タダ君ヲ想フ - 異世界の砂時計5

莉奈(元 凛)
       第4話


     〜騒がしい日常〜



「・・・ねぇ、雅」


朝食を食べながら口を開く凛。


「何ですか?」


雅は箸を進めながら答えた。

すると凛は雅の服を指す。


「その服、何?」

指摘された雅は自分の身に着けている服を見下ろした。


「何って・・・制服ですが?」


それが何か?という様に凛を見返す雅。

一方の凛は聞きなれない単語を耳にしたかのように

きょとん、と小首を傾げている。



「せいふく・・・?何、それ?」

「学校の指定服です。

 凛も学校に行ってる歳なので知ってるはずなのでは?」




すると凛は、あっけからんと答えた。



「いや・・・私、10歳で大学出てるし」



常人なら思わず驚くその言葉が出てきても、

雅は特に驚きもせず味噌汁を啜る。



「ほぅ、凄いものですね」

「相変わらずの無表情で言われてもね」

すると雅は壁に掛かってある時計を見上げた

「あ、そろそろ行かないといけませんね」

「とうとう無視なのね」




雅は立ち上がると食器を片付け、

「そういえば」と凛に振り向く。



「休みの日は何時でもいいですが、

 平日は6時半程にリビングに座ってないと

 朝食は食べられないと思ってください」


淡々と言った雅の言葉に凛がガタタッと立ち上がった。



「ちょっ、6時半って、キツくない!?」



「そうじゃないと、俺学校に間に合わないんで。

 ・・・まぁ、起こしはしますよ。後は自己責任でお願いします」

凛は眉を顰めながらも渋々と頷く。


「・・・分かったわよ」


凛の了解を聞くと、雅は玄関に向かった。


「では、行って来ます」

「行ってらっしゃい」



その言葉に雅は一瞬目を見開かせたが、すぐに無表情に戻り

玄関のドアを開け出て行った。


(・・・少々、嬉しいもんですね)



―・・・返事が返ってくるのは。









電車に乗りいつも通りに登校する雅。

教室に入ると、人影がガバッと視界に入る。

その人影は、両手を大きく広げ今にも抱きつかんばかりの勢いだ。

途端に、大きな声が。




「みっやび〜!!おっはよ〜ッ!!」




日常茶飯事の事に雅は冷静にいつも通り鞄を振り上げた。

その顔には少しの呆れの表情が浮んでいる。



「おはようございます、景」



ドゴッ!!


「ぶへっ!!!」




雅の振り上げた鞄は容赦なく景と呼ばれた少年の頭にめり込む。


めきり、と骨が軋む音がした。


だが雅はそれに微塵の同情も見せずに、スタスタと自分の席に向かった。



すると、別のクラスメイトの少年―純哉が話しかけてきた。


「よ〜、おはようさん、雅。
 
 ・・・何や、相変わらずやな〜」



床で頭からプスプスと煙を出して倒れている景をみながら、純哉は苦笑する。



続いて、雅の頬を「うりっ」と言いながら突っつく。


「自分のこの仏頂面もな」


雅は鞄から教科書などを机にしまいながら答えた。



「おはようございます、純哉。

 この顔は生まれつきなので余計なお世話ですよ」



そういいながら、純哉の手を軽く払う。

すると、景が突然ニョキッと雅の隣に出現した。

それに純哉は「のわっ!?」とのけぞる。


「景。自分いきなり現れるなや。心臓に悪いやんけ」

「ははっ、ごめんな純哉〜」


純哉の言葉に景は軽く笑って返した。


一方の雅は驚きもせず少しも表情を崩さずに、


「もう回復したんですか。
 
 ならば、もう少し強くやれば良かったですね」


と冷たく言い放った。


だがそんな冷たい物言いにももう慣れているという様に、

特に落ち込みもせず景は雅の肩に手を置く。


「そんな冷たい事言うなよ。

 んで、そろそろ我がバスケ部に入ってくれる気になったか?」

しかし雅は本を取り出し読書をはじめる。


そして一言、


「嫌です」

ときっぱり言い放った。


その言葉に景は、

「はあっ!?」

と信じられないというような声を上げる。


「何でだよっ!?お前には素質があるんだ!!

 何故それを捨てるような事をする!?

 理由を言えっ!!10字以内にッ!!!」


雅はパラリと一枚ページを捲った。


「めんどくさいからです」

「はぁ!?なんで10字ぴったりなんだよ!?

 ってか、何でお前無表情なのに敬語キャラなんだよ!?

 しかもさりげなく紳士だしッ!!!」

「突っこむ所はそこですか。

 ・・・というか、敬語じゃなくても10字以内には入るので

 同じですし問題ないと思いますが?」



そう言いながら雅は一旦本を閉じ机に置いてから、

机の横に掛けてある鞄を開けると手を入れた。



ガサガサとビニール特有の音を立てさせながら

出てきたそれは・・・

一つの、あんぱん。



雅は手に力を入れビリッと封を破くと、再びガサガサと音を立てさせながら、

ビニール袋からあんぱんを取り出す。


景は雅の手に掴まれているあんぱんに気付かずに、再び口を開いた。

・・・否。正確には、開こうとした、だ。

景が言葉を紡ぐのは叶わなかった。

何故なら・・・。


「そーだけ・・・んぐっ!?」


景が口を開かさそうとした瞬間を見計らって、

雅があんぱんを彼の口に押し込んだからだ。


「少々読書の邪魔ですよ。

 しばらく、それでも食べて静かにしといてください」


雅は本を開き読書を再開する。



すると、邪魔者は消えたといわんばかりに

目をぎらぎらと光らせた、教室のそこら中に散らばっていた生徒達が雅に群がった。


「ねぇ、雅君!うちの剣道に入部しないっ!?」

「いやいや雅、お前ならサッカー部だ!!」

「雅君!弓道部なんてどう!?はい、入部届けっ!!」

「雅!お前なら野球部だよなぁっ!?」

「雅ー!一緒にラグビーしようぜッ!!」

「雅!吹奏楽部に入りましょうよ!楽しいわよ!?」

「雅!!テニス部だ、テニス部ッ!!!」


別にこれは今日から始まったというわけではなく、

ずっとまえから雅はそこら中の部活から勧誘をうけていたのだ。


基本的に何でも出来、更には帰宅部。

しかもルックスもいい。

これに目をつけない部活はないだろう。

だがこの騒がしさも、すぐに終止符が打たれる事になった。

チャイムが鳴って先生が来たからとかどっかの漫画でありそうな、

そういうベタな物ではない。


雅が、うるさいといわんばかりに眉間に皺を寄せたからだ。

それだけの事だが生徒達は散っていった。



―折角の綺麗な顔が勿体無い・・・。




その思いが一つになって生徒達は散っていたのだ。

雅の美形さは、最早クラスだけに留まらず学校全体のムードメーカーになっていた。

しかも男女関係無く人気がある。

勿論その雅の美しい顔を崩したくないという理由もあるが、それだけではない。



単純に怖かった、という理由もある。

美形が怒ると怖い、というのは雅を通じれば誰でも痛いほど分かるのだ。










「・・・ほんま、えらい人気やなぁ、雅は」


遠巻きにそれを見ていた純哉は苦笑する。

「ま、成績優秀スポーツ万能、更には美形っちゅう

 完璧人間なんやから当たり前何やけどな」


(やけどオレ的には弱点あった方がおもろいんやけどなぁ・・・

 そういえば雅弱点なんてあるんやろか

 今度聞こかな。どうせ教えてくれへんやろけど)


そう思いながら純哉は、教室の隅で「雅〜」と

体育座りしている景を横目に窓から空を仰いだ。





雲ひとつ無い、澄んだ綺麗な色をしている蒼を・・・。













「うわぁあぁんっ!雅〜ッ!!!!」


雅が自宅に戻ると、玄関でいきなり凛が飛びついてきた。

別に避けられたが、それだと怪我をしてしまうかもしれないし、

第一女性を殴るのは無理だった。

そこが、雅が紳士と呼ばれる所以なのだろう。


「どうしたんですか、凛?」


問うと、凛は家の中を指差した。

中をひょいと見た雅は目の前の状況を理解出来なかった。


それはそうだろう。


意味の分からぬやたらとゴツイロボットが、

暴走して家の中をめちゃくちゃにしているのだから。



「・・・凛。どういう経緯でどうやってこういう状況になったのか、

 一つも抜かす事無く簡潔にかつ素早く説明して頂けますか?」


「え、えっと・・・暇だったからそこらへんのヤツで

 ロボット作ったら・・・・・・・・・・・

 ココア浴びて、暴走しちゃった・・・」

「・・・・・」

「・・・テ、テヘ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「すいませんごめんなさい謝るからそんな冷めた目で見ないでッ!!!!!」


やがて雅は「はぁ」と溜息をつくと、鞄を置いて腕まくりをする。


「止める方法は?」

「頭の中に埋まってる小さなプログラムのチップを取り出せば・・・」

「・・・何故そんな所に埋めるんですか」

「ごめんなさいっ、後の事なんて考えてなかったの!!」

「待ってて下さい」

「へ?雅・・・?」


すると雅は、臆する事無く暴走中のロボットに歩みを進めていった。


「ちょっ、暴走中のロボットにむやみに近づいたらあぶな・・・っ!!」


そんな静止の言葉も聞かず歩の歩みを止めない雅。




一瞬、だった。




説明しがたいその戦闘風景。

ただ、言える事は・・・

一方的にロボットが攻められており、雅には一つの掠り傷さえない事。

その人間離れした動きと破壊力で。


しばらく、

ドコッ!

ガキィッ!!

バカッ!!

ボキィッ!!

ドガァァァンッッッ!!!!!!!

という硬質な音が、だだっ広い家の中に轟いた。



そして数分後―・・・。



最後の仕上げに雅はロボットの頭部と体を離した。

頭部と体のつなぎ目から、様々な色のコードが晒される。

それをブチチィッと千切ると、雅はその頭部を凛に投げ渡した。


「うわ・・・っ!?」

「さっさとチップを取り除いてください」


そういうと、雅は床に視線を移す。



どうやらチップを取り除かないと本当に止まらないらしく、

そこには雅の手によってバラバラにされた、

かろうじてかつてロボットの体の一部だったとわかる部品達が奇妙に蠢いていた。


それを見て顔を顰める雅。

やがてそれが止まると、台所に歩いていった。

どうやらそこは何とかロボットの攻撃を回避できた様だ。




「凛。俺は夕食の準備をするんで、後の片付けを頼みますよ」



















そしてまた騒がしい一日が、終わった・・・。























 

















後書き

や・・・やっと終わった〜っ!!

やりました、やっと終わりましたよ!

大変だったなぁ・・・(遠目)

いつもより長かったし長かったし長かったし・・・(エコー)

い・・・いかがでしたでしょうか?

いつも皆さんのお口にあってるかドギマギの莉奈です・・・・;;

なんか最近凛が茶目っ気多くなってますねー
雅が意外と紳士だったというのも発覚です!!

実は前回にも一応紳士っぽさをだしてみたんですよね〜
どこか分かりますか?


今回は新しく新キャラを登場させられました^^

私的には、関西弁少年の純哉君が気に入っておりますw

方言フェチなんで・・・ww



ではでは、失礼致します!!

     シュバッ!!

この小説について

タイトル 異世界の砂時計5
初版 2008年5月23日
改訂 2008年5月25日
小説ID 2116
閲覧数 675
合計★ 3
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コメント (1)

★aki 2008年5月23日 21時29分27秒
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