君は綺麗だというけれど


「あの子は、綺麗ですね」
ふっと微笑んだ横顔が、とても悲しいものに見えた。
あんたはあいつなんて見ちゃいない。あいつの向こう側にいる、あの野郎を見てるんだ。
「俺からして見りゃ、ただのガキですけどね」
「外見じゃなくて、心が綺麗なんです」
あの野郎に背中から抱きついてるあいつを見ながら微笑む彼女は、とても清らかに見える。実際に温室育ちのお嬢様だから世俗の闇なんて知らないんだろうけど。
心が綺麗だ、なんて笑いつつ、その心は笑ってない。幼い頃から自分を押し殺してきたからこそ、そんな風に笑えるんだろう。
俺は、彼女の手を握った。
「あんたも、十分きれいですぜ」
風が吹く。
スカートが揺れる。
綺麗な黒髪も、揺れる。
「あなたも、十分きれいだわ」
ほっとするような笑顔で、手を握り返された。
あんたはきっと、俺の心なんて知らないでしょう。醜いんです。本当の心は。
あんたがあの野郎を見なくなれば良いなんて、そうして俺に縋れば良いなんて、醜いことを考えてるんです。
あんたは綺麗だから、心も身体も綺麗すぎるから、何も知りはしないんです。
本当は、あんたに殺したいほどの好意を向けていることも。
「行きましょう」
目の前では、あの2人が手を振っている。本当はあいつらの為に走るなんて癪だけど、あんたが俺の手をひっぱるから、俺は走るしかないんです。
「分かったから、走んないで下さい」
そう言っても、歩く気配は微塵もない。ああ、そんなに、あの野郎に近づきたいんですか。
嫉妬の黒が、胸を覆う。嫉妬の黒が、足をとめる。
「どうしました?」
もう、あんたの声なんて聞こえない。
「……俺のもんに、なれよ」
手酷くキスをした。
拒まれた。
ハッとして腕を離した。
「……ごめん」
あんたに向けての言葉は、それしかなかった。
遠くの方で、あいつらが呆然と立ってる。
怒ったような、野郎の顔が頭に焼き付いて離れない。
「ごめん!!」
叫んで、走り出した。

あんたが綺麗だといった俺は、こんなにも汚れてる。
本当は、あんたの手を握る資格も、あんたの隣にいる資格もなかったから。

後書き

先に言います。
お目汚しですいません!!
初めてキスという単語を使った……。
恥ずかしい……。

この小説について

タイトル 君は綺麗だというけれど
初版 2008年7月27日
改訂 2008年7月27日
小説ID 2497
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梨音の写真
作家名 ★梨音
作家ID 119
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コメント (1)

★トリニティ 2008年7月28日 13時07分41秒
昼ドラ系どろどろダークラブですね。
若干、彼女(主人公と話している)の描写が足りないかなとは思いました。
使い古されたネタではありますが激しい炎が見え隠れするものはどんなものでもいいものですね。
もう少し、ペースを落として長いものとして読みたかったです。
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