僕と寝ぼすけ男 - 僕と寝ぼすけ男

俺は今日という日を待っていた。
貴様の劣化品として捨てられた俺の復讐をする日が来るのを待っていた。
貴様のようなへらへらした奴に闇翼神龍の力は渡さない。

あの力は、憎しみに溺れた俺にこそ相応しい。







僕と寝ぼすけ男






レイドはイリカという女に渡された服を眺めていた。
すらりとした白い体に長い黒髪が張り付く。
――――――ここ何年か、日の光を浴びていなかったからな。
レイドに貸し与えられた小さな暗い部屋に一つしかない窓から入る光がまぶしい。

最後に殺したのは赤髪の男だった。
確か、小さいガキに「バート」と呼ばれていたような気がする。

もう何年も前の事のように感じた。しかし指には「バート」の血が未だにこびり付いている。
クソッタレが、とレイドは唾を吐いた。
「バート」を殺したのには理由があった。これも何年も前の事だ。
「バート」には子供がいた。「リッツ」という名前だったような気がする。
そいつの狩猟仲間、だろうか。線の細い、剣士、というよりは呪療士(ハーヴェスト)や魔法使い(マジックユーザー)に向いているような少年。
青髪の無邪気そうな同色の丸い瞳をした少年だ。
そいつに近づく為に「バート」を殺した。

父親である「バート」を殺せば「リッツ」は必ず復讐をしに来る。
そして「リッツ」に付いてきた青髪のガキに近づく……。そういう作戦だった。
復讐をしに村を出たのは知っていた。しかしそこからが計算違いだった。
ガキは付いて来なかった。後にオリジナルに拾われたというではないか。

レイドはテーブルを蹴っ飛ばした。
頭を掻き毟り、窓に視線を向ける。
窓の鍵が壊れていたのだろう、窓は開いていた。縁に黒い小鳥が留まっている。
小鳥に近づき、右手を伸ばした。
最初に羽を毟ってやった。小鳥は当然泣いた。
煩い、とレイドは思った。
――――――最初にアイツの羽……翼を毟ってやる。
次に翼全体をを千切った。
これで小鳥は飛べない。何も出来ない。
小鳥は泣く。
――――――次は腕だ。腕さえなくなればアイツは何も出来ない。何も守れない。

小さな青い小鳥が縁に留まった。
レイドが握っている黒っぽい小鳥の様子を眺めている。
青い鳥を一瞥し、哀れな姿になった右手の小鳥に視線を落とした。


ぶちゅぅ、と肉のつぶれる音が部屋に響く。
右手からは大量の血が流れていた。顔にも跳ねている。
右手を開き、「小鳥だった」ものを床に落として、顔に跳ねた血を舐める。
レイドは満足そうに唇の端を吊り上げて、血で汚れた右手を青い小鳥に差し出す。
「来いよ。俺ならお前の望みを叶えてやれる。金も地位も故郷も手に入る」

青い小鳥は ぴぃ、と鳴くと、血が付いた指にちょこん、と乗った。
「そうだ、それでいい」
レイドはズボンのベルトを締め、上着を羽織った。

黒いブーツで死骸を踏み潰し、窓の縁にもう片方の足をかけた。
「待ってろ、今直ぐに殺してやる」


レイドはそう言って窓から飛び降りた。












********************
「うあぅ、重い……」
サヤは大きな紙袋を抱いて街を歩いていた。
紙袋には沢山のパンとお菓子、野菜などが入っている。
果物担当はシノンなのだが、所々でにこにこしながら女性と歩いていたので帰ってくるには時間が掛かるだろう。
「それにしても、女の人、かぁ……」
サヤも立派な男の子であり、お年頃真っ盛りである。
―――――シノンさんはともかく、コウタも好きな人いるのかなぁ。
そう考えていると、後ろからドドドドドドドド!!! という騒々しい音が近寄ってきた。

「さ、さ、ささ酒場に新しい王者が誕生したぞー!!」
酒場は未成年のサヤには全く持って縁のない場所である。
しかし仲間に恐ろしい大酒豪がいたのをすっかり忘れていたサヤは、
「………アホらし」
叫んできた男を一瞥し、宿の方へと向き直ったその時だった。
肩をガッチリと叫んできた男につかまれた。
「お嬢ちゃん行ってみないか? そいつぁすげぇ男前だぜぇ」
男前、というのに少し引っ掛かったが、それよりも女扱いされたことに腹を立てた。
「僕は、女の子じゃないもん!!」
「あぁ? お前男か? まぁ性別は関係ねぇ、いこうぜチビガキ」
サヤはわなわなと震えて、
「チビガキじゃなーい!!」
と叫びながら酒場に連行されていった……。




「ありえねぇ、あんだけ飲んでぶっ倒れねぇなんてどんな神経してやがる」
「顔色一つ変えやしねぇじゃねぇか、化けモンだ」
酒場の人間は各々何か言っていたが、サヤには関係なかった。

王者に挑戦したのだろう老若男女がぶっ倒れて山積みになっている上に一人の男がジョッキを片手に座っていた。
「おお、サヤ!」
「コウタ………」
サヤは呆れたように王者の名を呼び、近づいていった。
コウタは人間タワーから飛び降りると、ジョッキをテーブルに置いて笑った。
「見てみろよコレ! 奴ら金を掛けるもんだから俺大金持ちだよ」
札束をサヤに押し付けると、豪快に笑いながらジョッキに入ったビールを飲み干した。
「今日はコレで何でも買ってやるからな」
笑いながらサヤが担いでいた紙袋を持ち、酒場から出た。
サヤは追いかけるように酒場から出ると、札束とコウタを交互に見た。
「なぁ、コウタってさ」
んぁ? と気の抜けた返事をし、サヤを向いた。
「す、好きな人とか、い、居るの………?」
言った後に俯いて、顔が赤くなるのを感じた。
コウタは少し考え込み、にへっと笑った。
「なかま」
サヤは顔を真っ赤にしたままコウタを見上げた。
「ふぇ?」
「ばーかよく聞いとけ。仲間つったんだよ」
あっはっは、と笑いながら先を歩いていくコウタと対照的に、サヤはその場に立ち止まったまま、
「……僕も……」
と呟いた。

その先でコウタは、
「あとはジュリアも好きだなぁ、仲間はみんな好き。あ、兄貴は微妙だけどな……あれ、サヤ?」
後ろを振り返るとサヤが突っ立っている。
「僕もっ」
サヤは走ってコウタに後ろから抱きついた。
「僕もコウタ大好き! ジュリアも、シノンさんもみんな好き!」

コウタは「照れる事言ってんじゃねー」と笑った。







「見つけた」
黒い髪が、風に揺れて広がった。










続く

後書き

トゥルットゥー、なんだか最後が怪しいゾ☆(キモ
個人的にレイド好き。

この小説について

タイトル 僕と寝ぼすけ男
初版 2007年10月8日
改訂 2007年10月8日
小説ID 1685
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霜柱 光の写真
ぬし
作家名 ★霜柱 光
作家ID 97
投稿数 45
★の数 83
活動度 5973
まったりファンタジー。
最近幽霊部員と化してましたが生きてます。

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