最強女王×最弱騎士 - 第六話 適性検査二日目〜真夜中の襲撃〜

 君を想う気持ちが強くなっていく。それは、ちょっとした出来事にも反応してしまう程で。
 俺の心が、君に近付きたいという証拠。


 俺達は夕食を食べた後、葵さんはキッチンの東側にある日当たりの良い寝室のベッドで、俺は広間のソファーで眠る事にした。
 だが、当然の如く俺はまともに寝る事も出来なかった。
 静かな広い部屋とはいえ、一つの部屋で男女が寝るという緊張感。規則正しく聞こえてくる葵さんの寝息。
 俺が勝手に意識していただけなのかもしれないが、本当に一週間も耐えられるのかが不安になってきた。

 充血して真っ赤になった目を擦っていると、葵さんが目薬を差し出してくれる。

「あ、ありがとうございます」
「どうしたんだ? 目が腫れているし、充血しているじゃないか。眠れなかったのか?」
「ちょっと……」

 葵さんが心配してくれるが、俺は言葉を濁した。まさか葵さんを意識して眠れなかったなんて言えない。
 俺が目薬を指そうとすると、葵さんはタオルや洗面用具を持って部屋を出て行こうとしていた。

「どこ行くんですか?」

 一人にされるのが心細くなり、俺は葵さんに尋ねる。だが、葵さんの答えが返ってきた瞬間、俺は酷く後悔した。

「下に更衣室があるからシャワーを浴びに行く。いくらなんでもまだ七時だ。襲撃されないだろう? それがどうかしたか?」
「あっ、いや……気をつけて」
「ああ、じゃあな」

 静かにドアが閉じる。そのすぐ後、俺は深くため息をついた。
(何やっているんだ。女性だったらシャワーぐらい学校でも浴びるのが当たり前なのに。変な奴だと思われたかな……)
 俺はソファーの前のガラス作りのテーブルに頭をぶつける。
 当然の様に頭に割れるような痛みがくる。だけど、今、感じている痛みは、何だ?
 目の前にあなたが現れると視界から逃がしたくないと思う。一つ一つの動作が気になる。あなたに何かあると心配になる。
 収まらないこの気持ちは何だ? 身体への痛みとは一味違う複雑な痛み。

 変に考え込みながら、俺は葵さんの帰りを待った。


 今日も結局誰も襲撃しないという結果に終わった。今日も俺にとって緊張する時間がやって来る。

「襲撃者なし、か」

 葵さんがぽつり、と言う。心なしか、つまらなさそうにも聞こえる。

「まあ、あと五日もありますし。用心するに越した事はないですね」

 俺は葵さんに言う。

「そうだな。じゃあ、寝るか」


 そう言いあって、俺達の執事適性検査二日目は終了かと思われた。

 でも、この学園は「油断大敵」だって事を俺はこの後の出来事で思い知らされる事になる。


 俺はこの日の夜も、まともに寝る事は出来なさそうだった。緊張してしまい、瞼を閉じる事が出来な
い。

「はぁ……飲み物でも、飲むか」

 俺はソファーから身体を起こし、キッチンへと向かった。
 冷蔵庫を開けて、入っていたお茶をコップに注ぎ、一気に飲みほす。

「ふぅ」

 俺がため息をついたその時。

 いきなり後ろから口を塞がれ、俺はそのままその場に座り込む。

「!?」

 俺が驚き、抵抗しようとすると、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

「シッ、静かに」
「葵さん!?」

 それは、葵さんだった。俺はあっという間に顔が赤くなる。
 葵さんは俺の口から手を離し、俺に向かって小さな声で話し始めた。

「よく聞け。誰かが部屋の中に、侵入してきている気配がする」
「襲撃者ですか!?」
「可能性は高いな。さっきは私の寝室の近くにいたから、私を狙ってきているんだろう。広間にいるかもしれない、行くぞ」

 俺と葵さんはキッチンをそっと抜け出して俺が今さっきいた広間に向かった。


 広間は、静寂そのものだった。だが、部屋が暗く人影がいるような感じもする。
 俺はキッチンから懐中電灯を持ってきて、辺りを照らしてみるが、やはりはっきりと人がいるとは言い切れない。

「やっぱり、いないんですかね?」

 俺が広間の反対側を照らしてみたその時。
 俺は突然手に攻撃を受け、懐中電灯が俺の手から離れる。

「……! 葵さん!!」

 俺は思わず声を上げる。だが、次の瞬間、もう葵さんは襲撃者と戦っていた。
(俺の懐中電灯を落としてすぐ葵さんを狙ったということは、一人か? 他の人間は見当たらないし)
 辺りを見回すが、やはり他の襲撃者はいないようだ。

 葵さんも必死に戦っているが、何しろ辺りが暗い為、思うように攻撃を繰り出せない。
 これが襲撃者の狙いだったのかもしれない。
 だが、これでは襲撃者にも不利。葵さんの鈴の位置が分からないのだから。
(それなら、何で俺の懐中電灯を奪う必要があったんだ?)
 俺は考えて、一つの結論に行き着いた。
 鈴の音がある。例え暗闇でも、僅かでも鈴の音が聞こえていれば、大体の位置が襲撃者には分かるのだ。

 俺は急いで辺りを探った。襲撃者を葵さんからなるべく遠ざけなければ、逆に鈴を取られてしまう。
 すると、俺の目に飛び込んできたのは葵さんが朝使っていた石鹸。
(これだ!!)
 俺は石鹸を持って再び周りを見る。暗闇の中、微かに空を切る拳の感覚が感じ取れた。
 葵さんの足と、襲撃者の足。完全に男の足と女の足に分かれている。暗くても、流石に俺でも見分けはつく。
 襲撃者の両足がある位置に俺は石鹸を置いた。
(来い!)
 俺の予想通り、襲撃者の片足が石鹸の上にかすり、滑ってそのまま一気に身体のバランスが崩れる。

「うわっ!!」

 男の悲鳴が上がる。すぐに体勢を立て直そうとしたようだが、それを見過ごす葵さんではなかった。

 襲撃者との間合いを詰め、その頭に完璧な右ストレートをお見舞いする。

「!!」

 その様子は俺にも微かだが見えた。
 俺達は二日目の夜についに襲撃者一人目を撃破した。

後書き

何かアクションみたいになっています。すいません。
でも、女子が戦うにしては、強すぎたかな、って反省しています;;

この小説について

タイトル 第六話 適性検査二日目〜真夜中の襲撃〜
初版 2008年3月23日
改訂 2008年9月7日
小説ID 1956
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作家名 ★ひとり雨
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コメント (1)

ming1111 vcvcb コメントのみ 2018年8月14日 18時59分30秒
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