鬼姫 - -鬼神-

ライン

転機。
圧倒的な転機が舞い降りる。
少女の常人を逸した暴挙により、
場は急激に変化。
気がつけば、対等。
勝負はほぼ対等に持ち越した。
それと同時に、勝負は
終焉を迎えるのであった。

「(い、一時はどうなるかと思ったが・・・。
 変わった・・・流れが、変わった!!
 15回終えて、
 俺の持ち金は1万まで持ち越した!!
 生きた、生き残った・・・!)」

「っぐ、くそぉ・・・・!
 くそったれがぁ・・・・・!!」

一寸先は闇とはこういうもの。
さきほどまではまったく逆の光景だった。
うなる弁慶、笑む3年生。
だが逆転。
すべてが正反対となった。
その起源も全て、この少女の人外の思考。

「や、やったぜ。
 終わった、終わったんだ・・・。
 ハ・・・ハハッ・・・・
 ハハハハハッハーッ!!
 生きた、生き残ったぜっ!」

「ッチ!!・・・・気分悪ぃ。
 おめぇら、帰るぞ!!」

「う、うっす」

不機嫌そうな顔をして、3年生達は
その場から去ろうとする。
まさか、こんな少女に負かされるとは
夢にも思っていなかっただろう。
だが、ここが引き際。
弁慶も、そして3年生もさほど損はしない。
言わば、最高の形の終わり。
それを作ったのも、全て少女のおかげ。

「よぉ、大将!!
 本当におまえは凄ぇよ!
 おまえのおかげで、
 何とか最悪の結果は免れた!」

「・・・・・・」

「・・・へへっ。
 まっ、1万は取られちまったけどさ、
 退学に比べりゃ安いもんだぜ。
 そうだっ!!
 残りの1万でおまえの傷の手当してやるよ!
 当然だよな、勝ったのもオマエのおかげ・・・」

「・・・・・・勝った・・・・・・?」

「?・・・あ、あぁ。
 そうじゃねぇか。
 記録的には負けかもしれねぇが、
 どうみても、俺達の勝ちだぜ」

「・・・・・ククッ・・・・・
 寝ボケるな・・・・・・アイツらの顔を見て」

「え、えぇ?」

「・・・・悶絶を浮かべてない・・・
 絶望にひれ伏してない、泣き叫んでない・・・
 ・・・・・・・これじゃ、勝って無い・・・・
 勝つことは・・・・・相手を、破滅させること・・・」

「なっ!!!!」

全てが終わった。
終わったハズの場に、再び熱を持ち込む。
少女の言動に、帰ろうとした3年も動きを止める。
終わらない、終わらせない。
少女の殺人鬼のような眼差しが、
獲物を狙う照準を逃さない。

「こ、この女っ!!
 一体何言ってやがる!!」

「・・・・・ラスト・・・・・
 アンタが先行のラスト1回戦・・・・
 ・・・・・逃げないよね・・・・・・」

「っぐ!!!
 ・・・・そんなに最初の手持ちが欲しいかよ!!
 良いじゃねぇか!
 やってやる!!
1万勝負、やってやるよ!」

勝負、再開。
わずか一回の勝負だが、それを受けて立つ3年生。
3年生にも考えがあった。
少女に変わってからの勝負、確かに
少女優勢なのは事実だが、あくまで優勢。
完全なる支配下ではない。
ゆえに、1、2回は3年生も勝っているのだ。
その隙を突こうと、3年生、挑む。

「お、おいおい!!
 本気でやるのかよ!?
 まぁ1万ぐらい痛くも無ぇけど、
 引き際ってのを・・・・」

「・・・・・・1万じゃ、破滅しない・・・・。
 ククッ・・・・・・・・・
 相手が負けた時、キチ外になるほど狂うケタが必要・・・
 100・・・・・・」

「あ、あぁあ!?」

「・・・・賭け金は100万。
 足りない99万は、後ろの男の命・・・・・。
 これで、どう・・・・?」

「っ!!!!!!!」

何と、化け物であろうか。
この物語りの主人公を、こうも罵倒するとは。
いや、罵倒せざるを得ない。
狂ってる、異常、変人。
この少女、底がまるで見えぬ、悪魔。
味方の弁慶も、そして敵の3年生も、
少女の頭を一瞬心配する始末。
だが、次の瞬間、顔が真っ赤に腫れあがる。

「ふ、ふざけんなぁっ!!!
 そんなことできると思ってんのかぁ!?
 だいたい100万なんて、んな金・・・・!」

「・・・・・作れば良い・・・・・
 そう・・・・・退学して・・・・・
 肉体労働でもして、作れば良い・・・・。
 大丈夫・・・・・死にたいほどの生活が続くだけ」

「こ、このクソ女ぁあああーーーーーーっ!!!」

「・・・・・・乗った」

「・・・あ、あぁ?
 2年坊、おまえ、今、何て言った?」

「・・・・乗ったぜ、俺はコイツに賭ける!!
 俺の人生、負けたらオマエらにやるっ!!
 待ったなしの、即奴隷!
 ・・・これが、コイツとの約束!
 俺の死が、コイツとの勝利の取引なんだ!!」

「・・・・ククッ・・・・・・」

ここで確認しておこう。
間違いなく、異常なのは少女と、弁慶。
正常なのは、否定している3年生。
だがどうであろう。
この状況で、どっちが場違いかと問われると、
不思議に3年生を場違いにしたくなる。
もう、逃れられない。
3年生は、逃げるという選択をできない。
のまれている、大きな闇に。
そして・・・・。

「く、狂ってる・・・オマエら、狂ってる!!
 ・・・・異常だ、異常者めっ!!」

「・・・で、どうなんだよ、先輩?」

「・・・・・・・・ふ・・・フフッ・・・
 ハハッ・・・アーハハハハッハッハッハーッ!!!
 そうか、奴隷かっ!!
 良いぜ、死ぬまでコキ使ってやるぜ!
 一生、生涯、死ぬまで奴隷っ・・・・・!
 冗談だと思うなよ・・・・・・。
 それでも構わねぇんだよなぁ!?」

「・・・・構わねぇ!!」

再開。
今までとは比較にならぬほどの、
熱き、生死を賭けた戦い、始まる。
心臓音が、一種のバックミュージックとなりそうな場。
誰もが緊張する。
誰もが、先を読めない。
その一手、3年生がサイコロを振る。

「行くぜ、100万賭けの勝負・・・!!
 サイコロの出は・・・・・・・
 1・・・・8・・・・3・・・・12っ!!!」

「(12っ!!!
 確率的に言えば、小が必然!!
 さぁ、どうでる・・・・!?
 オマエの常軌を逸した考えとやらは、
 どういう答えを出すんだ・・・・!?)」

「・・・・・・ククッ・・・・」

出た目は、12。
弁慶の言う通り、確率的には圧倒的に
「小」が有利。
だが、選ぶはあの少女。
いったい何をしてくるか分からない。
素直に「小」と言うのだろうか。
全ての視線が集まる。
少女以外が、ゴクリと息を飲む。
呼吸音荒らす間。
少女が放つ言葉とは・・・。

「・・・・・・小・・・・・」

「(きたっ!!!
 やはり小かっ!
 当然、当然だっ!
 こんな重要な場面でカッコつける必要なし!
 いや、そんなことするのはもう二流以下!
 狂ってるだけの、ピエロ!!
 そうだ、正解だ!)」

「小か・・・。
 じゃぁ振りな、運命のサイを・・・!」

「・・・・・ククッ・・・・・
 何言ってんの・・・・・・・」

「?」

「・・・・・上乗せする・・・・・
 小に加え、数当て・・・・合計9・・・・」

「な・・・・なにぃいいいいいいーーーーーっ!!?」

誰もが悲鳴を上げた。
もう、狂ってるとしか言い様がない。
今の少女の、何処が正常と言えよう?
呆れるほどの、賭博染まり。
脳がイカれてしまったとしか思えない。
弁慶は今にも泣きそうな顔をして
少女に飛びつく。

「お、おいおいっ!!
 頼むから冗談よしてくれよぉ!
 そんなメチャクチャなの、
 通用するわけねぇだろ・・・・!!」

「・・・・・・?・・・・・
 そうなの・・・・・・・・・?」

「当たり前だろっ!!!
 何考えてんだっ!
 ほらっ、早く言い直せっ!
 オマエは人事だから良いが、俺は人生が懸かってる!!
 オマエが絶対に勝てる用途を言うんだ!」

「・・・・・・ふーん・・・・」

少女の表情は、まるで幼稚園児。
その表情は、幼稚園児がママに
「あれって何?」「飛行機よ」
と言われたぐらいの納得具合。
バカげているとしか思えない、あまりにも異常。
3年生もさすがにこれは仕切り直し。
少女に再び発言チャンスを与える。

「・・・・・・間違えた・・・・・
 ・・・・・・・・小・・・・・・・
 に加えて、数当て9・・・・・・・
 ・・・・・加えて、ゾロ目狙い・・・・・・」

「な、なにぃいいいいいいいいいいいい!!!!!」

あまりにもブッ飛んだ世界。
その世界の住人、少女。
常人ではまず考えぬことを容易に考え、
そしていとも簡単に実行する。
もう弁慶は涙すら出ない。
説明不要のバカ。
少女はゆっくりとサイコロを握りしめる。

「へ、へへっ・・・・・
 ハーハッハッハッハッハッハ!!
 こりゃ良いぜ、小に、数当て、ゾロ目か!!
 随分と欲張ったもんだなぁ!
 確かにこりゃ、破滅しちまうわ!
 ハハハッハッハッハッハッ!!!!」

「(もう、ダメだ・・・・・
 言葉すら浮かばねぇ・・・・・。
 いや、これは必然だったのかもしれない・・・
 自分の運命を他人に委ねた、
 必然的、罰・・・・・。
 俺は、死ぬ・・・・死ぬんだ。
 他人の運命によって・・・・・)」

「・・・・・投げるよ・・・・・・・」

少女が狙うは、12よりも小の数を狙い、
はたまたその出目が9であり、それに加え、
それがゾロ目の数字であることと言う、
奇跡以上の、神頼みの展開。
確率など、考えたくもない。
もう何億分の1の確率になってくるからだ。
あまりにも理不尽な賭け。
絶望する弁慶、余裕の笑みの3年。
だが、少女。
動かない、冷静、沈着。
ゆっくりとサイコロを転がす。

「クックック!!
 おい、こら!
 2年坊、サイコロ回ってるぞ!
 見ろよ、えーっと・・・・
 そうだ!!
 3・3・3だ!
 何億分の一の確率をご覧になれよ!」

「(・・・・ダメだ・・・・・
 生きる気がしねぇ・・・・・・
 死にたい・・・・・死にてぇ・・・・・)」

「・・・・・・・ククッ・・・・・」

転がる、転がる、転がる。
サイコロは転がり続ける。
まさか少女が回転イカサマを習得してる
ワケではあるまい。
ならばなぜ、こんな暴挙に出たのだろうか。
転がり続けるサイコロ。
そしてあと少し、あと少しで止まる。
その突如・・・・。

ガバッ!!

「なっ!!
 何しやがんだ、このクソ女っ!!
 サイコロを手で隠してんじゃねぇっ!」

「・・・・ククッ・・・・・・」

「(な、何してんだ、アイツ・・・。
 自分の手で、サイコロの目を隠した・・・?
 今さら何しようってんだ)」

サイコロが止まると同時、
少女は自分の手を覆いかぶせて、
サイコロの目を隠した。
突然の珍行動に、
3年生は怒りをあらわにする。

「・・・・・確認するよ・・・・。
 数当ては5倍・・・・・
 ゾロ目は10倍・・・・・
 故に、15倍。
 100万の15倍・・・・
 1500万円・・・・・・・」

「そんなの計算しても無駄だろうがっ!!
 もう勝負は見えてんだよ!
 早くサイコロを見せやがれっ!!!」

「・・・・・・ククッ・・・・・
 ・・・・常考程度じゃ、奇跡の前にひれ伏すのみ・・・・」

「(あぁ?このクソ女がぁ・・・・!
 何カッコつけてやがる。
 そんな奇跡的な確率、
 当たるって考える方が・・・・・
 か・・・・考える、方が・・・・・・・)」

少女、ゆっくりと覆っていた
手を上に持ち上げる。
先にサイコロの目を見たのは、
少女側にいた弁慶。
3年生は、その弁慶の表情で悟ろうとした。
だが、異変。
弁慶の表情は、絶望ではない。
この表情は、圧倒的な何かを見た目。
まさか・・・・まさか・・・・。
そう、そのまさかである。

「・・・しゃ・・・・・しゃんだ・・・・・」

「あぁー?
 2年坊、何言ってんだよ!
 早く出目を言えよ!
 当たるワケ無ぇーんだからよぉ!」

「・・・・・しゃ・・・・しゃんだぁ・・・!」

「あぁ・・・?」

「さん・・・・・さん・・・・・・さんっ!!!!
 小っ!!!
 9っ!!!
 ゾロ目っ!!!
 ピッタし、ドンぴしゃだっ!!
 全て射ぬいてやがるっ!!
 勝ち・・・・勝ったんだぁああっ!!!」

「なっ!!!!???
 そ、そんなバカなぁあああっ!!!!」

奇跡、神がかり。
どんな言葉で飾っても、これほどの
完璧さ、神秘さは語れない。
揃った、揃ったのだ。
3・3・3の目が出た。
化け物じみた強運。
3年は物凄い形相で、出た目を観察する。
弁慶に至っては、喜びの涙を流す始末。
少女は不適に笑みをこぼし、3年生を見上げる。

「しょ、しょ、しょんなバカな・・・・。
 そんなことあってたまるかっ!!!
 こんなの、ありえるワケねぇ!
 インチキ、インチキに決まってる!!!」

「・・・・・何言ってんの・・・・・・
 アンタ達だって、ずっとイカサマをしてきた・・・・。
 言わばこの賭博に・・・・・
 正当なんてものは最初から無かった・・・・
 あったのは・・・・イカサマ・・・・
 最初から、最後まで・・・・・・・・・
 アンタ達に、それを言う権利は無い・・・・・」

「あ、あぁああ・・・・うぅううう・・・・・!!」

「・・・・・ククッ・・・・・
 人間として・・・・生きる権利もね・・・・・・」

「あ、あぁああああ・・・・
 うわぁああああああああーーーーーっ!!!」

決着。
少女のありえぬ強運により、
決着した。
何も言い返せぬまま、3年生は悶絶。
絶望。破滅を悟った。
その表情を見た少女は、
満足そうな顔をして、ゆっくりと
倉庫から出ていくのであった・・・。

後書き

ここまで来ると、
ようやく一つの事実に気付く。
少女も凄いが、
弁慶もかなり凄いんじゃないか?

この小説について

タイトル -鬼神-
初版 2008年5月18日
改訂 2008年5月18日
小説ID 2102
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