リコ」
「ううん、お母さん。何でもないよ」
 警察が来られると面倒だ。
 しかし、これくらいのリスクは覚悟していた。私はどうしても、ああやって、あの女が悪である事を人々、何よりキラに報せたかった。同時に、私という存在を報せたかった。
 恐らく、警察があのクラスから稲葉を殺害した人間を探すとしたら、まず私が疑われるかもしれない。何故なら私は彼女にいじめられていたからだ。殺す動機は十分にある。学校に来なければ益々怪しまれるだろう。
 しかし私は、何にせよ学校に行かなくてはならない。
 きっと、あのクラスの連中は私が逮捕されるよう仕向けるであろう。どうせ捕まるのならば、私はその前にやらなければならない事がある。
「じゃ、いってきまーす」
「いってらっしゃーい」
 私はバッグに包丁を入れて、家を出た。





 *





 キラ。
 私の神様。

 私はあなたを崇拝している。
 この想いはあなたに届かないものでしょうか?

 私は平和な世界を築くあなたの為に、悪を排除しました。
 そして、私はまた悪の排除をしようと思います。

 すべてはあなたのため。
 私を救ってくれた、あなたのため。

 あなたは神です。
 正義の神です。

 悪は滅ぼさなくてはなりません。

 私はあなたに授かった力で、できる限りで悪を滅ぼそうと思います。
 私は、悪と立ち向かいます。





 *





 二〇〇三年十二月十日。
 ××市の公立高校で大量殺人事件が発生した。

 一人の女子高生がクラスメート全員を殺害した。

 犯人の女子高生の名は北条理子。
 北条理子はクラスメート全員を殺害後、凶器である包丁を自分の首に突き刺し、自殺した。




後書き

デスノート熱が未だ冷めぬひでどんです。
今回もまたキラ信者視点で書きました。
純粋にそれだけなので特に深い意味を込めたりはしていません。

なんか前回と似たようなもんだなぁなんて思うかもしれません。
だって前回も今回もキラ信者視点なんですから(言い訳)。

反省点はいくつもありますが、だらだら書くのは控えます。
ただ、ちょっと狂気が足りなかったかなぁ、なんて思ってます。

それと、またちょっとした言葉遊びを入れてみたわけですが、気付いた方はいるでしょうか?
もしかしたらちょっと難しいかもしれないし、気付いても、それが何かおかしいということがわかるかもしれません。
まぁこれも真似事なわけですが…。
ヒントはマキシマムザホルモンの「絶望ビリー」です。

基本的に僕はわけのわからない人間です。
そんなわけで退場します。
すいませんでした。さようなら。

この小説について

タイトル DEATH NOTE another story
初版 2007年8月20日
改訂 2007年8月21日
小説ID 1627
閲覧数 1180
合計★ 4
ひでどんの写真
ぬし
作家名 ★ひでどん
作家ID 60
投稿数 13
★の数 91
活動度 4044

コメント (1)

★りん 2007年8月28日 0時06分24秒
カキコありがとうございます☆りんです!

りんは高校に行かなくなってだいぶ経ちますが、
こんなひどいいじめを見たことがありません。
でもこの世の中、これに似たことはあるんでしょうね。
恐ろしい。
そしてさらに恐ろしいことに、
北条さんは自分の信じる神の信者になってしまった。
何かを強く、異常なまでに信仰している人達はある意味強いですからね。
その恐怖感だったり、狂った感じがゾクッときました。
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