夜に咲く花  - 第一話 腹の虫

爽やかな風と共に桜の花びらが開いている窓から入ってきた。
その花びらはひらひらときれいに舞ながら俺の手の甲に乗った。
遅れ咲きか?などと思いながらその花びらをつまんで眺める。
……あれ?もーそろそろ6月でこの辺りには桜は咲いてなかったと思うけど……。
でもまー今ここにあるって事はどっかで咲いてんだろ。
「……ふわぁぁ〜あぁ…―いってぇっ!」
「ぶぁかもん!授業中だぞ!?そんなでっかい欠伸をしてるんじゃない!入学早々たるんどるぞっ廊下にたっていろ!」
花びらを眺めながら大きな欠伸をしているところに、数学科教師の塚本伸一―通称:ミルクデブ(年を取って軽く白髪になっている髪が牛乳のようだから「ミルク」。「デブ」はそのまま。と、いう理由。)が、俺に向かって黒板消しをぶつけてきやがった。
いつの時代の教師だよ……。
「返事ぃ!!」
「……はい……」
ったく、ワケわかんねーところで無駄にきびしいんだよなぁこの学校の教師は。

―というわけで廊下に立っているんだが、眠くて眠くて……あーマジやべぇ。
「ぐーうぎゅるるるるる〜〜」
おーすげー。ちなみに今の腹の虫。
あーそーいえばもう4時限目か。そりゃ腹の減るわけだ。
4時限目が生物なら間違いなく早弁している時間だ。もし今日今の時間が生物でも我が妹のせいで弁当は作れていないから食えないんだが……。
しかし、そう考えるとさっきのあの腹の音を教室中に響かせていた。ということになるな……。
おぉ、恐ろしい……。今の瞬間だけミルクデブに感謝!
とかなんとか考えているうちに4時限目が終わった。

「うぅー……はらへったぁ〜」
ガラガラと教室の扉を開けると、フラフラと自席にダウンした。
「ウメちゃん。お前何やってんの?バカじゃん」
俺が席に座るなり近付いてきた男は柊蘭丸(ひいらぎらんまる)。
俺の小学校からの友。腐れ縁ってやつだ。
ついでにいうと、ウメちゃんというのは、俺の名前の梅崎大賀(うめさきたいが)の梅から取ったらしい。
「っだよ、蘭ちゃん。俺は腹減ってお前と遊んでられないの。ってアレ?どこだ、蘭ちゃん?」
俺はわざとっぽく辺りをキョロキョロしてみる。
「うわっサイテーだ!見えてるくせにそんなことしてんじゃねーよ!ってか、テメーが蘭ちゃんって呼ぶなっ」
立ったら俺の肩ぐらいしかない身長の蘭丸が俺の椅子をガンッと蹴った。
「うわーバカやめろ。腹にひびくぅ……」
俺は大袈裟に腹に両手を当ててうずくまってみせる。
「アホちゃうか。頭はわかるけど腹ってなんや。しかも空腹でかいな」
蘭丸の代わりにツッコミを入れた関西弁少女は、蘭丸の彼女で俺の妹の友達でもある。名を野崎優紀という。蘭丸の事を蘭ちゃんと呼んでいるのはコイツだ。
「何をいう『野山』よ!あのな、下から震動がくると、こう……なんてゆーか、腹が、ぐわ〜んとな?」
「ハイハイ。まーえーわ。そんなもん。どーでもえーけど、いい加減ウチのこと『野山』ゆーんはやめなさい?」
野山……改め、優紀は笑顔で近付いてきて俺の頭をわしづかみにして力を入れた。
うお〜……ちょっと待て、あ、頭が割れる……。
俺が優紀のことを『野山』と呼んでいるのは、こいつの字が昔すっげー汚くて、「野崎」の「崎」っていう字のへんとつくりが離れてて、俺が「野山 奇優紀」と読んだのが始まり。
その後は言うまでもなく、俺は特大ゲンコをもらったわけだが、優紀はその後めちゃくちゃ字の練習をしたらしく、今ではかなり字がきれいだ。
「兄貴ー弁当ー」
と、言いながらのこのこやってきたのは俺の双子の妹の梅崎楓(うめさきかえで)だ。
いやいやいや……。状況見てから言おうぜ?
俺今頭捕まれてますから。しかもお前の友達に。な?いや、ミシミシいってますって!
優紀さーん、握力何kgですかー!?
「お、お前な……兄を助けようとは思わんのか?」
俺は楓に救いの眼差しを向ける。
「兄貴が悪いんじゃん?優紀の嫌がることいってるからだよ」
「いやいや……それはちと違うんじゃよ。もともとこいつの―……いででででで!!?ごめっ、わかった!悪かったって!だから離せよ―っと、うわぁぁ!!」
俺は再び力を入れてきた優紀の手から逃れようと椅子の上で暴れたところ、バランスを崩して椅子ごと後ろへ倒れてしまった。
「……あー最悪……」
「自業自得や!アホっ」
優紀は本当に怒ってしまったらしく、俺に背を向けてしまった。
「っだよ、悪かったよ……」
すっかりテンションの下がってしまった俺は、起きあがって椅子を直しながらボソッっと言った。
「……」
しかし、優紀の反応はなし。許してくれないらしい。
俺は椅子に座り直し、ボリボリと頭を掻く。
まずいことになった……。
友人&妹は助けてくれないらしく、2人そろって首を横に振っている。その表情から察するに……楽しんでいる。
「……ごめんなさい。スミマセンでした!のや……ゴホンッ野崎優紀様、申し訳ありませんでした!」
何でここまでしなければならないのか、という疑問は浮かんだが、それは無視して「土下座」ならぬ「机下座」をした。
しかし、優紀の無言は続く。
しつけーなー思いつつも、このままだと一気に2人の友人と1人の妹を失いかねないので、もう一押しすることにした。
「………悪かったって。何でもゆーこと聞いてやっからよ」
「……ホンマ?」
「あ?あぁ、まぁ…な」
「よっしゃぁ!ほな、今日のお昼はあんた持ちな!?ウチ今月ピンチやってん。たすかるわー」
優紀は輝かんばかりの笑顔で振り返った。
「……ま、まさかお前その言葉をまってたんじゃ―」
「なぁなぁ、楓もお昼ないんやろ?」
「うん。兄貴が作ってないからね」
おいおい、ちょっと待て。俺が今朝弁当作れなかったのはお前のせいじゃねーか!
「じゃあ一緒にその兄貴におごってもらうおや」
「え、ちょっおま―」
「蘭ちゃんは?一緒におごってもらおか?」
「あぁ、じゃあそーすっかな。俺もさっきちょっとからかわれたしな」
蘭丸はニヤニヤと俺を横目で見ている。
っていうか、「あぁ」じゃねーし!
「おい!お前らふざけんなっちょ、おい、ゴラァ!!」
「のやま」+「くそちび」+「アホ楓」のトリオは「何食べるー?」とか話しながら学食の方へ姿を消した。
「人の話聞けよ!くっそ今月の生活費ー!!おい、お前ら人の財布の中身確認してから買えよ!?」
俺は鞄から財布を取り出して、3人を追いかけた。

後書き

こんにちは。初めまして、秋水です。
一人称系の小説です。
関西弁の子とかもいるんですけど、私は関西の方の生まれではないので何か変なところがあると思います。
もし、「ここちがうぞ、こんなんじゃないぞ」というところがございましたら遠慮無くズバズバいってやって下さい。
二話目ははやめにだしたいとおもいます。(明後日ぐらいに……)
では、また宜しくお願いします。

この小説について

タイトル 第一話 腹の虫
初版 2008年2月4日
改訂 2008年2月18日
小説ID 1807
閲覧数 1309
合計★ 2

コメント (1)

★達央 2008年2月6日 22時35分11秒
こんにちは秋水さん。

「夜に咲く花」の第一話を読ませていただきましたが、
大賀達の漫才のような会話の所や、数学教師のミルクデブの昭和くさい授業風景などもしっかりしていたと思います。
ただ、もう少し学食内での風景を読んでみたいかなぁとも思いました。

第二話も読ましていただきます!
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