サンタッタ

『サンタクロース協会』は、毎年プレゼントを配るサンタ達の地域、人数の割り振りを行うサンタクロース統一本部といっても良いところだ。
12月初頭、恒例の会議が開かれる。
会議ではその年のトレンドや子供の興味の対象の地域差などを調べあげたうえでプレゼントの種類、量などを決めていく。
これをおろそかにすると、プレゼントが足りなくなったり逆に大量の在庫を抱え込むことになったりで、大変なのである。
プレゼントが足りない場合はどうにか誤魔化すための一般的なプレゼント(本やぬいぐるみ等)で代用するが、プレゼントが余ってしまうということは絶対に避けねばならない。
協会本部ははっきりいってお金が無いのだ。下手な大量仕入れはサンタ消滅を意味する。
収入源は善意の寄付金や協会所有の小さな油田によるオイルダラーだが、それもプレゼント購入費に充てるので精一杯。
このごろは子供がほしがるプレゼントも高価な物が多くなり、購入費用がかさむようになってきている。唯一、少子化が救いになっているというのが皮肉だ。
だからここ数年は配送を担当するサンタが輸送費(トナカイ費)を自腹で出している有様。
そんなギリギリな協会ではいわゆる世襲サンタが多く、どうしても無能なサンタが重要な役職に就いてしまう事が多い。
一昨年は協会日本支部副会長の息子である企画部長が「ポケモンとベイブレードとハリーポッターでいいだろ」と適当な決定をなした為、女の子向けのプレゼントが全然足りず、男の子向けのプレゼントが大量に余ってしまうという事態に陥り、副会長は辞任、企画部長も左遷という事件が起きてしまった。
そしてその大量の余りプレゼントは昨年のプレゼントに混ぜて配った為、かなりの不興を買い、サンタクロースに対する期待度、信頼度が下がっているという統計(協会独自調査)もでている。
だから、今年は例年以上に気合いが入っているのである。

〜サンタクロース協会 日本支部〜

「では本年度のクリスマス会議を始めさせて頂きます。私が議長です。まず資料は手元に届いておりますでしょうか」
「ちょっといいかね」
ちっ。なんですか専務?」
「今舌打ちしただろ」
「いいえ?」
「……。資料は届いてるけど何このタイトル」
『惨憺たるサンタ』
「軽いダジャレです」
「縁起悪いわ!」

「ははは、去年一昨年の悲劇を暗に指してみました。あんなのはもう二度とご免だよジョセフ? という意味でつけたんですよ」
「うむぅ、まあアレはご免だからな。では早く本題に入ろうか」
「はい。それじゃ今年のデータからまいりたいと思います。資料を開いて下さい」
ぱらぱら……(資料をめくる音)
「議長、すまんが私の資料には最初のページは会長の顔写真が3枚あるだけで文字が何も書いてない。落丁のようだ」
「あ、それでいいんです」
「?」
「飽きた人用の落書きスペースなんで。鼻毛とか」
「会長の顔写真に鼻毛描かすな。しかも3枚」

「本人からの希望だったんですが」
「会長?!」
「はっはっは」←会長
「……」
「そんなわけで5ページからお開き下さい。統計データが載っていると思います。では調査統計部担当の方お願いします」

「えー、『サンタへの信用度推移』というところからご覧下さい」
ぺらぺらーん(ページをめくる音)
「年々、サンタの信用が落ちています。全体として右下がり。特に近年では私たちが担当する不況のジャパンで信用が極端に落ちています」
「ほう?」
「これは不況によって子供にプレゼントをやる余裕が無くなった親たちが安物のプレゼントでやり過ごそうとする、もしくはプレゼントをあげなくて済むように『サンタはいないんだよ』と早期教育を施している事が原因と見られます」
「えらくシビアな国になったな、ジャパン」
「どこの国も子供の夢は大人の都合で壊されるんですね」
「あと、ジャパン特有の多種かつ単調なマスメディアの影響により、恋愛方面へ興味のシフトが早く、サンタクロースそのものに興味を失うのが早いのも原因の一つと思われます」
「それでは我々のアイデンティティーが喪失してしまうな……」
「ええ、そこでサンタクロースの存在を再認識してもらうための策を考える必要があると思われます」
「そうだな……」
「例えば、プレゼントの他に『サンタ参上』というようなカードを」
「なんか逆に盗んだみたいだな、それ」

「そうでしょうか?」
「すごい印象悪い。他に手は無いのか。この信用度をあげる手は」
「信じない子を片っ端から抹殺すれば数字的には」
「ダメに決まってんだろ!」

「ですよね」
「クリスマスが呪われた日になっちゃうだろうが」

「サンタがプレゼントの代わりに死神のカマ持ってたりしてね(笑)」
「はっはっは、座布団一枚」←会長
「……。もう信用度はいいから次にいこう」
「では次の項目、『去年もらったプレゼントに満足したか』です」
「これも重要だな」
「満足した8%、やや満足した12%、普通35%、キモかった10%、記憶にございません35%」
「政治家みたいな子供がやたら多いな」

「政治家の子供ですから」
「一般家庭の子にアンケートとってこいよ」
「あー」
「なんで意外な事言われた風なリアクションなのかがわからない」
「じゃあ今年のこの統計はボツですか」
「そりゃあ、アンケートの母集団が偏ってちゃダメだろ」
「では来年はどういう子供に」
「無作為抽出でいいよ。変に手間かけようとするなよ」
「へーい」
「返事は『はい』だ」
「ウィムッシュ」
「……」
「では次の項目『クリスマスと言えば?』」
「ほう、良い質問だな。子供の中でサンタがどれくらい上位か端的にわかる」
「プレゼント40%、クリスマスツリー24%、サンタさん12%、ケンタッキーパーティバーレルを食べる日3%、山下達郎6%、ワム5%」
「明らかに年配混ざってるだろ、これ。
いや大人でもワムが5%ってどうなんだ」
「ファンなんじゃないですか?」
「じゃなくてそもそも大人にアンケートするな。サンタは子供にプレゼント配るんだから」
「大人だって昔は子供だったんですよ!」
「今子供じゃないと意味ないの!」
「あー」
「だからなんで意外な風なリアクションなんだよ!」

「しかも全体的にサンタの印象は薄かったです。イメージにはあるようですが、一番ではないみたいです」
「どうしようもないな……」
「サンタの信用度を上げる前にサンタをもっと印象づけないと」
「そうだな」
「やはりサンタを信じない子を血祭りにあげるのが数字的にも……」
「殺人行為から離れろ。あと数字からも離れろ」
「でも信じないと殺されるとなれば嫌でも信じると思うんですが!」
「サンタにマイナスイメージ与えるやり方は無しだ。ほら、サンタにはサンタの”良さ”があるだろ?」
「ありましたっけ?」
「サンタを全否定するような事言うな」

「だってサンタはプレゼント配るだけの人、ですからねえ。逆にアピールしすぎもまずい気がするんですよ」
「む、そうか……?」
「いるかいないかわからないけど信じたい存在というのがベストなんじゃないですか?」
「う、む、いいこと言うじゃないか……」
「いいこと言った。はっはっは」←会長
「変に前へ前への姿勢だと世間的に若手芸人みたいな扱いになる恐れもありますので」
「確かに、街中で若者に絡まれるサンタの図とか想像したくないな」
「ええ、日常的に路地裏で『おいサンタ、プレゼント出せよ!』ってカツアゲされてるサンタはまずいでしょう。サンタにリアリティーを持たせすぎるのも問題です」
「これはかなり深い議題だな。今すぐに結論を急ぐのも良くない。あとでじっくり議論することにしよう」
「へーい。えー、それじゃあ統計部からは以上です」

「では次に、経理財務部担当の方お願いします」←議長

「経理財務部です。統計の次のページをお開き下さい。協会全体の今年の予算です」(※この協会は12月がメインなので配分しやすいように12月から翌年11月までの予算が組まれる)
ぺらぺらぺらりん(ページめくる音)
「見ての通り、火の車です。日本の財政と同じくらいすごいです」
「うわ、大丈夫か、この協会」
「で、本部からは予算の分配とともに費用節約の通知がきています」
「そんなこといってもプレゼントをケチったらサンタの尊厳に関わるだろ。何て事を言うんだ、グリーンランド本部は」
「パチもん(偽物)で誤魔化しますか?ピカチョーとかいってスーツ着てたり」
「ピ課長?」
「よく気付きましたね、さすが専務。それはさておき、パチもん作戦やりますか?」
「最近の子供は目が肥えているから無理だ」
「しかしこの予算の削減の仕方は厳しいです。光熱費の節約程度じゃカバーしきれません」
「ううむ……。どうしますか、会長」
「はっはっは、参った参った」←会長
「……」
「今でさえ輸送(トナカイ)費審査が厳しくて経費で落とせないのにな。財務部では何か提案はないか?」
「子供へのプレゼントに請求書を同封」
「金取るな!」

「冗談です。しかし実行したいくらい厳しい状況ということはわかっていただきたい」
「確かに、もしちょっとテンションが高かったら勢いで採用してしまいそうな状況ではあるな」
「ええ、プレゼントのグレードを下げられないというのであれば、請求書作戦か、今以上の徹底したコスト削減要綱を練らなければならないと思われます」
「ふむ、これ以上にコスト削減しなければならないのか……。気が重いが仕方あるまい」
「差し当たって、サンタ服とつけ髭の支給をやめましょう」
「誰だかわかんなくなってただの空飛ぶオッサンになっちゃうだろうが」

「赤っぽい服を着てれば遠目にはサンタに見えますよ。そういうもんです」
「……」
「究極的にはプレゼントさえ配れればいい訳ですから、多少の事は目をつぶって下さい」
「はっはっは、空飛ぶオッサンか」←会長
「他の削減要綱は近日中に財務部と各事業部と協議をして作ります。今日の所は以上です」

「では最後に企画部担当の方にお願いいたします」

「企画部です。財務資料の次のページをお開き下さい」
ペラペ〜ラペペ〜ラ(ページをめくる音ですよ)
「さて、企画部からは今年のプレゼントの指針についてです」
「うむ」
「統計部、財務部からの話をひとまず置いときまして。企画部独自調査の結果」
「結果?」
「今年はサプライズが新規参入でヨン様が残念!な年だったということが判明しました!!」
「流行語適当に並べただけだろ、それ」

「拙者……本当は流行なんてよくわかりませんから! 切腹!」
「首切るぞ、お前」
「すいませんまじめにやります」

「はっはっは、面白いから許す」←会長
「……」
「えー、今年の子供の中で流行ったのはまずハリーポッターをはじめとするファンタジー小説ですね」
「うむ」
「あと凶悪犯罪」
「それは流行じゃない」

「ではそれを除外しますと……他には欲しい物No.1の携帯電話は外せません」
「最近は親も防犯になると容認してるようだしな」
「ですが我々は携帯電話を配っても契約手続きができませんし。まあ、この財政状況であんな高価な物を配る訳にはいかないでしょうが」
「そうだな。携帯は……」
「路上販売の中古ならどうにか」
「違法のニオイがするものは厳禁だ」
「そういやサンタ協会会則にありましたっけ。『違法物配布を禁止する』」
「そうだ。だから違法のおそれがある物は無し。とはいっても欲しい物No.1を配れないのは痛いな」
「親に事情を話して印鑑と支払い口座番号を拝借するとか」
「なんで堂々と人前に出てんだよ、私らはサンタだぞ」
「そこは記憶操作でどうにか」
「どこの技術だ」

「しかし実際問題、携帯電話は難しいですね」
「だからそれをどうにかならないか考えるのが企画部の仕事だろ」
「そうでした、ははは。えーっと、対象年齢を下げてみますと、男の子にはアンパンマンや機関車トーマスやムシキング、戦隊物、女の子にはドールハウスやふたりはプリキュアなどのアニメヒロイン物玩具が人気のようです」
「具体名がバンバンでてるけど大丈夫か」
「一番危険なアレだけは出しませんので」
「そうか」
「アレってもちろんディズニーのことですよ?」
「わかってるし言っちゃってるよ!」

「あちゃー。まあいいや。続けましょう」
「はっはっは、どんまい」←会長
「……」
「年齢が低めのお子様達には主にこれらのグッズで固めていきたいと思います」
「それらの趣味に合致しない子供にはどうする」
「そうですね。近頃は大人だけでなく子供のニーズも多様化していまして、多品種少量仕入れを強いられる事になります。文具や本など、当たり障りの無いグッズも幅広くそろえていきたいと思います」
「時代の流れを感じるな。昔はだいたい巨人・大鵬・卵焼きだったのにな」
「古っ!」
「うるさい。続けろ」
「ていうかその当時の企画部が卵焼きをプレゼントに配ろうとした資料を見たときはサンタ協会が今も存続してる事が奇跡だと思いました」
「忘れろ。高度成長期で我々も調子に乗ってたんだ」
「その結果が今の財政状況なワケですね」
「いいから忘れろ」
「まあ、私自身も子供の頃に親からプレゼントに卵焼きをもらって喜んでましたから何とも言えません(笑)」
「喜ぶなよ」
「はは。ええとあと注意点が一点あるんですが」
「ほう。何だね」
「今日の子供は夜更かしが多く、サンタのプレゼント配送時間に細心の注意を払う必要があるんです」
「そうだったな。いろいろとサンタもやりにくい世の中になったものだ」
「ええ。ですが我々はプレゼントとともに子供に夢も配る存在としてこれからもやっていきたいと、企画部としてはそんな感じのスローガンで今年はいきたいと思う所存です」
「お、いい感じのまとめ方じゃないか」
「感心したなら給料上げてください」
「無理」
「サンタやめっかな」
「夢を配る存在はどこいったんだよ」
「夢で飯は食えませんし」
「もう喋るな」



「では本日の会議はここまでとしまして、後日、統計部・財務部・企画部との協議を経て――」




「って会議ばっかりしてたらクリスマス終わっちゃったよ!」←統計部
「うわーほんとだ!」←財務部
「マジやばくない?」←企画部
「はっはっは、これは傑作」←会長



〜そして配送担当のサンタ達が急いであっちこっちに配り歩きましたが、何せ急いでた上にみんな私服だったので

「おわー!変なガイジーン!」←子供
「うわー!チャイルドニッポンジーン!」←サンタ(赤ジャージ着用)


という感じで子供に見つかったサンタで溢れかえり、日本は大混乱に陥りましたとさ。
めでたしめでたし。


投げやりEND

後書き

クリスマスに間に合わなかったのですが気にしない。
来年のクリスマスには間に合ったんだ。

以前書いた『プレゼンテーション』と形式が全く同じですが、この形式が意外と私にとって大変やりやすいので、そのへんは目をつぶって頂けると幸いでありんす。

:12/30追記
高評価を頂きましてうっひゃっひゃです。
ですが、つまらんなあと思った方も匿名コメント無しでかまわんので点数評価だけでもしていただけるともっと嬉しいかなーとか思いまつ。
常連の方で、低い点数つけにくいなあと思った時は(ぱろしょは良識的な方が多いからか、和やかムードのサイトなので)ログアウトしてから匿名で送れば誰だかわからず済みますし。
他の方の小説でこのやり方はまずいかもしれないですが、私の場合はそんな感じでやってくれても結構でありんす。

この小説について

タイトル サンタッタ
初版 2004年12月28日
改訂 2005年7月12日
小説ID 261
閲覧数 2202
合計★ 52
ビビンバ吉田の写真
作家名 ★ビビンバ吉田
作家ID 3
投稿数 148
★の数 1180
活動度 17563

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