鬼姫 - -射手-

ライン
「お待ちしておりました、
 鬼姫様、どうぞこちらへ・・・」

ここは雀荘の中。
鬼姫が一人、雀荘の中に入ると、
ドアの傍で、
鬼姫が来るのを待っていた男性に
声を掛けられる。
何の説明もないまま、
その男性に中へと案内される鬼姫。

「・・・鬼姫様、
 もう一人の相方は・・・?」

「・・・・・さぁ・・・・」

「・・・こまりましたね。
 カンちゃんが何とおっしゃるか・・・」

「・・・?・・・」

雀荘の中はガラガラだった。
恐らく、貸切にしたのだろう。
だが鬼姫は悟る。
外には、もしもの場合に
何十人かの手下がいることを。
このガラガラの演出は、
あくまで公平さを示す、
オトリ。
そしてそのまま、
今夜戦う相手のもとへと
到着する。
その人物とは・・・。

「ッチェ、来たのかぁ・・・。
 ねぇー、ダイスケぇー。
 僕の目がおかしいのかなぁー」

「いいえ。
 カンちゃんの視力は
 健全でございます」

「ふーん・・・。
 ねぇ、そこの女ぁ!
 僕と戦おうって時点で
 低能なのは丸見えなんだけどさぁー、
 数の数え方もできないのぉ?
 キャキャキャキャッ!」

「・・・・・ふーん・・・・・
 こいつか・・・・・」

そこにいたのは、
何とも少年らしい男性。
恐らく、案内してくれた男同様に
高校生なのだが、
どうも、一方は「王」
一方は「執事」という
圧倒的、王政権。
鬼姫はチラっと回りを
少し見渡し、
今回の対戦相手に話しかける。

「・・・・・アンタが頭・・・・?」

「うんっ。
 オマエみたいな
 低能に名前なんておしえたく無いけどさー、
 おしえてあげる。
 僕は酒田 寛吉。
 で、こっちが」

「私、飯村 大助と申します。
 とりあえず、
 中部のNo2として、
 カンちゃんの下で
 いさせてもらっています」

「・・・・・ふーん・・・・・。
 ・・・じゃ、始めよう・・・・・」

「ちょ、ちょ、ちょっとぉ!
 僕の質問に答えろよぉー!
 もう一人は
 何処にいるんだよぉー!」

「・・・・・さぁ・・・・・」

「むぅー!!
 バカのくせにムカツク奴ーっ!」

生意気な寛吉の態度に、
普通の人ならば
少しならずは怒りを覚える。
だが、鬼姫は冷静。
「バカ」と言われた場ですら、
人事のような表情。
逆に、相手を怒らせた。
このささやかなる
精神攻撃がまた、
鬼姫の素晴らしいところである。

「ッチェ、
 だいたい、一文字怜の
 変わりがこんなバカかよぉー。
 つまんなーい!
 僕もう帰りたいー!」

「カンちゃん、
 もうしばらく辛抱して下さい」

「だって僕、
 一文字怜と戦いたいんだよぉー!
 こんなバカ、
 相手にならないよぉー!」

「・・・・・・・ククッ・・・・。
 ・・・・タヌキめ・・・・」

「?・・・
 おい、女・・・・・。
 今、何て言った・・・・・?」

ダダをこねる寛吉を、
必死になだめる大助。
あきらかなる、挑発。
相手の感情を逆なでにし、
勝負で冷靜な判断を欠けさせるという
古典的な方法。
だが、鬼姫は異端。
違う観点から、
逆に寛吉達の精神を揺さぶる。

「・・・・・タヌキめ・・・・・。
 私が・・・・
 気付かないとでも思ったか・・・・?」

「あぁー?
 何のことだよぉ、
 バカ女ぁ・・・・・・」

「・・・・・・・ククッ・・・・
 いずれ分かる・・・・・」

鬼姫の意図不明な発言。
その言葉に、
言われた側の二人は理解できない。
だが、
その答えはすぐに分かることとなるだろう。
不穏な空気が漂う中、
大助という男が
鬼姫のために、
目の前にあるイスをテーブルから出す。

「じゃぁ、鬼姫様。
 早速、本題に入りましょう」

「・・・・?・・・・・」

「・・・に、握ったことぐらい、
 ありますよね、鬼姫様?」

「・・・・に・・・ぎ・・・る・・・?」

「ププッ・・・
 キャキャキャキャキャキャッ!!
 大助ぇ、
 そいつなーんにも知らないよぉ!
 バーカ!!
 握るっていうのは、
 麻雀するってことだよぉ!」

やはり、麻雀。
雀荘に来ているのだから、
麻雀をするのが妥当。
だが、鬼姫は無知。
麻雀などに関しては
何の知識も持ち合わせていなかった。
困惑する大助と、
それをバカ笑いする寛吉。

「ったく、
 本当に低能だなぁー!
 よく一文字の
 代打ちなんて・・・・」

「・・・・・・一緒・・・・・」

「はぁ?」

「・・・・・どっちみち一緒だった・・・・。
 アンタらが最初に提示するギャンブル・・・・
 そんなの、断るつもりだった・・・・・。
 ・・・・・・見え見えなんだよ・・・・
 イカサマしようなんてのは・・・・・・」

「・・・・・・・言うねぇ、バカ女ぁー。
 ・・・じゃぁ何がしたいんだよ?
 カルタか?
 ジャラポンか?」

「・・・・運否天武なのが良い・・・・」

「・・・それでは、鬼姫様。
 このようなものは、どうでございましょうか?」

やはり鬼姫は警戒していた。
もし、鬼姫が
麻雀を熟知していたとしても、
麻雀はしなかったであろう。
何かしら、イカサマが
あるだろうと勘ぐって。
そこで、大助が何かを持ってくる。
その持ってきた物とは・・・。

「・・・・トランプ、か・・・・・」

「・・・あっ、そうだー!!
 簡単なのがやりたいんだろぉー!?
 だったら、
 数当てにしてやるよ!
 小学生でも分かるしねーっ!
 キャキャキャキャキャッ!」

「・・・ど、どう致しましょうか、鬼姫様」

「・・・・数当て・・・・・・。
 ククッ・・・・・
 中々おもしろい・・・・・」

鬼姫、承諾。
こうして、麻雀は廃止となり
ギャンブルの題材は
トランプの「数当て」に。
寛吉も鬼姫をバカにしながら、
その提案を承諾。
場は、一気に勝負の雰囲気に。
テーブルを囲んで、
イスに座る3人。

「・・・じゃぁ、僕が決めるよ。
 早く、簡単にやりたいってんなら・・・
 これでどう?」

「・・・・?・・・・
 1と・・・2、3・・・・・?」

「キャキャキャッ。
 低能だから、無駄に考えなくて良いよ。
 そう、
 この1・2・3のカード、
 コイツを使ってギャンブル行う」

「・・・・・・ふーん・・・・」

「互いに1〜3のトランプ1枚ずつを持って
 裏返しして置くだろぉ?
 それをお互い、
 1枚選択して数を言い当てる・・・・。
 ようわ、3分の1。
 ・・・・・運否天武じゃん?」

「・・・・・ククッ・・・・・
 なるほど・・・・」
 
何と言う運否天武。
これほどな運勝負も珍しい。
確率は3分の1。
つまり、
相手の裏側となったカードの
3枚のうちから一枚を選び、
それを1・2・3のどれか
言い当てるという
まさに小学生以下でもできる勝負。
そのギャンブルを承諾する鬼姫。

「賭け金として、お互い5ポイントを所持する。
 それが無くなったらゲームオーバー」

「・・・・・ふーん・・・・・」

「・・・つまり、
 数を言い当てる時に
 自分が何ポイント賭けるか宣言する。
 当たれば、
 その賭けたポイントを相手は失う。
 ハズせば、自滅。
 ただ失うだけ」

「・・・・・互いに当たった時は・・・?」

「両方当たれば、スルー。
 でも、これじゃ5回戦で終わることも・・・
 そうだっ!!」

「・・・・?・・・・」

「・・・スルー、スルーも有効!
 ポイントを賭けない勝負も認める!
 でも、相手が数を当ててきたら、
 自分はポイントを失う・・・・!
 いいんじゃない、これ?」

お互いにポイントを5ポイント所持。
そこから勝負を始めるのだ。
鬼姫は、
淡々と寛吉の作り出すルールを
理解していく。

「キャキャキャキャ・・・・。
 まぁ、
 僕はスルーなんてしないけどね・・・。
 スルーは低能な君のための、
 配慮。
 ・・・・・いかがかい?」

「・・・・・・・・ククッ・・・・。
 ・・・襲撃も配慮のうち・・・?」

「あぁ?」

「・・・・・気づけ・・・・・・・。
 ・・・・・もうアンタの作戦は・・・・
 狂い始めてる・・・・・。
 ・・・・そう、この一瞬から・・・・・」

「は、はぁ?」

鬼姫の三度な謎の言葉。
それに困惑せざるを得ない寛吉。
だが、その予兆は
音を立ててやってくる。
鬼姫が仕掛ける、
寛吉崩しの作戦は、
この一瞬から。
誰かが、
この雀荘に物凄い勢いで入ってくる。
激しい息遣いで、
ゆっくり、ゆっくりと、
鬼姫達の所へやってくる。
その人物とは・・・。

バタンッ!!

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・!!
 そこまでしてぇ・・・
 そこまでして勝ちてぇかよ、クソがっ!!!」

「・・・・・・・・あららっ。
 来ちゃったんだー」

「・・・・闇打ちたぁ、
 セコイことするじゃねぇか・・・・!!」

そこに現れたのは、
何と弁慶であった。
だが、異変。
弁慶の姿が前とはまったく変わっている。
服がボロボロになり、
顔は血まみれ、
アザだらけ。
どうみても、喧嘩をしてきた後。
そう、「闇打ち」。
弁慶は襲われていたのだ。

「鬼姫、大丈夫か!?
 クソッ!!
 アイツらぁ・・・・・!
 俺が気づいた連中は、
 鬼姫と離れた時にブッ倒してやったが・・・
 あれから襲われてないんだな!?」

「・・・・・・うん・・・・・・」

「よ、良かったぜぇ・・・」

弁慶はやはり、男であった。
生粋の、漢。
あの時、鬼姫と別れたのは
鬼姫のため。
「闇打ち」を察知した弁慶は、
鬼姫一人逃がすために、
わざわざ自分が生贄となって、
闇打ちをしようとした連中と
戦っていたのだ。
弁慶は裏切っていなかった。
鬼姫を裏切っていなかったのだ。
だが、そこはやはり鬼姫。
その事実すら把握済みだったよう・・・。

「くそっ!
 コイツら、本当にメチャクチャしやがる!
 鬼姫っ!!
 コイツらマジで危ねぇぞ!
 勝つためなら、
 何だってしてきやがる・・・・!!」

「・・・・・・・だから・・・・・?」

「だ、だからって・・・。
 もしかしたらよぉ・・・・!!」

「・・・・ククッ・・・
 良いじゃない、そっちの方が・・・・。
 ・・・・・相手は、”勝つまで”何だってする・・・
 ・・・ならこっちは・・・
 ・・・・・”勝った後”・・・何でもさせてもらうだけ・・・」

後書き

1話ぶりだった弁慶君。
んなおおげさな別れ方をしなくても・・・。

次回、初っ端から鬼姫暴走!

この小説について

タイトル -射手-
初版 2008年8月24日
改訂 2008年8月24日
小説ID 2629
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