そして僕は歩き出す

単純に、前を歩く二人の姿を見ていたくなかった。
なんて、言い訳じみた台詞にもならないけど。



「あの二人、最近仲良いよね〜」
「幼馴染だしね」
 女子たちの楽しそうなその声に、俺は前を見た。
 そこには、竹道の自転車を押している彼女と、小説を片手に歩いている竹道がいた。しばらく眺めていると竹道が彼女の頭を小突いたり、仲良さげに笑いあってる。
どっからどう見てもカップルだ。
「阿呆っ! そっちを押す馬鹿がいるかっ!!」
「だって分かんないもん!」
「だから……」
 急に頭に響いてきた怒声は竹道のものだったらしい。ボーっとしていた頭にはかなり利いた。

 お前は小説を読んでたんじゃなかったか? そうツッコミたくなるほど竹道の変わり身は早い。なぜかゲーム機を持っている。
扱い方が分からなくてオロオロしてる彼女と、厳しいながらもしっかり彼女に使い方を教えてる竹道。兄妹ともカップルともいえるその様に、俺は胸のうちが黒くなるのを感じた。

「仲良いね〜。お二人さん」
 気づけば俺は、二人に声をかけていた。
「雪森! ちょうど良かった。この馬鹿にゲームの使い方を教えてやってくれ」
「馬鹿っていうな〜!」
 ほら。このやりとりを見ててイライラする。
実際バカだろ、と竹道は彼女をからかって、彼女も彼女で竹道に反論して、俺のイライラを煽る。
「痴話喧嘩は家でやってくれないと」
「「痴話喧嘩っていうなっ!」」
だから、そんな風に息ピッタリになるなよ。邪魔して、今にも想いを告げたくなる。

 





 ずっと好きだった。
『プリント、落としたよ』
そう言って笑いかけてくれた時から、ずっと好きだった。
せっかく同じ委員会になって仲良くなったのに、やっぱり幼馴染がついてきて邪魔される。
 イライラを必死に我慢してきた。この言い合ってる時の笑顔が、俺は好きだから。そして、
「分かったから喧嘩しないの」
俺は二人の仲裁役だから。

「そういえば竹道、昨日いってた歌とってくれた?」
「おう。とった、とった。後で聴かせてやる」
 仲が良いことで。
二人が話し始めると、俺は2歩後ろを歩くのがクセになっている。そして、
「雪森? 早く来いよ」
「竹道が『崖下のポニー』聴かせてくれるって」
 振り返った二人の笑顔を見るのも、習慣のようになっている。

 

 この二人の姿を見るたのに、胸の中は黒くなるのに
 この二人の笑顔を見るたびに白くなる。


 もう少しだけ、この空気を味わっても良いんじゃないかと、俺は少しだけ速度を上げて歩き始めた。




後書き

明確な表記をしていないので友情ととっても良いでしょう。
製作時間ものの15分という短編です。

腐女子さんはこれから妄想でもしちゃって下さい(笑)

この小説について

タイトル そして僕は歩き出す
初版 2008年8月21日
改訂 2008年8月21日
小説ID 2618
閲覧数 756
合計★ 2
梨音の写真
作家名 ★梨音
作家ID 119
投稿数 83
★の数 188
活動度 11119

コメント (1)

★日直 2008年8月22日 13時12分56秒
読ませていただきました。ちなみに僕は、この作品の主人公はノーマルだと信じています。

終盤にあった、黒くなったり白くなったり。少なからずですが僕もそんな経験がありました。今はないですが。
胸の中って分からないものですよね。成長していくにつれてさらに複雑になっていくうえに、誰にも自分でさえも理解できない感情が生まれてくるのですから。
人の心って面白いですよね。
名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。