鬼姫 - -機械-

ライン

始まった、ストップウォッチ戦。
どれだけ時間を正確に刻めるか。
それが勝負の分かれ目。
運否天武でないことは確か。
実力、
確実なる実力が必要。
場は、すでに9回戦。
だが、やはり・・・・・。

「(っぐ、クソッタレぇ・・・・!!
 ダメだっ・・・・!
 何だ、何なんだ野郎は・・・・!?)」

「・・・・ウフッ・・・
 どーしたのぉ、坊やぁ?
 汗が凄いよぉ?
 興奮して来ちゃったぁ?」

「っぐ・・・・!!
 (ここまでの9回までの勝負、
 俺は一度も勝ってねぇ・・・!
 それ所か、奴はジャスト止め3回!
 全勝・・・・・!
 俺はマイナス36万っ!)」

弁慶、絶望的なる敗北道。
何と、一度も勝てないという
どうしようもない展開。
故に、親の権利も美穂から動いていない。
だが、あきらめない。
あきらめずに、ただ弁慶は進むのみ。
次戦、9回戦。
始まる・・・・。

「さぁ、行くよぉ坊やぁ・・・!
 9回戦!
 ストップウォッチ・・・スタート!」

カチッ!!

「・・・・・くっ!!
 (落ち着け、落ち着け、落ち着け!!
 落ち着いて、時を刻めぇ・・・・・・!
 時計の針の動くタイミング、感覚を思い出せ・・・!
 4・・・5・・・6・・・
 ・・・・・こ、ここだっ!!!)」

カチッ

9回戦、あっという間に終局。
どちらもストップウォッチを正確に
押し終えた。
美穂は親だが、
スルーする気なし。
今までも、一度もスルーしてないのだから。
果たして、弁慶が止めた秒数とは。
息を荒げ、瞬きを止め、
震える手で、ストップウォッチの
覗きこむ。すると・・・・。

「(・・・・・き・・・・
 ・・・・きたっ!!!!
 7,99っ!!!
 やった、やったっ!!
 7,99っ!
 ほぼ勝ちっ!
 いや、これは確実な勝ちだろう!
 これで一勝、
 揺るぎない一勝・・・・!)」

これだけに関しては、弁慶世論。
7.99は、ある意味
ジャスト数字と同じくらい難しい。
言ってみれば他の数字もそうなのだが、
狙っているのだから、7,99は最高の数値。
まず、負けるハズが無いと
思っても、言い過ぎではない。
いや、それが当然であろう。
そう、当然。
相手が、その常識を卓越する者でなければ。

「・・・ウフフッ・・・・
 坊や、私ね・・・
 相手の自信満々の心を、
 完璧に握りつぶすの、快感なんだぁ・・・」

「?」

「・・・体が熱くなっちゃう。
 無償に脱ぎたくなっちゃう。
 誰でもいいから、体を預けたくなっちゃうくらい・・・
 快感・・・・・・。
 今、そんな感じ・・・・」

「・・・・・・ま・・・・
 ま・・・・・・まさ、か・・・・・」

「・・・・・ウフフッ・・・・
 ゴメンね、坊や・・・・・・。
 美穂ね・・・・・6,00・・・・・
 ジャスト6秒、出ちゃった」

「っ!!!!!!!!」

卓越者、現る。
弁慶の、常人の常識を遙かに
覆す者、美穂。
通じない、通じないのだ。
ヤワな攻撃では、この覇王を崩せない。
かと言って、弁慶はヤワな攻撃以外、
手段がない。
場は圧倒的な、美穂の支配下。
弁慶の体中に、冷たい汗が噴き出す。

「(ダ、ダメだ・・・・・
 勝てねぇ・・・・負ける、負けちまう・・・・!!)」

「ウフフッ・・・・
 どうしたのぉ、坊やぁ?」

「ひっ!!!!」

美穂は、誘惑する眼差しで、
体を弁慶に密着させてきた。
色気を出すような生足の動きで、
弁慶の足をさすりだす。
この時弁慶は、吐きそうだった。
性欲と絶望の間で、
弁慶は吐きそうなくらいの窮地だった。
必要以上に密着してくる美穂に、
弁慶は息もできぬほどの恐怖を感じていた。

「ねぇ、触っても良いよぉ、
 美穂の体に・・・・。
 今、とっても熱くなってるの・・・。
 だって、指がまたもらえるんだもん。
 私のコレクションに加わるんだもん・・・。
 アナタの指・・・・かわいい指が・・・・・・」

「(く、くそぉ・・・・くそぉっ!!
 お、おっかねぇ、おっかねぇっ!!!
 こいつ・・・・・こいつ・・・・
 崩せない、俺はコイツを倒せない!
 何もかも、足りない!
 勝てる要素が足りな過ぎる!)」

「・・・アナタの心臓もドクドクしてる・・・。
 美穂の体と同じ・・・・。
 待っててね、すぐ、
 イカせてあげるからね・・・・。
 美穂があと10回戦で・・・・・
 発散させてあげるから」

「(・・・き、機械・・・・・
 マシーンだっ!!
 こいつの体内時計は、狂わないっ!
 正確、確実、着実っ!!
 機械的、時間の読み・・・・・!
 そんな奴を・・・・・
 俺がどうやって勝てる・・・・・?
 機械を、
 どうやって狂わせることができる・・・!?)」

もう、弁慶は終わっていた。
この時点で、恐怖を感じている。
弁慶は勝負という場にすら立てていなかった。
おまけに、相手を「機械」と
称えだす始末。
弁慶は、勝てない。
この先何があろうと、美穂には勝てない。
美穂は弁慶から離れて、再び
勝負を始めようとする。

「ウフッ・・・・。
 じゃぁ、始めよっか。
 ・・・・・10回戦・・・・・
 行くよ・・・・・?」

「(お、俺はもうマイナス46万っ!!
 い、嫌だ・・・・もう嫌だっ!
 止めたいっ!
 切りたくない、指を・・・・!
 失いたくない・・・・・・!!
 ダメだ、ダメだ、ダメだ・・・・・!)」

「・・・・どうしたの、坊や・・・?」

「う、うぅ・・・・・っぐ・・・・!
 (頼む、頼むぅ・・・・・・!!
 誰か・・・・誰か、助けてくれぇ・・・・・・!!!)」

ギィイイ・・・・

弁慶、自分の敗北を認める。
その中で、必死に指を失いたくないと願い続ける。
今になって、現実帯びてくる、
指切り。
恐ろしい、想像することさえ恐ろしい。
逃げたい、逃げたかった。
そんな無様な弁慶の前に、
神の恵み。
幸運のトビラの音がする。

「・・・・・・・へぇ・・・・・・」

「?・・・・誰よ、アンタ」

「あっ・・・あ、あぁあ・・・・・
 あぁあああ・・・・・・・・・・!!
 お・・・・鬼姫っ!!!!」

現れた化け物、鬼姫。
弁慶の危険を察したのであろうか、
ピンチの場面に、颯爽と現れる。
鬼姫は小屋の中を見回すと、
ゆっくりと弁慶のもとへ近づく。
弁慶は今にも泣きそうな表情で、
鬼姫を向かい入れる。

「鬼姫ぇ〜〜!!!
 お、俺、信じてたぜ・・・・!
 オマエが来るって、信じて・・・・・」

「・・・・・金・・・・・・」

「え?」

「・・・・・・タマゴサンド・・・・・
 買えない・・・・・・金、出して・・・・・」

「なっ・・・何ぃいいいいいいいっ!!!!」

弁慶は、落胆の表情を隠せなかった。
鬼姫がここに来た理由はただ一つ。
タマゴサンドを買うお金が無い。
そうだ、弁慶にもらおう。
っと言うことだった。
絶望に打ちひしがれる弁慶。
やはり鬼姫が弁慶のために自分の足を
使うことなど無い。
ある意味、さすがは鬼姫。
だがここで弁慶、ひらめく。

「・・・・よ、良し。
 いいぜ、わかったよ、やるよ!!
 けどよぉ、聞けよ鬼姫」

「・・・・・?・・・」

「俺も金を渡してぇが、
 この美穂って女が帰してくれねぇんだ・・・。
 しかも、ギャンブルやってっから、
 俺の金も握られてる」

「・・・・・・・」

「・・・・悪ぃな、鬼姫。
 金はやれねぇよ。
 残念だったな」

「・・・・・・ククッ・・・・・
 見え見え・・・・・私と・・・
 あの女を・・・・・・戦わせようってんだ・・・・」

「っ!!!
 ・・・・・へ、へへっ・・・・
 あぁ、そうだよ。
 悪く無ぇだろ?
 タマゴサンドを・・・・」

「・・・・・帰る・・・」

「え!?」

弁慶の巧みな話術が裏目。
鬼姫は気分を悪くして帰ろうと
しているではないか。
その様子を見て、
必死に鬼姫にすがりついて、
説得しようとする弁慶。

「わ、わ、わっ!!
 ちょっと待てよ!
 今から銀行とか行って、
 足りねぇ分の金を引き出すとか無駄だぜっ!」

「・・・・・?・・・・」

「・・・良いか?
 あのコンビニのタマゴサンドは絶品だ。
 オマエもだから好きなんだろ?
 ・・・・チンタラ銀行なんざ行ってたら、
 あっという間に売り切れだぜぇ?」

「・・・・あっ・・・・・」

「だがその点。
 俺の条件を飲んでくれたらぁ・・・
 この勝負に勝った時、
 俺は心臓が破裂するくらいの速さで、
 コンビニまで行って、サンドイッチを買ってくる。
 ・・・・・どうだい、大将?」

「・・・・・・・・・・・ククッ・・・
 ・・・・・おもしろい・・・・・乗った・・・・」

「(や、やったっ!!!!)」

鬼姫、承諾。
最後は、弁慶の必死の食いつなぎが
幸運を呼んだ。
こうして、対峙。
鬼姫対美穂。
化け物とマシーンとの戦い。
鬼姫は、少し笑みをこぼしながら、
美穂を見つめる。

「・・・な、何よ、そこの女。
 私の所ジロジロ見て・・・。
 何が言いたいのよっ!!」

「・・・・・・ククッ・・・・・
 ・・・隠すな・・・・・・
 アンタも所詮はエサの部類・・・・
 ・・・・・強者の前では、エサをさらせ・・・・」

後書き

鬼姫(おにひめ)という読み方。
キキと呼んでもよかったのですが、
何となく
こっちの方が好き。

この小説について

タイトル -機械-
初版 2008年6月13日
改訂 2008年6月13日
小説ID 2224
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