鬼姫 - -矛先-

ライン
まさかの勝負終了。
しかも、鬼姫の敗北によって。
だが、鬼姫は
表情変わらず、
弁慶が勝ってきたビニールの中の
商品をゴソゴソと確認する。
それを眺めていた寛吉が、
不機嫌そうに怒鳴る。

「おいっ!!!
 もう勝負は終わったんだよ!
 何が起ころうと、
 再戦もない、
 無効試合もないっ!!
 おまえの・・・・負けなんだよ・・・!」

「・・・・・ククッ・・・・・
 どうでも良い・・・・・」

「あぁ・・・?」

「・・・最初から、こんな勝負に勝つ気は無かった。
 ・・・・・所詮は、人の代理の勝負・・・
 負けても勝っても、イラつきしか残せない・・・」

「?」

相手からすれば当然である。
イカサマを使ったとは言え、
確かに、バレなかった。
バレなければ、
気付かなかった方が悪い。
それが勝負というもの。
鬼姫はどう反故しようと
無意味である。
だが、鬼姫は最初から
そんなことを考えてはいなかった。

「・・・・再戦・・・・
 というよりは、続戦・・・・・。
 ・・・・続戦を要求する・・・・・」

「お、おいっ!!!
 ふざけんなっ!!
 だいたい、オマエは再戦して何を賭けるんだよ!?
 負けてもオマエなんか・・・!」

「・・・・・命・・・・・・」

「あ、あぁああ・・・・?」

「・・・私と、後ろの男の命・・・・・。
 それを、5Pに換算して・・・
 もう一度勝負を挑む・・・・・・・。
 ・・・・互いに命を賭けた勝負・・・・・
 これが、本当の勝負・・・・・」

「な、何ぃいいいいいいい!!!??」

ここにきて、
ついに勝負に出た鬼姫。
本来予想していた通り、
弁慶の命を張った、
いや自分の命をも張った勝負へと出る。
それも自らの意思で。
驚く寛吉だが、
じょじょに、
笑みを取り戻す。

「キャ・・・キャッキャッキャ!!
 バカじゃねぇーの!
 ふざけんなっ!!
 そんな口先の約束、
 誰が信じるかっ!!
 どーせ負けた時は言い訳っ!
 必至に生き延びようとするに決まってる!」

「・・・・・ククッ・・・・・。
 そう・・・・
 口なんかで死ぬなんて言っても、
 相手は信じっこない・・・。
 ・・・・信頼させるには・・・・
 誠の覚悟が必要・・・・。
 ・・・それを成し得るために、
 このアイテムが必要だった・・・・」

「?・・・・・
 ・・・・っひ・・・・
 っひぃいいいいいいっ!!!」

誰もがそうである。
「死ぬ」と言って
死ぬ奴など、この世にはほとんどいない。
どれもこれも、冗談の類。
だが、それが真実だとすれば?
自分が本気であっても、
相手が冗談だと思っていれば無駄である。
故に、必要である。
自分の覚悟が。
死という負債を背負う、
圧倒的なる覚悟が。
鬼姫が、弁慶から買ってきてもらった
商品をゆっくりと取り出す。
その商品とは・・・・。

「・・・・ほ・・・・
 包丁だとぉお・・・・・!!??」

「・・・・ククッ・・・・。
 けっこう効くんだ・・・・・。
 刃物を見ただけで、人は素直になれる・・・・。
 ・・・感情のままに動ける・・・・。
 野生が剥き出る・・・・」

「っく!!!
 ね、ねぇ、大助ぇ!!
 どうする、
 相手、イッチャってるよぉ!」

「(この女、何が望みなんだ・・・!?
 どうしてそこまでして、
 勝負にこだわる・・・・!?
 ・・・・いや、ダマされるな。
 これはあくまで、
 脅しの類!
 確かに包丁を見て恐怖するのは
 当然の思考!
 それを逆手に取っているだけ!
 ・・・本当に死にやしない・・・・!
 包丁は、ただの脅しっ・・・・!!)」

大助、考える。
確かに「死ぬ」と言っている人物が
包丁など持ち出せば、
誰もが焦る。
しかし、それを逆手に取れれば話は別である。
本当は死ぬ気が無いのに
包丁を持って「死ぬ」と言えば、
相手を惑わすことができる。
完全な、幻想術。
だが、大助という男はそれを見抜いた。

「だ、大助ぇ!!」

「・・・大丈夫ですよ、カンちゃん。
 この女、
 本当に死にやしません。
 あくまで、脅しでございます。
 故に、再戦を受ける必要など・・・」

「・・・・・・ククッ・・・・・
 勘違いするな・・・・・。
 ・・・・見せびらかすためにコレを買ってきたワケじゃない」

「?」

「・・・・・こうするのよ・・・・!」

サクッ

鈍い音が、
雀荘の中に鈍く響く。
誰もが、
目を疑い、そして、
これが現実ではないと信じたくなった。
時が止まる。
体が凍ったように、動かない。
鬼姫の行動に、
皆、凍りつく。
最初に動いたのは、弁慶。
顔を真っ青にして、
鬼姫の手をとる。

「な・・・・
 何やってんだぁあ、鬼姫っ!!!!!
 お、おまえぇ・・・・
 おまえぇえ・・・・・・!!
 自分の腹を包丁で刺すなんて・・・
 何考えてんだっ!!!!」

「っひ、ひぃいいいいーーーー!!
 だ、大助ぇえ!!
 ち、血だよぉおおお!!
 アイツ、
 アイツ・・・・
 自分の腹を刺しやがったよぉおーーー!!」

語る言葉すら見つからない、
鬼姫の行動。
何と、
持った包丁で自らの腹を
刺したではないか。
服に広がっていく赤い染み。
奇声を上げる寛吉。
必死にタオルで出血を抑えようとする弁慶。
そんな中、
当の本人は・・・。

「・・・・ク、ククッ・・・・・
 これが、誠の覚悟・・・・・・・。
 ・・・・・相手を信頼させる・・・・
 てっとり早い方法・・・・」

「・・・・・く・・・・狂ってる・・・・。
 ・・・・だ、大助ぇ・・・・
 こいつ、イカれてるよぉ・・・・・。
 キチガイだよぉ・・・・・・。
 異常者だよぉおおーーーーー!!」

「(・・・・驚いた・・・・。
 化け物、怪物だ・・・・・・・。
 本当に、死を賭けてきている。
 誠意だ、誠意が伝わる・・・・・!
 コイツは間違いなく、死ぬ!
 生死の勝負をすれば、
 なんの変哲もなく、即死ぬっ・・・・!!
 ・・・・・狂人めっ・・・・・!)」

鬼姫の、
命顧みずの誠意に、
寛吉と大助は圧倒されきっていた。
鬼姫の手は真っ赤。
弁慶が鬼姫から包丁を抜き取り、
必死に
出血を止めようとする。
だが、止められない。
流れ出る、溢れんばかりの血。

「・・・・・どう・・・・?
 受けて、頂ける・・・・・・・。
 ・・・・お互い・・・・
 命を賭けた・・・・勝負・・・・」

「・・・・ふ、ふざけんなぁ・・・・
 ふざけなんなっ!!!
 僕はそんな勝負に命を・・・・
 ・・・・・・
 ・・・・
 ・・・・・・・キャッキャッキャ。
 良いよ、やってあげる」

「!!??
 お、おい、オマエも正気かよ!?
 鬼姫も目を覚ませ!
 出血が酷くて、
 もう勝負なんてできる体じゃ・・・!」

「・・・・やってやるよぉ、低能ぉ!!
 互いに5P!!
 命を賭けた勝負ってのをさぁああーー!!」

「・・・・・ククッ・・・・・」

何ともイカレた者達であろうか。
まさか、
鬼姫の狂いっぷりが
寛吉にも感染してしまったのであろうか。
ただ一人、動揺を隠せない弁慶。
そう、一人だけ。
大助は、まったく動揺せず。
寛吉の勝負の承諾に、
一ミリも、動揺せず。

「(・・・・さすがはカンちゃん。
 勇気ある立派な男の子だ。
 ・・・奴は知らない・・・・・。
 確かに物量作戦は見抜かれた・・・・。
 だが、気づいていない・・・・!
 もう一つの武器に・・・・!!
 カンちゃんの、最後の武器に・・・・!!)」

「キャッキャッキャ・・・・。
 じゃぁ、僕は、
 僕の命と大助の命を
 賭ければ良いわけかぁ・・・・。
 おもしろいねぇ、低能ぉ」

「・・・・・・ククッ・・・・・
 承諾したね・・・・・」

「あぁ?」

「・・・・・もう逃がさない・・・・・。
 アンタがどんな権力を行使しようとも・・・・
 ・・・・逃がさない・・・・・・。
 ・・・・・・確実に・・・・
 ・・・・壊す・・・・・・・・・」

後書き

ここでふと思う。
もし鬼姫が包丁で腹刺しても、
寛吉が勝負を受けなかったら・・・?



ハハハッ(笑

次回、解明っ!

この小説について

タイトル -矛先-
初版 2008年9月13日
改訂 2008年9月13日
小説ID 2692
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