鬼姫 - -邪悪-

ライン

鬼姫が、負ける。
第19回戦終了間際に発覚した
ストップウォッチの細工。
しかし、反論はできない。
この細工ストップウォッチのまま
挑まなければならない。
絶望的な状況の中、ラスト、
大勝負、第20回戦が幕を開ける。

「ウフフッ・・・。
 (頑張った、本当によく頑張ったわ。
 私をここまで苦しめたのはアナタが初めて・・・。
 でも、私が上手だった!
 保険、保険をかけておいた・・・・!)」

「・・・・・ラスト・・・・・
 親は・・・・・アンタ・・・・・」

「(あらかじめ相手のストップウォッチの
 電池を少なくしておく・・・・。
 それは長期戦、
 まさかの私の苦戦に備えての保険・・・!
 電池が切れたら、
 あの細工済みのストップウォッチを渡す・・・!)」

まさかの絶望。
ここまで常勝、余裕で
勝利を掴んできた鬼姫が、
まさかの苦戦。
いや、苦戦で済めば良いのだ。
このままでは、負ける。
常人では、絶対に勝てぬ戦い。
だが、化け物と言えど、
覆すのは難しい状況となっては、話は別。

「(嘘だろ、勘弁してくれよ・・・・!
 そんなのありかよ・・・!
 勝てねぇ、勝てるワケねぇ!!
 あんな細工スチップウォッチで、
 どうやって勝てるってんだ!?)」

「(フフッ・・・気づいているみたいね。
 けど、無駄・・・・。
 押し切る・・・押し切る・・・!
 どんなに反旗を翻して来ても、
 押し切る・・・・・!!)」

「・・・・何してんの・・・・
 早くしてよ・・・・・」

「・・・ウフフッ。
 貴方は本当にカワイイ子・・・。
 絶望的な状況なのに、
 ヤセ我慢してるところとか・・・
 本当にキュート・・・・
 ・・・・いっそのこと・・・・殺しちゃいたい・・・・」

「・・・・・・・・」

思えば、全ては美穂の手のひら。
鬼姫すら、踊らされていたのだ。
最初から、美穂の勝利は
絶対。
揺るぎないものだったのだ。
指切りを覚悟しだす弁慶。
だが、決して意思を曲げない鬼姫。
変わらぬ表情で美穂を見る。
そして、始まる、
待ったなしの、ラスト勝負が。

「フフッ・・・・ウフフフフッ。
 さぁ、始まる・・・!
 行くわよ、私が親の、ラスト勝負!!」

「(くるっ・・・・!!
 最後、最後の勝負っ・・・・・!
 勝利の可能性は、もうクズ程度・・・・!
 だけど、だけど賭ける!!
 俺は鬼姫に賭ける・・・・・・!
 頼む、頼む鬼姫・・・・・!!
 アイツを・・・・アイツを、ブッ倒してくれぇ!!)」

「20回戦っ!!
 よーいっ・・・・・スタート!!!!」

カチッ!

始まる、ラスト勝負。
もう後には引けない。
指を切るか、助かるかの一本道。
確率的には、
一人の兵隊が、巨大戦艦「大和」に
挑み勝利するというほどの確率。
バカげた勝負。
だが、やるしかない。
チッ、チッ、チッ・・・・。
呼吸音すらしない。
弁慶も瞬き一つせず、時を待つ。
奇跡の瞬間を・・・・。
そして。

「・・・・ストップ!!
 フフッ・・・・さぁ・・・・・・
 まずは勝負の承諾からよっ!
 親の私が、勝負を受けるか、受けな・・・・」

「・・・・・・ククッ・・・・・・」

全てが終わった。
残るは、結果を残すのみ。
だがその時、異変。
突然、鬼姫が笑いだしたではないか。
不思議そうに見つめる弁慶。
鬼姫は、自分のストップウォッチを
眺めながら、不適に笑い続ける。
そして、言い放つ。

「・・・・・ククッ・・・・・
 おしえてあげようか・・・・私の数値・・・・・」

「は・・・?」

「・・・・・・・・・出ちゃった・・・・」

「?
 な、何言ってんのよ、アンタ。
 出ちゃったって・・・・
 ま、まさか・・・・・!」

「・・・・ジャスト・・・・・・
 キレの良い数字・・・・・出ちゃった・・・・」

「っ!!!!!!」

驚くべき、鬼姫。
何と、いきなり公言しだした。
どっちに驚くべきかも分からない。
まず、ジャストの件。
あの細工ストップウォッチで、
ジャストの数値を出したというのだ。
それに加え、それを勝負が成立するか否かの場面で、
公言するという、大失態。

「なっ、
 何言ってんだよ鬼姫っ!!!!
 ジャストの数値なんて・・・・・!
 そ、それにっ!
 親は相手なんだぜ!?
 そんなの聞いたら、勝負は成立しなくなっちまう!!」

「フフッ・・・
 アーハッハッハッハッハッハッ!!
 本当にバカな子っ!!
 そんな可能性無いにしろ、
 親は私!
 成立させる権利は・・・・・・
 け・・・・・権利は・・・・・・・・」

「・・・・・ククッ・・・・・・
 どうする・・・・・?
 ・・・・する、しない・・・・?」

「(あ、あぁあああああーーーーーーっ!!!
 ハ、ハメやがった・・・・
 鬼姫の野郎、ハメやがった!!)」

完全なる、戦略。
一見、暴挙かと思われた鬼姫の言葉。
だが、これがボディーブロー。
じわじわと蓄積する、ダメージ。
鬼姫は、ニヤっと
美穂の顔を眺める。

「(や、やりやがったぜ、鬼姫・・・・!
 あのジャスト宣言が嘘なのはもう事実・・・!
 だが、怖い・・・・!!
 怖すぎる・・・・・・・・!
 恐怖が、美穂に襲いかかる・・・・!
 そう、その恐怖の名を・・・・
 ・・・・”もし”・・・・・!!)」

「(・・・嘘よ、ハッタリよ。
 バカじゃない・・・・!?
 あのストップウォッチでジャストを
 出すことはまずできないっ!!
 ・・・・・・できない・・・・できないハズ・・・。
 でも・・・・もし・・・
 もし、それができたら・・・・・・)」

「(・・・・ククッ・・・・・)」

襲い掛かる、疑惑。
例えそれが100%有利の
状況であっても、
疑惑が、人を崩壊させる。
有利であっても、
決断するのは結局は人間の意思。
その意思を、
鬼姫は直接、攻撃してきた。

「(待って・・・。
 もし、あの2分間の休憩の間に、
 コイツが何かストップウォッチに
 イカサマをしたら・・・・・)」

「(考えてる、考えてる・・・・・!!
 美穂が、悩み始めてるっ!!
 そうか、これかっ・・・・・!
 これがオマエの賭けか、鬼姫っ・・・・!)」

「(・・・・・でも、無いっ!!
 無理よ、2分間でそんなこと。
 あいつらが機械工場の技師ならともかく・・・・
 学生、チンピラッ!!
 それは無いっ・・・・・・!)」

「・・・・・ねぇ、どうするの・・・・・」

「(・・・・やっぱり、この女の狙いは
 ただ一つっ!!
 私がこの嘘を恐れて、
 勝負を避けることが、狙いっ・・・・!!)」
 
それは、ただの虚言だったかもしれぬ。
だが、今ではその虚言により、
崩壊。
崩れていく。
完璧だった美穂の戦艦、砦が、
見るも無残に壊れ出していく。
果たして、美穂の答えとは・・・・。

「・・・・させない・・・・・
 アンタの狙い通りにはさせないっ!!」

「・・・・・ククッ・・・・・
 じゃぁ、どうする・・・・・・?」

「当然、受け・・・・・・・
 え・・・・・・えぇえっ・・・・・!!!?」

突然の雷。
雷鳴と共に、雷光が美穂を貫く。
ひらめき、気づき。
それは、神が美穂に目をかけた瞬間。
勝利が、確実に美穂に傾いた瞬間であった。
「成立させる」という言葉を、
美穂は封じ込めた、ギリギリで。
そして、笑い始める。
勝利を確信して・・・。

「フ・・・フフッ・・・・
 アーハッハハッハッハッハッハッハ!!
 やってくれるじゃない!
 本当に、怖い女・・・。
 何をしでかすか分からない・・・・。
 あとちょっとで、引っ掛かる所だったわ」

「(な、何言ってやがるんだ、
 美穂の奴・・・?)」

「・・・・ねぇ、カワイ子ちゃん?
 お姉ちゃんの質問に答えてくれるかなー?
 ・・・・・・アレ・・・何処にやったの・・・?」

「(ア、アレ、だと?)」

「・・・・・電池が切れそうなストップウォッチ、
 何処にやったのかなぁ、カワイ子ちゃぁ〜ん?」

「なっ!!!!
 (な、何ぃいいいいいーーーっ!!!???
 電池が切れそうなストップウォッチって、
 確か、そこらに捨てたハズ・・・・・!)」

「・・・・・ク、ククッ・・・・・」

「(ま、まさか・・・・・・
 まさか鬼姫の奴・・・・・・・!!
 すり替えた・・・・・!?
 あの細工ストップウォッチと、
 電池が切れそうな正常のストップウォッチを、
 入れ替えていた!?)」

判明、それと共に絶望。
容赦なく、絶望。
そう、無いのだ。
細工ストップウォッチと交換した
正常のストップウォッチが、消えている。
答えは簡単。
持っている。
鬼姫が持っているのだ。

「(ね・・・無ぇ・・・・・
 本当に、何処にも無ぇ・・・・・!!
 鬼姫の野郎、やっぱり入れ替えたんだ・・・!!)」

「つまりぃ〜、
 今持ってるアンタのストップウォッチってぇ、
 電池が切れそうな奴ってことだよねぇー。
 ・・・・危ない、危ない。
 あとちょっとで引っ掛かる所だったわ。
 もう少しで・・・勝負を受けちゃう所だった」

「(・・・・お、おいおい・・・・・
 ってことは・・・・・負けた・・・・・?
 鬼姫が、負けた・・・・・?
 完全に、完璧、敗北した・・・・・!?)」

見抜かれた。
その一言につきる。
上、格が上だったのだ。
鬼姫の戦略すら見切られるほど。
美穂は余裕の笑みで、
鬼姫を見下すように眺める。
鬼姫、依然として、動かない。
もう、あきらめたのだろうか。

「キャハハハッ!!
 ゴメンねぇ〜。
 私ぃ、手加減ってできないんだぁ〜。
 フフッ・・・。
 もう私の止めたタイムにも
 意味は・・・・・・・・・・・・・・・」

「(無理だ・・・・・。
 絶好の好機すら、見逃した・・・!
 天が見放したとしか考えられねぇ・・・・・。
 終わった・・・・・・・。
 今さら、美穂が勝負を受けるなんてこと、
 万に一つ・・・・・)」

「・・・・・・勝負、成立させてあげる」

「え、えぇえええええーーーーーーっ!!!?」

突然の朗報に、弁慶は大声出して
驚く。
引っ掛からない。
そう言った矢先、いきなり前言撤回。
美穂が勝負を受けると言い出したのだ。
意味不明。
困惑している弁慶をよそに、
美穂は、ゆっくりと鬼姫に近づく。

「・・・・何で私が
 勝負を受けてあげたか、わかりゅ〜?」

「・・・・・・・さぁ・・・・・」

「・・・・・ゴメンね、出ちゃった。
 私も・・・・・ジャスト、4秒・・・・・
 偽りじゃない、本当の数値をね・・・
 ・・・・・じゃぁね、カワイ子ちゃん。
 チュッ」

美穂の止めたタイムは、
ジャスト4秒。
そう、最初からどうでも良かったのだ。
鬼姫がジャストを出そうが出しまいが、
勝っていた。
美穂は勝っていたのだ。
完璧な勝利に、美穂は酔いしれる。
鬼姫の頬にキスをすると、背を向けて勝ち誇る。
弁慶に至っては、落胆しかない。

「(な、何ぃいいいいい・・・・!!?
 美穂の奴が、ジャスト4秒だと!?
 ジャスト4秒は、マイナス25万・・・・・!
 ダ、ダメだ・・・・・・切られる・・・・
 指が・・・・飛ぶっ・・・・!!)」

「・・・・ウフフッ。
 ちょっと待っててね、坊や。
 すぐに組に連絡つけるから・・・・。
 良い指が取れたって・・・・・・」

「・・・・く・・・・
 くそぉお・・・・・・・・・・!!」

あきらめた。
誰もがあきらめた。
これはもう、神が選んだと言っても過言でない。
神が、美穂を選んだ。
勝利者を、美穂にしたのだ。
だが、異端者。
そんな神を、冒涜する者が一人。
それは、まぎれもなく、鬼。

「・・・・・・・ククッ・・・・・・・
 ・・・・言ったハズ・・・・・勝つって・・・・・」

「?・・・ちょっと、何言ってんのよ。
 アンタがどんな数値でも
 勝てるわけないでしょ。
 それともぉ、2以下のジャストを止めたっての?
 キャハハッハッ!
 それなら話は別だけど・・・・!」

「・・・・・・別にされたらこまる・・・・
 ・・・・・真実を・・・見てもらわないと・・・・」

「は?・・・・・あ、あぁあああああ!!?
 ちょ、ちょっと、何よこれっ!!!
 ア・・・・アンタっ・・・・・・・・!!!!」

笑みを浮かべる鬼姫。
一体、何が起きたというのだろうか?
そこには、鬼姫が止めた数値を見て、
絶句している美穂の姿しかない。
弁慶は、急いでその事実を把握しに行く。
すると・・・・。

「ふ、ふざけないでよっ!!!!
 こんなの、認めないっ!!
 認めるわけないわっ!!!!」

「・・・・・ククッ・・・・・・
 そういうわけにはいかない・・・・・・。
 このストップウォッチには、
 この数値しかジャスト時間は存在しない・・・・・
 故に・・・・・
 0,00・・・・これが、私の止めた数値・・・・・」

「な、何ぃいいいいいーーーーーっ!!?
 鬼姫っ!!
 じゃぁオマエ、
 最初から・・・・ボタン、押して無かったのか!?
 ってか、
 ストップウォッチも入れ替えて無かったのか!?」

「・・・・・うん・・・・・・・」

大胆。
あまりにも大胆すぎる天才。
まさかの強襲。
「0秒」を、勝負に出してきた。
怒り狂う美穂。
それに対し、鬼姫は冷静に対応する。

「これ、成立するよね・・・・・・・。
 ・・・・いや、成立せざるを得ない・・・・・。
 アンタはハッキリと言った・・・。
 勝負を受けるって・・・・・。
 変えられない・・・・変えれるハズない・・・・」

「ふ、ふざけっ・・・・!!」

「アンタが渡してきた・・・・この細工ストップウォッチを。
 つまり、アンタは私にイカサマルールを押しつけた・・・・。
 故に、私はそのイカサマルールで勝つ・・・・
 ・・・・・何処がおかしいの?
 ・・・・・・・ねぇ・・・・・・
 ・・・・・・・お姉ちゃんの質問に答えて・・・・?」

「あ・・・・あぁ・・・・・!
 う・・・・・うわぁああああああああーーーーーっ!!!」

絶叫、発狂。
隙の無い理論に、美穂は発狂。
そう、終わった。
この瞬間、真の決着が着いた。
勝ったのは、化け物、
鬼姫。
鬼姫は楽しそうに、
発狂する美穂を眺める・・・。

後書き

次回、主要キャラ登場。
現在はその人物のスピンオフを執筆中という・・・。

この小説について

タイトル -邪悪-
初版 2008年7月4日
改訂 2008年7月4日
小説ID 2305
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