鬼姫 - -魔物-

ライン
「・・・・いいわよ、鬼姫ちゃん。
 ・・・・・さぁ、選んでちょうだい・・・・」

「・・・・・・・・・・
 ・・・・ふーん・・・・・」

「・・・ウフフッ。
 ・・・・・・・ねぇ、鬼姫ちゃん・・・」

「?」

「本当は、つまらないでしょ?」

「・・・・?・・・・」

「・・・私、鬼姫ちゃんの気持ち分かるわ。
 ・・・・・・・・つまらないのよね?
 そうでしょ?」

「・・・・何が言いたい・・・」

「・・・・・・睡眠薬じゃなくて・・・・
 そう、こっち・・・・・」

「・・・えっ・・・・」

「・・・・青酸カリの方が、ワクワクするわよね」

「!!」

止まらぬ仰天。
そして、止まない窮地。
一文字怜の言葉を聞いた瞬間、
さすがの鬼姫と言えど、
一瞬、
震えざるを得なかった。
まさかの「青酸カリ」。
鬼姫がゆっくりと、唾を飲み込む。
コーヒーに入っているのは、
「睡眠薬」ではない。
間違いなく、即死。
逃れることのできぬ薬物、
「青酸カリ」。
一文字怜は不適な笑みを浮かべ、
鬼姫を温かく見つめる。

「・・・・ウフフッ・・・・・・。
 ・・・破滅はお口に召すかしら・・・・
 ・・・・・・・・鬼姫ちゃん・・・・・・?」

「・・・・ク、ククッ・・・・・・・。
 ・・・・・破滅ほど濃厚・・・・
 ・・・・・・・美味が増す・・・・・・・」

「さぁ、選んで頂だい・・・・・。
 ・・・・鬼姫ちゃんの好きな方を・・・」

「・・・・・・コレで良い・・・」

あまりにも狂った世界。
すでにこの二人の思考事態が犯罪級。
逮捕されてもおかしくない。
そんな中、鬼姫は片方のカップへと
手を伸ばす。
それはまさに、絶望の未来へと手を伸ばすよう。
握ったカップを震えもさせず、
何事もなく口へと持っていく。
自分の死ぬ局面ですら第3者目線で追える
鬼姫の感性は、もう人間外。
だが、感性があっても運が無ければ話は別。
そして、ついに・・・・。

「・・・・・・・召し上がれ、鬼姫ちゃん」

「・・・・・いただきます・・・・。
 ・・・・・・・・・・ゴクッ」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

死の沈黙があたりを覆い尽くす。
鬼姫は何も躊躇せずに、選んだコーヒーを
飲み干す。
それを物欲しそうな眼差しで見つめる怜。
そして飲み終わった後、
ゆっくりとカップをテーブルに置き、
何か体に異変が起きないかをじっと待つ。
それはまさに、悪夢の時間。
死神が完全に微笑む一瞬。
カチッ、カチッ、カチッ・・・。
時計の針の音だけが耳に響く。
異変が起きるのはいつなのか、すぐか、遅いのか。
それとも・・・・・。

「・・・・・・・・ク、ククッ・・・・。
 ・・・・私の勝ち・・・・・・」

「あらあら。
 負けちゃったのかしら・・・。
 もう、くやしいっ」

「・・・・・・・・・。
 ・・・・帰る。もうアンタに用は無い・・・・」

「あらまぁ。
 どうしましょう・・・・そうねぇ。
 ・・・・あっ、そうだわ、鬼姫ちゃん!
 これならきっと、鬼姫ちゃんも待ってくれるわっ」

「・・・・・何だ・・・・」

「・・・・この残りのコーヒー。
 これを飲んだら、私の勝ちにしてくれないかしら?」

「っ!!」

帰ろうと席を立ちあがった鬼姫の体が、
一挙に凍りつく。そして、初めて恐怖するのである。
一文字怜は、本物の物の怪だと。
人間としてのリミッターが解放状態、ガバガバ。
故に、自らの破滅簡単に言ってのけるのだ。
常人では思えぬ発想、行動、感性。
いや、ここまでくると笑うしかないほどの狂気。
青酸カリ入りのコーヒーを手元に寄せ、
ゆっくりと口元に近づける。
あと少し、ほんの少しで唇にカップが当たるところで、
ピタッと止まる。

「・・・・・ウフフッ、本当に、
 賭博は下らないわね、鬼姫ちゃん」

「?」

「・・・賭博はね、炎なんだ。
 皆、身を焦がしている時が最高潮。
 そこらのサラリーマンですら、
 炎の中では、栄華を刻める・・・・・」

「・・・・・・だから・・・・・?」

「・・・・けど、ずっとは刻めない。
 いつかは、燃えクズになって・・・・
 そして、風に吹き飛ばされる・・・・・・・。
 ・・・・・私はね、鬼姫ちゃん。
 風の中で、燃えつきたい。
 ・・・廃れた中で、燃えていたい・・・・。
 そして・・・・
 ゆっくりと・・・・チリになっていきたい・・・・」

「・・・・!・・・・」

「いただきます、鬼姫ちゃん」

一文字怜は、少し悲しそうな顔をして、
鬼姫に語る。なぜ怜がこれほど悲しそうなのだろうか?
今の鬼姫に理解することはできないだろう。
いや、そんな暇は無いだろう。
鬼姫の目の前には、確かにいるのだから。
最強の魔物、怪物。
一文字怜が。
鬼姫に一度ウインクをして合図をすると、
カップに唇を触れさせて、ついに飲む。
青酸カリ入りのコーヒーを。
鬼姫を目を丸くさせて、その光景をじっと見つめる。
そして・・・・・。

「・・・・・・・ク・・・・・
 ・・・・・・・・・ククッ・・・・・・!」

「・・・・・・・・・・・ふぅ。
 おかわりはいかがかしら?鬼姫ちゃん」

「・・・・・・ククッ・・・・・
 ・・・何で生きてんのよ、化け物め・・・・・」

「ウフフッ。
 さぁね・・・・・。
 青酸カリなんて入っていなかったのかも。
 もしかしたら、最初から何も入っていなかったのかも?」

「(・・・・どっちみち、試されてたか・・・・)」

「それじゃぁ、鬼姫ちゃん?
 例の件・・・・受けてもらうわよ」

一文字怜、まったくの無傷。
笑顔でコーヒーを飲みほしたまま、健全そのもの。
その自分の想像越えた怪物に、
再び闘志を燃やし始める鬼姫。
狂っているほど熱い勝負が終わり、
そして話はギャンブルの件へと。

「・・・・条件が二つある・・・・」

「?、何かしら、鬼姫ちゃん」

「・・・・・まず、タッグの相手・・・・。
 私と組む人材・・・・・・
 その選択権・・・・私に欲しい・・・・・」

「・・・・?
 美穂ちゃんを組ませてあげようと思ったけど、
 嫌なの?」

「・・・・・ククッ・・・・・
 アイツは使い物にならない・・・・・・
 死ねない・・・・・
 いざって時、死ねないゴミ・・・・。
 ・・・・・役に立たない・・・・」

「・・・じゃぁ、
 いざって時、死んでくれる人がいるの?」

「・・・・・・まぁね・・・・・」

この時、
とある人物に寒気が襲う。
我々は、その「死んでくれる人」を
知っている。
だが、ここではあえて言わないでおこう。
あまりにも不幸、
そしてとばっちりな、
彼の無事をただ、願うだけにしよう。
そして、もう一つの条件とは。

「・・・・最後の条件・・・・・・
 ・・・・・アンタとの、勝負権・・・・」

「・・・あらあら」

「・・・・・私がこの件にケリをつけたら・・・・
 いつでも受けてもらう・・・・・
 ・・・アンタと私の・・・・
 ・・・・・勝負を・・・・・・・」

「・・・・ウフフッ。
 いいわ、のんであげる。
 交渉成立ね・・・・・・」

「・・・・ククッ・・・・・」

こうして、決着。
鬼姫と怜の対談、決着へ。
結局、
生まれたのは新たなる戦火。
争いの種。
だが、鬼姫の目的は一つ。
一文字怜を、狩る。
神に愛されし女を、叩きのめす。
鬼姫は、
静かな闘志を隠しながら、
店を去っていった。

後書き

一文字怜は当初、本気になった時「アタイ」とか
言ったり、もっと言葉使いが荒々しくなったりとかぁ・・・。
でも、全部却下。

次回、やっと準主人公、弁慶戻る!

この小説について

タイトル -魔物-
初版 2008年8月9日
改訂 2008年8月9日
小説ID 2578
閲覧数 1311
合計★ 0
パスワード
編集/削除

コメント (0)

名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。