鬼姫 - -遭遇-

ライン
あの日以来、俺は抜け殻だった。
学校に行っても、何もをしていても、
全てが愚かに思えてくるほどに。

「ギャハハハハッ!
 それマジうけるんだけどーっ!」

「そんでさぁ、2組の吉田君がさぁ」

ゴミだ、ゴミ過ぎる。
教室の中でも俺は、つねに孤独だった。
別に今日だけに限ったことじゃない。
一匹狼を気取っていたのは昔からだ。
そう、気取っていたのは。
今は違う。
心の底から、周りがゴミに見える。
あの少女に出会って以来・・・。

「(・・・あれから1週間。
 あの子をまるで見てねぇ。
 今頃、何してんだろ・・・・。
 もしかしたら、また危ない山に突っ込んで、
 死んじまってんのか・・・?)」

弁慶は一人、孤独に嘆いた。
もう一度、もう一度だけでも良いから会いたかった。
会って話す言葉など決めていないのだが、
会うことに全ての意味があった。
昼のチャイムが鳴り、教室から出る弁慶。

「(へへっ、どうしちまったんだよ俺・・・。
 つい前までは天涯孤独だと思ってたのに、
 この様かい・・・・。
 一人の女にイカれちまうたーなぁ。
 情けねぇぜ・・・)」

愚かしくも気持ちを隠せない自分を
皮肉に思いながら、昼食を食べるために
学校外へ行こうとする弁慶。
弁慶に友達などいない。
不良ならば、不良らしく孤独でいようと思ったのだ。
そんな彼だから、誰も近づこうとはしなかった。

「(さぁ〜ってと。
 今日はタマゴサンドでも買って、
 早退でもすっかな)」

弁慶は学校の近くにあったコンビニへと向かった。
店内には同じ学校の不良達が居座っていた。
比較的、弁慶の学校は悪列。
言わば悪の巣窟。
弁慶の学校に限ったことではなく、
ここら一帯の学校ほぼ全てがそうなのだが。

「(おっ!!
 残ってるじゃねぇか、タマゴサンド。
 やっぱサンドイッチはこいつに限る・・・)」

バサッ

喜ぶのも束の間。
弁慶がうれしそうにタマゴサンドに
手を伸ばした最中、突如として
誰かの手がそれを阻む。
最後の一個を、先取りされてしまったのだ。
当然、気の短い弁慶。
横取りした者にありったけのガンツケをする。

「お、俺のタマゴサンドぉお・・・・!!
 おいコラぁああ!!
 人の食糧に手ぇ出すたぁ・・・・・・
 ・・・・・あ・・・・・・・あぁ・・・・」

「・・・・・・・?・・・」

弁慶は、固まってしまった。
タマゴサンドを横取りした人物を前にして、
乗り出した体を凍らせる。
驚くのも必然のこと。
目の前にいたのは、タマゴサンドを
横取りしたのは、まぎれもなく、
あの時の少女なのだから。

「あ・・・・あぁあ、あ・・・・・!
 (こ、この子、何でここに・・・!?
 よく見りゃぁ、制服はうちの学校のじゃねぇか!
 この子、うちの学校の生徒だったのか・・・!?)」

「・・・・・・・・」

ここで弁慶は、二つの事実を把握する。
まずこの少女は自分の学校の生徒だったということ。
そして、彼女もまた、自分と同じ
はぐれ者であるということも。
普通、こんなチンピラはびこるコンビニに、
昼食を一人で買いに来る女子などほぼ皆無。
そこにまた弁慶は、惚れていた。

「あ、そ、そのっ・・・・・!
 お・・・俺ぇ・・・・・!!」

「・・・・・・・」

何も切り出せなかった。
勢い良かったのは、彼女の顔を見るまで。
彼女を前にしたら、弁慶は非力だった。
少女はタマゴサンドを取ると、
弁慶の顔を退屈そうにチラッと見て、
レジへ去っていく。
恐らく、「変人」とでも思ったのであろう。
弁慶はこのままではいけないと感じたが、
どうしても行動に移せなかった。

「(く、くそぉ・・・!!
 何て話かけりゃ良いんだよ・・・!
 ・・・・・い、いや・・・・・
 考えるって発想が違ぇ!!
 これは想いだぜ、感情なんだ・・・!
 出てくる気持ちを、ぶつけるだけっ!!)」

弁慶、決心。
去って行こうとする少女の肩を、
少し強引に掴む。
それに気づいた少女が、
不機嫌そうな顔をして、ゆっくりと
振り向く。
そして、弁慶が放つ言葉とは・・・。

「お、俺は・・・・・・
 ・・・・・・・・違う・・・・・・。
 お、俺と・・・・・結婚してくれっ!!!」

コンビニ中が凍りついた。
弁慶のあまりの大声に、誰もが視線を
弁慶と少女に釘付けにした。
その恥ずかしき言葉に
関係ない第3者すら恥ずかしそうな表情とする中、
否、
当の本人、無関心。
まるで人事のように、表情一つ変えず、
弁慶まるでつまらない物を見るような
眼差しで見る。

「・・・・・・・」

「はぁ・・・・はぁ・・・・・。
 (い、言ったぜ、言ってやったぜ・・・!
 ・・・・・けど、どうしてだよ。
 何でだよ?
 何で言われた本人が、一番無関心なんだ!?)」

確かに、少女が動かないというのも事実だった。
だがしかし、その眼差しは
揺ぎ無き、無関心。
まるで電車で肩をぶつけた人を、
チラッと嫌気な眼差しで見る程度のこと。
沈黙だけが、続く。
その間に耐え切れず、弁慶が再び言葉を生み出す。

「・・・な、何か言ってくれよ。
 うんとか、すんとかよぉ・・・・・・」

「・・・・・・・ククッ・・・・」

「え・・・・?」

「・・・・・指・・・・・賭ける・・・?」

弁慶は目を丸くして、震えた。
少女の返答は、まさかの見当違い。
まるで返事になっていない。
そう、その程度なのだ。
少女にとって、弁慶のかけた言葉など、
返すほどもない、ゴミクズ。
自分が発する言葉は、確実に、
自分の利益ある、自分のためになるだけの言葉のみ。
不適な笑みを浮かべ、コンビニを
去っていく少女に、また、弁慶は、
鼓動を高鳴らせる。

後書き

とりあえず、
主人公は謎の少女です。
名前はいまだ不明ですが(笑

この小説について

タイトル -遭遇-
初版 2008年5月2日
改訂 2008年5月2日
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