アエモノ学園の夏 - 8 決着そして成仏

「あなたは、ガネッコよね……」
<そうだ>

 ミホの次に進み出たのは、ユリだった。自分のためかどうかは不明だが、作り笑みをしているとミホは感じた。

「……おい!」
「……お前は……」
「……正気か!?」

 上から、ヒロ・リョウ・ケイの発言である。返答は、彼らの意思に反していた。が……

「……正気だってばっ…………っぁぁあああ゛あ゛っ!!!!!!」
『あ?!』


バタッ――――


 彼女は突然倒れこんだ。マナの介抱を手で払いのけ、ますます苦しんだ。すると、背中の上がポゥっと光りだした。今ではすっかり青くなった、ガネッコの目の色とそっくりだ。そして、ユリの背を離れた光は中を浮き、ガネッコ――人型男性幽霊 の正面で制止した。

<まさか、お前は……>
<ふっ……そうよ>
『まさか?』
「ハァ……ハァ…………そのまさか、だよ。……申し訳……ございませ……ごせんぞさま……ハァ……ハァ……」

「っと……まさかって、どんなまさか?」
「忘れたか? ユリが『ガネッコ』と聞くと、ご先祖の人格が現れる。 でもあの時とは、違うな」

 ミホとリョウのひそひそ話が終わったところで、変化が起こった。光が突然眩しく輝き、姿を変えたのだ。それを6文字で表せと言われたら、『人型女性幽霊』であろう。子孫が着ている魔法衣と、全く変わらないデザイン。家に伝わるのか、魔法郷に伝わるものなのかは、ミホにはわからなかった。いや、こんなことを考える余裕なんて、無かった。

<……ガネッコ……>
<何だ?>
<わたしゃ、ちょ〜っとばかし、聞きたいことがあるのさ>
<…………>
<目をそらせたって無駄さ。答えてもらおうか。魔法郷と私を捨てた、理由を>
<…………>
<ここにいる全員が知りたがっているよ。さあ>

 視線は集まり、彼はぶつぶつと答えた。



<……ワシは、城に行かざるを得なかった……>
<?!>
<……お前、知っていただろう? 悪戯好きで、たびたび魔法郷を抜け出していたヤツを>
<知っているよ。その女がどうかしたか?>
<ヤツは魔法郷を抜け出し、最後にこの城へやってきた。そして、幼馴染であるワシにある伝令を送りつけたのさ>
『どんな?』


 彼は青紫の煙に姿を変えて、こんな文章を自身で創り出した。



   私ハ コレカラ 姫様ノ 最モ 近クニ 行ク
   最悪ノ 事態ヲ 心配 スルナラバ 城ニ 来イ
   秘密ノ ウチニ



「……なるほど、そういう意味ですね」
「王妃様?!」
「私に言わせてください! この図書室の本の内容に、とっても似ているものですから」
「……はい……」
 説明専門人間、リョウがたまらずに止めようとしたが、残念ながら失敗。

「『最も近く』とは、側近などではなくて、当時の姫君に憑くこと。人質みたいなものです」
「憑く?」
「しっ!」
今度はケイがヒロに止められた。

「『最悪の事態』とは、『彼女』が姫君を操り、夫である王に向かって誤った助言をさせること」
「そして『秘密のうち』とは言うまでもなく、誰にも知られずに魔法郷を出て行くこと。そうですよね、王妃様、ガネッコさん」

 リョウ、みごと介入成功! おめでとう!


<御名答>
 彼は幽霊の姿に戻っていた。
<そう、ワシはこの伝令に従い、『彼女』に仕える形で城に留まった。『彼女』が亡くなり、姫様の体を離れるまで……>
<で? あんた、生きていたなら、どうして帰ってこなかったのさ?>
<…………>
<うんとかすんとか、言いなよ!>

<……お前の元に帰る途中で、お前の呪いを受けた>
<え……>
<それが全てだ>


 思わず口から、言葉が出た。
『そうだったんだ……』

<そうかい。今、たった今、解かった。……ガネッコ>
<ん?>
<大変、すまなかった。……許して…………おくれ>
 ユリの先祖の幽霊は泣いているように震えていた。
<解かればいいんだ>

すっかり落ち着きを取り戻したもう一人の幽霊が、彼女に寄り添う。そこに口を出す女子一人。
「仲直りできたなら、成仏できる、よね」
「………………」
誰も止めない。
<そうだな。もう、準備が整った>
<あぁ、できるな。我が子孫に告ぐ。もう一連の事で心配する必要はない>



「ご先祖様……」



 まだ起き上がれないユリを残して、2人の幽霊は白い光になり、本棚の影に溶けていった。図書室の中はまた、明るく、蒸し暑くなった。
 全てを見届けて、霊体恐怖症の霊能者・ミホと若い魔女・ユリは、精根尽き果てて気絶してしまい、城内の客室に運ばれた。

後書き

大変長い月日を経て、性懲りも無く現れました。
読者の皆様、お待たせいたしました。

次回は最終回です。いつ更新できるか分かりませんが、自分では諦めない…と思っています。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。誤字脱字・アドバイス等あれば、よろしくお願いします。

この小説について

タイトル 8 決着そして成仏
初版 2008年8月10日
改訂 2008年8月10日
小説ID 2583
閲覧数 806
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メリエリの写真
熟練
作家名 ★メリエリ
作家ID 210
投稿数 10
★の数 2
活動度 1376

コメント (1)

★鷹崎篤実 コメントのみ 2008年10月25日 2時42分03秒
この場では初めまして鷹崎です。
というわけで、読了?いたしましたのでコメントさせていただきます。
基本的な分類としては異世界ファンタジーになるのでしょう。
男の子三人と女の子三人による異世界冒険譚、ではなく、ただの帰省というほのぼのした感じになっており、そのためか魔法とか戦士とかいったギミックが逆に浮いていると感じました。
現実世界から幻想世界へと女の子が送られて物語が始まるというのは、その少女への世界観の説明が同時に読者への説明にもなっており、読者に対する配慮を感じました。
しかし、主要キャラが一気に6人も出られますと、読み手は混乱してしまいます。冗長的にはなってしまいますが、何話かに分けて一人ずつキャラが参加していくといった形を取った方が無難だったでしょう。
また、鷹崎が言えた義理ではないのですが、やはり書き慣れていないのか物語が急ぎ気味であり、登場人物の感情が分かりにくく、またそれぞれの特徴も掴みにくかったです。
ただ王妃に条件反射で土下座してしまう王子や「ガネッコ」などは、メリエリさんはこれが書きたかったのだな、と分かる部分でもあるので、それらを生かしつつ全体的なレベルアップを目指してください。
あ、あと魔法や武術、武器などのギミックを使う際には、そういうものについての専門書を参考にして書くと、ぐっと文章が引き締まりますし、なあなあで書いて読者がだれてくるのを防止する効果もあります。
幽霊に関する部分も、読者からすると「んー、よく分からん」と思ってしまう部分が多々見受けられましたので、本当にこの文章で自分の伝えたいことが全部伝わるのか、何か不足している部分がないか、特に重要な部分ではその点に関して十分注意して書いていくとさらなるレベルアップにつながると思います。
小説を書く際には、さまざまなノウハウ、そして知識が必要になってきます。(かくいう鷹崎もノウハウや知識に関して偉そうなことを言えるほど、持っているわけではないのですが)書き方については本が出版されていますし、ネットのサイトでも十分以上のノウハウを得られるでしょう。知識についてはもう片っ端から吸収していくしかありません。ただの想像だけで書く小説は、薄っぺらくなりがちですし、自分も不安になります。
まあ、一番手っ取り早いのは身近な友人に批評してもらうことでしょう。ネットだとオブラートに包んだ批評になるか、脈絡のない批判になるかのどちらかですから。
それで、友人と批評し合っていきすぎて殴り合いになれれば、儲けものです。もう恐れるものなどありませんから。
なんだか、後半から変な話になってしまいましたが、とりあえず小説は完結させるのが大事です。完結出来ない症候群の鷹崎が言うのですから間違いありません。
学生生活も忙しいでしょうけど、大丈夫メリエリさんならきっとできますとも!
とかなんとか、無責任なことを言ってしまう鷹崎なのであった。
最後に全部ぶち壊しにしてしまいましたが、書きてえものを書きてえんだって気持ちが大切です。
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