味噌式

田中電柱
良く晴れた五月のある日だった。
新山は地方から上京してきた遅生まれの二十一歳の某大学の二回生だった。
木曜の午前の講義を終えると、本を探そうと神田の古書店を幾つか回った。
しかしこれと言った物は見付からず立ち食い蕎麦で昼食を取り、店から出ると午後の一時を過ぎていた。
午後の守河教授の講義が休講になり予定が大きく空いてしまっていた。
倉庫整理のバイトもしているが、シフトは月、火、日の週三日間だった。
講義が詰まっている日以外は、極力出るようにしていた。
夢のような大学生活、と言えるような生活ではなく、講義、バイト以外、何もしていない。
友達が居ない訳ではないが、付き合いは良い方ではなかった。
何かサークル活動やゼミに積極的に参加しているならばもう少し違うのかもしれない、と良く考える。
勿論、誘いはあるが興味を引く物はなかった。
JR御茶ノ水駅から、山手線内回りでの田端の自室へ帰ろうとしていた。
駅から歩いて十五分、線路脇、近所には墓場、と言う好条件の立地であったが、それ程家賃は安くはなかった。
満腹感を覚えると、空を仰ぎたくなるのは何故だろう、と考える。
青く一欠片の雲も無く、何時も通りの人混み。
駅前まで出ると、途切れない人の流れに澱みが出来ていた。
「?」
高くない身長で背伸びして人垣を覗き込むとアオザイのような白い服を着込んだ女性二人組が居た。
小柄でロングヘアの女性が、明るい声で、どうぞ、と人混みの中にチラシを差し込み
もう一人のショートヘアの子が、自分の身長よりも大きい『光は人を救い導く』と書かれたプラカードを掲げていた。
なんだ、新興宗教か……。
知人が駅前に気持ちの悪い奴らが居る、と言っていた事を思い出した。
「……ん?」
女性を何処かで見たような、と眉を顰めた。
新山が足を止めていると、肩が人に当った。
失礼、と謝り、流れから一歩外れ、壁を背にし彼女達の顔を眺める。
良く見ればどちらも端正な顔立ちだったが、新興宗教を信じている知人に心当たりはない。
「どうぞ」
突然、チラシを持つ手が伸びた胸元に伸びる。
考えるのに集中する余り、新山は目の前に来ていた女性に気づいて居なかった。
驚きの余り、僅かに体が仰け反る。
「……新山君?」
チラシを持っていた女性は十センチ程度の身長差だったが、新山を見上げ言った。
「どちらさま?」
「日辻です、ほら川守助教授の講義で一緒だった」
……日辻?
「……先輩?」
昨年、同じ講義を受講していた一つ上の日辻と言う先輩を思い出した。
幾度か学食で隣になった事がある程度の間柄だったが、少なくとも駅前でこのような格好で、人混みで積極的に活動出来る人間ではなかった。
新山の中の日辻の姿は、化粧気は皆無、服装もロングスカート、長袖、黒いフレームの眼鏡と地味な物。
人混みの中に入ると消えてしまうような子だった。
彼女を見掛ける事が減ったのは、六月の中旬からで、夏休み明けにはその姿を見る事は無くなった。
特に親しい間柄と言う訳でも無かったので、その理由を知るつもりも無かった。
そのまま忘れる筈だったが、なーんだ宗教にはまっていたのか、ありがちだなあ、と率直な言葉が脳裏に浮かぶが、口に出さなかった。
「ああ久しぶり」
と月並みの挨拶をする頃には、観衆の冷たい視線が新山に向けられていた。
『あれも仲間なんだ、仲間なんだ、仲間……冷笑』
それは言葉にせずとも雄弁だった。
「それじゃあさようなら」
アスファルトに垂直に立てていた足を動かし、新山はその場から急いで去ろうとしていた。
「待って、これ」
とチラシを持った手が、前に割り込む。
「いらから、興味ないし」
「読むだけで良いから」
手を払うと彼女の持っていたチラシの束に当り、それを撒き散らした。
「あ、あ」
と日辻はうろたえ、一心不乱に散らばった紙を集める。
もう一人は何もせず、黒い瞳が新山に向けられていた。
自分は悪くない、と責任転嫁し、その場を離れたい気持ちになっていたが、その視線が掴み離さなかった。
『何あいつ、女相手に何してんだよ、最低の……屑』
同時に先程の冷笑とは全く別種の視線が新山に注がれていた。
「すんません」
散らばっていたチラシに手を伸ばし集める。
「あ……ありがとう、ごめんね、新山君」
「俺が悪かったんですし」
「あたしが無理に薦めたのが悪いから、ごめんね」
「……本当に日辻先輩ですよね?」
新山が知っている日辻と違っていた。
余裕と優しさのある表情に本人か疑ってしまう。
「変わったでしょ?」
途端、彼女の口元が緩む。
「確かに変わりましたね」
「あたし荒井先生のおかげでこんなに明るくなれたの」
「荒井先生?」
頷く日辻の目は輝いていた。
(別の学部の先生だろうか?)
しかし、新山の記憶には荒井と言う大学の講師の名前は無かった。
「色々あたしに教えてくれたのっ!あ、そうだ、新山君、今暇?良かったらセミナーに来てみない?」
「……いや、俺そう言うの苦手だから」
「大丈夫、荒井先生優しいから、そう言うの気にしないから」
「いやほんと、そう言うの苦手なんです」
「じゃあ喫茶店で少し話しない?新山君と会うの久しぶりで色々話したいの」
「喫茶店位なら良いけど」
「じゃあ行こっ、乾さんあたしちょっと話してきます」
「はーい、いってらっしゃい」
日辻に引かれる手とは逆の手あるチラシには
『光は人を救い導く。本当の貴方の言葉に耳を傾けて』
荒井美園光導セミナー、と書かれていた。

新山は日辻に引かれ、五分程歩いた所にある喫茶店に入った。
店内は窓辺が小さい作りになっており、下半分がステンドグラス、上半分が普通のガラスだった。
店の位置も関係しており、ガラスの色は濃く出ず薄暗く、煉瓦造りの壁と艶出しされた濃茶の木で仕切られていた。
座席数はカウンターを入れても十五席程度だった。
昼休みのかき入れ時だと言うのに、客はカウンター、二人掛けのテーブル、合わせ三人しか居なかった。
カウンターではエプロンをした喫茶店の主人らしき男が手持ち無沙汰にコップを磨いていた。
「じゃあここに座ろうか」
日辻は四人掛けのテーブルに新山を引っ張ると、先に座らせ、その隣に座った。
「新山君、コーヒーで良いよね?あ、奢りだから遠慮しないで良いから」
日辻はメニューも見ずに言った。
「何でも良いっすよ」
「すいません、ブルーマウンテン二つ」
「安いブレンドで良いんですけど」
「遠慮しないでよ、大学の事聞きたいし、その情報料とでも思ってくれれば」
「そんなの自分で友達に聞けば良いじゃないですか」
「うん、だから今聞いてるの、新山君に」
「俺以外のは?」
「あたし居なかったから友達。合コンにも誘われなかったから」
「俺だって人付き合いなんか得意じゃないですけど」
「そうかな、結構告白とかされてそうだったけど」
「俺に告白なんて、罰ゲームとしか……」
「何時も新山君を見ていたあたしの立場が無くなっちゃうね、それ」
「それでこれですか」
新山が目の前に置かれたチラシを摘みあげた。
「そんな風に言わないでよ、おかげであたし、変れたんだから」
お待たせしました、と主人が鼠色の作りの粗いカップを二つ置いていく。
強いコーヒーの香りが席に漂う。
「おいしい」
日辻は何も入れず、カップに口を付けた。
喫茶店の戸を開くベルの音が響いた。
視線を向けると、先程日辻と一緒に立っていた乾と言う女性がこちらの席に歩いてきた。
一瞬、彼女に視線を送ると、それをすぐに新山の方へ向け微笑んだ。
乾は日辻を見つけると、その足をこちらに向け、向かいの席に腰を下ろした。
「こんにちわ、初めまして、わたし、乾と申します。えーっと……?」
「どうも、俺は新山と言います。初めまして」
「へぇ、改めて見ると、かっこいいじゃない?ひょっとして元カレかな?」
「……い、乾さん」
「大学の幾つか同じ講義を受けていただけです」
乾の冗談に、顔を赤く染める日辻に対し、新山はあくまで事務的に答えた。
「そっか、でもこの子変ったでしょう?本当は明るくて良い子なのに、迷っちゃってたから、それを出す事が出来なかったんだけど」
横にいる日辻が、新山に笑い掛ける。
「はぁ」
気のない返事しか口に出来ずにいた。
積極的な性格だったら、と仮定の事を考える事はあっても、そうなりたい、と思った事は無かった。
「それでどう?一週間後の土曜にセミナーがあるんだけど、新山さんも参加してみない?」
「俺はそう言うのちょっと……」
「ちょっとだけ来てみない?」
言い切る前に日辻の腕が新山の右腕に絡まり、胸元に押し付けられていた。
同時に血流が顔に集中し、息が詰まりそうになる。
「ねぇ少しだけ来てみない?」
向かいの席にいる乾が、テーブルの中程までに身を乗り出した。
「はぁ……」

一週間後の土曜。
電車の窓から外を眺めると、空には一週間前の面影は無く、灰色の雲が広がっていた。
待ち合わせはJR鶯谷駅前に午前十時と言う事だった。
鶯谷は田端から電車で僅か二駅差だと言うのに、大きな違いがある。
新山が電車から降り俯く。
「北口だよな……てかよりによってこんな気まずい場所を」
新山が愚痴りながら北口への階段をあがり、改札から出ると、少し離れた所に妖しいネオン看板を掲げるラブホテル街があった。
「どうもおはようございます」
「……ども」
駅を出るとすぐに日辻が新山を見つけ、声を掛けてきた。
「じゃあ行きましょう」
「それでセミナーって何処で?まさかホテルの中とか言わないですよね?」
「あ……それはないですからっこ、この、商店街抜けた所のお寺の近くのっあぱっアパート」
顔を赤く染め、日辻は否定した。
(普通、ラブホテルだらけのここを商店街と言わない……けど面白いからそれは黙っておこう)
日辻を落ち着かせると、新山はどうでも良い事を考える。
ラブホテル街を抜けると大きな車道が、その向こうには寺があった。
「ここの三階」
日辻が指差したのは、寺の脇にある三階建ての灰色の長方形の、ありふれた雑居ビルだった。
階段を階を上がる毎にを不安が新山の背筋に走り、踊り場の窓からの見える空模様が更に煽った。
三階にあがると、プレートの掛けられたスチールドア。
白地のプレートには『荒井美園光導セミナー』とプリントされていた。
チャイムを鳴らすと、ドアの向こうから人の足の音が聞こえた
「いらっしゃい、日辻さん、こちらの方は……」
ドアを開けたのは二十代後半の髪の長い女性だった。
新山の顔を一瞬凝視し、微笑んだ。
あ、この間話した……、と日辻が言おうとした所で
「良いわ、とりあえず中で話しましょう」

そう言って招き入れた。
中に入ると、受付の小さな机と水色の安っぽい仕切りが置かれていた。
そこには置かれたノートとボールペンが置かれていたが、何も言われない。
奥へ入ると、二十畳程の広さに中央の丸椅子を中心に、パイプ椅子が扇状に八つ置かれていた。
座席は既に五つ埋まっており、年齢はばらばらの男性が新山を含め五名、女性は日辻と先日の乾、主催者らしきこの女性の計三名。。
「じゃあ日辻さんと貴方はこちらに座ってね」
その女性は乾の隣の座席を指差した。
「それでは本日の講座を始めます、と、その前に今回は初参加の方がいらっしゃるようなので私の自己紹介をしておきます。
私はこのセミナーの主催者の荒川美園と申します、どうぞよろしくお願いします、新山さん」
「あ、はい、こちらこそよろしくお願いします」
ふと新山は、自分の名前を何故知っているのだろうか?と思った。
「それでは本日のテーマは……始めて下さい」
荒川は脇に置かれたホワイトボードにマーカーで『経験』と書いた。
「では山田さんから」
「はい」
山田と呼ばれた男は立ち上がる。
「私は一年前までは○×自動車本社の品質管理部の部長でした。
しかし、一年前の脱輪事故に伴い、責任を押し付けられ、会社をリストラ、そして三ヶ月前、妻に離婚を中学生の娘には……どうすれば良いのでしょうか?」
(そんなの知らないし……帰りたい)
話が終わる頃、新山の心境は今日の天気のような気分になっていた。
突然、加納の隣の男が手を挙げた。
「それは自業自得なんじゃないですか?もっと仕事をきちんとして家族を見て居ればそんな事にはならなかったとおもいますよ」
とその男は言った。
それ以降、家庭、仕事、鬱、人間関係、と言った話題をしては、メンバーが否定的な発言を繰り返されていた。
そして五番目の人間は、日辻だった。
新山は彼女に恋愛感情を抱いている訳でも、何か惹かれる物がある訳でもない。
(あるとしたら奥様方の井戸端会議的な好奇心位だな)
「あたしは引っ込み思案で、人に話し掛けられても答えられなかったり、話し掛けられなかったり、要領も良くなくて、忘れ物も多かったりで、本当に駄目でした。」

以下、日辻さんの性格設定の為に長くしてますが、要点を掻い摘んで説明。
大学入試の時に消しゴムを忘れたら、男の子がシャーペンと消しゴムを貸してくれたのだけど、話し掛けられず返せなかった。
大学で会えれば返せると思ったら、居なかったんで諦めてたら、去年の新入生にそれらしき人が居たんだけど、引っ込み思案の性格で返せていません。

それで去年の大学の入試で、消しゴム忘れちゃったんです。
家を出る前に何度も何度も確認してから出たのに。
それで試験会場でおろおろしちゃって、でも試験まで後何分もなくて。
少ししていると、後ろの席の男の子が声を掛けて来たんですけど、何も言えなくて俯いてたんです。
試験まで後一分前位になったら、シャーペンと千切った消しゴムを渡してくれたんです。
それで試験には何とか合格したんですけど……使わなかったシャーペンを返しそびれて
返したかったんですけど、こんな性格で話し掛けられなくて返せなくて。
それで大学で会えたら返したい、って思ってたんですけど。
当たり前ですけど都合良く会えなくて、諦めていました。
けど去年の講義で会えたんです。
知人の話では、今年の新入生だってそれで違うのかって思ってたんですけど。
詳しく聞くと、浪人したって聞いて、それで返そうとしたんですけど。
私の事なんか覚えてないだろうし、それに浪人した事を笑ってるとか思われそうで。
未だ返せていません。
それで内気な性格を治そうとここに通い始めたんです。
先週偶然、元々彼の通学路だから会えるかもって気はあったんですけど、運良く会えました。
どうしたら良いでしょうか?」

新山が手を挙げ
「話が長い。要点だけ纏めて下さい。判りづらいから」
と言った。
途端、日辻は何も言わずただ椅子に座った。
(……判ってたけど自己啓発セミナーだな。
さて、どうするか……場に流された振りをして帰えってやるのが人として優しいけど
また誘われるのも敵わないからなあ。
……バッサリ切って、出入り禁止位にする位しないと駄目だな。
でも日辻先輩の話って、なんかどっかで……ま、良いか)
「それでは最後に新山さん」
「ああ……はい、えっと経験ですね」
立ち上がり、咳を払った。
「先週ですが、久方ぶりに知人に会いました。
「なつかしい」で始まって話し込むような人ではなく
「何処かで見たな」と言う人。
そしたらその知人、怪しげなのにはまりこんでました。
で、誘うんです、俺を、怪しげな集会に。
正直、うざいんですが。
でも俺は大人ですから、適当に話を合わせてあげました、優しいので。
それで来てみたら、いい大人達が集まってぐだぐだ、自尊心を自傷行為してる連中。
別に不安なら解消する手だてを考えれば良いのに。
病院行くとか、カウンセリング受けるとか、友達に相談するとか、色々あるんですよ?
何もしないで、食い物にされてんのも気づかないで。
自傷行為みたいな会話の後、つまんない水とかなんか買わせたり
十万とか二十万とか法外な場所代払わせれたり。
金あるならカウンセリングとか医者行けば良いじゃないですか。
そっちの方が確実なのに。
後、時間あんなら家族呼び出して腹割って話すとか。
分り易く言うとですね。
貴方達に付き合ってると疲れるので帰ります。
それじゃさようなら」
集まる視線の中、新山は腰を上げ、何事も無かったかのように、外へ出て行く。
それと同時に何か、罵声や騒がしい声が聞こえた。
「牛丼食って帰ろっと」
ビルから出ると、小さな雨粒が新山の頬に当る。
手を掲げ空を仰ぐと、雨粒はまだまだ大きくなりそうだった。

六月初旬。
天気予報では、梅雨入りと言う単語が出ていた。
それもあってか朝から空は曇っていた。
先程から木々の濃い緑の葉が雨粒を載せては零していた。
新山はその静かな落下音で雨が降っている事に気づいた。
「そーいや柏先輩」
「新山ちゃんから話し掛けて来るなんて珍しいわね、で何よ?」
柏と呼ばれたボブカットの女生徒は、読んでいる雑誌の女性アイドルのグラビアから目を離さない。
「こないだ誰だったかな……日辻先輩に会ったんすよ」
「……日辻って動物の?」
「いや人間の、眼鏡掛けたの。えーっと確か日雇いの日に、辻斬りの辻で、ひつじ」
「嫌な苗字説明ねえ、あんた生徒会長選挙の推薦人とか向かないわよ?
……ああ日辻ちゃんね、何処でよ?」
「余計なお世話です、ちなみに駅前です、御茶ノ水の」
「へえ……それで?」
「なんか新興宗教っぽいセミナー誘われました」
「……マジ?」
柏は読んでいた雑誌から目を外し、新山の顔に視線を向けた。
「それで付き合いで行ってきたんです」
「……日辻ちゃんそんなのはまっちゃってたのか。ミスったわね」
「日辻先輩が?」
「いやあたしが」
「良くわかんないっすけど、それであんまりキモイ連中ばっかだったんでおまえらキモイって言って帰ってきました」
「それで日辻ちゃんはどーなったの」
「さあ?そのままですよ」
「はぁあ?」
普段、無気力な空気を全身から垂れ流している柏の空気が止まる。
「女の子そんなとこの放置して帰ってくるなよ……」
柏は鷲の爪のように自分の額を掴む。
「でもズップリはまっちゃってるみたいだったし、俺がどうこう言ってもしょうがないと思いますよ、あれは」
「……あんた、あの子の事知ってて言ってる?まあ知らないから言ってるんだと思うけど」
目つきの良くない柏の人相に、不満が混じり始めた。
「なんか話が見えないんすけど」
「あんた、あの子に告白されなかった?」
「告白もなにも、そもそも惚れた腫れた以前にほとんど話した事無いですし」
「あー、とりあえず日辻ちゃんなんとかしないと。セミナーの住所と名前教えて」
柏は懐から携帯を取り出し、素早い動きで文字を打つ準備を取った。
「荒川美園光導セミナーだったかな。
細かい住所はちょっとわかんないっすけど、鶯谷の寺の近くでした」
「解るか馬鹿、鶯谷に幾つ寺あるとおもってんの」
「じゃあ東側方面の寺で」
「かわんないわよ。とりあえずあんた案内しなさい」
携帯にあらかわみそのと打ち込む。
「いや……何でそこまでするんですか?」
「私が結構焚き付けちゃったのよ、告白出来た?とか、もっと積極的に!とか会う度に
すんません、デリカシーなさ過ぎでした」
「俺に謝られても、それで何で俺なんすか?」
「いや……まあそれはおいおい。
てかこないだ使わなくなった教科書あげた恩を忘れた?」
「……あれ、加藤先輩の名前が書いてあったんですけど」
「良いから!」
「いや、でもこれから講義が」
「老い先短いじじいの遺言と、若い女の子、どっちが重要?」
「講義」
「後でたっぷり聞け!じゃあそんな訳で伊藤君はノートのコピーを!守河教授はこのまま講義を開始して下さい、それでは」
「何処へ連れて行くんですか!」
「こう言うのに詳しい工学部の佐藤君のとこ!」
柏は新山の手を強く引き、教室から出て行った。
廊下からだと教室の上部窓からでは解らなかった外の様子が良く解る。
強い雨ではないが、静かに、長く降り続きそうな雨だった。

新山は柏を件のセミナーの会場だった雑居ビルに案内し、雨の中を待っていた。
しばらくすると彼女は不機嫌そうな顔で出てきた。
「どうでしたか?」
「個人情報に関する事だから教えられない、って言われた……はぁ。折角菓子折持ってったのに」
柏が肩を落とし、全身から溜息を吐いた。
「後、情報管理って大事ですもんね、昨今のゆるゆるなのばっかなのに、良い所じゃないですか。
なんか入れてたみたいですけど。腐ってるの混ぜてたバレたんじゃないですか?」
あんたね、と柏が睨み付ける。
「冗談ですよ、でも俺が行くよか、先輩の方が良いと思いますよ、思いっきりおまえらキモイって言っちゃったし」
新山はビルの外、傘布越しにセミナーの会場だった三階の窓を見る。
人影は見えない。
「携帯も住所も大分前に変えちゃったから連絡取れないし……何処いっちゃったんだろ。
せめて話せればー」
「話せても無理だと思いますよ、こう言うのはまっちゃった人って、間違い指摘されても火に油みたいな感じになるし」
「や、原因はあんただし。どうにかなるわ」
「俺関係無いし、てか俺が告白されたとして、受入れなかったらどーなんすか?
逆戻りなんじゃないすか?やですよ俺は。人助けの為に、好きとか言うの」
「良いから、あんたは黙ってなさい」
柏はそう言うと頬、鼻、口に右手を当て、雨を睨んでいた。
雨脚は強くも弱くもならず、ただ続いている。
ビルの向かいにある寺からは経が聞こえる。
晴れる気配は無く、ほの暗い昼の二時過ぎ。
それらは新山と柏の心境を良く表している。
突然、柏の携帯電話が鳴った。
「あ……はい、柏です、ちょっと待って下さい。新山、場所換えるよ」
二人は雨の中を歩き始める。
水溜まりを避けるが、跳ねる滴が靴を汚していた。
「あ、はいはい……判りました。どうもお手数を掛けました。はい、それでは」
普段の乱雑な柏とは思えない対応だった。
柏は足を止め、溜息を付いた。
「誰だったんですか?」
「ゼミのOBで、出版に勤めてるライターの人。
ちょっとここのセミナーの事を聞いたの。まあ良い話じゃない。
とりあえず規模としてはあんま大きくなくて、有り触れたインチキ屋さんだってさ。
救いなのは規模が大きくないから、会場とか事務管理するとしたら一カ所位じゃないか?っつー話。」
「学生課行って、日辻先輩って自宅ですよね?学生課で住所と電話番号聞けば良いんじゃないですか?」
「聞いた、駄目っていわれたけど無理矢理聞いて、電話したらこの三日位帰ってないって」
「家出ですか?」
「やーそー言う事する子じゃないし、てかそれはそれで問題だし」
「八方塞がりって奴ですね」
そうね、と柏の声がより不機嫌になった。
「夜になるのを待って忍び込んで……」
「犯罪ですから」
「さて……どうするかな」
「……俺、帰りますよ」
「ってあんたねえ」
「だって手詰まりじゃないですか、どうしようもないですよ。
それに俺がムキになる理由もないですし」
「だからっあーも、帰れ!好きにしろ、ばーかっ」
柏は小学生のような罵倒を、見えなくなるまで続けた。
新山が電車に乗り、田端の自室に着く頃には四時を過ぎていた。
「っと」
郵便受けのダイヤルを回し、開けるとそこからはピンクチラシ、ダイレクトメールが崩れ落ちた。
その中に一通、白い封筒があった。
『新山君へ』
「誰だろ?」
裏表と回転させて見るが、心当たりはない、それに切手も貼っていなかった。
中には何か硬い物が入っており、少し重い。
アパートの階段を上がり、自室のドアを開ける。
ベッドの上に腰を下ろす。
端を少しずつ千切るように封を開けていく。
封筒の口を歪め開くと中にはシャーペン、便箋が一枚、更に奥に消しゴムが一つ入っていた。
「何処かで見たような?」
としか言いようがない、有り触れた……コンビニで買える安い物だった。
便箋を開くと、丁寧な文字が書かれていた。

先日は大変失礼しました。
突然、あの様な所に連れて行ってしまい申し訳無く思っています。
言い訳をしてしまいそうなので、出来るだけ簡潔に書きます。
三年前の冬、入試で、消しゴムとこのシャーペンをお借りしました。
その場で、すぐに返そう、としたのですが、人と話す事が得意ではなく、話し掛けられませんでした。
昨年の入学式で、偶然貴方を構内で見掛けました。
幾度か返そうとしたのですが、中々声を掛けられず、返す事が出来ませんでした。
それを治す為に、色々考えていたのですが、思うだけで上手くいかず、あのセミナーに参加していたのですが、結局、あんな事になってしまいました。
あの場の勢いを借りて言おうとしたのですが……三つ子の魂は百までと言うのでしょうか?
結局言い出せませんでした。
最後には、貴方が怒らせてしまいました。。
結局、手紙で返してしまうような事になってしまうような情けのない自分が申し訳無く思います。
余り長々と書くのも何ですので、最後に
あの時は、どうもありがとうございました。
おかげで、無事合格出来ました。
それでは。

「あれか……あー」
新山が手紙を読み終えると、唸り声を上げ、その前で動けなくなっていた。
「なるほど、あーでも……じゃあ俺の責任も少しある?ある……かな。
でも……これは」
消しゴムをしげしげと手にとって見る。
「大きすぎるな、俺があげたのは……っと。こん位だったな」
先端部を摘み、大豆程度の大きさのねじ切った。
「残りは返さないと」
大きな消しゴムをズボンのポケットに仕舞い込む。
軽く溜息を付いた後、携帯のアドレス帳から、柏の名前を探し出した。
「先程はどうも、今何処に?」
「えっと、近所の喫茶店でカップルに塗れて、悲しい気分に浸ってる」
「御愁傷様、それで何か解ったんですか?」
「何というか……あんまよろしくない状況なのは解った」
「よろしくない?」
「うなんかね、あれだ、受講料が払えないなら体で返せ、みたいな、話が出てた」
「……何処で聞いたんすか?」
「や……こーなんだ?秘密の小道具と言うか、神様が菓子折になんか秘密空間を繋げて聞いたの!決して、怪しげな黒いのを知人から貰って、法律に触れるような手段をした、とかじゃないから、うん」
「まあこの際、手段はどうでも。でも警察の方々にお届けした方が良いと思うんですけど」
「あー、えっとこう言う手段で聞いた話って、証拠にならないらしいんだわ。
あれだ、別に日辻ちゃんが、決定って訳じゃなくて。なんか金が払えない奴は云々ってのだから」
「それで、あの雑居ビルですか?」
「っぽいね、と言うかね、詳しい話を聞く前に電池切れちゃって聞けなかった」
役立たず、と感情の起伏を全く感じさせない口調で言った。
「酷い……でも殴り込む訳にもいかないし、どうした物かしら?」
「忍び込む、奪還、警察へ、ってのが理想ですけど……ヤクザですよね?会話の内容からして」
「ヤクザ屋さんっぽいね、趣のある会話だったし」
「とりあえず人が少なくなってから、頑張って忍び込む方向で」
「でも……それって犯罪だよね」
「控え目に見ても、犯罪ですよ」
「……あたし帰りたい」

午前一時半過ぎ。
新山が柏が、鶯谷駅北口で合流してから既に三時間が経っていた。
幾つかの救出案を考えたが、人気が無くなってから不法侵入し、彼女を発見したら最寄りの警察署か交番に彼女を駆け込ませる。
と言う話で纏める事になった。
二人は準備を終え、夕食を済ませ、誰も居なくなる時間帯を待っていた。
「もう……居ないみたいだけど、どうやって入るの?」
「雨樋のパイプを伝って屋上まで行って、ロープ使って三階のベランダから侵入と言う位しかやりようが……後は放火位しか……重犯罪位ですが」
「放火魔より、窃盗犯の方が罪軽いし前者で。でも登れるの?」
「何とか……家の鍵を無くした時、よじ登ってベランダから入った事あったし……近所の住人に通報されましたが」
「じゃあその泥棒テクを遺憾なく発揮してきて、私は君を信じて帰るから」
「ここまで来て逃げんな」
後ずさりしていた柏の肩を掴んだ。
「じゃあ行ってきます。誰か来たらなんとか教えて下さい、手信号とかで」
「そんなもん知らないわよ」
新山は笑って、スニーカーと靴下を脱ぎ、パイプの掴み、一歩ずつ壁を上がっていった。
足の親指を、壁とのジョイントに掛け、ゆっくりと体を上に上げていく。
時折、パイプが軋む。
柔軟性に富んだプラスチックだが、後ろに大きく負担を掛ければ、壁とのジョイントが引き抜かれかねなかった。
だからなるべく垂直に、鉄棒を登るように、上へ、上へ、体を前に押し付け進んでいった。
三十分程四苦八苦していると、どうにか屋上へと辿り着いた。
「すげ……これなら何時バレて、大学クビになっても生きていけるわな」
「他人事言ってないで下さい」
ポケットに入れていた靴下とスニーカーを履き直し、手摺りにザイルを掛け、それを伝い、半月前に入った集会場の窓へと体を運んだ。

「誰?」
窓の内側から声が聞こえた。
「貴方、何してんの?」
窓辺に現れたのは、セミナーの主催者の荒川と言う女性だった。
「あの時の人よね……泥棒だったの?」
「いや……違いますけど」
「違うっていっても、三階の窓の外で、ぶらぶらぶら下がってる人なんて幽霊か、泥棒位しか思いつかないんだけど……入りたい?」
「そりゃまあ」
「中に入れてあげても良いわよ、何してるのか教えてくれたら、だけど」
「……えーっと、日辻さんに会いに」
「ああ……あの子ね。なんで?嫌ってたんじゃないの?」
「いやまあ、確かにそうなんですが、色々と込み入った事情があってですね」
「ふーん、まあとりあえず入って良いわよ、窓割られるより良いしうるさくなくて。
後彼女ならそこのベッドに寝てるから」
「で、事情を教えてくれるんでしょうね?」
「(来た事情を十五分程掛けて説明しています)」
「はーへー、まーアレね愛すか?若いね。でどするの?会えたし帰る?
帰っても良いけど、色々めんどくさい事になるかもよ?」
「それはまあ……別に」
「君……面白いね。まあ私は面白いから君がその子持って帰っても別に良いわよ。
私の目的お金じゃないし、それに君が面白いから、馬鹿で」
「はぁ……」
もっと悪玉が言うような言葉を想像していただけに、荒川と言う女性の言動は拍子抜けだった。
「なんか勘違いしているみたいだけど、私がここで、セミナーやってるのはただの趣味だから。
お金とかじゃなくて、趣味。まあ回りはそうとは思ってないのが増えてるみたいだけど」
「それとか」
突然、背後から手が伸びて、新山の首を押さえ付けた。
そのまま、生き物の洋に締まっていった。
奇妙な金属音と共にそれは緩んだ。
「とりあえず逃げて良いよ、後、面白くするために、下の彼女にこれを渡しておこう」
そう言うと机の上にあった何かの名簿らしき物と伝票の束を柏目掛けて投げつけた。
「じゃあ後は頑張って」
彼女はそう言うと、携帯のボタンを押した。
途端、階下から人の怒声が響き渡る。
何かが階段を駆け上がるような音が聞こえ、仕切りの向こうから、乾と呼ばれていた女性が眠そうな顔を覗かせていた。
そこから逃げるように、新山は日辻と共にロープを伝い降りた。

新山と日辻は二人は雨の中をホテル街の細い路地を走った。
時間は既に二時過ぎ、終電は終わっていた。
衣服に染み込んだ雨が、際限なく体温を奪っていく。
妖しげなネオン看板の明りで、狭い路地の夜は濃くなっていたが、出口からの光が道標のようだった。
抜け出ると、また路地へ、それを繰り返していた。
遠くから罵声が聞こえる。
恐らくは追い掛けてきた人間なのだろう。
それは段々と近付いていた。
(どうすれば……このままじゃ捕まる)
新山が悩んでいると日辻が、新山の腕を掴み、強引に前にあった小さなホテルの入り口に引き込んだ。
「何を……」
「良いから……良いって言うまで顔を下げてあげちゃ駄目だよ」
「あ、はい」
日辻が新山の手を握る力は徐々に強くなり、足は比例するように遅くなっていた。
自販機でジュースを買った時のような音が聞こえた。
「行こう」
日辻に手を引かれ、エレベーターに乗った。
ホテルの中は、薄暗く、四メートルも離れれば相手の顔を把握する事は出来なかった。
出来るとすれば、頭上に幾つも置かれた警備用カメラ位だった。
鍵を開ける音が聞こえた。
「入って」
「は、はい」
新山が部屋に入ると、日辻は素早くドアを閉めてチェーンを掛けた。
「もう良いよ、お疲れ様」
日辻がそう言うと、新山の目の前に広がったのは、青いライトに、七色の光を放ち回転しているミラーボール。
その中央には、ホタテ貝の形をしたダブルベッドだった。
「悪趣味」
と新山は率直な感想を言った。
「しょうがないわよ。急ぎだったし、部屋選ぶなんて考えられなかったんだから。
それにこんな所、前は通っても入った事なかったんだから」
日辻は手前に置かれたバスタオルを手に取り、一つを新山に手渡した。
「どうも……それにしては随分慣れてるみたいだった」
「捕まったら何されるかわかんないし……あたしも、新山君も。
テレビドラマとかだと、警備カメラに顔が写ってて、ばれたーとか良くあるじゃない。
まあでも出入りは無人って聞いたから、受付の人も聞かれたからはいどうぞって言うのは無いでしょうけど
……とりあえず、一軒一軒全部の部屋をチェックする訳にもいかないだろうし、今の所は安全です」
「……先輩、吃音止まってますね」
「自分でも驚いてる。でも一番驚いたのは、新山君が居た事かな」
「そりゃまあ……でも半ば柏先輩に強制されただけだし、俺は大した事してませんよ」
「……でも助けに来てくれたから」
「さいで……とりあえず俺は疲れましたから寝ますから、先輩は風呂でも何でも入ってそっちのベッドで寝て下さい」
「新山君は?」
「俺は……トイレで寝ます。一緒に寝る訳にもいかないし」
「良いのに」
「世間が良くないので……じゃ」
そう言うと新山は体を拭き終わったタオルを日辻に返しトイレの中に入り鍵を閉めた。
洋式トイレの便座に腰を下ろし、タンクに背中を預け
「疲れた」
水漏れのように新山の口から一言溢れた。

目が覚めると、声が部屋から聞こえた。
寝ぼけ眼でトイレから出ると日辻がソファーに座りテレビを見ていた。
「先輩……何見てんすか?」
「セミナーの人が」
新山ははっとするように下げていた視線をテレビに合わせた。
テレビには見覚えのある男が二名の写真と、大規模な人身売買の疑い、と書かれたテロップが流れていた。
新山は日辻の隣に腰を下ろし、息を付いた。
「柏先輩……上手くやってくれたのかな」
「……新山君、電話してみて貰える?」
「はい」
携帯を開きアドレスの中から、彼女の番号を押すが
「電源が入って居ないか、電波の……」
としか返ってこなかった。
「これ!」
まさか捕まってそのまま……と最悪の事態を考えていると、日辻の声が響いた。
顔を上げると、テレビの画面に柏の姿があった。
警察に保護されていたのか、道理で電話が繋がらない筈だ、と安堵した。
しかし、捕まったのは二人だけで、洗脳行為をしていた筈の荒井美園とその助手である乾の名前はなく、あくまで二人に寄る人身売買、と言う話になっていた。
「あたし達大丈夫……かな?」
日辻が新山の手を強く握った。
「多分、大丈夫ですよ……でもまあ悪い人じゃなかったし、逆恨みして仕返しはないですよ」
「……うん、最後は助けてくれたもんね」
「まあ高い金払ってたし、それ位はしてくれないと元が取れないんじゃないすか?」
「……もう取れてるから良いよ」
日辻の言葉と同時に握り込んでいた手は緩み、新山の手を優しく包みこんでいた。

七月一日。
テレビでは、本日梅雨明けと言っていたが、もう一週間も強い日差しの日が続いていた。
JRでは六月半ば位から冷房車が稼働しており、車両から降りるのが辛く感じ始めていた。
試験が近くなり、図書館のコピー機に行列が出来る日が増えていた。
まだ夏休み前だと言うのに柏は内定を取った、と喜んでいたが、卒業論文がほぼ未着手で、現在、資料集め等で忙しいらしく、六月の下旬頃からずっと見ていない。
先日、コピーの行列に腹を立て暴れていた、と言う話を聞いた。
件の後、日辻も復学し、今は新山のノートと教科書と格闘している最中だった。。
一年近くも休学していた事もあり、留年は免れないらしいが、まんざらでもない顔をしていた。
新山が構内の掲示板の前を通ると何やら騒がしく、聞いてみると守山助教授が、夏休み明けに教授に昇進する、と言う話だった。
リノリウム、コンクリートの壁、蛍光灯、代わり映えのない通路。
教室に入り見渡すと、日辻、柏、その他にも顔馴染みの生徒が居た。
守山助教授が来るまで、しばしの歓談を楽しむ。
夏休みに何処かいこうか?と言う話や、柏の卒論の進行状況、日辻の勉強、新山には全てが新鮮に感じられた。
そうこうしている間に、二十分が経過していたが、肝心の助教授が来なかった。
何か急用……臨時休講だろうか?と生徒達の間でざわめきが波紋のように広がっていく。「はーい、みんな静かにーこっち向いて」
何処かで聞いたような声、それと同時に色違いのざわめきが聞こえた。
「あれ……?」
黒板の前に焦点を合わせ、目を揉む、見るを繰り返すが、そこに居るのはどう見ても守山助教授ではなかった。
「急な話ですが、守山助教授はチンパンジーの社会システムとエイズ発症の伝播の研究するため、コンゴへフィールドワークに行ってしまいました。
急遽、代理のえーっ」
教壇に居るのは三名、一人は見慣れている学長、二十代前半、ショートヘアの女性、一人は二十代後半、ソバージュの女性。
「それでは自己紹介をお願いします、荒川講師」
「はい」
そう言うと彼女は黒板の前に移動して、チョークボックスから一本取り出し、音を立てた。
「私、荒川美園です。若輩ですが、当分の間、守山助教授の代理で講師を務めさせて貰います。
こちらが助手の乾さんです。
歳は二十八歳。
上から九十二、五十一、八十六、視力は左右共に1.5、眼鏡は伊達です。
趣味は読書と洗脳です。
皆さんよろしくお願いします」

後書き

中盤が……
後、予定していたの物より量が多すぎたり、コピペ展開入れたり。
もっと構成力と設計と自分締め切りを意識して書かないと……。

この小説について

タイトル 味噌式
初版 2008年1月16日
改訂 2008年1月16日
小説ID 1790
閲覧数 840
合計★ 2
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コメント (1)

★水原ぶよよ 2009年2月15日 1時29分13秒
偶然見つけました。
一字開けるなど、文章の打ち方云々はともかくとして、楽しませていただきました。
ジャンルがなんで「らぶらぶ」なんだろう、という疑問はありましたが。

中盤はわかりにくかったですね。
あとラストのオチはもう少しどんでん返しを期待してしまいました。

構成力と設計について、ご自身もお気づきになっているので、次はもっといい作品が期待できそうです。

投稿時期から今更って感じになってしまいますが、今後に期待しております。
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