夜に咲く花 - 第四話 青い瞳

もう真っ暗になった頃、俺は自転車を押しながらゆっくりと彼女と並んで歩いた。
「あ、あの。さっきは本当にありがとうございます」
「あ〜……いや、そんなにたいしたことじゃないですよ。さっきも言ったとおり、ここらへんじゃああいうのがよくいるんです。ウチの店長がナイフ持ってる人にレジの機械で殴ってるのも見たことあるし。その後、日下部さ―あ、副店長に何で別の物で殴らないんだって怒られてて。アレはウケたなぁ〜」
などと言うと、彼女は可愛らしく、くすくすと笑った。
やっぱ笑ってる方が可愛いな。
と考えてニヤニヤしていると、ふとあることに気が付いた。
「あ、そー言えば名前まだでしたね。俺、梅崎大賀っていいます。16っス」
「……タイガーくんですか……?」
彼女は少し首をかしげた。マジで聞いているらしい。
「いや、大賀。です。親も変な名前付けますよね」
「……え、あ、ごめんなさい。良い名前だと思いますよ」
あー……お世辞どーもー……。
「私は広瀬遥(ひろせはるか)です。先週くらいにこの辺りに引っ越してきたんです。同じく16歳です」
あー……遥って名前っぽいなぁ〜。……って、タメですかっ!?
「え!?同い年!?うそっ!」
「はい」
彼女はニコニコとしている。
「そ、そーなんだ……。年上だと思ってずっと敬語気を付けてたのに……ビックリだ」
「年上かぁ〜……」
「あ、いや、その、年上って言っても良い意味ですよっ?なんか、服装とか雰囲気とか大人っぽいからさ……」
彼女が少し悲しそうな顔をしたので急いで言い直す俺。少し慌てる……。
「そーですか?でも私は梅崎くんは同い年なんだろーなーって思ってたよ?」
「……まぁ、俺は童顔だからね」
「いや、そーゆー意味じゃなくて……!」
「別にいいよ。ところでさー……出来れば下の名前で呼んでくれないかな?俺、双子の妹いるから何か名字って落ち着かなくて……」
「はい。じゃあ、大賀くんで。私も下の名前で読んで下さい。さん付けはなしで」
彼女は優しく、少し恥ずかしそうな顔で微笑んだ。
やべぇっ!これほれるっ!!
「あぁ、うん……」
だってよ、顔よーし、性格よーし、スタイルよーし。って完璧じゃん!!スタイルに至っては我が妹とは大違いだ。うん。
神様はこの人に二物も三物も与えてしまったんだな……。
「あ、あの……?」
やばっ。ちょっとじろじろ見てたみたいだ。
「あ、ごめん……。あ、あ、そーいえばさ、不良Aに『よくもぶん殴ってくれたな』って、言われてたけど、殴ったんだ?」
俺はちょっと気まずくなりかけた空気を話題を変えることによって防いだ。
「不良A?」
「あ、いや、こっちの話し」
「……え〜っと、アレはただいきなり後ろから腕を引っ張られてビックリして、鞄を振り回したら、相手の顔に当たっちゃって……」
そこからは恥ずかしくなったのか、続きはなかった。
「……すごいね。でも良かったな。あいつらがバカで」
「うん。ハハハ……」
それから何故か俺らの間に沈黙が流れた。
その沈黙を先に破ったのは遥さんだった。
「あ、私の家、この辺りなので」
「あ、そーなんだ」
「はい。それじゃあ、これで送ってくれてありがとう」
遥さんは俺の前に立って、自転車のかごに入っていた荷物をとって微笑んだ。
「あぁ、じゃあ気を付けてね遥さん」
「! 遥『さん』って言った!!ん〜……まぁ、いいですけど」
遥さんは少しふくれた顔をして、それから笑顔を見せた。
「あーごめん。何となく……さ」
ハハハと笑う俺。
さん付けは無しって言われてたんだった……。
「いいです。別に。それじゃあ、またどこかで会えるといいですね」
遥……さん(でいいや!)は何か意味ありげに微笑んだ。
「うん。じゃあ」
俺がそう言ったあと、遥さんはくるりと背を向けて歩き出した。
俺は遥さんが見えなくなるまで見送っていようと、しばらくの間そこにたたずんでいたら、闇の中で遥さんが振り返りこっちに手を振っているのが見えた。
これは振り返した方がいいんだよな。
と、思い、小さく振り返すと、遥さんはまた前を向いて歩き出した。
少しすると彼女はもう闇にとけ込んでしまった。
それにしても可愛い子だったな〜。……あっ!!連絡先聞いてないし聞かれてない!!会えないじゃん〜……。
あの意味ありげな笑みはそういうことだったのか……。あーあ。もったいねぇ。……まぁ、またコンビニに来るか。
………。
……………。
「……やっべぇ!!」
俺はふと、家で腹を空かせて待っているであろう妹のことを思い出した。
「今、今何時だ!?」
鞄の中をごそごそとあさり、携帯電話の時間表示を見てみた。
9時51分……。
俺は携帯電話を制服のポケットにねじ込み、自転車にまたがって慌てて家へと走らせた。


「何であんたがここにおんねん……」
「……優紀……久しぶりね」
暗闇の中から野崎優紀が怖い顔をして姿を現した。
「何やっとたん?何のつもりなんっ!?」
優紀はツカツカと遥に歩み寄り、噛みつかんばかりに怒りをあらわにした。
「何で怒ってるの?久しぶりの再会じゃない。聖奈やあきらは?元気?」
遥は優紀の手を握って微笑んだ。しかしその手は優紀によって払われる。
「うっさい!はなせ!あんた、ホンマに何たくらんどるん?復讐しに来たんか!?そんならあんたは――」
「明日」
遥はわざと自分の声を優紀の言葉にかぶせて遮った。
「明日、あなた達の学校に転校する事になったから。よろしくね。優紀」
「なっ……!?」
遥は優紀の肩にポンッと手を置いて、横をすり抜けていった。
優紀は慌てて振り返り、肩を掴んでこっちを向かせた。
「ちょっと待ちや!まだ話しは終わって――」
その時、遥の瞳が薄気味悪く青色に光った。それと同時に優紀は声が出せなくなった。
「! うぅぅ……くっ……!」
優紀は苦しそうに表情をゆがめ、首に手を当てた。
「せっかく動き始めたんだ。お前達は手を出すな」
遥は鋭い青い瞳で優紀を睨み付ける。
「……くすっ、じゃあね♪」
遥は人が変わったかのような笑顔を見せる。そして、優紀から視線を放すと、スタスタと闇に紛れていってしまった。
「――ゲホッ、ゴホッゴホッ」
優紀は崩れ落ちる様にそこに座り込み、咳を繰り返した。よほど苦しかったのか、目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「優紀っ!」
後ろから二つの影が、月明かりに照らされながら走り寄ってきた。
「優紀、大丈夫?」
「聖奈……ゴホッ、うん、大丈夫や、たいしたこと無い」
聖奈と呼ばれた人物は、しゃがんで優紀の背中をさすっている。
「あきら、ごめん。ゴホッ、二人がここに向かってるんはわかっとったんやけど、コホッ、時間、稼げへんかった……」
あきらと呼ばれた人物は、表情を変えずに、コクリと一つうなづいた。
「いい。……優紀。無茶は、だめ」
あきらは優紀の前に立ち、手を差し伸べた。
「ん。ありがと」
優紀はその手に掴まって立ち上がる。
「……遥は動き出したみたいや。明日、ウチらのガッコに転校してくるゆーてたわ」
「……学校は大丈夫。私たちで守る。……聖奈」
「あいあい!大丈夫っ任しといて!一応、バイトがあるときは帰り送ってもらってるから♪でもまさか、バイトの休みを狙われるなんて思わなかったね」
聖奈はハハハと笑った。
「……普段より警戒して」
「はい」
あきらの言葉に二人は力強くうなづく。

後書き

こんにちはw秋水です。
ふぅ、今日はちょいと長くなってしまいました。。。
良かった〜wやっとちょっとシリアス(?)っぽくなったぁ〜w
ホッとしましたw

えー、今回は最後の方は三人称系になりました。
まだ、遥の心の中も優紀の心の中も見せられないので。。。
ちょっと読みづらいかもしれませんね。すみません。

それでは次も頑張りますw
ではでは〜ww

この小説について

タイトル 第四話 青い瞳
初版 2008年2月13日
改訂 2008年2月13日
小説ID 1827
閲覧数 932
合計★ 3

コメント (2)

★達央 2008年2月13日 20時43分24秒
夜に咲く花−第四話・青い瞳を読ませて
いただきました。

私の密かな想像ですが、本当は大賀と遥は昔に出会っているのではないかなって思っています。

優紀と遥には昔何かがあったとしか現状では言えませんのでこの先が楽しみです!

自分の想像を裏切ってくれるよう頑張って下さい(笑)
秋水 コメントのみ 2008年2月14日 17時29分26秒
こんにちは〜wどーも、秋水です。

達央さん、今回も感想ありがとうございますwm(__)m
フフフ……フフフフフ……(怪;

そういう想像めちゃくちゃ好きですw参考になるので。
え?いや、パクリはしませんよ、今回は。(ぇ

そーですねぇ〜……今はやっぱり何も言えないですが、
予想は大きく裏切るつもりです。。。
フフフフフフフフフフフフフフフフ………。
あー笑いが止まらんww

それでは次回も宜しくお願いしますw
がんばります!!
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