りれしょ物語 - 第四話

俺は小雪と村崎、それに、村崎の横で少し照れながら歩く本村さんと四人で食堂へ向かった。
だけど、本当にもったいない気がしてきた。
村崎なんて今までモテた事が無いのにいきなりチャンスを掴んでいるし。それに比べて俺は……
俺はちらり、と隣にいる小雪を見た。大きく伸びをしながら歩く小雪はすぐに俺の視線に気づいた。

「……何? さっき小雪拳お見舞いした事、まだ怒ってんの?」
「…うるせぇな。背中ジンジンするんだからな、今度何かオゴれよ」
「あ、じゃあ食堂のじゃが旨男爵コロッケ二個で手を打とーう!」

小雪はにやりと笑いながら言う。だが俺はすぐさま反論した。
「はあ!? どう考えたって三個が当然だろ!」

二度の小雪拳による俺の背中の痛みがたった二個で癒されると思うなよ。
俺の言い分に、小雪も負けずに食い下がる。

「いーや! じゃが旨男爵高いんだから! あんたの為に高額慰謝料払ってあげてる様なもんじゃない!」
「どこが高いんだよ! たったの七百円だろ!?」

止まらない俺と小雪の言い合い。
その原因となっているのは、食堂の人気メニューの「じゃが旨男爵コロッケ」だ。
地元で獲れる有機栽培の高級ジャガイモを惜しげもなく使い、学食としてはちょっと高めの一個三百五十円という値段だが、その香ばしさやコロッケの美味しさに惹かれて病み付きになる人が激増。だから生徒の間では「じゃが旨男爵」というあだ名で親しまれている。

「相変わらずだなぁ、あいつら……」
本寺と須藤の言い合いを横目で見ながら村崎は笑いながら言った。その横で本村さんが顔を赤らめながらうなずいていた。そうして四人は食堂へと歩いていった。


食堂に着くと、何だか中がざわついている。その中心にいるのは文庫本を片手に持ちながら食堂の机に突っ伏し、スプーンを口にくわえながら眠っている奇妙極まりない男子生徒。
だが、俺達には見覚えのある男だった。

「ねえ…あれ御堂じゃない? また寝てるし…」

 小雪が俺に向かって言う。
俺は深―くため息をついて食堂のど真ん中で爆睡している男子の肩を掴んで揺さぶる。

「おい、淳平。起きろ!」
「……ん、……んん?」

机に長時間寝ていたのか、御堂の顔には痕がくっきりと残っている。寝グセ満開の髪を気にも留めず、ずれていた眼鏡をかけ直してのっそりと言った。

「……何してんの、本寺」
「こっちのセリフだ。お前、今日ここでずっとサボってたのか?」

俺は呆れた。最強のサボり魔であるこいつならこんな所で寝ていても何ら不自然じゃない。

「違うよ、今日は『空き家の冒険』を読んでたんだ。ホームズの死から三年後の話なんだけど、死んだのはモリアーティ教授だけで、ホームズは助かっていた。そして再びロンドンでロナルド・アデア卿が不可解な殺され方を……」
「も、もういい、もういい! ホームズうんちくはもういいから!」

俺は御堂の語りを強制的に遮る。じゃないと何時間話し続けるか分からない。近くでぽかんとしている本村さんに俺は説明する。

「こいつは、同じクラスの御堂 淳平(みどう じゅんぺい)。ホームズオタクでサボり魔だけど、怪しい奴じゃないから」
「は、はぁ…」
「本寺。その言い方酷いんだけど…」

御堂がぽつりと呟く。
だが、どこが酷いだ。そう言わなきゃ、お前のへんてこな性格が表現できるはずがない。

食堂の時計を見ると、あと十五分でお昼時間が終わり、次は体育だ。

「やべっ! じゃが旨男爵コロッケ!!」

俺が振り向いて売り場を確認すると、すでにそこには「完売」の二文字。

「そ、そんな……」

一気に身体の力が抜ける。お昼にじゃが旨男爵を逃すなんて…今日は人生最大の厄日かもしれない。

「はい、じゃが旨男爵。…何やってんの?」

 落ち込む俺に、小雪がコロッケを差し出した。俺はすぐにコロッケを手に取り口にほおばる。

「うめぇー!」
「売り切れ寸前で二個しかなかったからあたしと一個ずつね!」
「俺の慰謝料だろ!?」
「あたしが買ってあげなかったら売り切れてたじゃない! 当然よ!!」

また俺と小雪の口喧嘩が始まると、とっくにお昼を食べ終えた村崎と本村さんが俺達に向かって言った。

「おーい、本寺ぁ! 次、体育だぞ! 今日は外周だから遅れると余計にトラック二周走るんだぞ! 早くしろよ!!」
「分かったよ! 小雪、もう行くぞ」
「まだ話は終わってないわよ!」

俺達が食堂を出ようとした時。御堂から声がかかる。

「本寺、体育頑張れよ」
「お前も来るんだよ! サボるな!!」

 俺は御堂の制服の襟をがっしりと掴み、食堂から引きずっていった。
さりげなくサボろうとしたようだが、そうはさせるかってんだ。意地でも授業に連れていってやる。
俺のじゃが旨男爵奪った罪は重いからな……?

物足りないとでもいうような腹の虫を抑えながら、俺は体育へと向かった。

後書き

また一人増やしちゃってすみません;;
紹介します。

御堂 淳平(みどう じゅんぺい)
学年:高校二年生
ポジション:主人公の友人
性格:天然系のサボり魔。ホームズオタク。

「じゃが旨(じゃがうま)男爵コロッケ」美味しそうですかね?
三百五十円っていうのは学生にとって痛手なんですよねー;; でも食べたい! みたいな;;

次は、東雲 ヤクモさん、お願いします!
次を勝手に体育にしてしまったんですが、そこは何とか…!!
それでは!

この小説について

タイトル 第四話
初版 2008年4月8日
改訂 2008年4月8日
小説ID 2008
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合計★ 6
ひとり雨の写真
作家名 ★ひとり雨
作家ID 223
投稿数 91
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活動度 10590

コメント (3)

★日直 2008年4月8日 22時23分00秒
コロッケ美味しそうです。コロッケ食べたいです。
これを読んでコロッケが頭を支配しました。
それぐらい面白かったです。
やっぱりコロッケは男爵いもに限りますね。
カボチャ、クリームのコロッケも好きですが何個も食べると気持ち悪くなりますしね。
何個食べても大丈夫なのはジャガイモ、肉のコロッケですね。

ごめんなさい。コロッケの話になりましたね。
でも言いたかった事は全て言えました。

ヤクモさん、頑張ってください。
★ひとり雨 コメントのみ 2008年4月8日 22時34分02秒
>日直さん

コロッケ…いいですよねww
食堂→食→学生→コロッケみたいな!(なんだそりゃ)

本寺中心というか、コロッケ中心……!
男爵は最高です。でも、中のお肉に豆腐を混ぜた豆腐コロッケもおいしいですw
豆腐ハンバーグのコロッケ版みたいな感じなのですが、激ウマですよ!

私も食べ物中心です、衣食住は人間の基礎ですし! それでは。
★達央 2008年4月9日 18時59分44秒
りれしょ物語・第四話をよませていただきました。
私も食堂前で終わらせてしまったのでどうかなぁ?と思ったのですが、うまくまとまっていてとても良かった&感謝です。

私の高校でも食堂はあるのですが、まだ高校生活で足を踏み入れたことがありません←弁当派
でも私もコロッケは食べたいなぁ〜^^

さて、またしても新キャラが出てましたね。
御堂淳平はホームズ好きということなんですが・・・私もホームズは好きなんですよ!!←名探偵ホームズ(アニメ)
コナン(名探偵コナン)も好きなんで、淳平VSコナンのホームズバトルも面白そうだと思いました。
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