最強女王×最弱騎士 - 第十二話 「好き」の証明(完結)

 きっとこの想いは変わることは無いだろう。一度人を好きになると、その人への想いが止まらなくなる。一方通行もいい所のような感じだ。人を好きになる事など、あきらめていた筈。それでも、胸の内に溢れてくる物がある。葵は、生徒会の皆が帰った後も、一人、学校の自室で佇んでいた。

 俺は大人しく家に帰る事が出来ずにいた。学校の校門の前で、ひたすら考えてみると、やはり葵さんの様子がおかしかった。明らかに変だ。俺に何が出来るって訳でもないけど、悩んでいるのなら力になりたい。俺は葵さんのことが……。

「だー! 何考えてるんだ、俺! 今はそれどころじゃないだろッ」

 俺はぶんぶん、と頭を振った。けれど、何だかモヤモヤしたままだ。この感じがあまり好きではなかった。葵さんは俺に居場所も「最弱」なりの価値も与えてくれた人だ。その葵さんの様子がおかしいと、いつもこんな感じになる。気になって仕方がないのだ。塞ぎこんでいて欲しくない。明るく笑っていて欲しい。分かっているんだ、こんな俺じゃ葵さんにつりあう訳がないって。分かっているんだ、ただの片思いだって。

「……でも、それでも俺は……!」

 俺は抑えがきかなくなり、鞄をその場に捨て、葵さんの部屋へと走り出した。
 



 廊下をひたすら走り、息を切らし、ただただ走り続けていた。何が何だか整理もつかずに。心の準備も出来ずに。だが、そのままにしておく事が出来ない想いだけが、俺を突き動かしていた。今まで一度だって、感じた事なんて無かったのに。ずっと何にも無いからっぽな俺のままだと思っていたのに。
 勢い良く俺は葵さんの部屋のドアを開けた。いつの間にか、部屋の中は夕日に包まれている。葵さんが俺を見た。

「侑斗……」
「……葵さん」
 
 葵さんを見ると、俺は何にも言えない自分に気がついた。葵さんは、泣いていた。何故なのかは分からないが、いつもの葵さんとは違った。どうしようもなく、不安に駆られる。

「ど、どうしたんですか、葵さん? というか、あの、すみません。いきなり押しかけて……。葵さんが何か変だな、と思って、気になったから……」
「侑斗、私……私ッ……」
「……俺、葵さんの事が大好きです」
「! 侑斗……」

 葵さんが何かを言おうとしたが、俺はそれを制するように言った。葵さんが驚いて顔を上げた。何を言ったのかすら分からないが、今しかチャンスが無いと思ったからか、口が滑ってしまった。自分の言葉に動揺しながらも、俺は言葉を続けた。


「俺……葵さんと会うまで、自分がこんな風に何か出来るって知らなかった。ただ、平凡以下のダメ男だと思ってました。けど、葵さんや、生徒会の皆と出会って、色々な事あったけど、すごく楽しかったんです。自分に自信が持てたって言うか……その内、俺……葵さんの傍にいたいって思うようになりました。執事としてじゃなくて、葵さんを支えてあげられる存在になりたいって思ったんです。葵さんの笑った顔、俺は誰よりも好きです。だから……泣かないで下さい。葵さんらしく、笑っていて下さい。そんな葵さんだから、俺は好きになったっていうか、何ていうか……」

 言っているうちに、また混乱してきた。結局俺は、何が言いたかったんだろう?
 そんな俺を見て、葵さんは言った。

「私には……好きな人がいた。正直、今も後悔ばっかりしているんだ。どうして想いを伝えなかったんだって。叶うはずが無くても、伝えておけば、自分の胸の中にモヤモヤしていることなんて無いのに。伝えられない事の方が、よっぽど苦しいのに……! けど、私……今は、今はね……そんな感じじゃない。ちっとも苦しくないの。勿論、後悔はしてる。でもやっぱり、侑斗に会えたことが嬉しいかったから」
「葵さん……」
「私、ずるいよね。今、侑斗に会った瞬間、苦しみがどこかへ行っちゃった。侑斗の言葉を、想いを聞いて、後悔よりも何よりも……『好き』って気持ちだけが溢れてきて。ごめん、侑斗……私、とっても意地悪だ。……でも、それでも……これから侑斗を、好きになってもいい……?」
「……へっ?」

 俺は最後に言われたことの意味が理解できず、一瞬立ち尽くしてしまっていた。俺は葵さんが好きだ。葵さんも俺が…好き!?

「は、はい!! 是非、喜んで!!」

 アホなセリフを、思いっきりアホな顔で言ってしまった。俺は自分の人生で最高にお馬鹿な顔をしているだろう。しかし、驚くのはそれだけではなかった。

「あーあ、遅いんだよ。告白ごときで」
「春日さん。男女の恋愛事情に当事者以外が口を挟む事は宜しくないと思いますが?」
「南条先輩、天峰先輩!?」

 そこに現れたのは生徒会の南条先輩と天峰先輩だった。俺が驚くと、更に続々と生徒会の面々が現れた。
 
「良かったねー侑斗クン。今度シャボン玉のシャワー浴びせてあげるよん」
「お祝いするよ、侑斗!」
「ミツル先輩! それに真司郎! な、何で皆……」
「決まっているだろう。君と葵の恋の門出を、祝うためさ」
「って、生徒会長! 全員集合かよ!」

 俺は絶叫をあげそうになった。しかし、そんな俺や葵さんを気にかける事無く、生徒会長は言い放った。

「僕の勘でね。君達は最初から合うと思っていたんだ。恋なんて、直感で行かなきゃ損だろう? もどかしく相手を焦らすより、君は素直に好きだと告白すると、読んでいたのさ」

(……生徒会長って、エスパー?)

 俺は得意げに話す生徒会長の事を、本気でそう思った。しかし、皆が笑っているのを見て、俺と葵さんもつられて笑った。やっと、葵さんの笑顔が見られた。眩しいくらいの温かな笑顔だ。俺と葵さんは向かい合いながら、笑い合っていた。今だけは、どんなに短い時間であっても、長く感じられた。



 ――それから一週間後


「うわー!! やっべ…遅刻だー!!」

 俺は急いで学校の廊下を走っていた。相変わらず速くも無い足を酷使しながら走っていく。だが、今は朝では無い。授業に遅れるから急いでいる訳ではない。今の俺には、もっと大切な事がある。
 俺は二号館の三階にある扉の前へと辿りつく。俺はいつも通りにドアを開けた。世界で一番笑っていて欲しい人が、俺に笑いかける。

「遅いぞ、侑斗!」
「すみません! これでも、走ってきたんですよ!」

 ぷっ、と、俺達は吹き出した。葵さんの顔が赤い。多分、俺の顔も赤いだろう。今までも、これからも、俺は葵さんの傍にいることが出来る。好きで、いることが出来る。
 俺にとっては最高の贅沢だ。あの時は自分でもしどろもどろだったけど、今は、胸を張って言うことが出来る。

「俺は、葵さんの事が好きです。執事としても、一人の人間としても、傍に居ます」って。
                         
                      
                            終わり。


                                                            

後書き

恋は未熟で不安定なもの。それでも…育んでいく物です。
傷付いても、悲しくても、あきらめられない。恋をすることが幸せだと知っているから。その人を幸せにしたいと思っているから。
この話を書いていて、本当にそう感じました。
皆さんに何かを感じ取っていただけたのなら、私としては本望です。

これからは、今書いている「Platonic Love」を進めたりしていきます。まあ、展開的にはこの作品と似通っている所もあるんですが、「Platonic Love」では、肉体的な愛と精神的な愛。どちらが人を幸せに出来るのか。現代的な愛について書いていきたいと思います。

まあ、新連載もあるかもしれませんし、そこの所はまた、私の気分次第ということで。

というか、侑斗の告白、上手く行ってましたかね? 恋愛経験薄い私には、あまり分からないのですが…まあ、私はハッピーエンド至上主義者ですので。
それでは、また別の作品で。読んでくださって、有難うございました。   
    作者 ひとり雨

この小説について

タイトル 第十二話 「好き」の証明(完結)
初版 2008年8月13日
改訂 2008年9月18日
小説ID 2594
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コメント (1)

ming1111 vcvcb コメントのみ 2018年8月14日 19時02分34秒
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