喋る猫

 大雨でずぶ濡れになっている黒猫を見つけた。
 俺はその猫をひろって帰った。
 その猫に俺は、初音と名付けた――


 初音(はつね)をひろって数日が過ぎた。
 初音は家でゴロゴロしている。こっちは内職の封筒貼りで大忙し。猫の手でも借りたいぐらいだが、初音は手を貸してくれることはなかった。
 でも、
「あーちょっとノリ多いんじゃないの? ベトベトじゃない」
「うるせぇ! ちょっとは手伝え!」
 口はよく出す。

 なんと、初音は喋ることが出来るのだ。前住んでいた屋敷では日本語をみっちり教え込まれたらしい。猫の知能は人並みだったのか。
「肉球で手伝える事があったら言ってみなさいよ」
 いっちょ前に言い返す生意気な猫。

 どこの屋敷に住んでたのか聞いたらオーストラリアのド真ん中とか言い出した。なんでオーストラリアに住んでる奴が猫に日本語教えるんだよ。しかもオーストラリアの真ん中は砂漠じゃねぇか。
「あたしのおかげで、出来のいい封筒やお面やクラッカーや手榴弾が出来て、仕事が増えたんじゃないの。感謝してほしいわね」
 ペースは落ちたけどな。
 まぁ確かにこいつがいちいちダメだししてくれたおかげで綺麗に品物が出来あがるようになったんだが。

 ちなみに何故内職をやっているのかというと、俺の勤めている会社は小さいうえに借金だらけで、内職をしないと社員に給料が出せないんだそうだ。それで、窓際の俺が内職をまかされたわけで。
「ほら、手が止まってるわよ。シャキっとしなさい。シャキっと」
「うるせぇ。こっちは徹夜で疲れてんだよ」
「人間てホントだめなのねぇ……」
 このアマ……(?)
 あの日の朝ずぶ濡れでこっちを見てくるから可哀相にとひろってやったのに。軽い気持ちでひろった事を激しく後悔する。

「今日はいい天気ねぇ。どっか出掛けましょうよぉ」
「一人で行けばいいだろ。俺は忙しい」
「一緒に行かないと、太郎君とどっかいっちゃうわよ!」
 太郎君とは、隣の家に住んでいる灰色の猫のことである。初音は猫の言葉も分かるみたいだ。二ヶ国語?いやいや、猫語は国語じゃないな。
「どこにでも行け。俺には関係ない」
「……ばーか」
 そう言って初音は窓から出て行った。
 誰がばかだ誰が。

 ――二時間後
 やっと内職のノルマを終えた。初音はまだ帰ってない。
 腹減ったなぁ。腹の虫が鳴き止まない。
 俺は近所のコンビニへ向かうべく準備をする。家の戸締りは欠かさない。初音が入れるように、初音が出て行った窓以外に鍵をした。大丈夫。あいつなら気付く。

 おにぎりを適当に選んだ後、初音のご飯を選ぶ。もちろん猫用の缶詰だ。
 初音は猫のクセにグルメを気取って、缶が金色じゃなきゃ食べない。缶の色と味は関係ないんじゃないか? これ一番安いし。

 コンビニを出ると、
「あら、こんなとこにいた」
 息を切らしながら俺の足元から喋りかけてくる猫がいた。
「おう、初音。家で待ってりゃいいのに。窓の鍵、開いてたろ?」
「……開いてなかった」
「あれぇ? 一つだけ開けといたはずなんだけどなぁ……」
「そんなことより早く帰りましょ。もうお腹ぺこぺこよ……」
 はいはい、と俺は投げやりな言葉で返した。
 初音が俺をよじ登って頭の上に乗っかる。自分で歩けよ。

 数分で家についた。窓の鍵を確認すると、開いていた。
「お腹すいたー。ご飯まだなのー?」
 窓のことが気になったが、すぐに忘れて俺は初音の飯の準備にかかる。
 こいつは猫用の皿じゃ嫌とかぬかすので、仕方なく俺は人間用の普通の皿に缶詰を盛り付けた。
 この行動を、初音は嬉しそうに見ていた。

後書き

近所の墓地に野良猫がよく集まるんです。
その猫が喋ったらなぁと思いながら書きました。

短かったですかね。
コメントくれると嬉しいです。

この小説について

タイトル 喋る猫
初版 2008年3月29日
改訂 2008年4月12日
小説ID 1965
閲覧数 757
合計★ 5

コメント (3)

弓射り 2008年3月30日 10時00分32秒
久々の完全休日で暇で死にそうです。
なので読んでみました。

素朴で良いですね。もっと色んな俺と初音のエピソードを読んでみたいと思いました。
また暇で死にそうになった時に都合よく投稿してくだされば幸いです。
★日直 コメントのみ 2008年3月30日 14時39分46秒
>弓射りさん

コメントくださり、ありがとうございます!
コメントって素直に嬉しいですね。

失礼だとは思ったんですが、
弓射り←なんて読むんですか?
★梨音 2008年3月30日 16時11分15秒
こんにちわ。
この話に胸が温かくなりました。
喋る猫……良いですね。例えどんなに口五月蝿くても、そんなのがいたら気持ちが伝わって良いでしょうね。
面白かったです。
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