鬼姫 - -異才-

ライン

始まる、運命の一戦。
鬼姫と一文字怜の、
決戦、
その第一戦。
お互い、指定すべきは半端な数値。
常考、
まずは王道な流れ。
だが、重要すべきはまず流れ。
この第1戦が、ある意味、
この後の試合の全てを支配すべきかもしれぬ、
要となる1戦。
ゆっくりと、二人は互いの電話帳の
ページを、親指と人差し指を使って、
めくる。

「(単純計算に言えば、
 何百分の一の確率っ・・・・!
 恐ろしいほどの、
 運否天武っ・・・・!!
 どっちだ、
 先制権は、
 どっちが勝ち取る・・・!?)」

一人、
冷汗をかく弁慶。
鬼姫の「強襲」にわずかな
期待を託し、
結果を待つ。
そして、
ついに来る。
お互いが、自らが選んだページを
めくり上げる。
あとは結果を開示するのみ。
果たして・・・。

「・・・・ウフフッ。
 私のめくったページは、
 650P、
 まぁまぁね」

「っぐ!!
 (一文字怜は650P・・・!?
 確か、
 661Pを指定されてたから、
 11P差っ・・・!!
 単純に見えて、
 これだけでも、凄い・・・!
 十分強者だ・・・・!
 だが、鬼姫。
 こっちは鬼姫っ・・・!!
 オマエの強襲、見せてくれっ・・・!!!)」

「・・・・・ククッ・・・・」

一文字怜、まずは
無難に11P差。
何百ページとある中で、
ズバッと近くのページをめくってくるあたり、
やはり一文字怜。
神に愛されし女と言っても、
まるで劣って無い。
それに対し、
鬼姫のめくったページとは・・・。
視線が、鬼姫の
めくったページに集める。
そして・・・。

「・・・・私は・・・・・
 525P・・・・・」

「ッ!!!???
 (な、何ぃいいいいいーーーーー!!??
 ご、ご、525・・・・・!?)」

「あらあら。
 ウフフッ・・・。
 じゃぁ、まずは私の1勝ってことかしら」

究極な、場違い。
あれほど、
あれほど一文字怜に大言を言っておいて、
何と、
見当違いも良いところの、
525P。
指定された345Pを遙かに
凌ぐ、敗北数値。
その結果を聞いて、
弁慶はみるみるうちに
顔色が青くなっていく。

「お、おい・・・・・
 おい鬼姫っ!!!
 何してんだよっ!
 確かに、
 これが普通っ・・・・!
 いや、
 普通なら決して問題じゃない数値だ!
 俺達みたいな常人が、
 指定された数値を当てるなんて、
 まさに今の
 鬼姫のような数値を出すに決まってる!」

「・・・・・・・」

「・・・だけど、違うだろ!?
 オマエは違うハズだろ!?
 相手は神だっ!!
 こんな時に、
 冗談やってる時じゃねぇ!
 もしかしたら、
 このまま1勝だって・・・・!」

「・・・・・しっ・・・・・・・。
 ・・・・・・動くな・・・・・・」

「へ?」

「・・・・まだ序盤・・・・・。
 焦ることはない・・・・・」

「(お、おいおいっ・・・・!!
 何が強襲だよっ!
 逆に、
 こっちが強襲掛けられるてるじゃねぇか!
 ヤバイ・・・
 負ける、このままじゃ!!
 このままじゃ、
 鬼姫が負けちまうっ・・・!!)」

弁慶の想定としては、
負けるにしても、
もっと近い数値で負けて欲しかった。
それが、
この鬼姫と一文字怜という
怪物同士につりあう結果。
だが、どうだろう。
結果だけを見れば、
どうみても、
鬼姫は場違い。
一文字怜の超人技に、
成す術なく敗北していく
凡人の、典型的例ではないか。
だが、そんなことも気にせず、
鬼姫は勝負を続けようとする。

「・・・・さて、第2戦・・・・・・。
 始めよう・・・・・・。
 ・・・変な間は入れたくない・・・」

「・・・ウフフッ。
 分かったわ。
 ・・・第2戦、私の指定するページは・・・
 ・・・・・420・・・」

「・・・・私は・・・・・
 ・・・・・712・・・・・」

「・・・それじゃぁ・・・
 第2戦。
 ・・・・始めっ・・・・・!」

間髪入れず、
ただ迅速に行われるギャンブル。
この流れではダメ。
流れ的に、
圧倒的に一文字怜の有利。
このままでは、
鬼姫は負けてしまう。
傍から見る弁慶は、
くやしそうな顔をして、
見守るしかなかった。

「(確かに・・・・
 確かにこれは、鬼姫のパターンッ!!
 初戦は見。
 それが、鬼姫の必勝パターンだ!
 ・・・だが、
 一文字怜に限り、それはあるのか・・・?
 雑魚には通用したが、
 神には通用するのか・・・?
 ・・・鬼姫・・・
 オマエは、勝てるのか・・・・?)」

弁慶もバカでない。
この一連の流れは、
いつもの鬼姫の必勝パターンであることを
悟っていた。
だが、恐怖した。
それはあくまで、
相手が怪物でもなく、悪魔でもなく、
人間だったからこそ。
だが、
今回ばかりは別。
相手は、神。
まごうことなき、神の領域の者。
策など、
通用するのであろうか・・・・。
そして、両者、
ページをめくりを終了。
結果発表を残すのみとなる。

「・・・ウフフッ。
 それじゃぁ、さくさくといきましょうか。
 私のめくったページは、
 690・・・
 悪くはない数値ね」

「・・・・ククッ・・・・」

「っぐ!!
 (本来ならば、
 もう鬼姫は手を打っている所だが・・・。
 打てるのか?
 手など打てないんじゃないのか?
 一文字怜相手に、
 一体どうしろという・・・?
 何が必勝?
 どうしたら勝てる要素がある・・・!?)」

「・・・・私の数値・・・・・」

「(無理だっ・・・!!
 だいたい、
 ほんの3、4分前に決まった
 ギャンブルで、
 もう作戦を練ってくるなんて、
 そんなの無理だっ・・・・!!
 時間が、
 時間が足りないっ・・・・!
 鬼姫が・・・
 ・・・鬼姫が、負けるっ・・・・・!!)」

弁慶の心の中は、
不安でいっぱい。
確かに、たかだか数分前に決められたギャンブル。
そのギャンブルを
数分で丸裸に解明することなど、
到底不可能。
不可能である。
そう、常人ならば。
鬼姫は違う。
鬼姫は、圧倒的なる異才。
すでに、手は打っている・・・。

「・・・・私の数値・・・・・
 411・・・・・」

「ッ!!??
 ・・・え、えぇ・・・・?
 じゃ、じゃぁ、
 鬼姫は差は9Pだから・・・・
 勝った・・・・
 勝ったぞっ!!
 鬼姫が1勝取ったぁあっ!!」

「・・・・あらあら」

まさかの、鬼姫勝利。
やはりやってくれた、鬼姫。
決して、
期待を裏切るようなことはしない。
彼女が無謀に
勝負を受け続けることなどはまず、ない。
そこには
必ず根拠がある。
なにはともあれ、
鬼姫は一文字怜から1勝をもぎとる。
神から、
1勝を勝ち取ったのだ。

「凄ぇ、凄ぇよ鬼姫っ!!
 やっぱりオマエは
 信じられねぇことしてくれるぜ!!
 まったく、
 心配させやがって・・・・!!」

「・・・・ククッ・・・・・
 でも・・・・
 ・・・・もう使えないみたいだけどね・・・」

「あ、あぁ?
 ・・・使えない?」

「・・・・ウフフッ。
 さすがは鬼姫ちゃん。
 ・・・短期間で、もう対策を練ってくるとはね。
 本当、感心しちゃうわ」

「さ、策・・・・?
 鬼姫、オマエ・・・・」

「・・・・ククッ・・・・・」

「・・・・・その常人では考えられぬ発想が、
 やっぱり愛おしいわ、鬼姫ちゃん。
 だけどね、
 私もバカじゃない。
 ただ運のみで勝ってきたワケじゃないの。
 ・・・・無駄よ、鬼姫ちゃん・・・・。
 ・・・影を使おうなんて・・・・」

「(?
 か・・・影ぇ・・・・?)」

なぜか、
鬼姫と一文字怜の間では
弁慶では
分らぬ意思疎通が成立していた。
ワケが分からないまま、
一文字怜が口にした「影」という
言葉に
疑問を抱く弁慶。

「お、おい!!
 鬼姫っ、
 一文字怜が言っていた影って・・・!」

「・・・私が説明してあげるわ、弁慶君。
 あのね、
 鬼姫ちゃんは貴方を利用していたの」

「え?
 それは随分前から分かってますけど・・・」

「日常生活のことじゃないわ、弁慶君。
 ・・・鬼姫ちゃんは、
 アナタの影を利用していたの。
 ・・・・アナタの影で、
 本のページに目印をつけていたの・・・・」

「え、えぇえ・・・・・?
 影で・・・目印・・・・・・!?
 ま、まさかっ・・・・!!!」

「・・・たぶん、
 第1回戦で鬼姫ちゃんが開いた525P。
 このページが分かるように、
 貴方の影を、
 その目印代わりに
 本に影を重ねていた・・・・」

「な、何ぃいいいいいいいいーーーーー!!!???」

何と、仰天な発想。
鬼姫の強襲とは、このことだった。
鬼姫が利用したのは、
弁慶の影。
影で、前にめくったページが
分かるよう、目印代わりに重ねていたのだ。
あまりにも陰湿。
だが、
ここまでくるとすでに天才の領域。
鬼姫の策に、
ただ弁慶は驚くばかり。

「(驚くべきは、
 俺の影を利用した発想もあるが・・・
 一番は、強運!!
 その策に運を乗らす、強運・・・!)」

「・・・・ククッ・・・・」

「(確かに、
 俺の影を目印に使って、
 前回の525Pは分かったかもしれない・・・。
 確かに、
 それは基盤となるっ・・・!!
 圧倒的な、基盤に!
 だが、必勝な要素とはならない・・・!
 分かっていても、
 指定されたページがめくれるとは考えられない!
 だが、めくった!!
 鬼姫は、近差のページをめくった!!
 この強運に、
 敬意を表したい・・・・!)」

そう、
弁慶の解説通り、
525Pが分かっているというのは
大いに有利。
だがそこからが大変。
それを基盤として、
果たしてこの後の勝負に
いかせるかが、
最大の問題である。
だが、鬼姫に限ってその心配はない。
生かす。
どんな屈強であろうと、
自分の策を信じ切り、
身を預け、
結果的に、生かすのである。

「(で、でも・・・。
 それをたった1回の勝負で見破っちまう
 一文字怜も、
 異常だぜ・・・・。
 本当に、この勝負・・・
 どっちが勝つんだよ・・・!?)」

「・・・ウフフッ。
 抜け目ないわね、本当に。
 もうその手は通用しない。
 ・・・・勝てる、鬼姫ちゃん?
 何か手を用意しないと、
 負けちゃうわよ」

「・・・・・・ククッ・・・・
 図に乗るな・・・・
 ・・・この程度、分かって当然・・・・。
 ・・・・・いや・・・・
 ためした・・・・。
 ・・・こんなチャチな策・・・・
 もう、相手をためした程度・・・・
 ・・・・分かって当然・・・」

「うっ!!!
 (分からねぇっつうの・・・。
 オマエらは
 世界が違うんだよ・・・)」

やはり、一文字怜。
彼女は神に愛されし女。
いや、
この肩書き無くとも、
十分に強者なのだ。
それをあらためて、
実感する弁慶。
強運を取っても、
今まで鬼姫と戦ってきた連中を
遙かに凌駕する力、
一文字怜。

「(で、でも・・・・。
 これって、マズいんじゃないか?
 ・・・・策が、見破られた・・・・。
 つまり、
 この後はもう、
 鬼姫は運否天武の勝負しかできねぇ!!)」

「・・・・ククッ・・・・」

「(ダメだ、
 ダメだっ・・・・!!!
 相手は、人外の強運なんだぞ・・・・!?
 運否天武で
 勝てる相手じゃねぇ・・・!!
 ・・・だったら、何だよ・・・・?
 ・・・・もう、ダメじゃねぇか・・・・。
 鬼姫は・・・もうダメだ・・・・!
 後は負け続ける・・・。
 ・・・後はただ、負け続けるだけだっ・・・・!!!)」

「・・・・さぁ、第3回戦。
 始めましょうか、鬼姫ちゃん?
 ・・・運否天賦の、
 ・・・・おもしろい勝負を・・・・
 ・・・ウフフッ・・・・」

「・・・・・ククッ・・・・・」

後書き

「(・・・・私のパターン・・・?
 確かコイツ、私の初戦の戦い方・・・・
 ・・・・2回しか見てないハズ・・・・)」

鬼姫よ、
弁慶は何でも知っておるのじゃよ。


次回、逆襲・・・!?

この小説について

タイトル -異才-
初版 2008年11月7日
改訂 2008年11月7日
小説ID 2803
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