最強女王×最弱騎士 - 第九話 適性検査四日目〜ポーカー二番勝負(後編)〜

 緊張が満ちている空間。真剣な面持ちの葵さんと南条先輩。
 だけど、二人が見つめているのはトランプのカード。
 そう、先程から続けているポーカー勝負。この二人の勝敗で、俺の執事人生が終わるか否かが決まる。



「じゃあ、二回目を始めるか」
「……はい」

 葵さんが先に配られたカードをめくり、手札を見る。続いて、南条先輩も。
 二人とも、真剣そのもので手札を見つめる。まるで、本当のギャンブラーみたいだ。この場もカジノのような雰囲気になってきている。

(ここって本当に学校だよな?)

 俺は密かに疑問が浮かんでしまっていた。いけない、いけない。俺は大きく横に首を振った。今は、葵さんが勝ってくれるのを祈らなきゃならない。そうじゃないと、俺の代わりに頑張ってくれている葵さんに申し訳が立たない。ポーカーには自信があったのに、俺は開始早々負けてしまったし。

 葵さんは二枚カードを捨て、山札から二枚カードを引く。続いて南条先輩の番だが彼は何と一枚しか捨てていない。考えたくないが、こういう時は大抵、大技である可能性が高い。

 俺が様子を見ると、南条先輩は何だか余裕の表情だった。眼を瞑り、口元も緩んでいる。余程の自信があるのだろう。一方の葵さんはただひたすらカードを見つめているだけだった。ちょっと心配になったが、今俺に出来るのは葵さんを信じる事だけだ。




「準備はいいか……?」
「はい……」

「オープン!!」

 二人が一斉に手札をその場に見せる。周りの空気が一気に驚きに変わった。

「!!」

 俺は南条先輩の手札を見て驚いた。何とストレートフラッシュ。綺麗なスペードの7、8、9、10、Jが揃っている。やばい、強すぎる。これは、葵さんが南条先輩に勝つことなど奇跡に近い。

「俺の勝ちだな!」

 南条先輩が嬉しそうに言う。俺は目の前がかすんで見えてきた。だが、葵さんは何故か首をかしげている。

(どうしたんだろう……?)

 これでお別れかもしれないから、最後まで執事の仕事はまっとうしようと思い、俺はしっかりと意識を保ちながら葵さんに聞いた。





「葵さん……? どうか、したんですか?」

 俺が弱々しい声で聞く。何だか、もう全てがどうでもよくなった様な気さえするのは気のせいだろうか。俺の声に反応して葵さんはテーブルを指差して言った。

「侑斗、こんなカードあったか? 何か変なカードだ」
「変? ……!! こ、これって!!」

 俺は葵さんの手札が置かれたテーブルを見て、現実かどうか認識できなかった。すると、そこにいた全員が驚愕の表情に変わる。

「ロイヤルストレートフラッシュ……!!」

 葵さんが持っていたカードは、ハートの10、J、Q、K、Aと完璧に揃っている。そう、これがポーカーで最強の組み合わせ、ロイヤルストレートフラッシュ。この手札は、つまりポーカーでは最強なのだ。ある意味、とても運が強くないとこんな土壇場で出てくる事なんて無い。葵さんは本当に本当のギャンブラーだ。

「て、ことは……葵さんの勝ちですよ!!」

 俺は大きな声で言った。だけど、当の本人はぽかんとしている。葵さんは、どうやらポーカーは知っていてもロイヤルストレートフラッシュは知らなかったらしい。だからさっきまであんなに首をかしげていたんだ。何のカードか分からなかったから。
 俺は心底嬉しくなった。頭脳戦でも、やっぱり葵さんは最強だし、今はまだ、葵さんの側にいられる。

「あーあ……やっぱり葵は最強だな。俺の負けだ」
「お、俺、ここに居ればいいんですかっ?」
「……葵が勝ったからな。明日、生徒会が迎えに来るから、放課後、葵の部屋にいろよ。……まあせいぜい、頑張れよ」
「は…はい!!」

 そう言って南条先輩は先輩達を連れて部屋を出て行った。
 葵さんが俺を振り返って言った。

「良かったな、侑斗」
「はい!!」

 これで、執事適性検査は無事終了。葵さんの胸には最初にもらった鈴がきらり、と輝いていた。俺は嬉しくなってその場で葵さんと勢いよくハイタッチした。

後書き

意外とすらすら書けました。
葵と侑斗の絆が深まっているように書けたので良かったです。

この小説について

タイトル 第九話 適性検査四日目〜ポーカー二番勝負(後編)〜
初版 2008年6月7日
改訂 2008年9月18日
小説ID 2202
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