空に浮かんでいるのはなんだと思う?え、雲?違う違う。あれにきまってんだろ。ほら、メ…

その日の午後の授業。


僕は昼食後で眠いのにも関わらず真面目に授業を受けてノートを取っていた。
周りの数人のヤツはもう深い眠りの中に入ってしまっている。
まどろんでいるのが多いが、小数だけ夢の中の住人になって気持ちよさそうに規則正しい寝息をたてていた。
さぞ楽しい夢でもみているのであろう。


すると、突然前の席の女子が振り返り、「山下君」と呼んできた。
ちなみに彼女は山田さん。眼鏡を掛けている至って真面目な生徒だ。

「何?」

眠い目をこすって答えると、山田さんは小声で窓の外を指差した。

「あれ、見て」

「?」


言われたまま見てみると、特に何もない。
ただ果てしなく続く青空に、やわらかそうな雲が数個、散って浮かんで漂っているだけだ。
そんな普通の日常の中の景色だが、それはじっくり見ていると一枚の絵画の様に美しく見える。
あぁ、見えるとも。それに嘘はない。

けどこれで彼女は……


一体僕にどうしろと?



そんな視線を込めて山田さんをみたが、彼女はとっくに前を向いて真剣にノートをとっている最中だった。
もう一度、空をみてみる。
やはり先程と変わる事無く澄みわったった青空がどこまでも続いていて、やわらかそうな雲が―……


ハッ!!


僕はようやく合点がいった。
そうか、そういうことなんだな!?
早速立ち上がると、家庭科室に向かって全力疾走した。

「山下ーっ!?どこいくんだ!?」

先生の制止の声が聞こえる。
スピードを緩める事なく、だが、先生に聞こえる様に僕は喉から大声を張り上げた。


「空に浮かべる雲を作る為にメレンゲを作ってきます!!」

「はあっ!?」


先生の言葉を今度は無視し、一階の家庭科室に向かう為階段を飛び降り廊下を走っていると、身長がやたらと高い校長先生と出くわした。

「おや、山下君。どうしたのかな?確か、今は授業中のはずだが……」

「先生!そこを退いて下さい!!僕には使命があるんです!
早く…早くメレンゲを作って空に浮かべないと…山田さんに殺されるっ!!

すると校長先生は頷き、にこやかに「ちょっとここに待っていなさい」と言って廊下の奥の闇に、姿を溶かしていった。
その言葉通り、校長先生はその穏やかな笑みを顔に浮かべたまま、1分以内に帰ってきた。
ゆっくりと歩み寄ってきた先生の腕の中には、卵が5つほど入ったボールに、泡だて器。
彼はやんわりとした口調で、それを差し出してきた。


「私にはこれくらいの事しか出来ないけど……頑張りなさい。何事にも挑戦出来るのは青春の間だけだ」

「先生……」

僕は目を感涙で滲ませながら、それを受け取るとお辞儀をした。

「ありがとうございます!きっとこれで、素晴らしい雲を作ってみせます!!」

「うん、楽しみにしてるよ」

手を振りながら優しく見送ってくれる校長先生に背を向けて、器用に片手で卵をわってかき混ぜながら階段を駆け上がった。
ちなみに、黄身と殻はどっかに投げ捨てた。誰かの叫び声が聞こえたが、それは無視だ。
ところで……
校長先生のあの優しすぎる微笑みが気になったが、触れないでおこう。

たどり着いた先は…屋上。
ここなら浮かべられるだろう。
僕はフェンスをガガッと登ると、再びかき混ぜた。
そしてようやく素晴らしいメレンゲが出来上がり、さあやるぞと意気込むと、扉が開いた。
振り向くと、息切れの先生の姿が立っていた。

「山下!馬鹿な事はやめなさい!」

「止めないで下さい、先生!僕はどうしてもこのメレンゲを空に浮かべなければ…っ!!」

「意味不明なこと言うなーっ!!」

「意味不明な事ではありません!!山田さんに言われたんです!!それで僕は気付きました!もうこれはやるしかないと!!

「そこが意味不明なんだよ!」

「生徒の夢を応援するのが先生の役目なんじゃないんですか!?」

「俺が応援するのはちゃんと夢を持っているやつの夢だ!!お前の言っている事なんてあれだぞ!
 『大きくなったら仮面ライダーになります!!』って卒園式で元気に言っている無垢な保育園少年だぞ!?

「どんな説得の仕方ですか!というか、だったら尚更その無垢な少年の夢を壊したら駄目でしょう!
 サンタクロースの夢を突然壊された子供の心を先生に分かるんですか!?」

「お前の何処が無垢な少年なんだよ!!いい歳して恥ずかしいと思わないのか!?
 後俺はなぁ、中3の終わり頃まで信じてて親がよっぽどやばいと思ったのか親に精神科医に連れられて壊されたんだよっ!!

「コメントのしようがねぇよ!!」

「まあいい!とにかくそこから降りてきなさい!」

「嫌ですよ!僕は最早メレンゲで命を捨てていいと思ってるんです!!
 普通の雲よりちょっと大きくてふくらみが増してるの見つけたら、あぁ、山下だな、って思い出してくださいねー!!

「命を粗末にするなーっ!!」



ジリジリリリリ……


カーテンから射し込む朝日。
聞きなれた、朝からけたたましくなる目覚まし時計。
重たい体を布団から起こし、半寝ぼけの頭でボーっと考える。

「……夢か」

何故か来る安堵感。そして、変な夢だったな、と思う。
ガシャンッ!!と目覚まし時計の上にあるボタンを手の平で押し、止めさせたら身支度を始めた。

家を出て、学校に着きいつもどおりの退屈な授業を受ける。
あぁ、やっぱり夢だったんだな……
そう、何も起こらない平凡な日々。

だが午後の授業。
まどろみながらも必死に授業を受けていると、目の前の席の女子が声を掛けてきた。

「山下君」

冷や汗が、こめかみから流れた。
僕は必死に作り笑いを浮かべて、答える。

「な、何?山田さん」

「あれ、見て」

彼女の指が、窓の外の方を向けられた。

僕はガタッと席を立ち、廊下を全力疾走しながら叫んだ。


「メレンゲ――――――ッ!!!!!」


叫びが、廊下にこだまして虚しく消えていく。




…教室では。

「山田さん。山下に何か言ったのか?」

少女はにっこりと言った。

「いえ、何も?」

眼鏡の奥の瞳が、楽しそうに揺れる…揺れる…







汗だくの僕は、走りながら思った。




               そうだ……メレンゲを空に浮かべよう


























ジリリリリリリリリリリリリリリ……………





            ガシャンッ!!!


「はあ……」





後書き

ふう。終わった終わった〜♪
えっとですね、これは姉に相談して出来た話なんですよ。
で、それをちょっとここで紹介。
それは、ホワイトデーに向けての相談です。
私は友チョコを貰ったのですが、どう渡そうか迷っていたのです。
え?普通に渡せば?だってそれじゃあ…
つまんないじゃないですか。

そこで、色々な案がでてきました。
姉「ほら、ウィ〜って渡したら?藁芸人みたいな感じで」
私「いや、それはさすがに抵抗が……」
姉「じゃあ、授業中に渡すとか。皆前向いてるでしょ?」
私「そうだけど、その子と私の間に男の子いるんだよね〜」
姉「それだったら、その子に「あれ見て」って言って窓の外向かしている間に」
私「おぉ、いいねそれ!!じゃあその子を仮名山下君として……」

という感じです(笑)本当はもっとあるのですが、まあ疲れたので。
結局、普通に渡しましたがね
で、今回は夢オチです。ま、まあいいじゃないですか。たまにはこういうラストも書きたかったので……

あはははは。ま、まぁこれにて失礼っ。

あ、あと、私が先生の代わりに山下君に一言。

食べ物を粗末にするなぁああぁぁっ!!!
メレンゲはケーキ作りの時必要不可欠なものなんですよ!?


この小説について

タイトル 空に浮かんでいるのはなんだと思う?え、雲?違う違う。あれにきまってんだろ。ほら、メ…
初版 2008年7月12日
改訂 2008年7月13日
小説ID 2338
閲覧数 851
合計★ 6
梨奈の写真
ぬし
作家名 ★梨奈
作家ID 301
投稿数 12
★の数 96
活動度 3120

コメント (4)

★梨音 2008年7月12日 19時29分49秒
山下くんと先生のかけあいに笑いました。
例えがリアルすぎるよ先生!!
山下くん。メレンゲは空に浮かべるものじゃないよ。食べるものだよ。
とか、ツッコミどころ満載でした(笑)

あと、タイトルでメとあったので、メレンゲではなく「目玉の親父」と考えた自分は馬鹿です(ここは笑って下さいね♪)
空に目玉の親父が浮かんでたら怖いですよね。

チャットで話せる機会がない分、こうやって感想が書けると嬉しいですね。
★梨奈 コメントのみ 2008年7月13日 0時48分26秒
おおっ、梨音さんからまたもや素晴らしきお言葉が!!
いや〜、今日はチャットでお世話になりました(ペコリ)

かけあい、面白かったですか〜
良かった良かった。
山下君は最早空に浮かべるものと認識してるんでしょうね(笑)

はい、笑いましょう。というか、笑いましたよ〜家族にうるさいと叱られましたから
「おい、鬼太郎!お湯をたしてくれんかの」

笑えたら笑ってくださいねっ♪
そうですねー、とても嬉しいものです。書くほうも受け取るほうも。

ではでは、ありがとうございました!!
★青嵐 2008年7月14日 10時06分54秒
なんか、
このエンドレス感がいいですねw

いやぁ、
ツッコミ的役割の私としてはかなりこの話の中に入っていきたかったですね;;
のどをガラガラにするほどツッコミまくりだと思うけど 笑笑


私はタイトルのメ…で、「メレンゲ」ではなく「メリーさんの羊」だと思いましたが。。。
ふ、フツーですよね??;;


相変わらず、ぶっ飛んでる内容で面白かったですww笑笑
★梨奈 コメントのみ 2008年7月16日 18時37分09秒
久しぶりですね、青嵐さん
久しぶりにあなたのコメントを貰えて、とても嬉しいですよ^^

そうですね〜今回はツッコミを多く含んだ物を目指したかったので、そう感じて頂けたとならば幸いですね〜
そうですね。お疲れ様です、先生&山下君。のど飴差し上げなければ(笑)
頑張ってくれたのでサービスにミント味でっ。
…ミント味って、ありましたっけ?
ではレモン味にしときましょう。(多分)喉にいいですよ〜

あははっ、青嵐さんはメリーさんの羊ですか!!
これまた面白い発想が出てきましたね〜
大丈夫ですよ、普通です。私が断言しましょう。
だって、ふわふわじゃないですか、羊(笑)

これまた嬉しいお言葉を。
有難うございます、最上級の誉め言葉として受け取らせていただきますね
名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。