市長と秘書 - ショートショート −首から下は塵芥−

「市長……中庭で何やっているんですか……」
「見ての通り何もしていない」
「いえ、そうじゃなくて、なんで首だけ残して土に埋もれているのかという事を聞いているのですが」
「ん、まあ、世界への反逆みたいな?」
「見た目が凄いキモいんですけど」
「失敬だな」
「シュールと言うかなんと言うか、地面の上に首だけ出ているというのはある意味猟奇的ですよ」
「別に誰に埋められたわけじゃない、自分から埋まったんだ」
「いやその意味が良く分からない、というかさっぱり分からないです」
「ところで秘書、お腹がすいたから何か持ってきてくれないか」
「自分で取りにいって下さい、土から出て」
「いやだ、私はここから動かない」
「あんまり我が侭言っていると頭も土に埋めちゃいますよ」
「それもいいな」
「『いいな』って、あのですね……」
「そしてそのうち私の頭から花が芽吹くという寸法か」
「市長の頭は常春でしょう」
「はっはっは、上手い事を言う」
「ああもう、仕事たまってるんだからさっさと動いて下さい、埋もれてないで」
「やだ」
「撃ちますよ」
「それでもいいぞ、今は既にもう半分逝っているようなものだからな」
「確かにそうですね」
「うん」
「……じゃなくて、生首と会話してるようで気持ち悪いんですよ!」
「それもオツだろ?」
「何がオツですか」
「今日はやけに絡むな、いつもだったらここらで撃ってるのに」
「今でさえもう気持ち悪い事この上ないのに、この上撃ったら見栄えがもっと悪くなるでしょ」
「ある意味で晒し首だからな」
「なんなんですか、私に対する嫌がらせですか」
「そんなんじゃない、単に埋まってみただけだ」
「じゃあ何の意味が?」
「こうするといやでも安息が待っているだろう?」
「というか、単に生きる事を放棄しちゃってませんか?」
「それはあるかも」
「ネガティブなのかポジティブなのか分かりませんね」
「それより腹が減った、カボチャのタネでも持ってきてくれないか」
「パンプキンヘッドですか、貴方」
「また上手い事を言う」
「倉庫にはヒマワリのタネくらいしかないですね」
「じゃ、それでもいいや。持ってきてくれ」
「御自分で取ってきて下さいよ、土から出て!」
「やだ」
「何を腐ってるんですか、もう、さっさと土から出てきて下さいよ!」
「心配するな、あとはゆっくりと朽ちていくだけだ」
「市の仕事はどうするおつもりですか」
「もう私には関係ない」
「市長の責任とかそういったものはどうするおつもりですか」
「適当に後継者を見繕っておいてくれ」
「無責任ですねホントに! 今に始まった事じゃないですけど」
「苦労を掛けたなあ」
「臨終みたいな事言ってないで、はい、土から出る!」
「やだ」
「どうしたものでしょうね……今撃っても意味なさそうだし……」
「ああ、もう喋るのも面倒だ。黙るわ」
「黙らないで下さいよ」
「………」
「目を閉じないで下さいよ」
「………」
「って、ホントに生首みたいですね……」
「………」
「ああ、ダメだこりゃ。それじゃ存分に死んで下さい。私は仕事がありますから行きますよ」
「………」





「あれから半年か……」

「どうせ冗談だろうと思ってたのに……」

「本当にずっと土に埋まったままだったなんて……」

「しかも……」

「まだ生きてるし……」



「おーい秘書、腹減ったからいつものタネ食べさせてくれー」
「はいはい」
「いやー、土の中暮らしもいいなあ」
「貴方はいいでしょうけどこっちは面倒ですよ」
「一日一回、私の口の中にヒマワリのタネを入れるだけだろう?」
「それが面倒なんです」
「はっはっは」
「しかしなんですね、立派なヒマワリが咲きましたね。頭に」
「そうなのか? 自分からは見えないんだが」
「脳天を突き破って茎が出て花が咲いてます」
「胃の中のタネが消化されなかったのかな?」
「というか、まだ胃とかあるんですかね……」
「もう首から下は土に還っていたりしてな。はっはっは」
「グロい想像をさせないで下さい」
「なんか最近喋ると疲れるなあ。運動不足かな?」
「そういう問題なんでしょうか……」
「深く考えない方がいいぞ、私が言うのもなんだが」
「ホントにそうですね」
「うむ」
「それと、喋る度に頭の上のヒマワリ揺らすの止めて下さいよ」
「ダンシングフラワーみたいだな」
「なんですかそれ?」
「分からないならいい」
「はあ」
「ほーら、揺れるよ揺れるよー」
「ウザイから止めて下さい」
「ほらほら、ふ〜らふら〜」
「だからウザ……やめ……止めろ!」
カッ。ピタリ。

               完

後書き


いつも通りちょっとしたお笑いを目指していたのに、結構シュールな出来になりました。
この小説、絵にしたら結構キモいですよね……。
しかしダンシングフラワーって、歳がバレかねんな。私の。

この小説について

タイトル ショートショート −首から下は塵芥−
初版 2008年4月8日
改訂 2008年4月8日
小説ID 2007
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W.KOHICHIの写真
作家名 ★W.KOHICHI
作家ID 27
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