sing for fog - 霧に唄え!

目の前真っ暗とか、お先真っ暗とか、

先ほどまでの文字通り、『真っ暗』が嘘みたいに『真っ白』。

きっと俺、ここで死ぬ――

***
まさに、真っ白。他に形容する言葉が見つからない。
俺は慌ててブレーキを踏んだ。

耳障りな高音の後に、車体が前のめりになりつつもなんとか停車。

――なんだ、こりゃ・・・

目の前の光景が信じられず、俺は車から降りた。
しかし、降りたところで状況は変わらず、真っ白。
俺はブチキレそうな思考回路をなんとか復興させるため、深く深呼吸をした。

――・・・よし、なんとかいけそうだ。

とりあえず状況をよく理解し、この怪奇現象の原因を探ってみることにした。
大丈夫、俺は教師だ。いつでも冷静になれる。
俺ならできる・・・!
自分に鼓舞しつつ、いままでのことを振り返ってみる。

まず、俺はここまで車できた。それはまず間違いない。
それでもって、このトンネルを通ってここまでたどり着いた。
うん、それも合っている。後ろにトンネルがある。

俺は軽く疼きだした米神を押さえる。
これは今後、頭痛くなるような問題が起こったときの俺の癖となる。

次は原因だ。

1,嵌められた。
  誰が?何のために?

2,道間違えた。
  それはありえない。道なら何度も確認した。泣きながらだけど・・・

3,夢オチ
  だったらいいのに・・・残念ながら、俺の頬は痛みを訴えている。

4,校長に嵌められた
  1と同じじゃないか!

5,い、異世界・・・?
  ファンタジーか!ありえないだろっ!

6,病気
  かもしれない・・・だが、トンネルと車は見えている。

結果:答えが出ない!!

「だぁぁぁっ!!どういうことだ!」

俺はとうとう髪の毛を掻き毟った。
なんで俺がこんな訳の分からない状況にならなけりゃいけない!
俺が何をした!?

ずるずると座り込みながら俺は泣き出したい気持ちを押さえ込んだ。

――今までは恵まれていた。夢であった、しかも有名中学の教師にもなれた。
  たいした実績は出せなかったかもしれないが、それでも幸せだった。
  しかし、なんだこの低落は。

田舎中学に左遷され、目の前真っ白とは・・・
しかも、さっきからなんか冷たく濡れるし・・・
         ん?濡れる・・・?

なんとなく自分の言葉に引っかかった時だった。

                 ぽんっ

  突然、肩を、叩かれた。
そして当然。

「うわぁぁあーー!!」

          叫んだ。
すると背後から、

「うきゃぁぁあーー!!」

似たような叫びが聞こえた。

「え・・・?」

「ふわわ。び、びっくりしました・・・突然叫ばないでください」

そこにいたのは俺と同じくらいの歳の女性だった。
腰を抜かしてへたりこんでいる。

「いや、急に肩叩かれたら誰でも驚くよ」

まぁ、ちょっと過剰反応だったが・・・

「ああ!そうでしたか、すみません!」

女性は慌てて謝ると土を払いながら立ち上がった。
今時、みつあみか・・・イモい・・・

「失礼いたしました。私は、『霞中学』(カスミチュウガク)の教師、『市谷 聖美』(イチガヤ サトミ)といいます」

どうぞお見知りおきを。と言って、市谷は深く頭を下げた。

「お、僕は、東雲 徹。と言います」

俺も立ち上がり、礼儀正しく挨拶をする。
すると、市谷は小首を傾げ、クスリと笑った。

「ええ、存知ておりますよ。うちの学校に研修にこられた先生ですよね?遠路遥遥ご苦労様です」

「へ?研修?」

「?ええ、東雲先生ですよね?」

え、ちょっとまて、研修?ここで?
ちょっと巻き戻してみよう。

『私は、『霞中学』(カスミチュウガク)の教師、『市谷 聖美』(イチガヤ サトミ)といいます』

「え、じゃあここが・・・」

「この町、今の時期は霧がひどいんですよ。ですから迷子になってもいけませんし、お迎えに上がったんです」

市谷はにっこり笑う。

「ではどうぞ、ご案内いたしましょう」

――目の前は、真っ白。
  だが、正体が分かっているだけましだ。

後書き

全く、めちゃくちゃだ・・・

この小説について

タイトル 霧に唄え!
初版 2008年2月3日
改訂 2008年2月3日
小説ID 1805
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