鬼姫 - -出陣-

ライン

化け物、現る。
それに対抗するは、完璧なるマシーン。
ある意味、
異種格闘技戦。
化け物の変則的思想がマシーンを
狂わすか、
それともマシーンの完璧性に、
化け物は飲まれるか・・・。
そんな中、弁慶は鬼姫に、
このゲームの説明をする。

「・・・ってワケだ。
 ルールはだいたいこんなもんだが。
 ・・・・・か、勝てるのか、鬼姫?」

「・・・・?・・・・」

「だって、アイツは機械、マシーンだ!!
 機械的な体内時計!
 狂わない、精密すぎる!
 いくら鬼姫でもよぉ・・・!」

「・・・・・ふーん・・・・」

弁慶は恐れた。
いくら鬼姫とは言えど、
所詮、このゲームに関しては凡人。
このゲームは運否天武ではない。
これは実力勝負。
運否天武での鬼姫の強さは、確かに認める。
だが、実力を用いる今回の勝負に、
果たして鬼姫が勝てるかどうか、不安だった。

「アイツのジャスト以外の勝ちだって、
 ほとんど5,99とか、7,01とか、
 驚異的な数字だっ!
 ・・・・完璧だ、完璧すぎる・・・!
 狂えない、完成されきった兵器だ・・・・!」

「・・・・・・精密、か・・・・」

「・・・お、俺もオマエが来たことで、
 ちょっと舞い上がっちまってんだが・・・
 冷精に考えると、
 いくらおまえでも・・・・アイツは、強い!
 オマエでも・・・・勝てるかどうか、分からねぇ!」

「・・・・・・ねぇ、一つ聞いて良い・・・・」

「?
 あ・・・・あ、あぁっ!!
 何でも聞いてくれっ!」

弁慶の心のうちを鬼姫に
暴露すると、鬼姫は真剣な表情になる。
そしてここで、奇跡的行動が起きる。
何と、鬼姫が弁慶に尋ねた。
あの鬼姫が、弁慶に助けを求めてきた。
この勝負に勝つために、
質問してきたのだ。

「(す、凄ぇ・・・・。
 鬼姫が、初めて俺に質問してきた・・・。
 それほど、焦ってる・・・。
 鬼姫も、表情には見せないが・・・
 焦ってる、焦ってるんだ・・・・・・!!
 やっぱり、強敵!
 美穂って女・・・・強ぇ・・・・!)」

「・・・・・・タマゴサンド・・・
 何個まで・・・・?」

「あっ・・・・あぁあああああーーーー!?」

やはり鬼姫。
我々の想像は遙かに凌ぐことを
言ってのける。
考えない、考えてないのだ。
鬼姫はこの状況が危機とか、焦るとか、
そんなこと一切、考えない。
勝てる、圧倒的に勝てる自信があるからだ。
弁慶は苦笑いをして、鬼姫を見る。

「へ、へへっ・・・・。
 さすがは大将だよ、恐れ入ったぜ。
 ・・・・何か、あんだな?」

「・・・・・・さぁ・・・・・」

「・・・・っへ。
 まっ、とにかくいつものアンタだ!
 勝てる、勝てるかもしれねぇ!
 タマゴサンド、あるだけ買ってやらぁ!!」

「・・・・・・・うん・・・・・」

弁慶、安堵。
やはり、彼女はだれでもない、
鬼姫なのだ。
自分が心配するまでもない存在。
こうして、始まる。
弁慶に変わり、鬼姫の勝負が。
鬼姫と美穂、
ストップウォッチを手にして
対峙する。

「へぇ〜、アンタが代打ちってワケねぇ。
 女には興味ないけど・・・
 カワイイ顔してるから、ゆるしちゃおうかなぁ」

「・・・・・トロトロするな・・・・
 ・・・・・早く始めて・・・・・」

「っ!!!
 こ、この売女ぁあああ・・・・!!
 良いわよ、やってやるわ!
 そんだけ自信あるなら、勝ってみな!
 親はアタシ!
 10回戦・・・・スタート!!」

カチッ

始まる、10回戦。
美穂の会話に、まったく乗らない鬼姫。
本当に彼女はタマゴサンドのことしか
頭にないのだろうか?
その隅で、弁慶は一人、
ニヤケていた。

「(鬼姫のあの自信・・・・!
 何かある・・・何かあるっ!!
 へへっ・・・・・チビんなよ、美穂ぉ・・・!
 これが鬼姫っ!
 化け物と言われる、
 最強の女だぜっ・・・・・!!)」

「・・・・・ストップ!!
 10秒経ったわ。
 ・・・・・勝負は成立させる。
 私のタイムは・・・
 5,98・・・まずまずね」

10秒経過。
親権利の美穂が勝負を承諾させたため、
二人は対決することに。
美穂のタイムは「5,98」。
悪くない。
いや、良い。
非常に良い数値。
それに対して、鬼姫は・・・。

「(5,98か・・・・。
 ッチ、悪くねぇ数値だぜ。
 だがこっちは鬼姫っ!!
 それでも勝つ・・・・・!
 勝つ何かがあるんだ・・・・・!
 俺が想像できぬほどの、
 何かをしてくる・・・・・!
 頼むぜ、鬼姫・・・・!!)」

「(・・・・この女に何かある?
 バカバカしい、ブラフだわ。
 ・・・けど事実、さっきまで戦ってた男の目が生き返った。
 まるで、
 ”こいつなら勝てる”
 ってぐらいの、自信たっぷりの目。
 ・・・・まさか・・・・・
 そ・・・・そんな、まさか・・・・)」

「・・・・・・・」

「な、何してんのよ!
 早く止めたタイムを見せなさいよ!」

鬼姫の気配に、
美穂も薄々感じ始める。
この女には、何かある、と。
息をのんで、美穂と弁慶が
鬼姫のタイムに視線を集める。
第一打。
鬼姫が導き出した、
第一打のタイムとは・・・。

「・・・・・・・あっ・・・・・。
 ・・・止めるの忘れてた・・・・・・」

「な・・・何ぃいいいいいいいいいい!!!???」

さすがは鬼姫。
想像つかぬことを仕出かす。
何と、ストップウォッチを止めて
いなかったという珍事。
弁慶は口を大きく開けたまま動けない。
それを聞いた美穂は、
腹を抱えて大笑いをしだす。

「アッハッハッハッハッハッハッ!!
 ちょ、ア、アンタ、最高っ!!
 カワイイ〜っ!!」

「・・・・あ・・・あぁ・・・・?
 お、鬼姫ーーーーっ!!!
 何してんだよぉっ!
 何でタイムを止めなかったんだよっ!!」

「・・・・・・眠かった・・・・・・」

「あ、あぁああ!!?」

「・・・・・ククッ・・・・・
 冗談、冗談・・・・・・・・・」

「じょ、冗談てなぁ・・・・」

鬼姫の信じられぬ大失態により、
無条件のマイナス1万。
こうして、勝負11回戦。
親は変わらず美穂。
だがしかし、弁慶は打って変わって
奈落の底へ。
まさか、鬼姫がこんな大失態を
犯すとは、思ってもみなかったからだ。

「(11回戦・・・・ダメだっ。
 希望が無ぇ・・・・・・!
 だいたい、時間当てなんて
 一回か二回は練習止めみたいなのしねぇと、
 感覚すら掴めねぇ・・・・!
 それを、鬼姫は自ら捨てた・・・!
 自分の、大失態によって・・・・・)」

「それじゃぁ、11回戦。
 親は私。
 よーぃ・・・・スタートッ!!」

カチッ

ため息しかでない弁慶。
まさか鬼姫がこれほどまでに
使えぬとは思っても見なかった。
いや、やる気が無いのだろう。
前回も鬼姫は弁慶を
殺す気満々であった。
今回もそれと同じ。
そう思い始めた弁慶だが・・・。

「ストップ!!
 ・・・えーっとぉ、
 私は7,98・・・・やったね!
 えーっと、カワイコちゃんは?」

「(無理だ・・・・・。
 鬼姫のタイムなんて期待できない。
 やっぱり、
 12回戦からは俺が行くしかねぇ・・・!
 勝ちにいくには、俺自身が・・・・・)」

「・・・・・・5,01・・・・・」

「え?」

誰もが、虚を突かれた。
一瞬、鬼姫の味方の弁慶すら
それは「嘘」であると信じたくらい。
弁慶と美穂は、
急いで鬼姫のタイムを見に行く。
だが、それは紛れもなく・・・・。

「ご・・・・5,01だ・・・・・・
 5,01だぁああっ!!
 勝った・・・・鬼姫が勝ったんだぁあっ!!!」

「っぐ!!
 (嘘、そんなバカなっ・・・・!!
 あんなバカしてた女が、
 急にジャスト近くの数値を・・・!?)」

「・・・・ククッ・・・・・」

「(い、いえ・・・・
 焦っちゃダメ、焦っちゃダメよ。
 これは罠。
 っていうか、偶然じゃん。
 こんなの素人にはよくあること。
 たまたま止めたタイムが良いことなんて、
 素人の習性じゃない。
 焦ってる私がバカらしい)」

鬼姫が止めたタイムは
あきらからなる5,01。
だがしかし、
ここは美穂の正論。
確かに、これはよくあることなのだ。
ほとんどあてずっぽ感覚で止めて、
ジャスト近くの数値を出すことは、
無いことは無い。
それがストップウォッチの恐ろしい所。
気分を取りなおし、美穂は鬼姫に話しかける。

「・・・アンタが勝ったから、
 親の権利はアンタよ。
 早く始めなさいよ。
 (もう偶然なんて起こさせない・・・・!
 いや、起きない・・・・!
 2度もそんなこと、続くワケが・・・・!!)」

「・・・・・12回戦・・・・・
 始め・・・・・」

ポチッ

始まる、12回戦。
鬼姫が出した数値が偶然か否か、
ハッキリとする勝負。
美穂も全神経を集中させて
勝負に挑む。
そして、時間は流れるように
10秒経過する。

「・・・・・10秒、経ったわ。
 勝負は成立させるの?」

「・・・・・・うん・・・・・」

「・・・フフッ・・・・
 私のタイムは9,01っ!!
 どう!?
 これが私の実力・・・・!
 アンタみたいに、偶然じゃない!
 必然的に良い数値を出せる!
 素人とは違うのよ・・・・・・!」

「・・・・・・ククッ・・・・・」

「っ!!!
 何が・・・・何がおかしいのよ、売女ぁあ!!」

「・・・・・必然は偶然には勝てない・・・・・
 ・・・それを分かってないようだと・・・・・
 ・・・・・・・アンタは・・・・勝負の素人以下・・・・」

「っく!!!
 戯言はアンタのタイムを・・・・・
 あ・・・・あ・・・・あぁああ・・・・!!」

美穂の止めたタイムは9,01。
なまじの数値では、
超えることのできない数値。
鬼姫は、超えられたのか?
この9,01という狭き関門を、
超えることができたというのか?
答えは、美穂の絶句が物語る。

「ろ・・・・・
 6秒ジャストですってぇえええええ!?」

「ろ、ろ、ろ、6秒ジャスト!?
 鬼姫・・・・鬼姫ぇえ!!
 凄ぇ、やっぱ凄ぇよ!!
 オマエ・・・・・天才だよっ!」

「ククッ・・・・・・」

鬼姫の出した数値、
6,00、ジャスト6秒。
鬼姫、2連勝。
絶望的驚きを隠せない美穂。
そして歓喜的驚きを隠せない弁慶。
弁慶は安心した表情で、
鬼姫に訪ねる。

「凄ぇ、凄ごすぎるぜ、鬼姫ぇ!!
 あの最初のスイッチミスは、
 自分を素人と
 見せる罠だったんだなぁ!」

「・・・・・・ううん・・・・・
 あれ・・・・・・本当にミスった・・・・・」

「うべぇ!!?
 じゃ、じゃ、そのミスがキッカケで、
 こんな良い数値が出るようになったってのかぁ!?」

「・・・・・違う・・・・・。
 最初の10回戦・・・・・・・
 ・・・最初から、勝つ気は無かった・・・・」

「え?」

「・・・・・10回戦は、見・・・・・。
 見に徹底した・・・・・」

「け、見ってなぁ・・・。
 麻雀とかの類じゃねぇんだぜ!?
 見なんてしても意味ねぇだろ・・・・!」

「・・・・ククッ・・・・・・
 人間ってね・・・・・けっこうバカなんだ・・・・」

「あ、あぁ?」

「・・・・・リズム・・・・・。
 特に数を数えていると、勝手にリズムが作り上げられる・・・・。
 ・・・体が動く・・・・リズムに反応して・・・・」

「・・・・あ、あぁあああっ!!!」

「・・・・・あの女の場合、
 右足のつま先だった・・・・・・。
 数えてる・・・・・リズムを取ってる・・・・
 丁寧に、機械的な体内時計でね・・・・・」

「(あ、あぁああああああーーーーーっ!!!)」

腐っても鬼姫。
弁慶は驚くしかなかった。
あの状況で、鬼姫は自分の感覚など
とうに捨てていたのだ。
頼っていたのは他人。
しかも、機械と呼ばれるほど
正確な美穂のリズム、カウント。


「・・・・ククッ・・・・・
 調度良かった・・・・・・・・。
 ・・・・相手がバカみたいに正確なんだから・・・
 こっちは利用するだけ利用できる・・・・
 ・・・・・・・終わるまで気づけない阿呆・・・
 ・・・・クズの象徴・・・・・」

「(す、凄すぎて、言葉が出ねぇ・・・。
 何でこんな発想ができる・・・?
 何でそんなことに気付ける・・・・!?
 やっぱり、やっぱり凄ぇ・・・!
 オマエは化け物だよ、鬼姫・・・・・・!)」

後書き

いくら正確な時を脳内で刻めても、
脳が指に命令を送るときにコンマ刻みの時間ロスができる。
それが美穂の弱点、っというワケです。

この小説について

タイトル -出陣-
初版 2008年6月20日
改訂 2008年6月20日
小説ID 2242
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