りれしょ物語 - 第八話ー恋模様は図書室でー

 昼休みも終わり、今日は午後の授業は無く、午前で帰れる。けど、俺と小雪と村崎は国語の課題が終わっていないので、図書室で課題を終わらせなければいけない。
 空は晴れ渡り、澄み切っているというのに、俺の頭は謎だらけだった。煽さんは御堂なんかが気になっているみたいだし。それでさっき問い詰めてきた雛利は「あいつなら良いや」とか訳の分からない事を言っていたんだし。

「…何なんだよ、一体…」
 俺はぼそりと呟きながら図書室へと向かった。




 図書館では、小雪や村崎がすでに語句調べをしていた。
「遅いわよ、剛! 何してたの?」
 小雪が聞く。だけど、言える筈が無い。煽さんが御堂に恋していて、俺は雛利に訳の分からない事を言われて考え込んでいたなんて。俺は必死に弁明した。
「いや…あのーアレだ…食べ過ぎて腹痛になって、今までトイレに…」
「ハハハッ!! 本寺お前、どれだけ食ったんだよ!!」
 村崎が俺を思いっきり笑う。後で見てろ、この能天気馬鹿。絶対にお前に仕返ししてやるからな。


 俺が小雪に言い寄られていると、俺の頭の上にぽん、と辞書が置かれる。
「止めとけ、須藤。本寺は押しに弱いんだからよ」
「九条先輩!」
 小雪や俺も驚く。俺の頭に辞書を置いた九条 真澄(くじょう ますみ)先輩は俺達よりも一個年上。サッカー部のエースでキャプテン。だけど、本も好きで図書委員会もやっているという、まさに文武両道な人。俺達はよく宿題や課題をやったり、サボりに来たりしているので、全員九条先輩とは顔見知り。
「九条先輩、どうしたんですか?」
 小雪が聞く。くそ、俺への問い詰めとは全然声色が違う。
「ん、いや、お前らまた課題を残ってやるんだろ? だから、図書室の鍵を預けておこうと思ってな。どうせ、この時間帯にここにいるのはお前達ぐらいだもんな」


 俺達が先輩と話していると、何と雛利が図書室へやって来た。何の用があるのだろう。
 雛利は俺を見据えて言った。
「何であんたがここにいるの?」
「いや、図書室で課題を…」
 俺が説明すると、雛利は視線を俺から九条先輩に向けて、言った。
「九条先輩。いい加減にグラウンドへ集合してください。相手のチーム、待ってますよ」
 そういえば、今日、午後から授業が無いのは、他校から来るサッカー部との交流試合があるからって担任が言っていたっけ。
 雛利もまた、九条先輩に対しては完璧な敬語だ。九条先輩は笑って答えた。
「ああ、悪い。すぐに行くよ。図書委員なんだし、図書室が気になったんだ」
「今日は大切な交流戦なんですし、早く来てください」
 俺は、雛利の視線を感じながらも九条先輩に聞いてみた。
「九条先輩、雛利ってもしかして…」
「ん? 何だ、知り合いか? お前達。雛利はサッカー部のマネージャーだよ。それがどうかしたか?」
「あたしがマネージャーしていたら、いけないか?」
 雛利が思いっきり睨んでくる。いや、「悪い」なんて一言も言ってないんですけど…。
 俺が怯えていると、九条先輩が雛利に笑いかける。
「まあまあ、雛利。怒るなよ。俺が集合しなかったのが悪いんだしさ。許してくれよ」
 その笑顔に、照れているのか雛利は顔を赤くしながら強く言った。
「…とにかく! 九条先輩には試合があるんですから、早く来てください」
 九条先輩は、足早に雛利と共に図書室から出て行った。







俺達が、やっと静かになったと思って課題を始めようとすると、今度は図書室の椅子に座り、本棚に寄りかかって寝息を立てる御堂を発見した。
「何でこんな所にいるんだよ…」
 俺はため息をつく。けど、一つ分かったような気がした。雛利が御堂に何にも言わない理由。九条先輩が図書室にいる時、御堂とよく話していて親しいんじゃないか。御堂はよく図書室で本を読んでいるし。だから、雛利もそれを知って敵視していないんだ。九条先輩、人当たりいいもんな…。
「それにしても、こいつは神出鬼没だな…」
 村崎もあきれている。
 すると、図書室に、今度は煽さんがやって来た。さきほど調理の実習で作っていた、おいしそうなカップケーキを持って。
「煽さん? どうしたの?」
 俺が聞くと、煽さんはまたもや先程と同じ様に顔を赤らめながら言った。
「さっきのカップケーキを御堂くんに、食べてもらいたくて…もしかしたら、図書室にいるんじゃないかな、と思って…」
 この時俺は思った。女の子の勘というのは、とっても正確だな、と。
 

 俺はすぐに御堂を起こす。
「御堂! 御堂、起きろよ!」
「…んー? 何…?」
 相変わらずの天然ボケっぷりだ。煽さんは一体コイツのどこがいいんだろう。
「調理実習で作ったの。良かったら、食べて?」
 煽さんが照れながら御堂にカップケーキを手渡す。
「ねえ、もしかして煽さんって御堂のこと…」
「小雪、静かにしろよ。俺達が邪魔してどうするんだよ」
 にやにやしている小雪を俺は黙らせる。
「…いただきます」
 状況がまったく分かっておらず、どうして煽さんが自分にカップケーキをくれたのかすら理解していない鈍感な御堂は目を擦り、眼鏡をかけなおしてゆっくりとカップケーキを食べた。もぐもぐと、見ているこっちが食べたくなるような食べ方だし、カップケーキのふんわりとした甘いにおい。やばい、お腹空いてきた。
 御堂はカップケーキを頬張りながら煽さんに向かって言う。
「ふぉっふぇふぉ、ふぉふぃふぃふぁっふぁふぇふ」
「食べながらしゃべるな! みっともない!!」
 小雪がまるでお母さんの様に叱る。御堂は慌てて飲み込んでから再び言った。
「とっても、おいしかったです。わざわざありがとうございます」
 俺は御堂を見直した。いくら鈍感で天然な御堂でも、女の子に対しての礼儀は持ち合わせているらしいから。
「本当…? 良かったぁ…!」
 煽さんが微笑む。本当に嬉しそうだ。御堂も、ちょっとは常識人として扱ってやってもいいかな。

 すると、御堂が自分のカバンからおなじみのホームズの本を取り出して言った。
「これ、カップケーキのお礼です。『緋色の研究』といってホームズシリーズの最初の本なんですけど、ホームズとワトスンの出会いと、その後起こる殺人事件が描かれていて、それがまた…」
「あーはいはい。とりあえず、その本を煽さんに貸してあげたいって言いたいんだろ」
 俺は入りたくないが二人の間に割って入る。
「平たく言えばそうだけど、内容をもう少し…」
「お前が満足するまで話していたら、真夜中になるぞ…やめとけ」
 俺の言葉に、少し不服そうにしながらも、御堂は煽さんに本を手渡した。
 煽さんはにっこりと笑う。ああ、その周りまで和ませる笑顔はすごい威力だな。
「ありがとう…私、ホームズの事あんまり詳しくないから…また、ホームズの事、色々教えてね。本当にありがとう」


 和やかな雰囲気を、俺と村崎の腹の音が遮った。カップケーキのあまりの誘惑に、とうとう負けてしまったらしい。
「あんたたち…雰囲気台無しなんだけど…」
「ふふっ。皆の分もカップケーキあるから、食べる?」
「「食べる!!」」
 俺と村崎の声が重なる。
 その後、俺達はカップケーキを食べながら課題に頭を悩ませたのは言うまでもない。

後書き

私ばかり新たな人物生み出しててすみません;;

九条 真澄(くじょう ますみ)
学年:高校三年生
ポジション:主人公の先輩
性格:文武両道。人当たりがいい。

この人をどう使うかは皆さんにお任せします!
御堂&煽、上手くいきましたか!?
まあ、そこは皆さんの判断にお任せします。
次は達央さんにお願いします。どんな展開になるか、楽しみにしています。 

この小説について

タイトル 第八話ー恋模様は図書室でー
初版 2008年5月31日
改訂 2008年5月31日
小説ID 2170
閲覧数 1053
合計★ 6
ひとり雨の写真
作家名 ★ひとり雨
作家ID 223
投稿数 91
★の数 226
活動度 10590

コメント (3)

★梨音 2008年5月31日 16時55分46秒
こんにちわ。
御堂が可愛く見えるのは私の気のせいですかね?特に口にものを含んだまま喋るシーン。子供っぽくて可愛いです。

御堂と煽さんはほのぼのしてて癒されますね。邪魔者がいなくて良かったです。

達央さんも頑張って下さ〜い。
★日直 2008年5月31日 18時13分58秒
こんにちわ。
宿題大変ですね。この三人組は。
図書室は静かでいいですよね。カップケーキもある事だし、宿題は捗ってる事でしょう。

これからがいろいろ楽しみです。
達央さん、ファイトですよ〜。
ひとり雨 コメントのみ 2008年6月1日 13時08分57秒
<梨音さん

コメントありがとうございます。
御堂は子供っぽいんですよ、小雪が軽く母親的な感じですし(笑)
邪魔者いなくて良かったですか? 人の恋路を邪魔するものは…フフフ←何
やっと物語が軌道に乗ってきたって感じです。

<日直さん

この三人、とことん居残り組なので、図書館は憩いの場所として考えてみました。
梨音さんがカップケーキのお話を書いた時、これは続けられる! と思いましたし。

私も達央さんの話を楽しみにしております、それでは。
名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。