鬼姫 - -鬼姫-

ライン

現在、帰路。
弁慶は憧れの少女と共に、
夕暮れの中を歩いていた。
だが、弁慶はそんな祝福を楽しんでいられなかった。
呆然、唖然としていた。
今日起きた、この少女による
あまりにも神掛かりな「力」に、
圧倒されきって、口を開けられなかった。

「(・・・何が、起きたんだ・・・?
 あまりにも唐突過ぎて、
 今までのこと全部、夢みてぇだ・・・。
 アレは、現実だったのか?
 あんなバカげたこと、現実の出来事だったのか?)」

「・・・・・・・・・ククッ・・・」

逆。
弁慶はこの時、逆だった。
逆に少女と一緒にいたくなかった。
一人で考えたかった。
事実を把握できない。
考えれば考えるほど、頭がねじ曲がる。
人間を遙かに超えた強運。
それを間の辺りにしたら、もう・・・。

「・・・・・・嫌だよね・・・・・・
 ノーリスクを求める奴ばっか・・・・・
 ・・・勝負という名ばかり語る、ゴミばっかで・・・・」

「・・・・・あ、あぁ・・・」

「・・・・ククッ・・・・・。
 本当は・・・・肝臓も賭けたかったんだけどね・・・・」

「え?
 あっ・・・お、おまえっ!!!
 それっ!!!」

淡々と語る少女。
ふと、弁慶は少女の方を振り向く。
そこで、驚愕の事実を目にする。
何と、少女は手に3つのサイコロを
持っているではないか。
そのサイコロを、手で宙に上げたり
キャッチして、遊んでいるはないか。

「お、おまえっ!!!
 何でサイコロを持っているんだ!?
 そのサイコロは奴らの・・・・・。
 ま・・・・まさか・・・・
 おまえっ・・・・・・・・・!!!」

「・・・・・ククッ・・・・・
 うん・・・・・用意してたんだ、これ・・・・・」

「っ!!!!!!!」

初めての驚愕。
それは、初めて知る驚愕の事実だった。
弁慶は進んでいた足を止め、
さきほどまで、
グッタリとして顔を豹変させ、
少女に喰いつくように問いかける。

「ま、まさか、オマエ!!
 イカサマをしたってのか!?」

「・・・・・何となく、題材がサイコロってのは
 勘付いてた・・・・・・
 だから、ポッケに入れといて・・・・。
 あの大勝負・・・・
 運命の決戦の時に・・・・
 手に仕込んでおいたんだ・・・・」

「そ、そうかっ!!
 だったらあの化け物じみた強運にも説明がつく!
 つまりあの時!!
 オマエがサイコロを手で覆った時、
 サイコロを入れ替えたんだな!!
 最初から手に仕込んであったサイコロと!」

こうなると、弁慶は安堵した。
やはり確実なる勝利があったのだ。
それに、少女もやはりただの少女。
化け物ではない。
ただちょっと、頭がキレるだけ。
自分達と同類。
弁慶は少し笑みをこぼして、
一息つく。

「ふぅ〜・・・
 まったく、チビっちまったぜ。
 そりゃそうだ!
 あんなバカげた確率のサイの目を・・・・」

「・・・・・ククッ・・・・・」

「・・・・・え・・・・・・。
 ・・・・・・・な、なぁ・・・・。
 おまえ・・・・さっき、何て言った・・・?」

震えだす、弁慶。
そう、弁慶は気づいていなかった。
この少女の言葉の裏に。
ようやく気づき始め、震える。
冷汗が出て、呼吸は荒く、心臓は高鳴る。
そして、意を決して、
弁慶は尋ねる。

「・・・・おまえ・・・・・
 さっき・・・・・・・・
 ”用意してたんだ”って言ったんだよな・・・?」

「・・・・・?・・・・
 たぶんね・・・・・・・・・」

「よ、用意って・・・・
 それじゃぁ、過去系じゃねぇかっ!!
 おまえ・・・・・
 おまえ、まさか・・・・・・!!
 まさかっ・・・・・・・・!!!!」

「・・・・・・ククッ・・・・
 まっ・・・・・すりかえる必要無かったけどね・・・・」

「っ!!!!!!!」

弁慶は、小便をチビる思いだった。
そう、確かに少女はイカサマを仕掛けた。
保険をかけていたのだ。
だが、それを実行してはいなかった。
なぜ?
自分の投げた際が、3・3・3であったからだ。
やはり、化け物。
この少女、まぎれもなく化け物。
弁慶は再び、少女の強運におののく。

「は・・・・ハハッ・・・・・
 ブっ飛んでる・・・・・
 や、やっぱりオマエは・・・・・
 最高だぜ・・・・
 イカしてるせ・・・・・・!」

「・・・・・本当は、負けようと思ってた・・・・」

「!!!?」

「・・・・・本当は、アンタを殺すつもりでいた・・・・。
 ムカツク・・・・・・
 アンタらみたいな悪気取って、
 命賭けずにエバってる奴を見ると・・・・
 ・・・無性に、ひねり殺したくなる・・・・・・」

「な・・・何だって・・・・・」

「・・・・・でも、まさかアンタが率先して
 私の申し出に賛成するとはね・・・・・
 ククッ・・・・・・
 命拾いしたね、アンタ・・・・・・」

「っく!!!」

ここで衝撃の事実をもう一つ。
何と、少女はあの最後の大勝負。
最初は負ける気でいたのだ。
だが、変化。
心の変化。
弁慶が迷わず、躊躇せずに、
自分の命顧みずの行動に出たため、
少女は勝とうとする意思を強めたのだ。

「・・・・・す、済んだことだ。
 今さらどうこう言わねぇよ・・・・・。
 それより・・・・・おい」

「・・・・?」

「・・・・手、出せよ」

弁慶は震えた。
もしかしたら、自分は死んでいた。
自分の突発的な行動に、
最大の敬意を称賛しつつ、
少女の右手を差し出すように言う。
少女は不思議そうに手を出す。
すると、弁慶は懐からハンカチを
取り出し、傷ついた右手に巻きつける。

「・・・・血は止まってるみてぇだが、
 とりあえず処置はしておいた方が良い。
 良いか?
 家に帰ってから絶対に治療しろよ?
 バイ菌が入ってからじゃ、遅ぇんだぜ」

「・・・・・・・・・・
 邪魔・・・・・」

「・・・・へへっ、
 まっ、そう言うなって。
 つけといて悪いこたぁ、ねぇぜ」

「・・・・・・・・」

少女は相変わらず、
退屈そうな、嫌そうな顔をしているばかり。
しかし、それでも弁慶は
強引に少女の手当を行った。
そして、弁慶はあらたまって
少女の顔を見る。

「俺、天見弁慶ってんだ!!」

「・・・・・・だから・・・?」

「だ、だからって・・・。
 普通、自分の名前も言うだろ」

「・・・・・ククッ・・・・
 アンタの名前に何の価値があるのさ・・・・」

「っ!!!
 ・・・・・そ、そうかい」

弁慶、素直。
素直に引き下がる。
どう見ても、少女の表情は真顔。
真顔で拒否。
弁慶はしぶしぶ、
悲しそうな顔をして、引き下がろうとする。
すると・・・。

「・・・・・あっ・・・・・・。
 ねぇ・・・・・」

「ん?どうしたよ、大将」

「・・・・・また、死んでくれない・・・?」

「な、何んだとぉ!!?
 死んでくれない!?」

「・・・・・・・うん・・・・・
 死んでくれる奴がいた方が・・・・
 ずっと、楽しい・・・・・
 ・・・・相手もきっと・・・・楽しくなる・・・・・」

「・・・・お、おまえ・・・・」

「・・・・・私の専属の死人になってくれるなら・・・
 名前、おしえてあげる・・・・・」

「・・・・・・・・・・
 ・・・へ・・・・・へへっ・・・・。
 ・・・・・やってやろうじゃねぇか、大将」

「・・・・・・ククッ・・・・・・
 鬼・・・・・・・鬼姫・・・・・・・・」

少女のバカげた条件。
その条件を、飲んでしまう弁慶。
それと共に、ようやく聞きだす。
少女の名前、その名を「鬼姫」。
まさに名の通りの、鬼。
だが、なぜか弁慶はすがすがしかった。
危険な約束をしたことも忘れるくらい、
なぜか爽快だった。
すっと、
夜になっていく空を見上げる。

後書き

ようやく主人公の名が判明。
長かった・・・。

この小説について

タイトル -鬼姫-
初版 2008年5月24日
改訂 2008年5月24日
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