鬼姫 - -掌中-

ライン

「・・・・・鬼姫、大丈夫か?」

気がつけば、ここは白銀の世界。
一瞬、
鬼姫はここが死後の世界だと思った。
だが、目の前にいるのは弁慶。
そして、自分はベットの上にいる。
どうにも、
彼女はまだ死んではいないらしい。
辺りを見回すと、
そこは何も無い白い部屋だった。
そう、ここは・・・。

「・・・もう3日も寝てたんだぜ?
 ったく、腹刺すなんてよくやるよなぁ」

「・・・・・・・・・」

ここは、病院だった。
あれから意識を失った鬼姫は、
弁慶におぶってもらい、
病院に担ぎ込まれたのだ。
そして、
あの勝負から3日後。
今現在に至るのである。
まだ腹部が痛むものの、
鬼姫は、
ゆっくりと上半身を起こす。

「お、おいっ、鬼姫。
 あんまり無茶すんなよ・・・。
 医者も言ってたぜ?
 刺した所があとちょっとズレてたら、
 命に関わってたってよ」

「・・・・・・・ふーん・・・」

「ふ、ふーんってなぁ。
 ・・・・・・なぁ、鬼姫」

「・・・・?・・・・」

「おしえてくれ。
 なぜ、あんなことが起きたのか!
 意識回復した直後悪ぃが、
 どうしても気になるんだ!」

どうやら、鬼姫の腹部への刺し傷は
あと一歩間違えれば死ぬ可能性も
あったらしい。
だが、やはり鬼姫は人事のように
鼻で笑うと、また眠ろうとする。
すると、弁慶がそれを防ぐ。
聞きたかった。
あの晩、なぜ自分達が勝てたのか。
それが気がかりでしょうがなかった。
鬼姫は、めんどくさそうに
弁慶を見る。

「・・・・・頼んだこと・・・・
 まだ、覚えてる・・・・?」

「え、えぇ?
 あぁ、初めに俺に頼んだことだろ?
 一つ目が、
 相手がイカサマをしてきた時、
 再びイカサマをしたら敗北だって、イチャモンつける」

「・・・・うん・・・・
 二つ目は・・・・・?」

「・・・ほ、包丁買って来いだろ?
 包丁の意味は分ってるぜ。
 問題は1つ目だ」

「・・・・・ククッ・・・・
 ・・・もっと前のことから尋ねて欲しい・・・・・」

「え、えぇ・・・?
 じゃぁ、何で4回戦目って分ったんだ!?
 それをおしえてくれっ!!」

あの時、鬼姫が弁慶に頼んだことは
「包丁を買って来い」と、
「相手がイカサマをしたら難癖をつけろ」との
ことだった。
果たして、これが勝利の要因に
なっているのだろうか。
鬼姫はゆっくりと、
話し始める。

「・・・・包丁で刺すことは決めてた・・・
 だから、体力的問題もあったけど・・・・・・。
 ・・・・・一番は、もう一つのイカサマ・・・」

「あ、あぁ?
 もう一つのイカサマ・・・・?
 ま、まさか!!
 アイツら、まだイカサマしてたのかぁ!?」

「・・・・・うん・・・・・。
 アイツら、私達が麻雀できないってこと
 知らされてるハズ・・・・。
 だけど、麻雀だと言ってきた。
 その時点でおかしいと思った。
 ・・・故に、薦めてきたトランプに罠がある。
 ・・・・それも、一つじゃない。
 ・・・・・2重の罠が・・・・」

終わってしまえば、
全てが結果論にすぎないが、
ここは鬼姫の考えていたことを
じっと聞くしかない。
あの試合、
一体何が起こっていたのか。
鬼姫は、何を考えていたのか。

「・・・・・見破る時間も、
 体力的問題も、ベストが4回戦だった・・・。
 だから、けっこう山かけて宣言した・・・」

「お、おいおいっ!!
 じゃぁ、その二つ目のイカサマが
 見破れなかったら、
 4回戦以降も戦ってたのか!?」

「・・・・・まぁね・・・・・。
 ・・・その二つ目のイカサマ・・・・。
 アイツ、目をいつもキョロキョロさせてた・・・」

「あ、あぁ?
 キョロキョロ?」

「・・・・よく考えてみれば、
 物量作戦だって、
 カードのわずかな動きを見なきゃいけない・・・。
 並の視力じゃ、それは不可能・・・・」

「ま、まさかっ・・・・!!」

「・・・・アイツら、コンタクトしていた・・・。
 だけど、普通のコンタクトじゃない・・・。
 魚眼(フィッシュアイ)レンズ。
 ・・・虫めがね並のコンタクトで、カードを見極めてた・・・」

「コ、コンタクトを、
 虫めがね並の度数にしてたぁ〜〜!?」

あまりにも破天荒。
破天荒すぎるイカサマ。
何と、
寛吉という男は
コンタクトレンズの度数を
異常なほど上げることによって、
カードの動きを見極めていたのだ。
それに加え・・・。

「・・・たぶん、カードに普通の視力じゃ
 見えない印があった・・・・・。
 ・・・・それを、
 強度の度数で補い・・・・
 ・・・・1〜3まで区別していた・・・・」

「・・・ま、まじかよ・・・・。
 それを、見抜いていたのかよ!?」

「・・・・・まぁね・・・・」

そう、カードには印があったのだ。
だが、普通の視力、
2、0などでは気づくことは不可能な領域。
それこそ、アフリカだかの
マサイ族しか分からないほどの
視力の領域。
まず、鬼姫達は見抜けない。
だが、寛吉の不審な行動を
辿って行けば、
じょじょに答えへと辿り着く。

「そ、そうか。
 だからあの時、あのチビはビビったのか。
 自分のイカサマの種を言われて・・・・・。
 へ?
 何でビビるんだ?
 イカサマはバレたらマズいけど、
 そっからは、普通の勝負に・・・・・」

「・・・・バカ・・・・・?
 頼みごとの一つ目・・・・・・」

「・・・・?・・・・・
 あ、あぁああああーーーーーーっ!!!
 そうかっ!!
 俺、イカサマをしたら敗北って言ったんだ!!
 だから、もう一人の男も焦ったのか!」

「・・・・ククッ・・・・・
 そう・・・・・・。
 ・・・故に、5ポイント賭けざるを得なくなった・・・。
 本当は、戦わなくても勝ってたけど・・・」

「だ、だから、
 あの野郎、イカサマを暴かれる前に、
 何とかして勝負をつけようと
 5P勝負をしてきたのか・・・・」

全てが、明かとなった。
あの大助という男が焦ったのも、
弁慶がカマをかけた
「イカサマをしたら敗北」という
取り決めを覚えていたからこそ。
見抜かれたと気づいた大助は
焦った。
焦って、勝負を終わらせようとした。
これが、あの日の出来事である。
全ては、鬼姫の手の中だった。
最初から、最後まで。

「(す、凄すぎて、何も言えねぇ・・・。
 じゃぁ、
 トランプの勝負が始まった時から、
 奴らは敗北してたんだ!!
 ・・・・圧倒的過ぎる・・・。
 逆に、アイツらがかわいそに思えてくるぜ・・・・)」

「・・・・ククッ・・・・・
 本当に死んだかな・・・・・アイツら・・・・」

「うっ!!
 ・・・・・失踪、したらしいぜ・・・・。
 結局、
 そのせいで領地問題も東部側有利に。
 オマエの・・・勝ちだよ。
 何から何まで」

「・・・・・・・ふーん・・・・・」

「(化け物だ・・・・。
 踊らされていた。
 奴らも、俺自身も・・・・。
 すべては鬼姫の手のひらの出来事・・・・。
 全ての過程を、
 最初から予期していたんだ・・・・。
 勝てるわけねぇ・・・・
 ・・・勝てるわけんぇよ、こんな化け物に・・・)」

圧倒的なる力。
鬼姫の全てが、
寛吉、大助よりも上なのだ。
弁慶はその場に黙り込んでしまう。
これはもう、
奇跡ではない。
鬼姫の実力が、常軌を逸しているのだ。
包丁を刺すところから、
何から何まで。
すると、
弁慶があることに気付く。

「あっ!!
 そうだ、忘れてたぜ!
 最後の勝負、4回戦っ!
 ・・・なんで、アイツは見抜けなかったんだ・・・?」

「・・・・・?・・・・」

「あの寛吉って野郎、
 ”どれがどれだか分からない”
 って言ってたよな?
 ・・・つまり、目印が分からなかった。
 っつうことだよな?」

「・・・・・ククッ・・・・・・
 簡単・・・・。
 ・・・・すり替えただけ・・・・」

「あ、あぁあ?
 すり替えたぁああ!?」

「・・・・あの大助とかいう男も・・・・
 そして寛吉という男も・・・・
 動揺して、思考停止状態だった・・・・。
 ・・・故に、楽勝・・・・・。
 自分のカードと、
 相手のカードをすり替えることなんて、楽勝・・・・」

「・・・・マ、マジかよぉ・・・。
 結局、オマエもイカサマしてたんかい・・・・・・」

「・・・・・ククッ・・・・」

ここで弁慶は人安心。
やはり、
鬼姫も人間。
強運、奇跡だけでこの勝負を
乗り切ったわけではないのだ。
人としてできることをした。
それだけのことだった。
全てが解決し、
弁慶は爽快としていた。
頭の中のモヤモヤが
消しとんだ気分。
すると・・・・・・。

「・・・・・タマゴサンド・・・・・」

「あぁ?」

「・・・・買ってきて、タマゴサンド・・・・」

「あ、あぁああ!!?
 何考えてんだ!
 オマエは病人なんだぞ!?
 勝手にタマゴサンドなんて
 食べて良いと思ってんのかぁ!?」

「・・・・・・?・・・・・
 ダメなの・・・・・?」

「良いわけねぇーだろっ!!!
 ダメったら、ダメっ!!」

「・・・・・・・嫌だ・・・・・」

「嫌だじゃねぇーっ!!
 オマエは子供かっ!
 ・・・・・・・ハ、ハハッ・・・・」

「・・・?・・・・」

「・・・・ハハハハッ・・・・。
 そうか、子供じゃん。
 ・・・俺も、鬼姫と同じ高校生、ガキだ。
 俺、どこかでオマエを遠い存在に感じてた。
 けど、今感じたよ・・・
 オマエも、ガキなんだよな・・・。
 ・・・・高校生なんだよな・・・・・」

「・・・・・・・・・・。
 ・・・・じゃ、買ってきて・・・・」

「だ、だからなぁ・・・」

鬼姫も、一人の高校生。
勝負が終われば、
そこらの高校生と変わりないのだ。
それをあらためて実感し、
急にうれしくなる弁慶。
だが、そんな二人の前に、
悪魔の手、やってくる。
病室のドアが、
ゆっくりと開き始める。

「・・・・鬼姫様、ですね?」

「・・・・?・・・・・・
 ・・・・・うん・・・・・・」

「(?、誰だ、こいつ・・・)」

「・・・・・一文字怜様からの手紙を
 預かって参りました」

「ッ!!!」

「(な、何だって!!?
 い・・・・一文字怜からの手紙・・・!?
 まさか・・・・まさか・・・!
 ついに、鬼姫と一文字怜が・・・・!)」

ついに来る、
宿命の一戦。
一文字怜からの手紙。
それに、
目を輝かせる鬼姫。
そう、鬼姫は約束した。
寛吉達と勝負をつけた後、
一文字怜との勝負権を。
・・・来る、決選の刻。
鬼姫対一文字怜。
果たして、
神に愛されし女の手紙の内容とは・・・。

後書き

「ん?
 でもすり替えても、
 結局数値は二つ残るんじゃねえのか?」

「・・・・・・・・・。
 ・・・・奇跡、かな・・・・」

「!?」


次回、怜との再会っ!

この小説について

タイトル -掌中-
初版 2008年10月3日
改訂 2008年10月3日
小説ID 2737
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