鬼姫 - -引導-

ライン

時刻午後11時00分。
現在位置、東部校。
今日、世間にも気づかれず、
話題の沸騰にもならぬところで、
人外の勝負、始まる。
今、一匹の化け物が対峙者のもとへ向かう。
ただ、喰い殺すために。
殺す、末梢するために。
己が強さを、決定づけるために。
対するは、神。
絶対なる力、想像せし得ぬ力、
それを肯定できるのは、
神のみ。

そして、開かれる。
運命の扉が。
ボロい教室のドアが、
まさに地獄の門へと変わる一瞬。
ドアをゆっくりと開けた先、
待っていたのは・・・。

「・・・ようこそ、魔王の城へ。
 鬼姫ちゃん」

待ち受けていたのは、
一文字怜。
教室の中には数人の用心棒らしき
ヤクザ連中。
その中心を陣取って、
机のイスに悠々と座っている怜。
まさに、超越者。
圧倒的な自信。
ゆっくりと、
教室の中へと入っていく
鬼姫と弁慶。
そして、
鬼姫は一文字怜の目の前まで足を進める。

「鬼姫ちゃん、
 やっぱり来ちゃったのね。
 仕方無いのよね、
 これも運命と・・・・」

「・・・・・運命・・・・・・?
 ・・・本能・・・・
 これは、本能・・・・・。
 ・・・・私の意思が・・・・・
 アンタを潰したいだけ・・・・・・。
 ・・・運命なんて、私の本能の下僕に過ぎない・・・」

「・・・あらあら」

お互い、
挑発しあう両者。
鬼姫も、
決して引けを取らない。
例え神と言えど、
自分を見下さない。
自分の評価を下げたりはしない。
逆に、上げる。
神だからと言って、
自分が負けるハズが無いと。
その様子を、
傍から見守る弁慶。

「(つ、ついに来ちまった・・・。
 ある一種、
 頂上決戦っ・・・!
 死を恐れぬ、
 予測不能な偉才児、鬼姫っ・・・!
 だが相手は、
 言わずもがな、
 神掛かり的、強運、
 いや、すでに神の領域・・・!
 一文字怜・・・・!!)」

弁慶は一人、
この勝負の凄みを思い知っていた。
こんな変哲もないところで、
この脅威的な二人が
戦うというのもおかしいこと。
本来ならば、
聴衆は100万人、
そればかりか、
料金すら取れるかもしれぬほどの
好カード。
弁慶はかたずをのんで、
二人を見つめる。

「さて、
 鬼姫ちゃんは前置きが嫌いなみたいだし、
 ちゃっちゃと
 始めましょうか」

「・・・・・・うん・・・・」

「・・・・鬼姫ちゃん、
 何かやりたいギャンブルはある?」

「・・・・・・・」

エピローグ。
まだこの段階は、序章に過ぎない。
今は、
ギャンブルの題材を決めることが
最優先。
熱き勝負はこの後。
だが、
この一文字怜の何気ない言葉に、
後ろで見ていた弁慶は
あることに気付いていた。

「(一文字怜は、
 鬼姫にギャンブルの選択権を譲ってきた・・・。
 やっぱり、
 イカサマは無ぇ・・・!
 今回ばかりは、
 イカサマ無しっ・・・!
 それほど、あるんだ。
 一文字怜には、絶大な自信があるんだ!!
 自分の神力に・・・・!!)」

一文字怜は、
今まで鬼姫が戦ってきた相手と
典型的に違う。
まず、
自分のギャンブルを相手に
押し付けない。
この時点で、イカサマ不能。
鬼姫が別のギャンブルを提示したら
それまでだからだ。
それを踏まえて、
やはり一文字怜の脅威に驚く弁慶。
果たして、
鬼姫の答えは・・・。

「・・・・・無い・・・・・。
 そっちが選べ・・・・」

「!!!???
 ちょ、ちょっと待てよ鬼姫っ!!」

「・・・?・・・」

鬼姫の返答は、
まさに向こうの思うがツボ。
確かに、
さきほど説明したとおり、
一文字怜はイカサマなどしないだろう。
だがやはり、
相手が提示するギャンブルならば、
多少なりとも相手方有利。
ただでさえ、
相手は神に愛されし女との異名を持つ者、
鬼姫の暴挙に、
弁慶は焦る。
鬼姫を教室の隅まで連れてきて、
ひそひそ声で話す。

「な、何考えてんだよっ!!
 こっちにギャンブルの選択権あんだから、
 わざわざ譲るこたぁ
 無ぇだろ!?」

「・・・・・何で・・・・?」

「何でって・・・。
 あの一文字怜がイカサマするとは
 思えねぇが、
 だがやはり、
 相手に選ばせるのは、
 どう考えても不利だぜ・・・!?
 自分で流れを断ち切ってるっ!」

「・・・・・・ククッ・・・・・。
 ・・・下らない・・・・」

「あ、あぁ?」

「・・・・強い奴が勝つ・・・・・
 結局、これが全て・・・・。
 ・・・・・勝因の全て・・・・。
 ・・・だから、
 私が奴より強ければ、
 ・・・・・何にしろ、勝てる・・・・」

「ッ!!!」

弁慶は鬼姫の言葉を聞いたまま、
固まってしまった。
あまりにも正論。
だが、
どこが破天荒な理論。
相手は神、
今までにない超人だと言うのに、
これほどまでの余裕っぷり。
まさに、鬼姫。
勝負に全てを預けている。
頭で考えない、
ただ、
思うがままに勝負し、勝つだけ、
それが鬼姫。
鬼姫は再び怜の元へ戻り、話を続ける。

「・・・弁慶君との
 相談は終わった、鬼姫ちゃん?」

「・・・・・うん・・・・・・。
 ・・・そっちが考えて・・・・・
 今回のギャンブル・・・」

「あらあら。
 めんどくさがり屋さんなのね、鬼姫ちゃんは」

「・・・・・・・」

「うーん、
 こまったわねぇ、
 私もてっきり、
 鬼姫ちゃんが用意してくれるとばかり
 思ってたから・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・ウフフッ。
 まぁ、仕方無いわね。
 ・・・・・・あっ、
 あれ、おもしろうじゃない?」

「・・・?・・・」

ささいなる挑発。
一文字怜もただ寛容なワケではない。
微妙に、
少しずず揺さぶりかけていく。
鬼姫の精神に。
そして、結局はギャンブルの選択権は怜に。
少し考えると、
何かを見つけたのか、
ひらめいた様に、
本棚を指さす。

「ねぇ、鬼姫ちゃん。
 あれ・・・何だかわかる?」

「・・・・・本・・・・」

「・・・うん。
 それ、題材にしてみない?」

「・・・・?・・・・」

「・・・・本と言えば、ページ。
 そう、
 ページめくり。
 正確に言えば、
 ページめくり当て・・・かな?」

「・・・・・・ククッ・・・・
 おもしろい・・・・・」

題材、決定。
それは、あまりにも潔く。
逆に、
気持ち悪いほど心地よく決まってしまった。
そのギャンブルはページ当て。
本のページを
ズバリ、言い当てるというギャンブル。
幼稚園児ですら
できてしまうギャンブル。
それを鬼姫、快諾。
怜は、クスッと微笑み、
話を続ける。

「じゃぁ、先に10勝した方が勝ち。
 ・・・とは言っても、
 ページをピッタシ当てるっていうのも、
 普通の人じゃ難しいわよねぇ・・・」

「・・・・・・・」

「そうだっ。
 じゃぁ、お互い言い当てたページが
 ピッタシじゃない時は、
 その言い当てたページに
 より近い方が勝ち。
 これで、どうかしら?」

「・・・・・・ククッ・・・・・
 良いよ・・・・。
 ・・・そのギャンブル、乗った・・・・」

「ウフフッ、
 さすがは鬼姫ちゃん」

基本的、
ルールも単純。
つまり、自分が120Pを指定、
相手が230Pを指定した際、
自分が123Pを引いて、
相手が210Pを引いた場合は、
当然、
数が近い自分の勝ちとなる。
だがしかし、
ピタリと言い当てれば、
すべてが丸く収まる話だが・・・。

「(普通の人、か・・・。
 相変わらず、
 さりげなく超人的なこと言ってくれるぜ。
 どうやら、
 今回のギャンブルは
 美穂のストップウォッチと
 けっこう酷似してんな)」

「・・・うーん、
 もっとルールをおもしろくする方法は
 ないかしら。
 これじゃぁ、
 何ていうか、ひねりが無いわよねぇ・・・」

「・・・・・逆・・・・・」

「?、
 鬼姫ちゃん、何か言いたいの?」

「・・・・自分が引き当てるページ指定、
 それを逆にする・・・・・。
 ・・・つまり、相手が、自分の引くページを指定する・・・」

「ッ!!
 おもしろそうじゃない、鬼姫ちゃん!
 いいわ、
 それ、採用しちゃう!」

鬼姫の言葉により、
新たなルールが加わることに。
つまり、
自分が何ページを引き当てるかは、
相手が決める。
故に、自分も相手の引くページを指定できる。
イカサマ防止。
その意味も踏まえての、
鬼姫の発言なのだろうか。
それとも・・・・。

「それと・・・・。
 私からも一つ、良いかしら?」

「・・・・・?・・・・」

「・・・指定されたページ、
 つまりピッタシを引き当てた時なんだけど・・・。
 やっぱり、
 それ相応の報酬が欲しいわよねぇ」

「・・・・・ククッ・・・・
 なるほどね・・・・」

「・・・・私がピッタシの時は、2勝分。
 鬼姫ちゃんがピッタシの時は3勝分。
 これでどうかしら?」

「・・・・!・・・・」

一文字怜の発言に、
鬼姫は虚を突かれる。
それはまた、
後ろで見守る弁慶も同じこと。
やはりこの女、
ナメている。
例え相手が鬼姫であろうと、
たかが人間。
自分の神力に及ばないと、
完全なる見下し姿勢。

「(ナ、ナメてやがるっ・・・・!!
 鬼姫のことを、
 完全にナメてる・・・!
 それじゃぁ、
 プロのサッカー選手が、
 小学生クラブと試合をする時、
 10秒ボールをキープできたら小学生が勝利っ・・・!
 それほど、ナメてる!
 鬼姫をナメ切ってんだ・・・!!)」

「・・・・・ククッ・・・・
 なるほど・・・・・。
 ・・・・そういう風に出るんだ・・・」

「・・・・どうする、鬼姫ちゃん?
 受ける、受けない?」

「っぐ!!
 (受けるな、鬼姫っ・・・・!!
 こいつぁ、
 有利、不利の問題じゃねぇ・・・!!
 プライド、
 誇りの問題だぜっ・・・!!
 第一、
 勝負命の鬼姫が、
 こんな申し出を受けるハズが・・・・)」

「・・・・・良いよ・・・・・
 ・・・・・・受ける・・・・・・」

「!!?????」

鬼姫、
あり得ぬ暴言。
それはまさに、
今までの鬼姫を全て否定するかのような
言動。
弁慶は一人、
放心状態。
そして、
意識を保つことができると、
慌てた顔をして、
鬼姫のもとへ詰め寄る。

「な、何考えてんだよ鬼姫っ!!!
 それで良いのか!?
 ナメられてんだぞ!?
 さっき言っただろ、
 強い奴が勝つって・・・・。
 だったら、断われよ!
 勝てるんなら、断わってくれよ!!
 ・・・・自分の誇りを、貫けよっ・・・!!!」

「・・・・・ククッ・・・・・
 ・・・だから良いんじゃない・・・・・・」

「・・・?・・・」

鬼姫のプライド否定宣言に
戸惑いを隠しきれない弁慶。
だが、鬼姫、相変わらず表情変えず、ただうすら笑うのみ。
自分がナメられているこの場ですら、
唯一大事にしているものを罵倒されたその場ですら、
不気味な笑みを浮かべるだけ。
しかし、それはあまりにも恐ろしい静寂。
静かに燃える邪気。
後に来る大地震への初期微動。
鬼姫はゆっくりと怜の所へと歩みより、
机に手を置いて、顔を近づける。

「気に入らなかったかしら、鬼姫ちゃん?」

「・・・・・・・・ククッ・・・・。
 ・・・安心しなよ・・・・。
 誇りなんて、機嫌を取りもどせば解決すること・・・。
 ・・・・・だから、協力してもらう・・・・・」

「・・・?・・・」

「・・・・・勝敗条件・・・・
 ・・・・・・こっちに譲ってもらいたい・・・・」

「・・・何かしら?」

「・・・・・・勝敗条件・・・・・
 ・・・・取り合うのは・・・
 ・・・命・・・・」

「・・・・あらあら」

「・・・・・アンタの命で償わせる・・・・
 私の機嫌を・・・・・」
 

後書き

「・・・・・アンタの命で償わせる・・・・
 私の機嫌を・・・・・」
 
「(・・・やべぇ。
 いつか、俺にもそんなこと言われるんじゃ
 ねぇだろうな・・・・)」


うん、弁慶。

君も勘が鋭くなってきたね。(笑


次回、衝撃の鬼姫の発言っ・・・!!!

この小説について

タイトル -引導-
初版 2008年10月24日
改訂 2008年10月24日
小説ID 2774
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