under the moon - 〜ハジマリ〜

―カランカラン。
店のベルが久々に音をたてた。
それは“死のスタートコール”

≪勝者〜だぶる〜えぇ〜!!!!!!≫
アナウンスが2人しかいない地下フロアに無意味に木霊する。
「ちっ!またレベルDかよ!」
血まみれの男の胸座を掴んだままイライラしている少年。
「しょうがないですよ、まだ1次突破したばかりですから僕ら。」
少年をなだめる長身痩躯の大学生。
[いつまでいるつもり?早く帰ってこないと夕飯抜き!]
耳のイヤホンから流れるノイズ交じりの音声。

今日も月が笑ってる―

昨日は結局、皿洗いをさせられた碧木(アオキ)は朝からすこぶる不機嫌だった。
「最近ザコばっかだし、オーナーからはメールこないしさ〜(怒)」
「苛々したらダメですよ。そうじゃなくても碧木は血の気が多いんですから〜」
碧木の愚痴をさらりと流してたしなめる。
「なにぃ〜(怒)陸奥(ムツ)こそなんで俺と一緒にいるんだよ!」
半ば八つ当たり気味に碧木は陸奥をひじで突く。陸奥はあきれた様に一つため息をついて答えた。
「碧木を家まで送ったからですよ(呆)」
「えっ!!」

ぜんぜん憶えてない。
憶えてるのはザコどもを倒して陸奥と一緒にバイクにのってホームに帰ったところまで。
なんで憶えてないんだろ…


「いくらサドだからって未成年を泥酔させるのはどうかと思いますよ、和泉(イズミ)さん。」
「しょうがないじゃない!この子見てるといじめたくなっちゃうんだもん♪」
懲りるわけでもなくニコニコと小悪魔の微笑みを浮かべて和泉がカウンターキッチンから出てきた。
今日は珍しく和泉が夕食をご馳走するということで仕事を終わりに和泉の家(僕らはホームといっている)に向かったのだ。
確かに用があってもなかなか家によぼうとしない和泉が自ら僕らを夕食に招くなんて裏がありそうだとは思っていたが…案の定無垢な碧木は完全に和泉の玩具になっている。
確かに和泉の作ったビーフシチューは格別だったが、子供には多少アルコールが効きすぎたか。
すでにベロベロの碧木はソファーに横たわって呂律の回らない口で寝言を漏らしている。
「ホント、可愛いわ〜よく吠えるチワワみたいで♪」
和泉は寝ている碧木の前髪を玩具のようにくるくる玩んでいる。
「そいつは凶暴だからすぐに和泉さんに噛み付くよ」
くすっと笑ってこっちを振り向いた和泉は正体を知っている自分さえ恋するほどの魅惑の持ち主だ。
「今日は何かあって呼んだんだろ?」
「あら〜?スイッチOFFぅ〜?」
あっさり話を逸らされる。いつの間にかさっき飲んだビールの空き缶はタバコの吸殻でいっぱいだ。
こいつ(和泉)といると調子が狂う。

完全に「スマイルが素敵な現役大学生」から「毒舌冷酷ヘビースモーカー」にスイッチONだ。

「やっぱり、そうこなくっちゃ♪」
「お遊びはいい、さっさと話せ。」
一瞬にして180度性格変換した陸奥に和泉はさっき碧木にみせたそれとは違う芯から黒い微笑みを向けた。
「そうでなくちゃ、今回は上玉、特上Aランクだもん。」

こいつといると調子が狂う―

まだこいつ(碧木)にはいえないことがたくさんある。
でも、必ず言う日がくるからそれまで待っててくれ。
俺の覚悟と僕の決意が定まるまで
まだもう少しの間この遊戯(あそび)につきあってくれ。

月がまた笑ってる―

愚かな僕らを嘲うように―

金色の光が、
      
      無邪気に僕らを照らす―

この小説について

タイトル 〜ハジマリ〜
初版 2008年2月11日
改訂 2008年2月12日
小説ID 1823
閲覧数 838
合計★ 0
東雲 ヤクモの写真
作家名 ★東雲 ヤクモ
作家ID 203
投稿数 168
★の数 310
活動度 18354

コメント (0)

名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。