最強女王×最弱騎士 - 第十一話 気持ち、溢れる

 その翌日、学校があるのにも関わらず、葵さんは休みだった。ミツル先輩によると、東条先生のお墓参りに行ったのではないか、ということだった。
 普通に授業を受けていても、体育の授業で柔道をしている時も、俺は上の空だった。

(葵さん、やっぱり東条先生の事……)

 俺は自分の顔が少し赤いことに気がついた。昨日ミツル先輩に、「葵さんが好きか」と聞かれたことは驚いた。でも、よく考えれば好き、なのかもしれない。生涯の中で、人を好きになったりする事なんて自分にはないと思っていたけれど、それは間違いだった。
 人には、運命の出会いが必ずある。それを恋として掴めるかは、自分次第なのだ。自分が努力しなければ、それはあっさりと消えてしまったり、恋が実らなかったりする。




「はい、では今日の授業はここまで」

 本日最後の授業が終わり、皆が大きく伸びをしたり、あくびをしたりしてから部活などに行く為にぞろぞろと教室から出て行く。

「侑斗、帰ろうぜ」

 俺の腐れ縁の友達である恭平がカバンを担ぎながら言った。だけど、俺は断った。

「いや、いいよ。俺、生徒会の仕事あるから」
「お前、生徒会に入ってから妙に真面目になったよな」
「俺はいつだって真面目だ!」
「はいはい、お仕事、頑張れよ」

 恭平にからかわれ、俺は憤然としながら葵さんの部屋へと向かった。




 葵さんの部屋の前に来ると、そこで待っていた南条先輩に止められた。

「よー、新人君。お前、今日は帰っていいぜ」
「はい?」
 
 俺は言われた言葉の意味が分からなかったのでもう一度聞き返した。

「今日は葵は居ないんだよ。だから帰れ」
「やっぱり葵さん、休みなんですか?」
「さあな。けど、この所葵は元気ないからな。男だったら細かい事には深入りするなよ」
「はあ……分かりました。それじゃあ」

 俺は大人しく帰ることにした。あまり心配しても、俺に今出来る事はない。





 侑斗が帰ってから、南条 春日はひとり言の様にそっと呟いた。

「おい、帰ったぞ」
「……了解」

 そのひとり言に部屋の扉の内側から返事が返ってきた。春日が中に入ると、そこには侑斗を除く生徒会全員と葵が集まっていた。その中で、海鶴が口を開いた。

「……葵、大丈夫? 話って何?」
 どうやら生徒会を呼び出したのは葵の様だった。不安だった眼は和らいではいないが、昨日よりは彼女が落ち込んでいる様子は見られない。葵はうっすらと口を開いた。

「……皆が知っていると思いますけど、私、ずっと東条先生の事が好きでした。今でも正直に言えば忘れる事なんて出来ないです」
「でも葵、東条先生は……」

 海鶴が言いかけると、葵はその先を止めて続けた。

「分かっていたんです。初めから無理な恋愛だって。でも、私にとっては……先生と居る時間がとても大切だった。でも、あんな事になって……勿論悲しかった。けれど、その後私の心には後悔が残っていた。思いを、伝えておけば良かったって。卑怯ですよね。皆は責めないけれど、あんな事になったのは私の所為でもあるのに、自分だけ恋心を後悔しているなんて。さっきお墓参りに行った時も、真っ先に…伝えなかった後悔が溢れてきて……私……」
「何言っているの、あなたは悪くないわ」

 すぐに同じ女性である天峰が優しく言葉をかける。

「でも私、ここの学校に来て、皆や侑斗に出会えて、本当に嬉しかった。皆は、私の力を見ても、私と平等に接してくれたし、優しいです。特に侑斗は、執事っていう仕事だからかもしれないけど、ずっと私を支えてくれて……もう、恋はしないって決めていたのに、どんどん好きになっていってて……私に、そんな資格ないのに……でも、止められなくて、東条先生にだって後悔している私が侑斗も好きになっている。こんなの、私の我儘なのに……でも、どうしていいのか……」

 葵はいつの間にか涙を流していた。そこにいる誰もがそれを止める事など出来なかった。純粋に溢れ、止める事など出来ない複雑な気持ち。それが葵の心を満たしていた。

後書き

きっと誰しも初恋はあったんでしょうね。
…そんな遠い昔の事、忘れましたけどね。

この小説について

タイトル 第十一話 気持ち、溢れる
初版 2008年7月22日
改訂 2008年9月18日
小説ID 2440
閲覧数 860
合計★ 3
ひとり雨の写真
作家名 ★ひとり雨
作家ID 223
投稿数 91
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活動度 10590

コメント (3)

★鷹崎篤実 2008年7月27日 21時15分06秒
初めまして、鷹崎です。
本来なら、バカみたいなテンションで行くんですが、今回はそんなテンションで行くのは罰あたりくさいので、まじめにいきます。
誰かを好きになる。誰かに好きになってもらう。
誰かを幸せにする。誰かに幸せになってもらう。
好きだから、幸せにしたい。幸せになってもらいたい。
幸せになりたいから、好きになりたい、好きになってもらいたい。
この考えを幼稚だと笑いながらも、それを望まない人間はいないと思います。
鷹崎も愛とか恋とかに関して、何かを言っていいほど分ってはいませんが、とりあえず、どんな過去があろうとも人間は幸せになる権利を失うとは思えません。
たとえ、それが小説の登場人物だとしてもです。
このあたりは、人の考えによるとは思いますが、この物語のハッピーエンドを期待しています。
最近、批評することに意味を感じなくなってきたので、もう自分の感じたことを書くだけにします。
それでは!

追伸 ポーカー鷹崎は最強伝説を打ち立てるほど強いですよ
★ひとり雨 コメントのみ 2008年7月28日 17時29分47秒
<鷹崎さん
コメントありがとうございます!
私はまだまだ未熟なので、こんな分かりにくい作品を読んでいただけて嬉しいです。
恋、と一概に言われてもピンと来ないのが現代の恋愛だと思います。だからこそ、小説の恋愛は現実離れしているように感じますよね。
でも、相手を想う気持ちが大切なんだと思い知らされますね。
ただ単に好き、嫌いという問題では無いことが分かりますし、自分自身も再確認させられるんです。
だから、恋愛小説は書くのは面白いんです♪

ハッピーエンド、ちゃんと出来るといいんですが;;
期待してくださる思いに応えられる様、頑張りたいと思います。

ポーカー強いんですか! 私は見習い程度なんですが、ポーカーって意外に止められないんですよね。
それでは。
ming1111 vcvcb コメントのみ 2018年8月14日 19時02分02秒
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