りれしょ物語 - 秘密の会話

ただ呆然と帰る小雪の後ろ姿を黙って見送ることしかできなかった。
そんな俺のポケット内から携帯の着信が鳴り響いた。


「もしもし」
「あぁ俺だよ、俺」
「何だお前か」


俺とのやりとりでこんな言い方をするのはもう村崎のヤローしかいない。
アイツの声を聞いた瞬間に何故かガッカリとした感情が体の中を駆け巡った。


「なんだよとは失礼な奴だな。 今日の楽しかった出来事をお前にも分けてやろうと思ったのに……」
「あぁ…今日の事だろ? 知ってるよ」


それはそうだろう。 なんせ今日は村崎の後を追って時間を費やしたのだからな。
ぐったりとした日曜日で明日から学校が始まると考えると憂鬱とさえ思った。


「お前ら、俺らのこと尾行してただろ。 かなり目立ってたぞ。」
「 へ? 」
「だから…お前らが俺らのことを尾行してたのは気づいていたよ。 でも本村さんはマジで気づいてなかったから俺も知らない振りをしてたんだけど、途中で笑い転びそうだったよ」
「そ…そうか」


まぁ俺自身あの尾行が上手くいっていたとは思っていないのだが、今日の頑張りが全て無駄になってしまい疲れがどっと出た。


「だったら俺に話すことなんてないだろ?」
「バカだなぁ! 今回のデートと成り行きとかがあるだろ。それを一から話してやるから」
「全力で拒否する」
「却下。 もうお前の部屋に居るから早く帰ってこいよ」


そう言った後に村崎は電話を切り、携帯からはプーッ。プーッ。プーッ。なんだか切なくなるような音が耳に鳴り響いた。
しょうがないから急いで家路に向かった。


「ただいま」
「おかえり。遅かったな、待ちくたびれたよ」


帰宅するやな村崎が出迎えてくれたのだが、よけいにガッカリした。
自分の部屋に戻るとテレビが付けっ放しになっていて、村崎がつくろいで居たのが目に浮かんだ。
付けっ放しのテレビからはニュース速報で福田総理辞任表明のが流れていた。
テレビの音を最小限まで低くしてベッドにダイブした。
そのまま眠れそうだったのだが、村崎はそれを許してはくれなかった。


「今日な暇だったからダメ元でメールで誘ってみたら、私も暇だからって誘いにOKしてくれたんだよ。だから映画を見て、ショッピングして、飯食べてとまるでデートだったんだ」
「ハイハイ、良かったな」


真剣に尚且つ嬉しそうに話す村崎に対し、やる気の無い返事で相槌をうつ俺。
話の半分は右から左へと受け流している状態だった。


「……俺さ、本村さんに告白しようと思っているんだけどさ、お前はどう思う?」
「別にいいんじゃ…え?告白?誰に」
「話を聞いてなかったなお前、まぁいいや…だから本村さんに告白しようと思っているんだ」
「へ……へぇいいんじゃねえの?」


うまく答えられない。
俺にとって村崎は親友以上の存在でいつも一緒に居た。
それなのにアイツが告白したいと言った瞬間に遠く離れた存在になってしまった気がした。
でも俺だけではないだろう。 このことを聞いたらたぶん小雪もそう思うはずだ。
ただ静まり返った部屋の中でテレビの音だけがうるさく聞こえた。


「剛、お前はどうすんだよ」
「何が?」


静まり返った空間が堪らなくなったのか村崎が質問してきたのだが、俺には理解できなかった。


「だからあの二人とだよ。今日は三人で居たんだろ?」
「そうだけど?」
「どっちを選ぶんだと聞いてんだよ」
「選ぶもなにも俺もアイツらもそんな気はないよ」

 
そんなことを考えたことなかったし、あの二人だって俺なんて眼中にないだろう。
しかし村崎は飽きれた顔をしていた。


「今日はどちらもお前のことを誘ったんだろ? だったら少しの脈はあるんだからな。アタックしてみればどちらかは成功すると思うぞ」
「お前に言われたかないよ」
「ああそうかい。じゃあそろそろ俺も帰るわ! また明日学校でな」
「ああ!明日学校でな」


村崎が帰った後、疲れが一気に体の中を押し寄せてきた。
でもアイツが言ってた告白はうまくいくだろう。
でも俺はどうしたらいいのだろう?
あの二人に対して妙な意識がでてきてしまった。
明日はいつも通りの俺でいられるだろうか……。
意識が遠退いていく中で考えたのであった。

後書き

遅れてしまい申し訳ありませんでした。

なんとか書き終えましたが、正直言って何も案が浮かばない状況の中で仕上げた作品でした。
剛の“迷い”をどういったように表したらいいか本当に悩みました。
村崎は的を絞らせていただき、あとは剛がどういった方向に向かうのかは次の方からお任せいたします。
次は……ヤクモさんからですので、私もなげやりな感じではありますがバトンをお渡しいたします。

最後まで「りれしょ物語―秘密の会話」を読んでくださりありがとうございました。



この小説について

タイトル 秘密の会話
初版 2008年9月6日
改訂 2008年9月6日
小説ID 2674
閲覧数 904
合計★ 7
達央の写真
ぬし
作家名 ★達央
作家ID 183
投稿数 22
★の数 142
活動度 6872

コメント (3)

ひとり雨 2008年9月7日 16時02分38秒
 こんにちは。ああ、やっとりれしょに帰ってこれた……。
 毎日毎日体育祭やら文化祭やら(準備も含め)すごく神経をすり減らしました。ええ、ボロボロですとも。コメント遅れてしまって申し訳ないです;;
 
 むっ村崎が告白ッ!? うわー、失礼ながらそんなキャラっぽくないですね。まあ、両思いなので言う事ナシですが;; 上手く行ってくれるといいですね。
 それに、何故か三角(?)関係にまで……本寺はどうするんでしょう? 何だか最後は眠気に負けていたような……そんな風では女の子は振り向いてくれませんよ! (←警告)

 次はヤクモさんですか。この後の展開って……どうするんでしょうね。楽しみです。読者からの視点で言うと、あんまり恋が実りすぎてもおもしろくないんですよね。その後が書けなくなりますし。まあ、個人的な意見には変わりないです。あんまり気にしないで下さい。それでは。
★日直 2008年9月7日 20時05分26秒
ついに村崎が告白ですか〜。こんばんは、日直です。
村崎の気が早いとこはイメージ通りです。
もし告白が成功すれば雛利は一体どうなるのやらです。剛に八つ当たりするんじゃなかろうか。

そうですねぇ……やはり恋が実るまではそれなりに障害が欲しいですよね。
でもまあ、失敗したら全力でフォローしますからね〜。
それでは。
★梨音 2008年9月8日 12時32分28秒

日直さんと同じく、告白したあとの雛利の態度が気になります……。
う〜む。私の中の村崎は少し軽いイメージがあったので、告白に悩むところがとてもいじらしく見えて可愛らしかったです。

友達が離れていくことが悲しい。その気持ちはよく分かりますよ。
そして、応援している剛くんが健気な……。

たとえ雛利に八つ当たりされようが、村崎から離れられようが、剛くんのことはできる限りフォローし、不幸にしてあげようと思ってます(笑)
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