新戦隊メタボライザー - STAGE2

 そういえば、パジャマのままだったの忘れてた。

 移動中にわかったこと。
 俺がメタボライザーとなってカンナの親父を救出することはいいとして、
 肥満対象者収容所には多数の警備をくぐりぬけたあと殺傷能力のないいくつかのトラップがあり、そのトラップを潜り抜けないと対象者のもとにはたどりつけない。そのほかで今のところわかっているのは、水平との角度が75度くらいある急な100メートル坂道があるということだけで、それが敷地内のどこにあるかも判っていない。また、警護の人たちは悪の組織ではなく、公務員のお仕事でやっているので、殺したりしてはいけないということ。
 このため軽くショックを与える程度のいくつかの武器や装備が、メタボライザーになった時に使用可能だという。この中身については追って説明するが、メタボライザーには一度変身してしまえば、3分しか戦えないとか、30分で精神を食われ暴走するとか、魂を吸い取られるといった制限はない。エアガンであれば弾さえもてば連射可能だし、体力が持てば戦い続けることは不可能ではない。

 俺の体重が重すぎるという理由で、収容所までの移動手段を車に変えることとなった。
 かなり離れた距離のところで、とっくに閉店したスーパーの駐車場に泊めてあった車に乗り込む。
 言うまでもなくりんりんは運転席に、俺は助手席に座った。

「ところでさ、三郷くんはカレーは好き?」
 バーコードリーダーに似た端末を携帯電話を操作するようにいじりながら、りんりんが俺に訊いて来た。
「人並みに好きだけど?」と、俺は答えた。
 りんりんは困った顔をした。
「大事なことよ。大好きって答えて」
「なんでだよ。ラーメンとカレーは普通に好きだけど」
「メタボイエローになるには、カレーが好きだって第一条件なの」
「・・・・・・誰が決めたんだ。そんなルール」

 俺が呆れていると、りんりんが手にしていたバーコードリーダーがピンポーンと鳴った。

「あら・・・・・・適性検査に合格したみたい」
「・・・・・・」
「おめでとう、今日からあなたがメタボイエローよ」
「うれしくない」

 りんりんによると、メタボライザーは色毎に適正があるらしい。
 レッドは隊長としての適正。
 ブルーはサブリーダーとしての適正。
 ピンクは女。
 グリーンは雑兵、とりあえず居てくれ的素質。

 そして、イエローはカレー好き。
 なんで黄色だけそんな適正なんだ・・・・・・。

 りんりんはエンジンをかけて車を出した。

 その移動する車の中でメタボライザーについていろいろ説明を受けた。
「そういえば」
 助手席に座っていた俺は、肝心なことを聞いていなかったことに気づいた。
「そのメタボライザーとかって、どうやってそいつに変身すればいいんだ」
「ああ」
 りんりんはハンドルを握りながら、にやりと笑った。
「簡単よ」
「変身とか、なんかのアニメをパクってメタボりっくフォーゼと叫ぶとか」
「んーん、もっと簡単」
「なんていうんだ」
「切実!って叫ぶの」
「・・・・・・・・」

 せつじつ[切実]:(1)心に深く感じるさま。身にしみて感じるさま。「人生の悲哀を―に感じる」(2)直接かかわりがあって重要なさま。「―な問題」「―に悩む」(3)実情によく当てはまっているさま。きわめて適切なさま。「―な表現」[派生] ――さ(名)(goo国語辞典より抜粋)

「そんな掛け声嫌だ」
「あきらめなさい。現実とはいつもそういうものなのよ」

 ってわけで。
 肥満対象者収容所。
 というのは通称で、正式名称は「国立東京生活習慣病予防センター」という。東京とついているのに何故か神奈川にある。再燃ほど前に港埠頭倉庫跡地にたてられたそうだ。センターというと聞こえはいいが、敷地のまわりは高さ3メートルはあるコンクリートの塀に囲まれ、さらにその上に有刺鉄線が張られている刑務所のような印象さえある。敷地内の面積がどれくらいかは判らないが、今いる場所の端から端まで歩いたら5分くらいはかかりそうな、まぁそれくらい広いってことだ。

 ただいま深夜一時十五分、夜明けまであとおよそ四時間近く。俺はその短い時間でカンナの親父を救出しなくてはならない。疑問はあるが細かいことはこの際気にしない。

 俺はすでにスーツを着用し、メタボライザーとして立っていた。
 交差点の鏡に映ったメタボライザーとしての俺は、体型は寸胴、昔はやったロボットアニメで大量生産されて何体も出てくる脇役ロボットに似ていた。しかもすぐやられるタイプだ。頭部はヘルメットのようなもので全体を覆っており、眼の周りのみが蛍光ガラスで前が見えるようになっている。息でメット内に熱気がこもりそうだが、首の両側から排気が行われるので熱すぎず、ガラスが曇ることもない。うまくできている。

『聞こえる?』
 ヘルメット内に設置されたスピーカーからりんりんの声が聞こえてきた。
「ああ」
『OK。これから救出にいってもらうから、よく注意して聞いて』
「おう」
『今は一時ちょっと過ぎ。昼間の疲れで収容されている人たちはくたくたになって寝ているし、警備も手薄になっている。侵入するなら今よ。でも敷地内のあちこちに原始的なトラップが仕掛けられているの』
「原始的なトラップって」
『ブーブークッションとか』
「それはトラップじゃなくていたずらの時に使うんじゃ」
『トラップとして使うんだからトラップでしょ』
「それはそうだが。疑問に思ったことがある」
『なに?』
「それだけの情報どうやって調べたんだ」
『実は今回のことは初めてじゃないの』
「そうか。で、先人はどうなったんだ」
『・・・・・・』
スピーカーにりんりんからの返事はしばらくなかった。聞いてはいけないことだったのか。
「どうした?」
『ごめん。今は聞かないで』
その返答で、どうやら聞いてはいけないことを聞いたのだと、俺は判断した。
「わかった。話せるときに話してくれ」
『ありがとう』
「だけど、もし俺が捕まったりして自白剤とか打たれたらどうする」
『うーん』
 向こうでりんりんがかなり困っていることが判った。
 舌噛んで死ねとか言うまいが、先人は捕まらないで逃げ切ったのか、それとも自害したのか。そこは判らないが、しょせん素人の俺では自白剤や拷問に耐えられるとは思えない。そのためにりんりんも最低限に情報しか俺にはよこしていないはずだ。が、これまで知った内容でも、漏れれば次のメタボライザーの弱点にもなりかねない情報だ。
 それだけに俺が捕まったりしたら、どうするつもりなのか知りたいところだ。
『とりあえず・・・・・・』
 りんりんの声がした。
『知らないフリをすること』
「・・・・・・ムリだろ」
『捕まったときに考えればいいでしょ』
「捕まったら、あんたのことはないことまで喋ってやるよ」
『できるだけ美人で可愛いってつけといてね』
「前向きに検討しておくわ」

 俺は壁の上を見据えると、背中のジェットパックに手をかけた。
 メタボライザーの装備の一つだ。
 噴射!
 と同時に、ジャンプする。
 身体が飛び一瞬で塀を越えていた。

 長時間飛ぶことはできないが。ジャンピングシューズと併用することにより、高さ4メートルまで飛び上がることが可能。しかも着地はコンピュータセンサーでゆっくりと降りてくるので怪我することはないそうだ。

 ストンと降りた地面はやわらかかった。
 しかし辺りはまったく見えない。
 しかし、黒い棟の影がそびえているところから目指す方向は判っていた。
 俺は約百メートル先にそびえ立つ3階建ての棟に向かってゆっくりと歩いた。三階建てというのは、その棟からもれる光から判った。

 俺は建物に侵入してカンナの親父を連れ出せばいい。
 そんな一行で済まされるほど簡単な行為ではないだろうが。

 と、その時だった。
 まばゆい光があちこちから俺を照らしだした。
 何だ!
「わははは。待っていたぞ。メタボライザー」
 気付かれていたか。
 拡声器を通した中年らしき男の声が響き渡った。
「飛んで火にいる、コインランドリーで洗濯機が全部ふさがっていたので時間がないから乾燥を先にしちゃおうかなと意味のないことをする、大バカものとは貴様のことだ」

 長い。それにそれはたしかにバカだが、俺はそこまでじゃない。
 見れば、俺は警備服に身を包んだ男たちに囲まれていた。全員眼にゴーグルをつけているのはきっと暗やみでも見えるようにするため。全員が銃をかまえこちらに向けている。

「りんりん」
『なぁに?』
「こいつ、銃の衝撃にはどれくらい耐えられる?」
『うーん、調べたことないけど、けっこう耐えられるよ』
「なんだそのいい加減な答えは」

 どっちにしても逃げ道はない。
 行くしかないな。
 俺は駆け出しながら、背中からハリウッドソードを取り出した。
 もしかしたら殺されるかもしれないのに、俺はりんりんのいい加減なスーツの耐久性をどこかで信じていた。
 何とかなるさ。
 そう思えていた。

後書き

けっこう自分的には楽しんだりもしてますが、その気分も時間帯によって白けてくることもあります。独りよがりなところもあるかもしれず、わけ判らないとか言われそうなところも否定できません。STAGE1,2とけっこうふざけさせていただきましたが、STAGE3からはややシリアスな展開を迎える予定です。早めに書きますので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
一応見直しましたが、ここが判りにくいねえってところあったらご指摘願います。

この小説について

タイトル STAGE2
初版 2008年4月17日
改訂 2008年4月17日
小説ID 2027
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水原ぶよよの写真
作家名 ★水原ぶよよ
作家ID 163
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