アエモノ学園の夏 - 7 いざ突入

 兵士に前後を挟まれて、7人の男女が廊下を歩いていた。王妃と王子と彼の友人である。王妃によると、国王はオヒタシ国の重鎮を訪問しに出掛けたらしい。
 足音もレッドカーペットで消されて、ほぼ沈黙状態だった。が、曲がり角を右に曲がり、廊下の突き当たりに「図書室」の看板が掛かった扉が見えたあたりで、ケイが声を落として言った。

「この辺で武器を構えておいたほうがいい」
「分かった。籠手よし、短剣よし、靴よし。 で、縮んでる盾はどうしたら良いのかな? ……そうだ! 開け〜盾!!」
「おいミホ、『縮む』の反対は『伸びる』だぞ?」
「まぁいいじゃない、ヒロ。こうやって無事に開いたことだし」

 彼女は得意げに、『開いた』盾を見せた。それは、白地に紫の星が描かれた盾だった。縮んでいる時と、デザインは何ら変わりない。王妃はというと、隠し持っていた十字架ペンダントに息を吹きかけ、自分の身長よりも長い杖に変えた。
 全員の準備が整ったところで、図書室へ向けて、一歩ずつ進み、とうとう止まった。兵士が扉に手を掛け、確認する。

「皆様、本当によろしいのですね……」

 全員がこくんと頷く。古そうな扉だったが、全開となった時に、特に大きな音は出なかった。先頭のケイが入る間際に、ユリが念を押した。

「あいつは生きたまま、わたしの先祖に縛られたとはいえ、相当の年月が経ってる。たぶん、身体は朽ち果てていて、霊体として図書室の中にいると思う」
「ふぅ〜ん、そっか。 ……って、え!? マジ!?」
「たぶん、マジ」

 結果として、霊体恐怖症の霊能者・ミホを再び震え上がらせることとなったが、歩みは止まらなかった。



『ギャァァアアア!!!!!!』

 全員が入った瞬間に、扉が閉まって真っ暗、魔法で鍵が掛けられた……というわけではない。本棚に並んでいるはずの何百冊もの本がケイ達に向かって飛んで来たのである。叫びつつ、全員図書室を脱出。息を整えた後、王妃の防御結界に包まれ、再び突入した。

……バタバタバタバタパタパタパタパラパラ……

「またしても、本が飛んで来てしまいましたねぇ。酷い音でしたわ〜」
「あははは……すぐに収まったから、マシじゃない?」

 誰もが冷や汗をかいていた。こんな時でもマナとミホは囁き合った。静まり返り、本が散乱する図書室を、7人は一歩ずつ進む。常時袴姿のリョウも、袴を踏んでこけることはない。程なくして、部屋の真ん中辺りまで到着した。



「ハックション!!」
「どうしました? ケイ」
「あ、お母様。そ、そんなに見つめなくてもよろしいかと……。 さ、寒気がするのです」
「まあ……大丈夫ですか? あら、私も寒気を感じますわ……」
「ふ〜む。 日が昇ったあとの、締め切られた部屋……。普通はメチャクチャ暑いはずなのに……。この寒さは、魔法によって作られた……」
「ヒロ、ナイス推理。ご苦労さん」

 リョウのスルー発言により、場はシラケて体感温度も低下。更に、寒気と恐怖の根源が、目の前の本棚付近からその姿を現した。ミホはメガネを掛け直そうとしたが、手が震えて取り落としてしまった。レンズは割れていない。

「なんか、殺気も感じるんだけど。メガネ拾いたいけど、拾えないっ」
<もう時間が経ちすぎた。そろそろ開放してくれてもいいだろう?>

 そう言うなり男の声の主はブワッと一発の強風を放った。それは凄まじい力で王妃をもひるませて、防御結界にヒビを入れた。彼は、ぼろをまとった人型幽霊の姿をしていた。少し透けるが、赤く光る目だけは、とてもはっきりとしていた。
 城全体に張られた、『霊体の存在を感じない結界』も、今の図書室では効かないらしく、数人が驚きの声を漏らした。いきなり、前に進み出て声を上げた少女がいた。



「ねぇ、……こ、攻撃は、やめてよ」
<何だ、お前?>
「……私は……れ、霊能者だよ。……攻撃する指示も出せるなら、止める指示も、できるよね? リョウ……」
「うん。確かに」
「という訳で……攻撃をやめなさい……じゃ、なかった。落ち着きなさい!!」
『ハァ〜?』
「お、落ち着いて、冷静に考えたら、あなたが何故攻撃したのか、思い出せるでしょ?」
<…………!!>
(思い出せたんだね……)

 ミホ以外、爆弾発言を聞いてもいいように、身構えた。人型幽霊の眼光が、紫に近くなっていた。

<……ここに縛られ数百余年……あの女は、呪いと共に、催眠術まで掛けやがった……実際、2つの魔法の有効期限が、違っていた……>
「ふ〜ん。目が覚めたら、呪いから開放されてるって、勘違いしちゃった。そういうことよねぇ?」
<当たりだ。よく分かったな。ワシは、ここから開放されたくて、必死になりすぎて、我を忘れてしまった。……モンスターを放ったり、図書室で悪戯したり。……詰まらぬ勘違いのせいで、かなり迷惑を掛けてしまったな。それについては、詫びよう>

 彼はそう言い、5秒で散乱した本を魔法で片付けた。そして、声を上げた少女がまた一人現れた。

「あなたは……あなたは、ガネッコ、よね……」

後書き

大変お待たせ致しました。
次回もスローペースですが、ご容赦ください。

この小説について

タイトル 7 いざ突入
初版 2008年4月21日
改訂 2008年4月21日
小説ID 2035
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作家名 ★メリエリ
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